Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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猛暑ではなくなってきましたが、まだまだ台風に油断を許されない天候ですな…
では久々に111話をどうぞ!ゾロ目だ!


第111話

あの女は、何を言っているのだろう。

 

耳を傾けるアルクェイドは先ほどからシエルの言っている意味が分からない。あの口ぶりから今回特に見せ場がなかったから八つ当たりしているとは到底思えない。以前からではあるが、この場に志貴がいない時に限り、あの修道女は信彦への当たりは強い。

その点は異端を許せない聖堂教会の一端であるのだが仕方がない部分ではあるはずだが、今回は一段と厳しい口調で信彦を責めている。

 

もう少し様子を見ようと、アルクェイドは耳を研ぎ澄ました。

 

 

 

 

「ほほぅ。そう言われちゃあまずはそっちの言い分を聞かねぇと話になんないね。別に?むきになって熱く反論するつもりは微塵もねえけどな」

 

「そうですね。では先にお話させて頂きましょう」

 

 

一端呼吸を整える為、ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐き出したシエルは眼鏡の位置を直すと相変わず薄ら笑いを浮かべるアンリマユに向かい、口を開いた。

 

 

 

「私がなぜ、今回救ったのは遠野君だけであると言ったのは、まず遠野君に関しての事です。あのまま貴方たちが何もしなければ、遠野君は間違いなく、山瀬舞子を…混沌の後継者である彼女を殺していたでしょう」

 

「だろうな。アイツは普段良すぎるぐらいのお人好しだが、こうと決めたら実行する。つまりは殺る時は殺るってやつだ」

 

「そうですね。どのような事情があろうと、遠野くんはもうそれしか手段がないと理解した時は確実に手を下すでしょう。その結果、誰かに恨まれようと…」

 

 

最後の『恨み』に関してトーンを重くしたシエルに対し、アンリマユは信彦の飲みかけであるコーヒーに次々と角砂糖を投入し、程よく飲める状態までスプーンで掻きまわしながら答えた。

 

 

「んで、その恨む側ってのが妹ちゃんなわけだ。そうだろうなぁ。どんな姿でも生きてる姉貴が目の前で殺されりゃあ恨むだろうし、最悪敵討ちなんてことにもなりかねない、か。例え姉ちゃんの方が望んで死にたがってたとしても」

 

「人間は理由さえあれば簡単に他人を恨みます。それが肉親ならなおさらですね」

 

 

知らないのだから、仕方がないといえばそれまでの話だ。

 

山瀬明美は何も知らない一般人であり、行方不明だった姉を慕うごく普通の少女だ。あのまま志貴が舞子を殺していた場合、間違いなく志貴へ憎しみを抱いていた事だろう。アンリマユの言う通り、姉が望んでいたと聞いても、感情は制御できはしない。

 

 

「そして、山瀬舞子を殺してしまった場合、遠野君自身が苦しんだことでしょう」

 

 

先でも述べた通りに、状況によって志貴は相手を殺す覚悟はある。しかし、殺した後を受け入れる程、彼は『慣れていない』。既に手遅れとなったグール達を幾人も手にかけた志貴ではあるが、あれほど人間としての意識がはっきりした対象は初めてだったはず。

それに加え、一度目の前で見殺しにした舞子を殺すなど、志貴にとって舞子を二度殺したも当然となるはずだ。

 

 

「自分の手で助けられたかもしれない人間をまた殺してしまった。受け入れるのにどれほどの時間をかかるかは分かりませんし、もしかしたら一生引きずってしまうかもしれない…そして、そうさせない為に動いたのが、貴方たちだった」

 

「そんなヒーローぶった事をしたつもりはないんだけどねぇ…どの辺りからそう考えたん?」

 

「…今思えば、マキュリアスによって傷ついた山瀬舞子を結界で守った時でしょうか。その時は、理由までは分かりませんでした」

 

 

惚けた口調で甘すぎるコーヒーを啜るアンリマユに即答するシエルは、その時の状況を思い出す。

 

 

マキュリアスの不意打ちによって体中に傷を負いながらも駆け付けた信彦は敵の凶刃から志貴を助け、周囲の状況を見渡しただけで状況を把握した。

 

志貴が信彦へと向けた眼差し。

 

