Fate/Radiant of X   作:ヨーヨー

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やっべ今度の戦隊すんごくツボです…

もし六人目が鳥の人の声を演じた人のまんまだったら最高なんですが

「邪魔なんだよ。俺の事を好きにならない奴全て…」

とか言ってくれそうでww


区切りよくするつもりでここまでやったら2話分の量に…

そんな38話です


第38話

間桐桜をクライシス皇帝の娘 ガロニア姫と思い込み連れ去ったマリバロンだったが、桜がうなじに貼り付けていたホクロ状の魔道具が剥がれ、ガロニアではないという事実にようやく気が付き、ジャーク将軍に報告しようと指令室へと向かうが、そこではジャーク将軍と新たな肉体を得た木星の騎士ジュピトルスが睨み合っていた。

 

 

遥か過去に母国の為共に戦っていた味方であるとはいえ強い敵意を抱くジャーク将軍にジュピトルスは逃げ出したガロニア姫を捨て置き、捉えた桜を真のガロニア姫に仕立てあげるべきだと進言する。

 

 

そもそもクライシス人ではないと反論するボスガン達に対し、ジュピトルスは怪魔界に伝わる『奇跡の泉』に三日三晩浸かれば地球人であってもクライシス人として生まれ変わらせることが可能だと言い切った。

 

 

たとえガロニアを連れ戻したところで養成中に本来身に付くはずの超能力も脱走したことで今以上の力が望めない。ならば今のガロニアよりも高い潜在能力を持つ桜をクライシス人にしたうえで洗脳し、ガロニアだと思いこませればクライシス帝国にとっても有意義であるという主張に反対する者は誰もいなかった。

 

 

そしてジュピトルスの立てた案が採用となり、彼の言う間桐光太郎の心を殺すという不可解な言葉を振り払うように自身が製作する怪魔ロボットの最終調整を行うガテゾーン。自分の手がけた怪魔ロボットで宿敵RXを倒す。それだけの為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間桐邸

 

 

 

いつもならば住人達によってその日に何が起きたのか、以前こんなことがあったなど賑わいを見せる食卓では現在長く沈黙が伸し掛かっていた。

 

 

席に着いている3人…メデューサ、赤上 武、そして桜と瓜二つの少女であるガロニア。目の前に出されてた湯呑に手を付ける事すらせず、ただ黙っている。

 

 

「状況を整理するとだ」

 

 

そんな重苦しい状況の中ただ1人、普段通りの間桐慎二がキッチンから戻り、自分の入れたコーヒーカップを手に着席した。

 

 

「まずお前…ガロニアだっけ?ガロニアは自分とそっくりだった桜を偶然見つけて、少しの間だけ入れ替わろうとした。その時に催眠術をかけて家に帰らせたんだな?」

 

「その、通りです…」

 

「んで、メデューサは帰る途中の桜を見かけたけど時間になっても戻らない光太郎を優先させた」

 

「はい…」

 

「そして武はガロニアと間違えて桜を連れて行こうと現れたクライシスと対面したけど、見たことも無い奴の不意打ちで気を失った…」

 

「間違いない…」

 

 

1人1人の顔を見ながら改めて確認する慎二の問いに答えるメデューサ達の声は小さい。ふぅ…と軽くため息をつき一度コーヒーを啜る慎二はカップをテーブルに置く姿を見て、3人はこれから慎二から出るであろう自分達に対する叱責に思わず身構えてしまう。

 

慎二に取っては家族である桜が自分が原因で連れ去られてしまったと自責する3人…特にガロニアはここにきて間桐桜がクライシス帝国の大敵である間桐光太郎の家族であると知った時は冷静になるまでにしばしの時間を要していた。だが、心を静めたガロニアにとって敵味方の関係など彼女に取っては些細な問題であり、間桐桜が自分と似ているというだけで多大な迷惑をかけてしまったという問題の方が大きかった。

いや、連れ去られた桜が自分ではないとクライシス帝国に知られた時、最悪命に係わるのではないかという不安が一層大きくなっている。

 

桜の日常を完全に壊してしまったと考えるガロニアは責められて当然であると慎二の手で殺される事も覚悟をしていたが、当の本人から出た言葉はガロニアが予想すらしていない事だった。

 

 

「んじゃ、桜をどう助け出すかは光太郎が目を覚ましてからだな」

 

「え…?」

 

「以上、解散」

 

「お、お待ち下さい慎二様ッ!!」

 

 

コーヒーカップを持って自室に戻ろうと席を立った慎二を呼び止めたガロニアは、余りにもあっさりと話を終わらせた慎二の態度に納得がいかず身を乗り出しながら立ち上がる。武もメデューサも同様のようであり、無言で慎二へと視線が注がれるが、当の慎二は迷惑そうに再び席へと座った。

 

 

「なんだよ、話は終わったろ?」

 

「その…ワタクシが言うのは大変差し出がましい事を重々承知ではあります。なぜ桜さんが連れ去られてしまった原因であるワタクシに何も言わないのですか?」

 

「はぁ…?」

 

「そもそもワタクシが桜さんと入れ替わろうなんて勝手は振る舞いをしなければ、こんなことには…」

 

「いえ、貴女だけの責任ではありません。あの時、もっと注意深くサクラの様子を見ていれば…」

 

「そんなことはない。あの時、俺が油断しなければ桜殿が浚われることはなかった」

 

 

訳が分からないと声を漏らす慎二の返事をまたずに自分が責任があると述べるガロニアに続き、メデューサと武も同じように非は自分にあるのだと主張する様子に、慎二は後頭部をガリガリとかきながら3人へと尋ねた。

