まぁ、それはさておき、今回も楽しんでもらえると幸いです。
【公園】
それは公衆が憩い、または遊びを楽しむために公開された場所である。
お年寄りが自然や会話を楽しんでいたり、子供たちが砂場やブランコで遊んだりする場所である。
その公園の一角、ベンチの配置されている区域の一部に異様な雰囲気に支配されていた。
「……」
「……」
そこには二人の少女がいた。
ベンチに座りアイスを持っている金髪の少女と、じっとその少女を、というより少女の持っているアイスを見つめている青い髪の少女である。
(何故こうなった?)
金髪の少女レディは青い髪の少女-スバル・ナカジマを見つめて、そう思った。
■■■
レディとスバルの出会いは簡単だった。
この日レディは、実験や模擬戦から逃げミッドチルダに来ていた。
ちなみにシャッハに修理されたバイクは未だに改造中なので、徒歩である。
そこでレディはアイスの屋台でアイスを買い、公園のベンチで食べようとしたのだ。
しかし、レディはいざ食べようとすると視線を感じた。そしてそちらを見てみるとスバル・ナカジマが自分を見ていたのだ。レディを、というよりレディの持っているアイスをだが。
最初はレディも感じる視線を無視してアイスを食べようとした―――
「……っ…っ……うぅ…」
―――のだが、その度に泣きそうというか、捨てられた子犬みたいな目で見てくるのだ。さすがのレディもその視線は堪えた。
そのくせ、食べるか?と聞くと最初は目を輝かせるものの、すぐにショボンとし、
「お父さんとお姉ちゃんが知らない人から物をもらっちゃダメだって……」
とか言い出すのだ。
「あぁ、そう。じゃあ私が食うわ」
「っ……うぅ…」
再び食べようとすると、スバルもまた子犬のような表情を浮かべるのだ。
(どうしろっつーんだ)
そして思考は現在に帰還する。
このままでは、アイスが溶けると判断したレディは必死に解決策を探した。
溶ける前に容赦なく食べればいいのだが、スバルのことを考えるとできればそれは最終手段にしたい。
そして思考すること十秒。レディは解決策を思いついた。
「おい、お前名前は?」
レディはスバルの名前を知っているがあえて聞いた。
「え?わ、私は…スバル。スバル……ナカジマ……」
「ふ~ん。私はレディっつーんだ。よしスバル、これで私たちは友達だ」
「え?」
「名前を呼びあえば友達だって、男ができなさそうな女が言ってた。そして友達は知らない奴じゃない。だからなにかもらっても大丈夫だ」
これがレディの十秒の思考によって生み出された解決策だ。知らない人にもらっちゃダメなら、知ってる人になればいい。実に単純だ。普通の人には通用しないだろう。
(でもこいつ、なんかあほの子っぽいし)
レディはスバルに対して、実に失礼な印象を持っていた。
「だから、ほら食え」
「えぇ?でも…」
「……んじゃ、ほら。友達の印ってことで」
「でも……」
これでもなかなか決心がつかないスバル。そんなスバルにレディはついにキレた。
「さっさと食えオラ!!さっきまであんな目で見てたくせに、でももストもねぇんだよ!それともあれか私と友達になるのは嫌だってか!?あぁ?喧嘩売ってんのか!?買うぞゴラ!!」
「違うよ!?…そのレディに悪いかなって……」
「今更なんだよ!!さっさと食え。溶けてきてんだよ!」
「うぅ……。あ、そうだ!」
レディの怒声に唸っていたスバルが、急に思いついた!みたいな声をあげて顔を上げた。
「半分こにしよう!」
「あ?」
「その方が友達っぽいし!!」
その子供っぽい発言を聞き、レディも頭が冷えた。そして口元に苦笑が浮かんだ。
「そうだな。じゃあ、スバルはそっち側からな。私はこっちから食うから」
「うん!!」
遠慮していたからか、もの凄い勢いでアイスを胃に収めていくスバル。そんなスバルを見てレディはふと思いついた。
