では、40話です!
自分の目の前で桜や大事な者の命が失われていく悪夢から目を覚ました間桐光太郎は風見志郎からデスガロンによって助けられたと聞かされる。
決着を望み待ち受けるデスガロンに対し、桜を失い、戦意を喪失した自分には戦う資格はないと意気消沈する光太郎に志郎は死者を言い訳にして戦いを放棄しているに過ぎないと指摘されてしまう。
大事な家族を失い、さらに制御できない新たな力に振り回されてしまう自分はどうすればいいのかと尋ねる光太郎だったが、自力で答えを見つけなければ仮面ライダーと名乗ることが出来なくなると言い残し、その場を去ってしまった。
結局答えを見つけられないままデスガロンと対峙する光太郎に突如第三者による攻撃が降り注ぐ。
光太郎が望んだ通りの死を迎えない事に憤慨した木星の星騎士ジュピトルスがボスガンと結託し、洗脳した怪魔ロボット ネックスティッカーによる攻撃で両者を亡き者にしようと画策した。
再生能力を封じられた光太郎に止めを刺さんとネックスティッカーは最大の攻撃を放つ。
ここまでかと諦めた光太郎を身を挺して救ったのは、敵であるはずのデスガロンであった。
既に機能停止を待つばかりとなってしまったデスガロンは自分がここで朽ち果てても、自分の遺したデータがいつか宿敵であるRXを倒すという言葉に、光太郎は自分が死んでいった人々の託された願いの為に戦っていたということを思い出す。
死者を自分を縛る呪いへと変えない為に再び立ち上がった光太郎は自身の中に宿るキングストーンの意思と再び通い合わせ、自分は人としての心を捨てずに戦い抜くと宣言。
キングストーンの意思は光太郎の言葉に応えるように、新たな力ロボライダーへの変身能力を授け、その力により光太郎は見事ネックスティッカーを打倒したのであった。
デスガロンから桜が生きていると知った光太郎は、いつかデスガロンの意思を引き継いだ怪魔ロボットとは全力で戦うと誓い、桜救出の決意を新たにするのであった。
とある世界
滝壺へ流れ出る清水や草木を揺らす風の音がゆっくと奏でる自然溢れる場所。動植物が静かに過ごす中、1人だけ異彩を放つ存在が先ほどから眉間に皺をよせて目の前に広がる灰色のオーロラへと手を伸ばしていた。
神妙な顔つきで手を近づけ、あと数ミリでオーロラへと触れる目前、バチリッと音と共に青年の手はオーロラから弾かれてしまった。
「チッ…またか」
これで何度目になるか分からない。数日前から自在に潜り抜けていたオーロラを通過できなくなってしまった青年は舌打ちすると座り込み、胡坐をかいて深くため息をつくいた。
マゼンタ色のシャツの上に黒のジャケットを纏い、常に持ち歩いている二眼レフのトイカメラを首から下げている青年の名は門矢 士
別名『世界の破壊者』とも呼ばれている男であり、仲間内から目つきが悪いと言われている目を更に細め、自分がオーロラへ入れない原因を推測する最中、背後で光と共に現れた存在へと目を向ける。
銀色の甲冑の上に白いマントを纏い、金色の髪にオッドアイを持つ『始まりの男』と呼ばれる人物が光を抜け、ゆっくりとした足取りで士に近付いていく。
神聖なる佇まいを見せるその男は、士が現在滞在する『惑星』の文字通り『神』である存在なのだが、片手に持っている荷物により彼の雰囲気は台無しとなっていた。
「お前…こんな所に住んでて自炊もできないのか?」
「し、仕方ないだろッ!?ここの果実だけじゃ飽きちまったし、最近は前みたいに地球の食い物の味もわかるようになったんだからッ!」
士の指摘に狼狽えながら必死に弁明する男は片手にもった弁当の入った袋――沢芽市支店と書いている辺り彼の街への愛着が分かる――を庇うように背後へと隠すがもう今更である。
「それに舞の奴、新しく生まれた動物の世話に係っきりで飯も作ってくれないんだぜ…?」
「やれやれ…」
絶大な力を持つ存在がわざわざ異星である地球まで行った理由がこれでは、神の名折れもいい所だ。そんな気持ちをわざとらしく口にした士は男…かつて共に戦った仲間、葛葉 紘汰が以前と変わりない面白い奴だと内心では微笑んでいた。
そんな恰好だとこちらが落ち着かないという士の要望を聞き、紘汰は自身の姿を神となる以前の姿…黒髪に自分が所属していたダンスチームのトレードマーク入りのパーカーというラフな格好になると士と向かい合う形で座り込み、士が悩む理由を弁当を突きながら尋ねる。
