13番目のナンバーズ   作:御免寝

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戦闘描写が難しいすぎる。
かなり端折っちゃった……


とまぁ、ようやく原作?入りです。

今回も楽しいんでいただけたら幸いです。


15 第162観測指定世界

 現在、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやては第162観測指定世界の空を飛んでいた。この世界で発見されたロストロギアを回収してアースラに戻り本局まで護送する任務中なのだ。

 

「私たちももー6年かー」

「中学も卒業だしね」

「卒業したら忙しくなるね~」

 

 といっても、こんな会話ができてしまうぐらいに緊張感はない。なにしろ同窓会のようなものなのだ。

 なのは、フェイト、はやての三人はここ数年同じ空の下を飛んでいない。三人が三人ともそれぞれの目標に向かって進み始めたからだ。なのはは教導官、フェイトは執務官、はやては指揮官とそれぞれの努力している。そんなわけで三人が揃うのは実に久しぶりなのだ。

 

しかし、のんびり話していられるのはここまでだった。

 

「んー?」

 

 三人での空を楽しんでいると、はやてが前方を見据えながら唸り声を上げる。なんだろう? となのはとフェイトがはやてに目を向けるとはやてが口を開く。

 

「……発掘現場見えてきたんやけど、あれ襲われてへん?」

 

 その言葉に二人はハッとなって、はやてと同様に前方へと視線を向ける。

 そこには楕円形の機械兵器らしきものが多数出ていた。

 

「こちら現場! 発掘地点を襲う機械兵器を発見。これより強制停止を開始します!!」

『了解!! って、え……!? はやてさん、シグナムさんとヴィータさんが謎の魔導師と戦闘中!!至急救援が欲しいそうです!!』

「シグナムとヴィータが!? ザフィーラはどうしたん!?」

『撃墜されました!!』

「ザフィーラが!? くっ! あの機械兵器がどんもんか分からん以上私らも援護には行けん。なのはちゃん、フェイトちゃん、最大戦力で突破するで!!」

「「了解!!」」

 

 そうして三大エースによる虐殺が始まった。

 

 

 

 

 

 それは一瞬の出来事だった。

 はやてたちとは異なる場所に存在するレリックの回収に向かっていたシャマルを抜かすヴォルケンリッターが、四方八方から押し寄せる魔力弾に気付き、それを防ぐためにザフィーラが立ち向かった。

 そして、次の瞬間には撃墜されていた。

 それはあまりにも一瞬で、あまりにもおかしすぎる出来事だった。

 何がおかしいのか?

 言わずもがな、ザフィーラが撃墜されたことだ。これはおかしい。

 確かに攻撃された際の魔力弾の数は、かなりの数だった。しかし、その魔力弾一つ一つに込められていた魔力量は、今で言う闇の書事件の際にクロノ・ハラオウンが放ったスティンガーブレイド・エクスキューションシフトの刃一つ分と同等か、それ以下だったのだ。

 それをザフィーラが防げないわけがない。スティンガーブレイド・エクスキューションシフトさえも、たったの三本しかザフィーラの障壁を抜くことができなかったのだ。それならば、数が多くとも魔力量が少ない魔弾が、闇の書事件より成長しているザフィーラの防御を抜けるわけがない。

 他にも、もう一つおかしいところがある。ザフィーラの障壁に魔力弾が当たり、障壁が抜かれるまでの時間である。

 仮に、放たれた魔力弾がザフィーラの障壁を抜けるだけの力を持っていたとしよう。しかし、この仮定においても明らかにおかしい部分が出てくる。それが、障壁が抜けるまでの時間である。

 もしも、障壁を抜けるだけの力を持っていたとしても、ザフィーラならば数秒程度ならば持ちこたえられるだろう。高町なのはのディバインバスターであっても、防御に全力を注げるのであれば耐えきることができる実力がザフィーラにはある(スターライトブレイカー? あぁ、無理無理)。

 しかし、現実ではザフィーラは一秒も持たずに墜ちた。プロテクションに至っては、一瞬すらも持たなかったように見えた。あれは『抜いた』というよりも『消した』と言ったほうが正しいように見えた。

 

(……AMF…か?)