かすかにキングストーンの力と混沌が入り混じった女性の身体を貫通した自分と同じ呪い。

 

そして、女性が過去に新聞記事で見かけた行方不明者の顔写真と同じであった事。

 

 

咄嗟に自身の回復を後回しにしてマキュリアスの持つ鎌剣の呪いに侵された舞子の命を持続させるべく、自身も重症である事にも関わらずに力の大半を注ぎ込んだのだ。その先に起こりえるであろう事を見越して。

 

 

 

 

「まったく、どこまで先の読んでいたのやら…あの時、貴方がその気になれば相手を血祭りにあげられたのでは?」

 

「ヒヒヒ、聖職者とは思えねぇ言い回しだな。それこそ買い被りってもんだ。あん時は全身オオカミちゃん達に傷口を喰いちぎられて悲鳴すら我慢してたんだぜ?一刻も早くあのナル野郎の鎌をぶっ壊して泣きっ面を拝みたかったんだよ」

 

「ですが、山瀬舞子を守らずに最初から全力をだせば…違ったんではないですか?」

 

「過大評価だってーの。それともあれかい?お前さんから見れば俺達は楽勝だったと言いたいのかい?」

 

「その通りです」

 

「…明日は槍でも降るのか?」

 

 

ケラケラと笑うアンリマユの冗談に即答で頷くシエルの視線に耐えかねてまたも軽口を重ねるが、彼女は一向にその姿勢を崩さない。場の雰囲気を変えようと何か喋らねばと考えている間に、シエルから切り出されてしまった。

 

 

 

「貴方がその気になれば…と考えたのは、遠野くんや真祖がロアと対峙している時に貴方が怪人達に見せたあの姿…爆発的に力が高まったあの形態なら瞬く間に倒せたと考えます」

 

 

シエルの言う形態というのは、トリニティファングを指しているのだろう。信彦・アンリマユ・碧月の意思と天・地・海全ての力が文字通り一つとなったシャドームーンの最強形態といっても過言ではない。自身の城にいる限り無敵であると豪語したロアですら、その力の一端を垣間見て撤退を考えたほどだ。

いくら手負いの状態でも、確かにマキュリアスを屠ることなど造作もないように思える。

 

 

「あの姿はけっこう負担が大きくてねぇ。初見の相手にホイホイ使わねぇのが我が家の方針なんすよ」

 

「確かに信彦さんならそれもあるでしょう。けど、私には他にも理由があったようにも思えます」

 

「その、理由ってのは?」

 

「…マキュリアスの持つ鎌剣ハルペーの呪い。それを確実に解呪する為にもただ相手を倒すだけは解決しない。そう考えたからではないでしょうか?」

 

「…………………」

 

 

敵の特殊な能力…毒や高熱に身体が侵された場合は、その相手を倒せば打ち消される場合もある。ゴルゴムや過去の組織によって生み出された怪人などそれが多かったが、今回に限っては神話に登場した神によって生み出された武具。

使用する者を倒したとしても、呪いが解除されるとは限らないと考えた信彦達はマキュリアスの持つハルペーの破壊を優先させたのだとシエルは推測した。アンリマユが薄ら笑いを浮かべず無言であることから、間違いではないようだ。

 

 

「確かにねえ、あの鎌で付けられた傷ってば俺らの治癒能力じゃ全然塞がんないんだもの。厄介なんでぶっ壊すのが一番だったからな」

 

「それも確かに理由の一つでしょう。けど、壊した後にでもマキュリアスを倒す事もできたはずでは?」

 

 

シエルが戦いを振り返る限り、シャドームーンの主人格となったアンリマユによりハルペーが破壊された後、舞子から呪いが消え去り自身で傷を塞いた事で結界を除去し本来の力を取り戻したシャドームーンには十分な余力があった。それこそ、捨て台詞と共に姿を消したマキュリアスと十分に渡り合える程の力が。

 

 

「だぁかぁらぁ、あれは相当のエネルギーを消費するから―――」

 

「そのエネルギーを、山瀬舞子を助ける為に取っておいた。話は戻りますが、彼女を助ける事が遠野君を助ける事と同意義である為、貴方は敵を見逃してでも力を残しておかなければならなかった」