「スバル」
「ん、何?」
「写真撮るからもっと寄れ」
「わ、わわ!」
レディはスバルを抱き寄せ、短い腕を精一杯伸ばして二人がフレームに入るようにした。スバルは焦りながらもアイスは落とさなかった。
「じゃ、撮るぞ」
「う、うん」
シャッターを押そうとしたレディは、スバルの顔が赤くなっていることに気付いた。おそらくあまりの近さに照れているのだろう。
二人の顔はフレームに収めるためにかなり密着している。横を向くだけで唇が相手の頬に当たるだろう。
そんなスバルの顔を見て、レディのイタズラ心が騒ぎだした。
「はい、チー」
写真を撮る瞬間にレディは横を向いた。密着している状態で横を向いたのだ。そしてそうすれば当然
「―――ちゅっ♪」
こうなるだろう。シャッターが切られると同時に、レディの唇はスバルの頬に当たっていた。
「―――っ!?」
スバルは頬に手を当て、高速で後退りした。ただでさえ赤かった顔は、もはや真っ赤になっていた。
「何真っ赤になってんだよ。挨拶ってやつだろ?」
「あ、ああ、あいさつって!?」
「親愛の挨拶。何だお前、顔真っ赤だな。オー伸びる伸びる」
「む~、ふぁめふぇよ!」
「あははは。何言ってんだ、お前?」
「うぅ~」
レディにほっぺたを引っ張られて、うまくしゃべれないスバル。
そんなスバルをレディはにやにやしながら観察していた。
■■■
数十分後、ようやくスバルが落ち着き、レディやスバルの話になっていた。
「ほうほう。つまりスバルはここでお姉さんとお父さんを待ってると」
「うん!いい子で待ってなさいって」
「一人で」
「うっ……」
「友達もなく」
「うぅー」
「ひとりでできるもん!」
「うわ~~~~ん!!」
レディがからかっていたら、スバルは泣きながら駆け出してしまった。
レディはなんとかスバルに追いつき、なだめていた。
「フー!フーー!!」
「分かった悪かった。私が一緒に遊んでやるから」
一緒に遊ぶという言葉が効いたのだろう、スバルは威嚇をやめ、レディに近寄ってきた。
「……遊びって何やるの?」
「逆に何やりたい?」
「えー?私のやりたいこと……?な、なんだろう…?」
真剣に考え込むスバル。そして、帰ってきた答えは予想外だった。
■■■
スバル・ナカジマは必死に息を殺していた。
それはそうだろう。何故なら彼女を狙い、彼女を捕まえようとしている者がどこかにいるのだから。
スバルも最初はそいつの姿を確認していた。しかし、そいつは突然草むらに飛び込み、姿を消してしまった。
スバルは聴覚を集中し、どんな音も聞き逃さないようにしていた。
そして背後の草むらで物音がなった。
「―――ッ!」
スバルはその音に反応して出来るだけ気配を消し、草むらを注意深く観察するが変化はなかった。
気のせいか、とスバルは気を緩めた。緩めてしまった。
―――次の瞬間
「ケケ、ケケケケケケケケケケケケ!!」
「ひっ!!」
けたたましい笑い声が右手の草むらから聞こえてきて、スバルは気配を隠すことも忘れて声を出してしまった。
スバルはしまったと慌てて口を塞ぎ、周囲を確認する。すると今度は頭の上に何かが落ちてきた。
実際はそれはただの枝だったのだが、今までのトラップで緊張していたスバルは過剰に反応してしまい、咄嗟に上を向いてしまった。
そして生まれてしまったその隙を逃さないように、スバルの背後から伸ばされた腕がスバルの首に絡みついた。
スバルは声を出そうとしたが、首に腕が巻きついており声が出せない。そして耳元では、おそらく相手のだろう呼吸の音が聞こえてきた。
「ふふ、ふふふふふ」
耳元で笑い声が聞こえ、スバルは諦めてしまった。あぁ、もう終わりだと。そもそも首に腕を回された時点で終わっていたのだ。
今まだ自分が捕まっていないのは相手が遊んでいるから。相手が満足していないから自分はこうして未だに捕まっていないだ。