 

 ―AMF―

 

 Anti Magilink-Fieldの略称であり、魔力結合・魔力効果発生を無効にするAAAランクのフィールド系防御魔法である。

 フィールド内では攻撃魔法はもちろん、飛行や防御、機動や移動に関する魔法も妨害される。AMFの濃度が増すほどに魔力の結合が解除されるまでの時間が短縮され、濃度が増してしまうと通信すら不可能になってしまう魔導師の天敵ともいえる魔法である。

 

 シグナムは、先ほど入ったAMFを使用する機械兵器に関する情報を照らし合わせて、そう判断する。AMFにしては効果が高すぎるうえに、魔力弾といった攻撃魔法にAMFが使用できるという話は聞いたこともないが、それ以外に心当たりもない。

 

「あーあ、最低でも二人は落としたかったんだけどな~」

 

 次の攻撃に備え、周囲を警戒しているシグナムとヴィータの耳に、そんな軽めの男の声が響く。振り返ると、そこには赤い鬼の面を被り、フード付きのコートで全身を覆った小柄な人影が存在していた。

 いかにも怪しすぎる格好で、実力も正体も知れない人物。しかし、そんなことは関係ない。先ほど、男が放った言葉の内容。それは先の奇襲を行ったのは自分だという宣言に他ならない。

 

「さっきのセリフ、テメェがザフィーラをこんなにしたっつー宣言だって判断していいってことか?」

 

 ヴィータは、体内を駆け巡る怒りを言葉に乗せ男に問いかける。その質問に対する答えは―――

 

「あぁ? それ以外の何に聞こえるんだっつーの」

 

 ―――是だった。

 

「テメェエェェェエエエエエ」

「待て、ヴィータ!!」

 

 その答えを聞くや否や、ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶり、男に襲いかかろうとするが、その寸前でシグナムに止められた。

 

「なんで止めるんだよ、シグナム!? ザフィーラがやられたんだ!! 悔しくないのかよ、ムカつかないのかよ!?」

「悔しいさ! イラつくさ! 今すぐにでも斬りかかりたいぐらいだ!!」

 

 シグナムが吠える。内に押し込められていた憤怒が炎となって周囲一帯に吹き荒れる。

 100年単位で共に戦ってきた戦友がやられたのだ。一見冷静に見えるシグナムだが、その実、その内面には自らをも燃やしつくしそうな憤怒の炎が渦巻いていたのだ。

 シグナムとて状況が状況なら、今すぐ感情の赴くままに目の前の男を屠り尽くしたい。しかし、相手の能力や実力が分からない以上、むやみやたらに手を出すわけにはいかない。今、男が空を飛ばないでいるのも、こちらを油断させるためかもしれない。下手に手を出して二人がやられたら、次に危険に晒されるのは自分たちの主なのだ。

 

「……すまねぇ…」

 

 そんなシグナムの心情を悟ったのか、ヴィータはすぐに冷静さを取り戻した。身体はホットに、頭は冷静に。戦いの基本である。

 

「来ねぇのか? ならこっちから行くぜ?」

 

 男の両手に握られる銃型のデバイスから放たれる数多の魔力弾。それを見てシグナムとヴィータは奇襲をかけてきた犯人が、この男だと確信する。

 

「ヴィータ! 間違っても受け止めようなどと思うな!!」

「分かってる!」

 

 パッと見、ただのひょろい魔力弾だが、いかなる手段を用いたのかザフィーラを墜としたのだ。その種が分かるまで触ろうとも思わない。

 

「だあぁぁぁあああ!! クソウゼェ攻撃だな!?」

「それもあるが、それ以上に狙いが厄介だ」

 

 二対一にもかかわらず、シグナムとヴィータは男を攻めきることができなかった。理由としては、攻めようとしても、それが分かっているかのように魔力弾が行く手を遮るからだ。そうなれば、魔力弾に触りたくない二人としては後退するしかない。