 

 

声を遮れたアンリマユは黙るしかない。理由は一つ、シエルの立てた説が間違っていなかったからだ。

 

 

マキュリアスの撤退後、シエルの言う通りにある程度戦いの後に起こるであろう事を予測していた信彦は、苦悩の末に舞子を殺そうとする志貴を止め、彼女を人間や他の生命に害のない存在へと変えた。

結果、志貴はかつて見捨ててしまい、ある意味自分の分身とも言える舞子を殺さずに済み、妹である明美から姉を殺されたという恨みを向けられずに済んだという訳だ。

 

 

「遠野君はこれで自身を追い詰める事も、誰かに恨まれる事もなくなりました。私が山瀬直美に暗示をかけるという方法もありましたが、それは遠野君が望まない方法でしょうし、結果としては最良だったのではないですか?貴方が敵を見逃したという代償はあったようですが」

 

「ちぇッ。なにかと見透かしたような言い回しでなによりですねぇ」

 

「正解のようで何よりです。本当に、貴方達は遠野君には優しいんですね」

 

「背筋が凍るようなお褒めの言葉どーも」

 

 

 

創作のナゾナゾがあっさりと答えを出されて機嫌が悪くなった子供のようにいじけるアンリマユの横顔を見てクスリと微笑むシエル。

 

ここまで彼等が志貴を気に掛けるのは、かつての自身が多くの敵意を向けられた体験ゆえなのだろう。ゴルゴムの崩壊後、当てのない旅を続け美咲町へと辿り着くまでの間に信彦へと向けられたの様々な負の感情だった。

事情を知る者ならば信彦は創世王打倒に大きく献上した1人ではあるのだが、シエルの属する聖堂教会や魔術協会はそれを認めず、むしろ信彦こそが悪の象徴、根源であるとして命を狙ったのである。

 

刺客など信彦にとって取るに足らない相手ではあったが、逆恨みにも近い敵意や憎悪という名の攻撃は肉体に届かなくとも精神に届く。

 

アンリマユに叱咤されるまで心が追い詰められていた信彦は、同じ境遇を志貴に向けさせない為に山瀬舞子を手にかけずに済む方法を選択。その為に、あえてマキュリアスを見逃してキングストーンの力を温存した。

本当に、どこまで戦況を見据えての行動だったのだろうとただ感服するしかないシエルにコーヒーを飲み干したアンリマユは尋ねた。

 

 

「んで?まさかこれで終わりってわけじゃないよな?」

 

「……………」

 

「あんた、挨拶代わりの『残酷な手段』ってとこにまだ一切触れてない。もうここまできたら一切合切話してもらおうじゃねぇの」

 

視線をシエルへと向け、完全に聞く体勢となったアンリマユ。単にさっさと話を切り上げたいという意図も取れるが、シエルも最初からその話をいの一番にするつもりだったのだ。今後の為にも、彼の認識を確認しなければならないのだから。

 

 

「では、ここから一番の問題です。私は貴方たちに『残酷な手段』『救ったのは遠野君だけ』と言いました。その最大の要因は、貴方が山瀬舞子の命を救った事。それは問題の解決にはいたらず、むしろより大きな問題を引き起こしたからです」

 

 

 

 

 

 

(どういう事…?)

 

 

アンリマユとシエルの会話に耳を傾けたまま注文したドリンクをストローですするアルクェイドは、シエルの言う大きな問題に合点がいかない。

 

癪だがあの男によって自分や志貴は一命を取り止めた。そして単に寿命が延びただけではなく、志貴と同じ時間を共に過ごせるという意味も含んでいる。その点だけには恩義を感じるものの、やはり好きにはなれない奴だが、そんな信彦達が誰かを救うどころかさらに問題を悪化させるなどありえるのか?

 

(…って、こうしてシエルの言う事に疑問を抱いているあたり、私も無意識のうちにノブヒコを信じてるって事…?)