「で、どうしたんだよ。1週間くらい前にこの星に突然来たと思ったら目的のある世界に全くいけないって…調子悪いのか?」
「違うな。あの世界が俺を拒絶している。ま、大体の理由はわかってるんだがな」
紘汰の買った食料から無断でガラス製の瓶に入った炭酸飲料を手に取ると封を開けて一気に煽る。文句を言っても効果がないと諦めている紘汰は好き放題に世界を渡り歩くこの男にも出来ないことがあるのか…と逆に珍しい事もあるものだという考えが顔に現れてしまったのか、空となった瓶の口を向けて不機嫌に口を開く。
「言っておくが俺に問題があるわけじゃないからな。他の世界には移動できるし、たまたま今回そういう事態になっているだけだからな!」
「んぐっ…ゲホッゲホッ…別に疑ってる訳じゃねぇよ!そんな怒るなって…」
「フン…それにさっき言った原因だが、どうやら俺以外に異世界に干渉する奴が現れたようだ」
「異世界に、干渉…?」
箸をおき、真面目な話になると理解した紘汰は食い入るように士の言葉に耳を傾ける。頷いた士は、自分が目的のある世界へと向かえない理由を語り始めた。
「他の世界の連中に聞いた話だと、戦いの途中で突然魔法陣が現れ、それに怪人が飲み込まれるように消えたという情報がある。恐らくだが、その怪人達の行先が、俺の向かおうとした世界だ」
「そんなのと、お前が行けないのと何の関係があるんだ?」
「次元の干渉ってのは、同じに見えても違うものが多い。俺やあのコソ泥の場合はドライバーの性能によって多世界の移動が可能だが…今回発生した際には違う方法…魔術が用いられてる」
「魔術…?晴人さんの魔法みたいなものか?」
「ま、厳密には違うがお前の頭じゃその見解が限界だな。ともかく、その魔術を使う奴のせいで、あの世界へ向かう方法が魔術による召喚以外に使えなくなっちまっているってことだ」
「え…だって、お前前にもあの世界に行ったんだろ?」
「ああ、我が儘な爺さんとの付添いの後にも何度か、やっかいな『役割』があって今からちょいと前の『過去の世界』にも飛んだんだが…その際に生まれた道を魔術…というよりも使用者の魔力で浸食されて、完全に道が絶たれてちまったんだ」
「つまり…魔術で怪人を引き寄せてる道にお前が通る道を上書きされて通れなくなっちまったってことか?」
「ま、そんなところだ」
本来ならば自由に並行世界へ行き来する力を持った士がとある世界へ干渉できない理由を聞いた紘汰は自分が何気に馬鹿にされたことにも気づかない程に今回起きた事態が大きいものだと理解する。
士の目的の世界への道が魔術を使う者によって塗りつぶされてしまった今、その『役割』が果たすことが出来ない。以前もそうであったが、彼が動く事態ということは向かう世界そのものを揺るがす事態に他ならない。
「どうにか、その魔術ってのをどうにかする方法はないのか…?」
「いや、至って簡単だ」
「は?そうなのか」
「魔術によってその世界への道が閉ざされてしまっているのなら、その魔術を使う奴をどうにかしてしまえばいい。つまり、倒してしまえば済む話だ」
「おまっ…あんな気難しい顔してそんなんで良かったのかよッ!?」
悩んで損したと嘆く紘汰だが、事態はそう上手く運ばない。こちらから干渉不可能世界で魔術を使う者を誰かが倒さなければ、士が目的地に辿りつける日は永遠に来ない。そうなれば、最悪その世界が滅びる可能性すらあるのだから。
しかし希望はある。
その世界にも自分達と同じ存在…仮面ライダーがいる。彼等がその者をどうにかしてくれるのを祈ることしか今は出来ないだろう。
「いや、そうも言っていられない」
「え、なんでだよ?」
こちらが安堵した途端に不穏な言い回しをする士は立ち上がり、未だ消えていなかったオーロラへと身体を向ける。
「あくまで予感だが…このまま放っておけばあの世界だけじゃない…それに伴ってもう一つ世界が。合わせて2つの世界が滅ぶことになる」
「なっ…!?」
「だから待つだけじゃなく…こちらでも動かなければダメなんだ」