 そして、もう一つ理由がある。というかコレが最大の理由だ。

 男の標的には、地に伏せ気を失っているザフィーラすらも含まれているのだ。そのため二人はザフィーラから大きく離れることができない。しかも、ザフィーラに当たるであろう魔力弾を斬り捨て、または弾くと、その度にデバイスに通っている魔力が消えるのを感じる。そのため魔力の消費も激しい。騎士としては、手足を切り離し達磨にして、火炙りにした後、冷凍保存するぐらい許し難い行為だが命をやり取りをする戦場ではそんなことは言っていられない。

 

「―――チッ! ……ヴィータ! ザフィーラとレリックを持って一度下がれ!!」

 

 故にシグナムは判断した。

 このままではいずれ負ける。ならば言っては悪いが、邪魔でしかないザフィーラとレリックを持って行ってしまおうと考えたのだ。

 

「ざけんな! 私だけ尻尾巻いて逃げろってのか!?」

「体制を整えろと言っているのだ! 自分が今すべきことをよく考えろ!!」

「………チッ……シグナム! んな奴に負けんじゃねぇぞ!!」

 

 今すべきこと。それはレリックの確保とザフィーラの治療であり、それに伴う戦闘態勢の準備である。この二つの要素を排除して初めて二人は全力で戦うことができる。そう判断したヴィータは、デバイスをしまいザフィーラとレリックを抱え、その場を離脱していく。その間にも、男による攻撃がヴィータ達を襲うが、シグナムが片っ端から斬り払っていく。魔力が消えそうになるが、時折カートリッジの使用までして強引に魔力をデバイスに送り込み、一つも通さんとばかりに剣を振るう。

 

「はっ、逃げられたか」

 

 男はヴィータが離れていったのを見て、攻撃の手を緩める。

 

「残念だったな、これで一対一だ。さあ、正々堂々やり合おうか!」

「……」

 

 一対一の戦いでは負けはないと言われているベルカの騎士とタイマンを張ることになったというのに、男は顔色一つ変えることはない。

 

「まぁ、別にいいんだけどね。逃げられても……」

 

 それどころか余裕すら感じることができる。シグナムはその様子を(いぶか)しむが、その答えは男の言葉によってすぐに理解できてしまった。

 

「―――計画通りだし」

 

「―――ヴィータ!!」

 

 男が放った言葉の意味を即座に理解したシグナムの目に入ったのは、地に墜ちていくヴィータと、目の前の男と同じように真っ白い仮面とフード付きのコートを羽織っている長身の人影だった。

 

 

 

 

 

 

「テメェ……」

「……」

 

 ヴィータは、突如現れて自分を蹴り落としてくれやがった仮面の人物を睨みつけるが、仮面の人物は反応すらしない。その反応が更に苛立ちを煽る。

 しかし、ヴィータは決して感情の赴くままに行動したりはしない。自分がするべきことは分かっているし、何より冷静さを欠いて勝てる相手ではないのだ。

 先程の蹴撃、ヴィータは仮面の人物の動きを眼で追う程度しか捉えられなかった。かろうじでシールドを張ることはできたが、それもある程度は勘だった。

 それが何らかの能力によるものなのか、それとも圧倒的スピードによるものなのか、また他の要因によるものなのか全く判断が付けられない。だから迂闊に行動もできない。

 が、ヴィータに悠長としている時間はなかった。何故なら、蹴り落とされる際にザフィーラは庇うことができたが、その代わりにレリックを落としてしまったからだ。相手に何人の仲間がいるか分からない以上、さっさと回収する必要がある。

 

(……でも)

 

 この相手がそれを簡単に許してくれるとは思えない。

 

「…………なら」

 

 さっさと叩き潰してやればいいだけだ。それから回収すればいい。そうヴィータは考える。ザフィーラという文字通りお荷物がある以上、相当の苦戦を強いられるだろうが、他の手段も思いつかない。ならば、後は実行するのみ。