 

敢えてガロニア達が最も聞きたくないであろう質問を。

 

 

「じゃああれか?僕がお前達の責任だって喚き叫んだら、桜は帰ってくるのかよ?」

 

「…っ!?」

 

「さっきから聞いて見れば自分が悪い自分が悪い…そんな分かり切ってること聞いたところで事態は変わんないじゃん」

 

「それは…」

 

「それに桜にだって責任がある。何のために自衛の道具をいくつも持たせてると思ってんだよほんと」

 

 

やれやれと肩を竦ませる慎二の発言に、言葉が出ない一同だったが、最後の桜にも原因があるという台詞は聞き逃せなかったガロニアは自分が置かれている立場を忘れ喰ってかかる。自分が何と言われても構わない。しかし、被害者である桜を非難することが家族と言えどどうしても我慢ならなかった。

 

 

「慎二様ッ!!彼方は妹君が浚われたというのにそんな…」

 

「別に目くじら立てる事じゃないだろ?それに、お前じゃないと知られても桜は殺されないよ」

 

「それは…どういう…」

 

「考えても見なよ。折角目の仇にしている光太郎の身内っていう切り札を手に入れたんだ。連中は有効活用する為に殺すことだけは避けるはずだよ。僕が敵だったらそうするね」

 

「っ…」

 

 

なんて冷たい…ガロニアは自分の正体を知りながらも丁重に扱ってくれた慎二を優しい人物と考えていたが、家族である桜に対して何故ここまで言えてしまうのか…自分が見た地球人はみんな手を取り合い、互いを助け合う姿は偽りであり、やはり学習装置の言うことが正しかったのか…?

 

しかし慎二はガロニアの考えなど知る由もなく、今度こそ立ち上がり食卓から去っていく。

 

 

「これから僕は対策を練るから、光太郎が起きるまで部屋に入ってこないでよ。その間、お前は居座ろうが帰ろうが、好きにしてれば?」

 

 

振り返ることなくそう告げた慎二の足音が完全に消えた後、ガロニアはゆっくりと腰かけるとスカートの裾を強く握っている手の甲に水滴が落ちていることに気付く。

 

それは、ガロニアが生まれて初めて流す涙であった。

 

彼女が抱いていた地球人像が打ち砕かれた失望からなのか、何も言い返せない自分の弱さへの悔しさなのか。理由は分からない。声を押し殺して泣き続けるガロニアへ、メデューサはそっとハンカチを差し出すと彼女に冷徹な印象を与えてしまった慎二への弁明を始めた。

 

 

「ガロニア…どうかシンジを誤解しないで貰えますか?」

 

「え…?」

 

「ああは言っていますが、本当はサクラの身が安全である事を一番に望んでいるのは、シンジなんです」

 

「だって…あんな言い方…」

 

 

目元をハンカチで押さえるガロニアにはメデューサの説明に納得が出来ない。なら、どうして心配する素振りも見せず、連れ去られた桜も悪いなどと言うことができるのであろうか。

 

 

悪印象しか残らない慎二の言動を、同じく非難の言葉を浴びたはずのメデューサが諭すように、ガロニアの隣に座って説明する。

 

 

「確かに、あれではシンジに対して良い印象を受けないでしょう。ですが、彼も狼狽えることを必死に抑えていたんです。今以上に我々が桜の件で落ち込まないように、ワザと突き放すような言葉を選んで自分に悪意を向けさけ、気を逸らすために。だからシンジは敢えてあのような態度で接したのでしょう。恐らく、今シンジは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ…と鈍い音が慎二の私室の中で響く。照明も付けず、暗い空間の中で震える拳を壁へと叩きつけた慎二は唇を噛みしめ、今し方自身が発した言葉を と共に唱えた。

 

 

「何のために道具を持たせた…こんな時の為に持たせたのに、何一つ役に立たなかったじゃないか…クソッ!!」

 

 

手首の負傷など考えずに再び拳を壁へと叩き付ける慎二。本来なら、あの場で声を大にして桜が連れて行かれた原因は自分だと叫びたい程だった。万が一に備えて、様々な状況を想定して造った道具も効果を発揮しなければ意味はない。だから、桜が自身で危機を逃れられなかったのは、その場面で役に立つ道具を持たせなかった自分にあるのだと、慎二は考えていた。

 

だが、これも本人が言った通りに喚いたところで桜が戻ってくる訳ではない。

 

加えて敵であるはずのガロニアに強く糾弾するべきなのに、自分の立場も忘れ桜を心配する彼女の姿にそんな気が失せてしまう自分の甘さも腹立たしい。

 

自分は義兄のように甘くない。敵であるなら容赦しないと、考えていた筈なのに。

 

 

「似過ぎなんだよ…顔以外も」

 

 

泣き虫で、誰かの為に悲しみ、自分の意思をはっきり示すなんて…余計に今回の件で悩ませる訳には行かないと思い、自分への敵意でその感情を上書きさせようとするなんて…

 

 

そんな自己満足に巻き込んでしまったメデューサと武への罪悪感から急ぎ部屋に籠った慎二に今出来ることは、ただ祈るだけだった。

 

 

 

 

「桜…無事でいてくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、慎二様は…だというのに、ワタクシは…」

 

「いや、あれでは言った通りの印象を受けても仕方ない。俺も、最初は耳を疑ったものだ」

 

 