残念な事に、士の抱いた嫌な予感は外れたことはない。もし本当にこちらが手を拱いている間に手遅れとなってしまった場合、士が向かうべき場所…そこには、かつて自分と敵対した者が。自分達を成長させるという身勝手な考えの犠牲になった者が過去を乗り切って生きる道を選んだ場所なのだ。
紘汰は腰に下げている錠前を手に取る。
果物を模ったそれは赤上 武が以前手にしたロックシードと色以外酷似しているものだった。
「どうにか…できないのか」
神となって以降自分のするべき事はこの星を守りぬくことであると紘汰も充分に理解している。だが、知ってしまったからには何もせずにはいられない。
仲間たちからは散々と言われているが誰かを優先させ過ぎるこの性格ばかりは治ることはこの先もないのだろう。
「方法は…無くは無い」
「ほ、本当かッ!?」
光明を見出したはずの士の表情は暗いまま、今出来る唯一の方法を紘汰へと説明する。
「そうか…」
「これはあくまであの世界の連中が魔術師をぶっ潰すまでの時間をより短縮させる為の方法だ。それも…確率はかなり低い」
「でも…ゼロじゃないんだろ?」
自分の提案に笑う紘汰の顔を見て、士は目の前の男の前向きさに思わず頬を緩ませてしまった。
そう、可能性はゼロではない。いや、ゼロになどさせるわけには行かないのだ。
世界の破壊者として、そんな確率など打ち壊せて見せようと今後の方針を紘汰へと伝える。
「俺は今から他の世界に行って協力を申し出る。お前は…分かっているな」
「ああ。任せておいてくれ」
士は頷くと背後に現れた別のオーロラを潜り、協力者のいる『世界』へと向かう。
さて、と意気込んだ紘汰は再度その姿を神たる者『始まりの男』へと帰る。
「まずは準備だ…あいつのステージの為にも!」
「えと…その…初めまして」
「こちらこそよろしく、ガロニアさん」
間桐家の食卓。
互いに初対面である間桐桜と瓜二つである怪魔界の支配者、クライシス皇帝の娘であるガロニアと間桐光太郎は向き合う形で座り挨拶を交わしていた。
クライシス帝国にとって憎き敵であると催眠学習装置で教育を受けていたガロニアに取っては複雑な相手ではある。しかし、目の前の青年は敵であるはずの自分に笑顔で接してくれている。
さらにいえば、自分は妹の桜が囚われた原因であるはずなのに…
だが、ガロニアにはその疑問よりも、赤く腫れてしまった光太郎の額にどうしても目が向いてしまっていっる。
こうなったのも光太郎が帰宅した直後のことだ。
メデューサから光太郎が家を飛び出してしまったと聞き、目にも見えて落ち込んで話す彼女の様子を見てすぐの捜索は難しいと判断した慎二と武は翌日に実施すると決める。
そして早朝、既に冬木の管理人である遠坂凛と柳洞寺のメディアに事情を説明…その際にも言いたい放題言われてしまったが桜の誘拐を許してしまった手前何も言えなかった慎二は敢えて身に受けた後、光太郎が普段使用しているバイクを使って行動を開始しようと玄関で靴を履いた直後。
「ただいま!」
などと能天気な朝帰りを迎えた義兄の顔を見た瞬間、厚さ15センチは超えるであろう魔道書の角を光太郎の額へと叩き付けたのだった。
鈍い音を聞き付けて玄関に向かった武はしゃがみ込み、額を押さえて震えている光太郎が痛がりながらも笑いを見せる様子に呆れながらも無事に戻ってきてくれたかと手を差し伸べる。
その様子を角に隠れて覗いていたガロニアは階段の上で、同じく出迎えに来たであろうメデューサの姿を確認する。だが、どこか複雑な表情をするメデューサは階段を下ろうかと躊躇している間に光太郎と目が合ってしまう。
普段なら互いに笑顔で言葉を交わす2人なのだが、光太郎が家を飛び出した直前の出来事が原因であろうか。どちらかともなく顔を逸らしてしまい、メデューサはそのまま階段を駆け上がってしまった。
ガロニアが聞いていたのは、言葉を交わさずとも分かり合っているという、彼女が一番目で見たいと望んでいた関係にあったはずだ。だが、今見た限りそのような関係に至っているとは思えない。
魔道書を片手に居間へと向かう慎二を呼び止めたガロニアは理由を尋ねる。
「そういう事もあるんだよ。人との関係をお前が高望みし過ぎてるだけだ」
「そう…ですのね」
「でも、あんなの一過性だよ。放っておけば嫌でもお前が望む関係を拝むことになるだろうけどね」
「…それは是非ッ!!」
(え?こいつそれまでここに居座るつもりなの?)