いつもなら少しでも抵抗して逃げようとしただろう。しかし、スバルは疲れてしまったのだ。
先ほどのように気を張って隠れているのも、捕まっては逃げ、再び捕まっては逃げの繰り返しにも。
そして、相手もスバルの諦めに気付いたのだろう、不満気な溜息が聞こえてきた。
そして終わりを告げる言葉がスバルの耳に入った。
「つっかまーえた♪」
■■■
スバルは怒っていた。当然先ほど行われたかくれんぼのことである。
「もう!!何であんなことするの!?」
「あんなことって~?」
「居場所が分かってるくせにわざと脅かせたり、捕まえられるくせにわざと逃がしてまた捕まえたりだよ!!」
「あ~あ~、あれな。お前の小動物チックな怯え具合が面白くてよ。ついついやっちまった。あれだ、好きな子にはつい意地悪しちゃうみたいな。愛情表現みたいなもんだ」
「そんな愛情表現嬉しくないよ!!」
まだまだ怒りは収まらない、とでも言うかのようにレディに食ってかかるスバル。
「あんなのかくれんぼじゃないよ!」
そう、スバルが提案した遊びは『かくれんぼ』だった。
最初はレディも普通にかくれんぼをしていたが、うまい具合にスバルの背後を取ってしまったときから問題が起こり始めた。
レディの悪戯心が再び活動を開始したのだ。それからはスバルにとっては災難の連続だった。
驚かされるわ、逃げさせられるわ、トラップを仕掛けられるわと、スバルはかなり悲惨な目にあった。
「おら、いつまでもむくれてんなよ。ジュース買ってやるから」
「……っ」
ピクっと反応するスバル。見るからにスバルの心は揺れまくっている。その反応を見たレディは後一歩だと思い、さらにプラスした。
「+アイス」
「し、仕方ないなぁ♪」
レディは確信した。こいつを釣るには食べ物だと。
■■■
二人でアイスを食べていると、壮年のおっさんとスバルを長髪にしたような少女が見えた。
「スバル、あれお前の親父と姉じゃねぇの?」
「え、ホント!?あ、ホントだ!お父さーん、ギン姉ぇ~~!!」
二人に走り寄っていくスバルを眺めていくると、どうやら手に持っているアイスについて聞かれているようだ。こちらを指差している。
すると、三人でレディのもとに歩いてきた。
「いや、すまんな。スバルが迷惑かけたみたいで」
「いや、こっちも楽しかったですし」
「へへへ~。友達だもんね~♪」
「こらスバル。お礼ぐらいしなさい!」
「い、痛いよ!ギン姉~!」
スバルは姉であるギンガ・ナカジマに、アイスを買ってもらったことについて怒られていた。
「じゃあ、私はこれで」
「あ、待ってよ!」
場を見計らいレディはこの場を去ろうとしたが、スバルに止められてしまった。
「写真!写真撮ろうよ!!今度はお父さんもギン姉も一緒に!!」
困惑しているゲンヤ・ナカジマとギンガに、レディはスバルと何枚か写真を撮ったことを伝えた。
スバルの頼みごとはレディにとっては渡りに船だった。最近クイントが写真写真マジうるさいのだ。ここらで一枚撮って機嫌とるのが一番だろう。
レディは通行人にカメラを渡し、写真を撮ってもらうことにした。中心にスバル、その両脇にレディとギンガ。そして後ろにゲンヤ・ナカジマという配置である。
撮れた写真を見ると、満面の笑みを浮かべているスバル、優しく微笑んでいるギンガ、ニヤニヤしているレディ、三人を眺めて笑っているゲンヤが映っていた。
■■■
~~スカリエッティ基地・クイントの部屋~~
「おら写真だ」
レディは部屋でゴロゴロしていたクイントに写真のデータを収めた端末を投げつけた。
「ほんと!?」
クイントはいままでのダレ具合が嘘のように、活発な動きで端末を手に取り、中のデータを見始めた。
「へ~。大きくなってるわねぇ。というかなんでレディも仲良く一緒に写ってるのよ」
「友達だからな」