慎二を人でなしと考えてしまった自分を恥じて俯いてしまうガロニアを見て武は苦笑しながらも日頃光太郎へ罵倒する慎二の姿を思い出す。愛情の裏返しと言えば聞こえがいいかも知れないが、慎二と付き合いの長い人物でなければ、彼の考えを読み取ることはは困難だ。それが可能であるのは長年付き添っている家族や、衛宮士郎くらいのものだろう。

 

目元を拭ったガロニアは両手を胸の前でグッと握り、桜とは違う向日葵のような明るい笑顔で宣言する。

 

 

「…決めました。後で誠心誠意、慎二様へお詫びいたします!考えてみれば、妹君に成りすましたワタクシを断罪なさらずここまでお連れして下さった方が優しくないはずがありません!全力で感謝しなければなりませんわッ!!」

 

(その場合は照れ隠しで心にもない事を言って後悔する姿が目に浮かんでしまうな…)

 

 

慎二の性格上、正面から賞賛されることが苦手であるため、つい口からその場しのぎの悪態が飛び出してしまう。それを聞いて別の誤解を抱いてしまうのではないかと危惧する武であった。

 

 

 

 

 

 

武と談笑を始めたガロニアの様子を見て、これでどうにかガロニアを落ち着かせる事が出来たと胸を撫で下ろすメデューサだったが、次なる問題が発生してしまう。

 

 

(2階から物音…?シンジの部屋からではない…まさかッ!?」

 

 

気配を感じたメデューサは食卓を抜け2階への階段を駆け上がり、重症を負って意識を失っての人物の部屋の前へと辿りつく。ノックする時間も惜しいメデューサはドアを勢いよく開けたその先で、2階であるにも関わらず全開にした窓から今にも飛び降りようとする人物の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

「光太郎…」

 

「…見つかっちゃったか」

 

 

ぎこちない笑顔で振り返った光太郎の顔色は優れない。いや、良く見れば脂汗を額に流し、窓枠に触れている手も震えている。さらに床へと目を向ければ血で染まった包帯やガーゼが散らばっており、傷が完全に塞がっていないことを物語っていた。

 

大きく力を消耗した光太郎が無理を押してまで動く理由など、分かり切っていたメデューサは目を細めて尋ねた。

 

 

「…聞いていたのですね。桜が、連れ去られた話を」

 

「…あいにくと、耳はいい方だからね」

 

 

光太郎が目を覚ましたのは数十分前。

 

火星の騎士アルスに敗北し、メデューサに介抱されるまで記憶があったが次に目を開けた時は自室のベットで横になっていた。起き上がろうにも胸に受けた傷が痛み、立ち上がれない光太郎だったが,強化された聴力によって聞こえたのは、義妹がクライシスに囚われてしまったという最悪のニュース。

 

寝てなんていられない。

 

身体を動かすたびに傷口が抉られるような痛みに襲われるが、たったそれだけのことで起き上がれない理由にはならないと立ち上がった光太郎は丁寧に撒かれていた包帯を解き、メディアから横流ししてもらった血止め薬をたっぷりと塗りたぐる。これで傷口が開くことは無いだろうと判断し、いざ部屋から出ようとしたところをメデューサに発見されてしまった。

 

 

 

 

「…光太郎、ベットに戻ってください。今の彼方に、何が出来るのですか?」

 

「………」

 

「確かに今は由々しき事態です。ですが、今の状況を打破するためにも、彼方には回復に専念して貰わなければならない」

 

 

まずは光太郎が目覚めたことを喜ぶべきなのに、メデューサは本心を隠して冷たく言い放つ。桜がクライシス帝国の手に落ちたと既に知っているのなら、彼が動かないはずがない。

 

しかし、弱っている光太郎が桜の捜索に向かってしまえばミイラ取りがミイラとなる可能性が高い。さらに光太郎を倒したあのセイバーと似た少女と再び出くわしてしまったら…嫌な予想しか浮かばないメデューサはどうにか思いとどまるように、彼が黙って従わざる得ない言葉だけを選んで突き付けている。なんと思われようと構わない。

 

もう、大切な人を失いたくない。

 

その一心から無茶を繰り返す光太郎へ接する際も最近厳しい態度と口調になってしまっていることもメデューサは自覚している。こちらがいくら怒鳴っても苦笑して従ってくれる光太郎に対して内心では謝り、感謝しなければと思うが今回ばかりは光太郎に独自で動いて欲しくない。桜が助かるためならば、光太郎は文字通り、その命を懸けて戦ってしまう。

 

だからこそ、心を鬼にして光太郎に思いとどまるようさらに目を鋭くして目を逸らす光太郎を説得するメデューサに対し、光太郎の答えは―――

 

 

 

 

「確かに、メデューサの言う通りだ」

 

 

サッシを掴む手を緩める様子に息を付くメデューサ。どうやら今回は分かってくれたのかと考えたが、この時、彼女は失念していた。

 

間桐桜が、間桐光太郎に取ってどれだけ大切な存在であることかを

 

 

 

 

「だけど―――」

 

 

 

「俺は大事な妹が連れ去られて冷静でいられるほど、利口ではないんだ」

 

「っ!?光太郎―――」

 

 

 

今度こそ窓枠へ足をかける光太郎へ、メデューサは言うよりも早く彼の肩を掴もうと手を伸ばす。

 

恐らくは怪我が原因して身体の動きが鈍くなっているためか、普段ならばとうに逃げられる距離だったにも関わらず、メデューサの手は光太郎の肩を掴むことが出来た。

 

 

だが、その直後。

 

 

乾いた音が室内に響いたと共に、メデューサは自身の手に走る痛みを忘れてしまう程の出来事に思わず目を見開いてしまった。

 