 

 

自身の分析にまさかねと苦笑するアルクェイドは意識を2人へと切り替えた。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達は山瀬舞子を助けたと同時に、混沌の残滓を脅威でなくした…これは功績に値するものでしょう。彼女が、以前の通りに『人間』であったのなら」

 

「…………………」

 

「そうです。貴方が助けたのは山瀬舞子という『人間』ではない。ネロ・カオスに養分として取り込まれ、主人格なき後に混沌の後継者となった『死徒』を生かしたのですから」

 

 

シエルの主張にアンリマユはなにも言い返さず、隠れて聞いていたアルクェイドはようやくシエルが普段よりも責め方が強いのか理解できた。

 

姿形だけなら、確かに山瀬舞子は人間に見えるだろう。その人格も魂も、間違いなく人間のものだ。しかし、『人間』ではない。本来だったら人間とは相いれない明確な『敵』であるはずの存在。それが『死徒』のはずだ。

だが、今回はそれだけでは収まらない。

 

 

「短期間とは言え、人間である遠野君の一部でありキングストーンの力も重なって混沌が本来持つ吸血衝動などが消失したという前例のない事が起こりましたが、それによって彼女は…山瀬舞子は至ってしまった」

 

 

「人の血も肉も食さずに人としての精神を保っていられる。真祖すら生み出せなかった完全な死徒に」

 

 

 

本来、死徒は人間の血を摂取し続けれなければ身体が崩壊が始まり、死に至る。だが、舞子はキングストーンの力の恩恵で真祖すら免れない吸血衝動どころか混沌の因子が持つ飢餓感も克服してしまった。舞子の肉体はさらに他の混沌を融合・圧縮体であるネコカオスを宿すことで強靭な身体を持つだけでなく、不死の肉体をも手に入れた事になる。

 

 

「これがどのような意味を指すが、貴方も理解しているでしょう?」

 

「ほっとかないだろうなぁ。どいつもこいつも」

 

 

吸血を必要としない死徒。

その存在がどれほど希少であり、認められない存在であるか属する立場によっては変わる。

 

神秘を追求する魔術協会からは被検体として。

 

異端を認めない聖堂教会からは抹殺対象として。

 

何も知らない人間からは化け物として…

 

 

最悪、信彦達の知る組織たちに狙われる可能性だって捨てきれない。

 

シエルはこう言いたいのだろう。山瀬舞子は信彦が助けた事によってより危険な存在へとなり果ててしまったのだと。確かに、そんな彼女を生み出した事は『残酷』な方法だったのかもしれない。

 

 

 

「…貴方が行った事は問題の先延ばし。今は家族と時間を過ごせるかも知れませんがそれもこの先数年間だけの話。人間として老いる事を失ってしまった山瀬舞子は周囲の人間だけでなく、家族からも離れなければならない時がいずれきます」

 

それは、ロアによって時間を人間としての時間を奪われてしまった彼女だからこそ言える言葉だった。

 

 

「それが、俺達が『全てを救っていない』ってことか」

 

 

山瀬舞子は死徒として生きなければならず、妹の明美はそんな姉と長い時間共にいられない。なるほど、話を聞く限りあの場で助かったのは志貴だけだとは言えなくもない。

 

 

「貴方たちなら最初からそうなると予測はついていたはずです。ですが、そうしなかった。彼女がいずれ孤独となる結果が分かっているというのに」

 

「なら、あのまま殺しといた方が彼女のためですから~なんてありきたりなお言葉な無しで頼むぜ姉ちゃん」

 

「いえ、その通りですよ」

 

「ああん?」

 

「厳密に言えば彼女はもう既に死んだ存在です。偶然に偶然が重なった結果、あの死徒は生まれました。ならば、人間の紛い物として生きるのではなく、今からでもその命を絶つ事こそが彼女の為だと思いませんか?」

 

「…ハっ。なんだいなんだい。今度はよりらし過ぎる言葉を吐くじゃねぇか聖職者。そんなに嫌いかい異端は?」

 

「ええ。殺したいほどに大嫌いです」

 

 

不穏な空気が周囲を包み、しばし沈黙がその場を支配する。シエルとアンリマユは無言で睨み合うが重々しい空気を打ち破ったのは深く溜息を吐いたシエルだった。

 

 

「全く…どこまでもゴーイングマイウェイな人ですね」

 

「それ褒めてんの?貶してんの?」

 

「どっちもです。どうせ貴方たちの事です。その後の事もどうにかしてしまうのでしょう?」

 