「はぁ!?友達!?アンタが?私を殺しかけてこんな所まで連れてきたアンタが、私の最愛の娘と友達!?」
「安心しろよ。邪魔されない限り手は出さねぇよ。性的には出すけどな」
「安心できない!?」
こうしている間にもクイントは、母親らしい笑みを浮かべながら写真を眺めていた。
「あはは、本当にいい笑顔で笑ってるわ。ギンガも元気そう。ゲンヤさんもちゃんとしてくれてるのね。ん?これはスバルか。あはははは、これはいい怯え様だわ!そしてこ……れ…………が……?」
クイントの写真を眺めながら浮かんでいた笑顔が、突然凍りついた。
「レディ?これについて説明してくれるかしら?」
威圧感を感じさせる笑顔を浮かべているクイントがレディに向けた端末には、顔を赤くしているスバルと、そのスバルの頬にキスをしているレディが写っていた。
しかし、レディは全く気にしている様子が見えなかった。
「挨拶だよ、挨拶。あんただってしたことあるだろ?」
「貴女の普段の言動を考えると、ただの挨拶とは思えないんだけど!?」
「安心しろよ。さっきも言ったろ、手を出す気はねぇって」
「性的には出すんでしょ!?」
「出さねぇよ………まだ」
「最後なんて言った!?逃げて、スバル!!超逃げて!!!」
スバルの未来を思い描いて、クイントはスバルの将来を本気で心配しだした。
■■■
「ねぇ」
しばらく写真を眺めていたクイントは真剣な雰囲気でレディに話しかけた。レディもその雰囲気を感じたのだろう、姿勢を正したような気がした。
「会いにいくこ「無理」……デスヨネー」
分かっていたのだろうが、直接無理と言われどんよりと落ち込むクイント。
「私がいなくなっても家族に笑顔が戻ってくれたのは嬉しいわ。でもそこに私がいないことが悔しい。そしてこんな状況を引き起こしたあなたたちが正直憎い。でも憎みきれない。こうして貴女は出来ることはやってくれるし、私の世話もしてくれる。ルーテシアの面倒だって見てくれるんだもの。こんな中途半端な自分が嫌い」
家族の写真を見て何か思うことがあったのだろう、クイントは自分の心境を吐露していった。レディは何も言わずに目を閉じてクイントの話を聞いていた。
「ここで何もできない自分が悔しい。皆に私は生きてるって言えないことが悲しい」
言いたいことが自分でもよく分からないのだろう、クイントの言っていることは支離滅裂だった。
ただそこに込められた感情だけは感じることができた。
「ごめん……。変なこと言った。忘れて」
クイントも、自分の思いを話したことによって落ち着いたのだろう。
目を瞑っているレディに向かって謝罪をした。
「……」
しかし、レディは何も言わなかった。というより身じろぎ一つしない。
「あれ……?レディ…?あんたもしかして寝てる?まさかね~」
さすがにクイントもレディのおかしな様子に気づき、レディの肩に手をかけ揺すった
「……ん?あ、終わった?」
レディはまさかまさかの睡眠中だった。目をこすりながら、そんなことを言ってくるレディにクイントは叫んだ。
「あ、あんたは!人がシリアスに話してるのに普通寝る!?ねぇ、どうなの!?」
「あーあー!たくジジババはうるせぇな!私はシリアス受け付けませーん!!」
レディは耳を塞ぎながらドアに向かった。しかし、そのまま出て行かずに立ち止まった。
「さっきも言ったがこっちから手を出すことは無い。大人しく私たちが捕まるか、誰かが助けに来るのを待ってろ」
そしてレディは今度こそ立ち去った。
クイントはレディにかけられた言葉に呆気にとられていたが、しばらくして優しい笑みを浮かべた。
「ありがとう……」
それはレディの不器用な優しさに対するお礼の言葉だった。
ついに遭遇、ナカジマ一家。
ついでにクイントの心情を表してみました。
上手く出来てるかなぁ?もっと文才が欲しい、切実に!