 

 

 

 

 

「あっ…」

 

 

 

 

 

共に歩いていくと決めた際に優しく握ってくれた光太郎の手が、自分の手を弾いた。

 

 

光太郎は肩を掴んだメデューサの手を振り払らうため、彼女の手を力を込めて叩いてしまったのだ。

 

 

自分の起こした事にようやく気付いた光太郎は、自分でも信じられないという顔でメデューサの顔を見つめる。いや、驚くと言うより、彼女の茫然とした表情を見て、次第に怯えるように自分の手を見つめていた。

 

 

 

 

「…くっ」

 

 

そして逃げ出す様に、今度こそ光太郎は2階から飛び降りる。時間にして5秒も立っていないうちに遠ざかっていくエンジン音がメデューサの耳に届くが、恐らくアクロバッターが予め下で控えていたのだろう。

 

 

メデューサは追いかけることができず、力が抜けてしまったかのように、その場にへたり込んでしまう。

 

 

「あのような顔…初めて、ですね」

 

 

擦れるような声で呟くメデューサの目には、涙が溜まっていた。

 

 

(私は、何をしていたのだろう。彼の為と言って、彼を追い詰めていた)

 

 

(ただ、光太郎には無事でいて欲しかっただけなのに…彼に、あんな顔をさせる為ではなかったのに)

 

 

 

 

今まで彼と積み上げてきたもの。

 

 

それに、大きな亀裂が走った。

 

 

メデューサは武や慎二が部屋に踏み込んでくるまで、声を押し殺して泣くことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長かった雨が止み、ようやく雨雲の隙間から漏れ出した陽の光の下を疾走するアクロバッターのグリップを強く握る光太郎は、自分の為に厳しく接してくれたメデューサの顔が、頭から離れなかった。

 

 

(ごめんメデューサ。俺だって、分かっているんだ。けど…)

 

 

アクロバッターが走行する振動が傷に響くよりも、彼女を手を叩いてしまったという罪悪感のほうがずっと痛い。

 

それでも、光太郎は止まる訳にはいかなかった。

 

桜を、大切な家族を取り戻す為に。

 

同時に、自分を打ち負かした火星の騎士が言い放った言葉を否定するためだったかもしれない。

 

 

 

 

『弱いな、お前』

 

 

『こんなんじゃ、守れるわけないな』

 

 

『自分も、お前の言う誰かもな』

 

 

 

今も耳に残るあの言葉。

 

 

光太郎は認める訳にはいかなかった。

 

 

(俺は桜ちゃんを…大切な妹を必ず取り戻す。そして、みんなのところに戻るんだ!)

 

 

決意すると共にアクロバッターを加速させる光太郎は、気付いていなかった。いや、気付けなかったと言った方が正しいだろう。

 

 

 

 

間桐邸を出た後から、自分とアクロバッターを追従するようにバイクを走らせる人物がいたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクロバッターを疾走させて数十分。

 

進路先の中央で仁王立ちする者の影を捉えた瞬間、光太郎は急ぎアクロバッターのグリップを離し上空へと退避。その直後、光太郎の頭部があったであろう位置に手にした武器を横なぎに振るった者がアクロバッターとすれ違い、上へと逃れた光太郎へと顔を向ける。

 

 

 

 

 

 

「さすがと言った所か、間桐光太郎…いや、仮面ライダーBLACK RX!」

 

「クライシス…変ッ身!」

 

 

着地をまたずにBLACKへと変身する光太郎だが、それだけでは終わらない。

 

身体の節々から変身した際の余剰エネルギーである蒸気を噴出させながらも身に降り注ぐ太陽の力を取り込み、腹部のベルトをサンライザーへと変化させる。

 

 

 

「太陽よ…俺に力をッ!!」

 

 

 

叫び、手を天に翳したと同時に眩い輝きで身を包んだ光太郎は着地した同時に奇襲をかけた相手を睨む。

 

 

 

「ほう…早くもRXとなってくれるとは光栄だな」

 

「貴様…クライシスの怪魔ロボットかッ!?」

 

「いかにも…」

 

 

光太郎の言葉を肯定した怪魔ロボットは手にした武器…鋭利な鎌を背後にマウントし、自らの名を堂々と名乗った。

 

 

「我が名はデスガロン。貴様を倒すべく生まれた最強の怪魔ロボットだ」

 

「そんなことどうでもいいッ!!妹を…桜ちゃんをどこにやったッ!?」

 

 

叫ぶと同時にデスガロンへ駆け寄った光太郎は先制攻撃としてパンチを仕掛けるが、難なく回避されてしまう。続いて蹴り、肘打ち、裏拳と次々に繰り出していくがその全てが避けられ、弾かれ、受け止められてしまっている。

 

 

「どうした?データにあった貴様の攻撃はもっと鋭く重いはずだぞ」

 

「くっ…!」

 

「こないか…なら、此方から行かせて貰うぞ?」

 

 

デスガロンが振るう腕に対し両手で交差して受け止める光太郎だったが威力まで止められず、完全に押し負ける形でアスファルトを転がっていく。そして立ち止まるよりも早くデスガロンは両手に持ったブラスターガンを光太郎に向け、躊躇なく発射。

 

光太郎へ着弾したと同時に次々と爆発が起こった。

 

 

「くっ…がぁ」

 

「ふん…倒れることだけはしないか。しかしどうしても妹の身が気がかりであるなら付いてくるがいい」

 

「何ッ!?」

 