落ち込ませない為に放った言葉がまさか発火材になってしまうとは思いもよらない慎二は目を輝かせるガロニアの姿にもはや言葉がでないのであった。
時は戻り、ガロニアの謝罪を周囲の予想通りに笑顔で受け止めた光太郎はこの場にいる全員に自分が家を飛び出した後の詳細。そして、自分を狙って現れた星騎士に関しての説明する。
まさか桜が誘拐されたと同時に新たな敵が現れるとは…と眉間を抑える慎二に対し、光太郎は悲観することなく、思いを言葉にした。
「大丈夫だよ。あの時は色々とあったけど、今なら負けない自信がある。新しい力も使いこなせるようになったしね!
「ボロ負けしたってのになんでそう自信満々なんだよ。それにセイバー似のストーカーとの勝負よりも桜を助ける方が先決だろうが」
「ぐ…返す言葉がございません」
「まぁまぁ。まずは慎二殿の言う通り、桜殿の救出が第一になるのだが…ガロニア殿。クライシスの基地などに心当たりはあるかな?」
慎二にぐうの音も出ないほどに打ちのめされた光太郎を見て、以前の彼に戻ってくれたと一安心した武は茫然と2人のやり取りを眺めていたガロニアへと質問する。
「あ、え~と、そうですわね…」
やはりクライシスでの教えは間違えだったのだろう。偉大なクライシス皇帝に逆らう残虐非道な男…とあったのだが慎二に頭が上がらない姿を見てどうにも一致しないでいた。
だが、間桐光太郎が恐ろしい存在であるということは後に思い知ることとなるとは、この時のガロニアはまだ知らない。
「確かに地球上にはいくつか隠れ家はあるようですが…桜さんを匿うような場所はありませんわね。それに…慎二様の推測通りに人質とするのでしたら、宇宙にいるクライス要塞に…」
「…宇宙じゃ今の僕たちにはどうしようもない、か」
「はい…」
常に地球の衛星軌道上を移動しているクライス要塞の所在位置を把握するのも至難の技だ。申し訳なさそうに目を伏せてしまうガロニアへ光太郎は優しく微笑みかけた。
「大丈夫だよガロニアさん。今は浮かばなくても、きっと何か手段があるはずだ。それをみんなで考えよう」
「見つかったとしても今度は先走るなよ」
「はい…」
慎二に釘をさされて小さくなる光太郎を見て、ガロニアはつい笑ってしまった。こちらを安心させるような不思議な雰囲気を持つと思ったら家族にはとても弱い…なんて不思議な人なのだろう。
それに口調はきついが、慎二の様子が生き生きとしている様子やずっと難しい顔をしていた武が安心しきっている事に、彼等にとって光太郎がどのような存在か伺える。
きっとこの場にいないメデューサや桜に取っても、掛け替えのない人物なのだろう。
もう少し。もう少しだけこの居心地の良い場所にいたいなとガロニアが考えた矢先、突如光太郎は頭を押さえて蹲ってしまう。
「うっ…!?」
「おいッ!?どうしたんだッ!?」
「いや…大丈夫。どうやら、キングストーンが桜ちゃんの場所…ではないけど行先を告げてくれたよ」
「キングストーンが…?」
思わず駆け寄ろうとした慎二と武を手で制した光太郎は今し方体内に宿るキングストーンから告げられた場所を口にする。そこは、光太郎達が探そうとしたクライス要塞以上に厄介な場所であった。
「そんな…」
思わず手で口を押えるガロニアに取って、そこは思いもよらない場所であり、なぜそんな所に桜が連れ去られてしまったのか見当もつかない。
が、ここにいる男達はそんなことは気にせず話を進めている。
「場所が分かっているのならば…」
「ああ。本当に合ってるならね」
「それは大丈夫。彼が言ってくれるんなら、絶対に桜ちゃんはいる」
顔を見合わせる武、慎二、光太郎はその場で自分達の取るべき行動を決定した。
「乗り込もう、怪魔界に」
過去に名前のみ登場していた神様君こと紘汰登場の巻でした。
さて、彼らの取る行動は…?
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