 

「グラーフアイゼン!!」

『ja!』

 

 ヴィータは右手に愛機を展開し、左腕のザフィーラをしっかりと抱きしめる(立場が逆じゃないかと思う)。

 

「置け」

「あぁ?」

 

 そんなヴィータを見て仮面の人物が口を開く。この仮面の人物は声から判断するにどうやら男のようである。ザフィーラを仕留めた男の声と違い、どこか重みがあった。

 

「その足手まといを置いてこい」

「……てめぇ、何を言ってやがる」

 

 目の前の男が指差す先には、ヴィータに抱えられているザフィーラの姿。それを何処か戦闘の邪魔にならない場所に置いてこいと仮面の男は言っているのだ。

 

(何が狙いだ?)

 

 ヴィータは即座に男の真意を読み取ろうとする。

 当然だ。ザフィーラを安全な場所に運ぶこと、これはヴィータにとってかなり好都合なことだ。余計なことを考えずに全力で戦うことができるのだから。

 なぜこの男は、自分の不利になるようなことを言ったのだろうか? 態々、敵が自ら優勢の立場を捨てるとは考えにくい。

 罠か? ザフィーラを避難させようとした途端に攻撃を仕掛けるつもりだろうか? 答えが出ない推測がヴィータの脳内を巡っている。

 

「ふん。余計なことは考えなくていい。私は奴とは違い、一対一、お互いに全力で戦いたいだけだ」

 

 『奴』とは、今、シグナムが足止めしている鬼の奴だろう。あいつのように卑怯な戦い方はしないと言っているのだ。だが、そんなことを言われても襲撃された手前、信用なんてできるわけがない。

 

「私は、ベルカの騎士と呼ばれる貴様と正々堂々と戦いたいだけだ」

 

 その言葉に嘘があるようには感じない。

 

(……それに今の状態で勝てるとは思えねぇ)

 

 先の手合わせで、ヴィータは目の前の男の実力をある程度理解できていた。恐らく、そう簡単に負けることはないだろうが、勝つこともできないだろうと予想している。それなら、ここは相手の言葉を信用してみてもいいだろう。騙されたとしても警戒しておけば、防御程度なら余裕で可能である。

 

「後悔すんなよ」

「するわけがない」

 

 今の貴様と闘うほうが余程後悔する、と男が告げる。

 それを聞き、ヴィータはザフィーラを岩陰に降ろす。ここならば流れ弾が向かったとしても平気であろう。ついでに怪我の様子を見てみると、そこまで酷い怪我ではないようだ。

 そしてヴィータは再び空に上がる。

 

「待たせたな」

「準備はできたか?」

「おかげさんでな」

 

 言いながらヴィータはグラーフアイゼンを構える。

 それを見て、仮面の男も構える。

 

「では、始めようか!!」

 

 ヴィータと仮面の男は、互いに戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 戦況は一方的だった。

 相手から離れながら両の手に収まっているデバイスから魔力弾を撃ち続ける鬼の男と、それを避け、斬り払いながら男を追い続けるシグナム。

 どちらも多少の怪我を負っているが、疲労度が明らかに異なっている。シグナムが肩で息をしているのに対し、仮面でよく表情は分からないが、男にはまだまだ余裕があるように見える。

 

「オラァ! 休んでる暇なんてねぇぞ!」

 

 放たれる魔弾。シグナムはそれを最小の動きで避け近づいていくが、魔力弾に触らないようにするため、どうしても余分な動きが混じってしまう。そのごく小さな隙に男は再び離れていく。しかし、当然シグナムとてやられっぱなしではない。幸いこの仮面の男の身体能力は強化していないのか、そこまで高くはない。今までの膨大な戦闘経験を活かし斬りかかっていく。

 だが、鬼の男はそれすらも避け切り、隙を見つけては再び離れていくのだ。

 

 ―――戦い慣れている。

 