「妹の姿を見せてやると言っているのだ。もっとも、そこは同時に貴様の墓場となる場所だがな」

 

 

ブラスターを腿に収納したデスガロンが指を鳴らすと大型のバイク…彼の生みの親であるガテゾーンの愛車であるストームダガーの量産試作機であるジェットダガーが転送され、搭乗するとすぐさまに発進。光太郎も胸を押さえながら背後まで移動したアクロバッターに乗り、急ぎ後を追うのだった。

 

 

「急ぐぞ、アクロバッター…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デスガロンの後を追ってたどり着いたのは、破棄された地下駐車場。既に電気すら通っていないはずなのにぼんやりとした頼りない松明で照明が設置されていることからクライシスが準備したのであろう。

 

 

互いにバイクから降りた両名…光太郎は構えながら間合いを詰めつつ、デスガロンに向けて叫ぶ。まるで余裕のない、追い詰められた獣のような咆哮で。

 

 

 

「貴様の誘い通りここまで来たんだ…桜ちゃんを解放しろッ!!」

 

「そう慌てるな。こちらにも準備があるんだよ」

 

 

光太郎とは対照に冷静であるデスガロンは腰に取り付けてあるリモコンを手に取り、中央の赤いボタンを指で押し込む。リモコンからブザー音が響くと光太郎とデスガロンが立つ区画を遮るように壁が出現し、外部を完全に遮断してしまった。

 

 

「これは特別な合金で造られていてな。お前が全力でパンチを繰り出そうがヒビ一つ入らんぞ」

 

「貴様…自分がどうなっても構わないのか」

 

「言ったろう?俺は貴様を倒す為に生まれたのだと」

 

 

これ以上論じても無駄だろう。そう判断した光太郎は強引に口を割らそうと攻撃を繰り出そうとしたが、突然割って入った男の声に動きを止めてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

『これはこれは…聞いていた情報よりもセッカチなお方のようですねぇ』

 

 

 

壁面に映し出された巨大なモニター。中央には不気味な笑みを浮かべる男が立っており、傍らにベールで顔を隠す少女らしき人物が立っている。男は右手を胸の前に置き、画面越しである光太郎に対し深々と一礼。頭を上げるとさらに口元を吊り上げて声を放った。

 

 

『お初にお目に掛かります。私は木星の騎士ジュピトルスと申します』

 

「お前も…星騎士か」

 

 

つい数時間前に同じ称号を持つ人物に敗れたばかりである光太郎にとっては警戒すべき相手だ。だが、画面に映るこの男は、アルスとはまた違う危険をヒシヒシと感じる光太郎に、先程とは対照にジュピトルスは満面の笑みを浮かべる。

 

 

『そう警戒しないで頂きたい。彼方の探し求める少女も、ここにいるのですから』

 

 

ジュピトルスにそっと背中を押された少女は自らベールを摘まむと、ゆっくりとした動作で捲っていく。

 

 

その下にある顔は、間違いなく光太郎の義妹、間桐桜だった。

 

 

 

「桜ちゃんッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『桜ちゃんッ!!』

 

 

 

 

「…………………」

 

ガテゾーンは数メートル先にあるスペースに立つジュピトルスと無表情で立ち尽くす間桐桜の姿を黙って見つめていた。彼等の向かい側に設置されたモニターでは、おびき寄せたRXの姿がリアルタイムで送信されており、これまでに無いほど動揺している姿を映し出している。

 

 

今回、ジュピトルスが提案した作戦はこうだ。

 

 

おびき寄せたRXに対し、洗脳した間桐桜に彼の存在を拒絶させることによって放心状態にあるところを一気に叩く。

 

人質に取るよりも、大切な人間に存在を否定される事の方が精神的に追い詰められると笑いながら語るジュピトルスの顔は、許しが得られているのなら10回は殺したくなるような悍ましい姿だった。

 

だがガテゾーンは何よりそんな卑怯な作戦に自分の製造した怪魔ロボットを利用されるのが我慢ならなったが、これも全てはクライシス帝国の地球侵略作戦進行の為とマリバロンに説得され、否応なしに従っている。

 

 

 

(こんな形で決着が付いちまうのかよ)

 

 

ガテゾーンは不謹慎であると考えながらも、この作戦が失敗することをどこかで望んでいる。間桐桜をクライシス人にする為に怪魔界へと向かってしまったジャーク将軍の指示はあくまでRXの討伐。その為ならば悪魔のような奴に脅される形であっても遂行しなければならない。

 

それでも、ガテゾーンは今でも納得が出来ない。確かに精神的に追い込んだRXをデスガロンで止めを刺すことは容易い。だがそんな事で本当にRXを倒した事などにはならないと拳を強く握るガテゾーンのコンピューターに通信が入る。

 

 

(プライベート通信…?デスガロンか)

 

(ガテゾーン様。私はどうやら調整不良で弱ったRXに止めを差すまでに戦えそうにありません)

 

 

何を言っているのだ。自分の整備は完璧なはずだと自負するガテゾーンの頭部に、デスガロンからの通信は続く。

 

 

(その為にRXを戦闘不能の状態に持ち込んだ後、奴を連れてクライス要塞に帰還します。いつでも殺せる状態にしておけば、面目も立つでしょう)

 

(お前…いいだろう。戻ったら完全な状態で戦えるようにしてやる)

 

 

どうやら今回の怪魔ロボットは設計段階以上に創造主よりの性格となってしまっているらしい。デスガロンも今回の策に乗り気ではないようであり、この場はジュピトルスの案に乗る振りをして後日RXとの全力で決着を付けるつもりらしい。