そう言ってシエルはアンリマユの手元にあるファイルの束へと一瞥すると立ち上がり、再度低い声で彼等に告げる。

 

 

「覚えておいて下さい。この先、どのような連中が彼女を狙うか分からない。その時、より多くの人間が巻き込まれる可能性だってある。その時、貴方たちに相応の責任を負う事になりますよ?」

 

 

山瀬舞子を生かした責任が。

 

だが、シエルの質問に答えたアンリマユの…否、彼の解答はあの時と…山瀬舞子を助けた時と変わらないものだった。

 

 

「言ったはずだ。後始末はする。最後までな」

 

「そうですか。なら、最後まで任せますね!」

 

 

予測された答えだったのだろうか。シエルは打って変わり満面の笑みになると踵を返し、今まで居座っていた席を後にする。

 

 

「あ、それと上の命令で山瀬さんの監視するという事でまた学校に通いますので」

 

と、余計な情報まで残したシエルは今度こそ店を出ていく。妙に機嫌がよかったのは、山瀬舞子をただ監視するだけで済み、志貴と同じスクールライフを満喫できると踏んだからか…?と、考える事すら馬鹿らしくなり、信彦は再びファイルを展開した。

 

 

 

『ちょっとちょっとーなに美味しいトコ持ってくんですかねぇ』

 

「ちょうどいい休憩になった。もう用はない寝ていろ」

 

『うーわ辛辣ぅ!面倒がって交代させられて、一生懸命答えたっていうのに…』

 

『うん!アンリは頑張ったわよ、エライエライ!』

 

 

深層意識で繰り広げられるオーバーな会話に耳を貸すことなく再びファイルに記される資料へと目を通す信彦へ、今度は先ほどから身を隠していた珍客が姿を現した。

 

 

「なにこれ?てろめあ?それにこっちは、ホムンクルスの製造に…あ、これロアが使ってた魂を固形化させる魔術じゃない!」

 

「勝手に見るなアルクェイド」

 

「ふーん…貴方、これで作った肉体にあの女の魂を入れるつもりなの?」

 

 

さらりと核心へと迫るアルクェイドの読みに、信彦は何も言わない。これだけ材料がそろっていれば、アルクェイドならすぐ辿り着く内容だったのだろう。ならば、特に隠す必要はない。

 

 

 

「…キングストーンの副作用か分からんが、山瀬舞子の魂は混沌の一部と言えど固形化されたものとなっている。それをあの黒猫と分離させた後に別の肉体へ移し、完全に馴染ませれば人間の平均寿命まで生きられることは可能だ。理論上はな」

 

「なんでそこまでするの?もう血を必要なく生きられるならもうほっといてもいいと思うけど」

 

 

今度はお前が質問かと若干眉間に皺を寄せる信彦だったが、懐からタバコを取り出しながら視線を窓に向ける。確かにそれも一つの方法だろう。舞子から他の生物を喰らおうとする衝動を取り除いてしまえば、無害の動物と変わりない。

あのネコカオスが少々気にはなるが、害はまず起きないはずだ。

 

だが、それでも信彦は譲らなかった。

 

 

例え今回のように特殊なケースで殺され、怪物として再生しようが、それで人としての生を諦める理由にはならない。

 

 

そして改造人間である今の自分では決して叶わない。

 

人外へと堕ちたとしても、まだ人として生きる事がまだ可能であるならば。人間に戻れるのであれば。まだ間に合うのであれば。

 

自分の力で助けられるのであれば、迷う必要はなく全力を注ぐ。

 

 

それが今回、キングストーンの副作用で生き返らせてしまった自分が山瀬舞子に出来る『後始末』なのだ。

 

 

が、その理由をこの真祖へと説明する理由は無かった。

 

 

 

「お前には関係ない」

 

 

「たっぷり黙って出てくる意見がそれってどーゆーことよッ!?」

 

 

ムキーっと怒るアルクェイドを他所に、信彦は加えたタバコに火を付けるのであった。

 

 

 

 




てな訳で振り返りと補足と言ったところでしょうか?

次回は超久々に光太郎たちのお話となります。…いやほんとどれくらいぶりなのだろう?

そしてジオウはどこまでオリジナルキャストなのだろう…?

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