 シグナムはそう考える。この男は、シグナムと同じ近距離タイプの魔導師との戦闘に慣れている。しかも恐らく、その相手はシグナム以上のスピードを誇っているだろう。他はめちゃくちゃなくせに、至近距離でのシグナムの行動一つ一つに対する動きがかなり洗練されている。

 

「レヴァンティン」

『ja』

 

シグナムは、レヴァンティンの型の一つである連結刃『シュランゲフォルム』を展開する。縦横無尽、予測不可能な連結刃による攻撃。その攻撃はシグナムが使用することにより、より複雑さを増していく。うまく抜けたと思っても、そこには当然のように罠が仕掛けてあるのだ。

 しかし、この男にはそれを持ってしても通用しない。死角からの攻撃も、張り巡らせた罠も、全てを看過してしているかのように避け、それだけ複雑に操っても、全てを直感し見切っていく。

 

 シグナムは決して非才ではない。逆に才能に愛されていると言える。

 言うまでもない剣の才能に、それを驕らない努力の才能。そして炎を思わせるような屈強な精神力。その上、シグナム達ヴォルケンリッターには彼女たちだけに許された特権がある。それは不老のプログラム体ということである。これは大きすぎるメリットである。

 才能が全くない者でも、不老であり、常に全盛期の肉体で努力し続ければ、いずれかは一流とは言えなくても、限りなく一流に近づくことができるだろう。

 シグナムのように才に溢れる者なら言うまでもない。いずれ神域に至ることだろう。

 そしてシグナムは現に、長年戦い続けその才能を磨いてきている。

 

 ―――ならば、なぜここまで一方的なのか?

 

 理由は実に単純。

 シグナム以上の才能を、天才を超える神才をこの男が持っている、それだけのことである。

 体格や声の質から考えて、この鬼の男はまだ幼いと言えるほどの年齢だろう。そんな子供がシグナムを一方的に攻め立てている。恐ろしいほどの才能である。

 

「おいおい、またそれかよ……」

 

 男は、シグナムの構えた連結刃を見て呆れ気味に呟く。それはまるでタネの割れたマジックでも見てるような、そんな飽きたような視線だった。

 そして次の瞬間、男は連結刃を撃ち落とした。

 それを理解したシグナムは、まるで信じられないこと見たかのように眼を見開いている。シグナムが決め技を放ちある程度一直線に向かっているなら撃ち落とせたのも理解できる。しかし、シグナムはいつも通り、否、いつも以上に連結刃を操作していた。それをたたき落としたのだ。そして何よりも恐ろしいのが、一発で成功させたということだ。

 

 なんという才能。シグナムは生まれて初めて才能という名の壁を感じていた。そして、そのあまりの高さに挫けそうになる。

 だが、そんなシグナムの頭に思い浮かんだのは、主はやてを始めとした多くの戦友たちだった。その中でも高町なのはとフェイト・T・ハラオウン、彼女たちは決して諦めるということをしなかった。シグナムによって斬り捨てられても、シャマルによって蒐集されても、彼女たちは再び立ち上がり自分たちに向かってきた。どんな絶望的な状況でも諦めずに立ち向かってきた。

 

(それと比べて私はなんだ?)

 

 なぜ諦めようとしているのだ? 壁がある? 越えられないなら粉砕してやればいいじゃないか。

 そも、シグナムに諦めるという選択肢は存在しない。どんなに絶望な状況でも、主に、そして主を取り巻く友人に害を及ぼすというなら、どんな手を使ってでも、そしてどんなに危険であろうとも、その状況を覆して見せよう。

 シグナムは自らにそう言い聞かせ臆した心に喝を入れた。

 

 が、次の瞬間に、その喝入れは無駄になった。

 

「え? 終わった? 早くね? あー……分かった分かった。すぐ戻る」

 

 突然、男の前面にモニタが出現し、男とこんな会話をし始めたからだ。

 

「つーわけで、なんか作戦終わったりしいから、俺帰るわ」

 

 そう言うと同時に浮かび上がる魔法陣。状況から考えて恐らく転移の魔法。そうはさすまいとシグナムは急いで阻止しようとするが、距離が離れすぎていたため、それは不可能だった。