 

この通信を同時に受けていたマリバロンへと顔を向けると、呆れた表情を浮かべながらも了承すると言ったジェスチャーをガテゾーンに向けている。

 

 

結果を優先するならばジャーク将軍の意思に反するのかも知れない。だが、あのような男の作戦に頼らずとも、必ずRXを自身の開発した怪魔ロボットで倒して見せると意気込むガテゾーンだったが、そのような考えは潰えてしまう。

 

 

ガテゾーンは…いや、クライス要塞に揃う隊長達はジュピトルスという男をまだ見誤っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、間桐光太郎。なぜここに彼女がいるのか、解りますか?』

 

「くっ…卑怯者め」

 

ゴルゴムとの戦いで数度同じように人質にされた事はあったが、それは目の前にいての事。現在のようにどことも分からない場所に桜がいるので助ける算段も浮かばない。もし桜があの宇宙にある要塞にいるのだとすれば、どうすることもできないと悩む光太郎の姿を見たジュピトルスは顎を指で押さえ、フム、と頷く。

 

 

 

『卑怯者とは、心外なお言葉だ…では、こうするとしましょう』

 

 

 

 

 

 

ジュピトルスは隣に立つ桜の背後に回り、桜の背中へ手刀を突き付けると、少女の身体は衝撃を受けたように大きく揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

桜の胸からジュピトルスの血液で染まった腕が生え、手には脈打つ桜の心臓が握られている。

 

 

 

 

 

 

何が起きたが、まるで理解できない。モニターを見つめている光太郎もデスガロンも、同じ空間にいるガテゾーン達も同様だ。そんな彼等の視線を受け、さらに口元を歪ませるジュピトルスは手に握った心臓を簡単に握り潰し、勢いをつけて桜の身体から腕を引き抜いた。

 

 

流血の海に沈んだ桜の身体はビクリ、ビクリと痙攣するが時間が経過するにつれて頻度が狭まり、やがて完全に動きを止まってしまう。

 

 

 

 

「あ…あぁ…」

 

 

何が起きた。

 

 

この一瞬で、何が起こったんだ?

 

 

必死に目の前で起きた事を否定しようと、考えないようとする光太郎だが、ジュピトルスは突き付ける。彼自身が認めようとしない事実を。

 

 

 

『これで彼方の言う卑怯という言葉から遠ざかりましたよ、そうです間桐光太郎!彼方の妹の死を持ってねぇッ!!!!』

 

 

 

「さ、くらちゃん…桜ちゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハ…ハハハハハハハハハハハハハッ!!そうです!これです!それが聞きたかったのです。大切な存在を目の前で失った時の絶望感。それに伴う悲痛な叫び。どの時代でも、どの世界でも、これに勝るものなどありえないのえすよッ!!」

 

 

 

 

絶望する光太郎の姿に狂喜するジュピトルスは、腕に纏わりつく少女の血液を辺りに撒き散らしながらも笑い続けていた。

 

 

 

狂っている。

 

 

そう言い表す以外にないこの男を評する言葉が見つからない隊長陣が戦慄する中で、ただ1人別の感情で動いたガテゾーンだけが手に愛銃を持ってガテゾーンに迫ろうとしていた。

 

 

 

「ま、待てガテゾーンッ!どうするつもりだ」

 

「決まってんだろ…あのサイコ野郎を始末する」

 

「お、落ち着け!あの娘はクローン!偽物だっ!!」

 

「何…?」

 

普段よりモノアイが強く光るガテゾーンをしがみ付くようにとめていたゲドリアンへ説明を求めるように視線を向けるガテゾーンに続き、ジュピトルスに圧倒されていたボスガンやマリバロンも注目している。

 

 

「俺の造った怪魔異生獣ドグマログマには放った粘液を浴びた者のクローンを生み出す能力がある。RXのマクロアイですら見分けがつかないほどの精密なクローンをな」

 

「なるほど…お前がジュピトルスに呼び出されたのはその為であったか」

 

胸を張って自身の怪魔異生獣を自慢するゲドリアンの言葉に納得するボスガン。確かに真のガロニア姫とするために捕えた桜を殺してしまっては意味がない。だからこそクローンを生み出し、宿敵である間桐光太郎を追い詰める為に利用した。

 

 

相手の心を殺す。

 

 

正にその通りであり、モニターでは放心状態にあるRXは膝を付いたまま動こうとすらしていない。

 

 

 

 

 

「おや、デスガロン。どうしたのですか?今は絶好の機会ですよ」

 

 

笑いを止めたジュピトルスは光太郎同様にその場から動きを見せないデスガロンへと尋ねるが、途中で割って入ったガテゾーンから改めて指示が与えられる。

 

 

 

「デスガロン」

 

『ガテゾーン様…』

 

「これも…作戦だ」

 

 

あのような姿、もはや見ていられない。

 

 

当初は連れて帰り改めて決着を付けるつもりでいたガテゾーンだったが、あの状態ではここで倒してやるのも敵の為かもしれない。

 

 

背部に備わった鎌を手に取り、光太郎へと迫るデスガロン。しかし、不意に自分の足が何者かに掴まれた感覚が襲う。

 

 

 

「これは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これは、あの時の―――」

 

 

モニターで様子を伺っていたマリバロンは地下空間内に次々と姿を現す異形…自分も目撃した海魔の姿を確認する。視線をジュピトルスに向けると、恐怖に引きつる顔を表紙に持つ本を片手に持ち、目を爛々と輝かせてその状況を見つめていた。

 

 

「あのままではいつ敵が立ち上がるかもわかりませんからねぇ」

 

 

口もとを吊り上げるジュピトルスは無防備の光太郎へ次々と飛び掛かる海魔の様子を愉快に見つめるが、不意に自分の胸倉を掴まれた事には流石に驚いた。

 

 

「どうされましたかな?」

 

「…今すぐあの化け物どもを引っこませろ」

 

「これは異なことをおっしゃる。敵を助けると申しますか?」

 

「とぼけたこと言ってるんじゃねぇ!あの怪物、RXだけじゃなくデスガロンにまで襲いかかっているんだぞ!!」

 

 

ガテゾーンの言う通りであり、海魔達は光太郎を突き飛ばすだけでなく、デスガロンすら敵とみなし次々と攻撃をしかけている。デスガロンも応戦するものの直ぐ様に再生、増殖を繰り返す海魔達に苦戦を強いられている。

 

 

「確かに、これは予想外ですな。ですが、彼方の造ったロボットが直ぐにでも間桐光太郎に止めを射していれば私が動くこともなかったのですよ?」

 

「っ…!」

 

「フフフ…ご理解して頂けるのなら結構。では、さらに追い込みを仕掛けるとしましょう」

 

 

言い返すことが出来ず手を離したガテゾーンに勝ち誇った笑みを浮かべたジュピトルスは本を開くと再び詠唱を開始。

 

その身体の元となった人物は海魔のみが召喚対象だったが、ジュピトルスには更なる能力が備わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っく、切りがない!」

 

海魔を鎌で切り裂いていくデスガロンは周囲を警戒しながらも光太郎へと目を向ける。立ち上がる気力すら失ってしまった光太郎を飲み込もうと海魔が次々と張り付いていくが、そこへ更なる乱入者が姿を現した。

 

 

 

突如出現した魔法陣から姿を見せたその群れは海魔ではなく、この地球で怪人に部類されるものだった。

 

全身が白く、魚のような意匠を思わせるもの。

 

深い緑色で蟲のサナギの特徴を持つもの。

 

手にかぎ爪を持ち、モグラのような頭部を持つコートを纏ったもの…

 

 

統一感はまるでないが、全てが怪人。

 

デスガロンは知る由もないが、これらは光太郎達が住む世界とは別次元よりジュピトルスによって召喚された怪人であった。

 

 

 

 

 

『ハハハハ…その者達は『仮面ライダー』と呼ばれる者達に強い恨みを持っているようですからね。ここで晴らさせてみせるのも一興でしょう』

 

 

「貴様…!」

 

 

どこまで人を追い詰めれば気が済むのだと怒りを向けたくなるデスガロンだが、ジュピトルスに届くはずもなく、残酷にも怪人達へとその指示は下されてしまった。

 

 

 

 

『さぁ、止めをさすのです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲しい…

 

 

 

 

桜ちゃんを奪った敵に対する恨みよりも

 

 

 

桜ちゃんを守れなかった自分の弱さに対する絶望よりも

 

 

 

 

桜ちゃんが死んでしまった事実が

 

 

 

どうしても悲しい

 

 

 

 

 

改造されてしまったばかりの頃、間桐の名を名乗り始めた頃に同じく養子となったあの子は、俺に人としての感情を取り戻させてくれた。

 

 

それだけじゃない。

 

 

誰かを守りたいと思わせてくれたのも、桜ちゃんがいてくれたからなんだ。

 

 

でも、もう彼女を守ることができない。

 

 

突然現れたヒトデのような化け物に全身を喰らいつかれても、見た事のない怪人達が襲ってきても、何も感じない。

 

 

ただ、悲しいという事以外。

 

 

そんな悲しみが心だけでなく、全身に伝わっていく感覚。

 

 

 

俺の意識がはっきりしていたのは、そこまでだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪人達が吹き飛び、海魔が四散する程の爆発が起きたのは、ジュピトルスが指示を出した直後だった。

 

 

 

爆発の影響でモニターにノイズが走り、その姿をはっきりと視認することができない。

 

 

 

ただ分かっているのは…

 

 

 

 

炎の中、海魔の亡骸を踏みつぶしながら現れたのは、クライシス帝国が把握しているRXの姿とは完全に異なるものだった。

 

 

 

 

 

黒と銀、そして橙色で包まれた全身はRXとはまた違う力強さが現れ、ベルトのバックルには大小色違いの歯車のような意匠を受ける。

 

 

そして赤い複眼の下には朱い涙を流し続けているようなラインが走っている。

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた敵を脅威と考えた海魔達はデスガロンの存在を忘れ、次々と飛び掛かり噛みついていくが、そのどれもが悲鳴を上げて直ぐに離れていく。その鋭い牙を突き付けた途端に全てが砕けてしまい、噛みつかれた本人の身体には傷一つ入っていない。

 

怪人達も負けじと数体で囲み殴る、蹴ると攻撃をしかけるがその者は微動だにせず、ダメージを受けた様子はまるでない。

 

いや、むしろダメージを受けているのは怪人の方であり、腕や足に走るダメージに苦しんでいる。

 

そして動き出したその者は関節を動かす度モーターが駆動するような音を立て、緑色の怪人の顔面を掴むと、片手で持ち上げていく。悶絶する怪人の悲鳴など余所に、予備動作などなく真横へと放り投げる。

 

 

壁へと衝突した怪人は、床に落下した水風船のように飛び散った。それ以外に、現しようがないからだ。

 

 

その光景を見てか、それとも本能で察したのか、あの者に恐怖を感じた海魔達は次々と後退するが、その者は重々しい足音を立てながら迫っていく。

 

 

付近にいる海魔を次々と千切り、踏みつぶし、殴り飛ばす。

 

そこには感情の一切ない。まるで敵を殲滅するための戦闘マシーンのように。

 

 

 

「あれが、RXなのか」

 

 

 

炎に照らされ、全身が露わになった光太郎の姿。だが戦いはデータにない以前に、動きが完全に機械じみたものとなっている。

 

そして…本来なら赤く輝いているはずの複眼も、今は光が灯っておらず、まるで塗り固められた血のように、赤黒い。

 

そしてついに最後の海魔が潰れ、モグラの怪人の胸に大穴を開けて爆発が起きた後、光太郎の視線がデスガロンを捉える。

 

 

「来るか…」

 

 

身構えるデスガロン。このまま黙ってやられる訳にはいかないと鎌を握る手に力を込めた時――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと無様な戦いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別人の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

振り返ったその先…いつの間にか空いた入り口から現れたその男は白いマフラーを靡かせ、緑色の複眼を光らせると、デスガロンの存在など目にも留めず、光太郎へと歩んでいった。

 

 

赤い仮面と、ベルトのバックルに左右対称の風車を持つその姿。デスガロンの持つデータと合致する名をそっと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面、ライダー」

 

 

 

 

 

光太郎は接近する男と距離が縮まると容赦なく拳を突き出す。怪人達を容易く貫く威力を持つパンチだが、男は難なく掌でパンチを受け止めてしまう。

 

 

 

 

「………………」

 

「威力は大したものだが…貴様の拳には何もない。何も込められていない―――」

 

 

 

 

 

「そんな手ぬるい攻撃で、俺が倒せるとでも思ったか?」

 

 

 

 

男の複眼を見た光太郎は急ぎ距離を取る。

 

先程まで海魔や怪人達が抱いた感情…恐怖が光太郎を襲った証拠だ。

 

 

 

「フン…どうやらまだ『戻ってこれる』ようだが…今のように力に溺れるようでは話にならん」

 

 

「一度思い知らせてやろう…そのような力、『魂』が宿っていなければただ破壊しか呼ばないことをッ!!」

 

 

 

 

 

男が腰を屈め、両手を広げた構えから大きく跳躍。光太郎に向かい落下しながら右足を胸板へと叩き付ける。

 

 

それだけでは終わらない。

 

 

光太郎の胸板を足場に、男は再度跳躍し、空中で反転。その反動を加えて威力を増した蹴りを再度光太郎へと炸裂させた。

 

 

 

 

最初の一撃でよろめいた光太郎は二度目の衝撃に今度こそ吹き飛ばされ、壁へと叩き付けられてしまう。

 

 

そして落下した直後、その姿は間桐光太郎へと戻っていた。

 

 

 

 

「―――そこの怪人」

 

「ッ!?」

 

 

この男の登場から終始圧倒されていたデスガロンは急に自分を呼ばれた事に驚くが、男の口から聞こえたのは意外な言葉だった。

 

 

「もし戦闘する意思がないのなら、この場の脱出に力を貸せ」

 

「…何を言って―――」

 

 

この男は確かに間桐光太郎を倒したが、言動からして光太郎を止める為に攻撃をしたのだろう。しかし、あのように倒せたのなら彼を連れて脱出するのかとデスガロンは考えたが、センサーで男の手足を状態を見て納得する。

 

光太郎の攻撃を受け止め、さらに光太郎を吹き飛ばした際に拳と足にダメージを負ってしまったようだ。余程、あの姿の光太郎の硬度が凄まじかったのだろう。

 

 

だが、それでも痛む様子も欠片をみせないとは、この男のプライドの高さが伺える。

 

 

デスガロンは男の条件を飲み、光太郎を抱えて何故か空いている入り口を目指そうとしたが、またもや海魔が胎動を始めた。

 

 

どうやら光太郎によって裂かれてた個体から時間をかけて再生したようであり、数はおよそ50近く。

 

 

「しぶといやつらだ…」

 

 

デスガロンは光太郎を担いだまま。男は片手、片足に大きなダメージを負っている。とうとう手詰まりかと観念するデスガロンだったが、男は一歩前へと進み。

 

 

「下がっていろ。こいつらは俺が片付ける」

 

「この数をか…」

 

「このような群がるヒトデモドキに…手も足も出す必要はない」

 

 

男の言葉を理解したのだろうか。海魔達は一斉に飛び掛かったと同時に男のベルトから凄まじき2つの風が発生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹き飛べッ!逆ダブル…タイフウゥゥゥゥゥンッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2つの風はやがて嵐を起こし、竜巻となり目の前に迫っていた海魔達を飲み込み、すり潰していった。

 

 

狭き空間で起きた嵐が去った後、そこに立っていたのは相変わらず光太郎を担ぐデスガロンと、1人の人間だった。

 

 

 

 

 

「…行くぞ。敵の増援がいつ現れるかも分からんからな」

 

 

一瞥したその目は、デスガロンではなく、気を失っている光太郎に向けられたものだった。

 

 

未だ心許さず、警戒しているような冷たい眼差し。

 

 

デスガロンはその場から離れていく男…風見志郎の後を黙って追うだけだった。

 

 




ククク…前回の後書きで書いた『彼』とは風見さんのことだったのさッ!!

でも皆様の予想通り光太郎もあの形態になったので間違いではないか…

それでは、お気軽に感想等書いて頂ければ幸いです!
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