 こちらに手を振りながら転移していく鬼の仮面をかぶった男。シグナムはそれを釈然としない気持ちで見送るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 ヴィータVS白い仮面の男

 こちらの戦いは伯仲していた。

 始めは白仮面の男の、フェイト以上であろうスピードに翻弄されたヴィータだったが、彼女はその見た目に反して、数多の戦闘を経験しその度に勝利してきた歴戦の強者である。すぐに対応し始め、今となっては反撃すらも行っている。

 

「シィッ!」

 

 白仮面の腕から出現している爪のようなエネルギー刃を、首を傾げるという最小限の動きで避け、そのままグラーフアイゼンを叩きつけようとするが、白仮面は驚異的なスピードでそれを避け再び別の角度からヴィータに攻撃を仕掛ける。しかし、ヴィータは特に焦りもせず、冷静に攻撃をデバイスで受け止める。

 ずっとこの繰り返しだ。ヴィータが白仮面のスピードに慣れてからは、互いに一撃もクリーンヒットさせていない。

 

 ―――しかし、その状況は少しずつだが傾き始めていた。

 

「でぇぇぇぇぇぇええい!!」

「―――っ!?」

 

 ヴィータの攻撃が白仮面を捉え始めたのだ。始めは時折服を掠る程度だった。しかし、攻防を重ねるごとに、その頻度と精度は増していき、先の攻防に至っては避けなければ完全に顔面を捉えられていた。

 

(なぜだ!?)

 

 頭部に向けられた一撃を避け、咄嗟に距離をとった男は内心混乱していた。仮面がなかったなら、その顔には困惑の表情が刻み込まれていたことだろう。

 しかし、ヴィータにとってみれば、この結果は当然だった。

 この男は確かに速い。おそらく速さだけならフェイト以上であろう。しかし、この男はその速さを活かしきれていないのだ。男の基本的な戦い方は、その圧倒的なスピードで一方的に、速攻で相手を叩き倒すといったものだ。それ故に攻撃方法が単純になってしまう。

 ヴィータは、その男の攻撃パターンを読み切りカウンターを合わせたのだ。時折フェイントや複雑な動きを見せることもあったが、どれも不完全で、多くの戦闘経験を誇るヴィータに通用しないのは無理のないことだった。

 

 ―――故に

 

「ぐはっ!!」

 

 ―――ヴィータの一撃が男を捉えるのは、そう時間がかかることではなかった。

 

「まだまだぁ!!」

 

 腹部にグラーフアイゼンによる強烈な一撃をカウンターで貰い、ロケットのように吹き飛んでいった男にヴィータは誘導弾による追撃を行う。

 だが、男とてやられっぱなしではなかった。こみ上げる吐き気を必死に噛み殺し、両腕のブレードを振るい誘導弾を全弾叩き落とす。

 ヴィータはその動きを冷静に分析して、次の一撃で落とせると予想した。スピードは落ちているし、体はふらついている。先程までの動きを行うのはもはや不可能だろう。

 しかし、その予想が当たりかハズレか分かることはなかった。

 

「なに? 撤退だと!? 私はまだ……! クッ……分かった……撤退する…」

 

 男の目の前にモニタが現れ、通信が終わると同時に男が逃走してしまったからだ。

 ヴィータとしても、ザフィーラとレリックという優先すべきものがある以上相手が撤退してくれるのは好都合である。

 ―――でも、決着は着けたかったかな

 そんなことを考えていたヴィータは気づいていなかった。なぜ男が撤退したのかということを。

 

 

 

 

 

 

 高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやては焦っていた。

 ただでさえザフィーラが墜とされたというのに、新しく入った通信によると、シグナムとヴィータが苦戦中らしい。

 三人の思考を占めているのは『一刻も早く援護に向かわなければならない』という思いのみ。しかし、それを妨害するAMF付きのアンノウンの群れ。

 

「邪魔……しないでってばぁぁぁああああ!!」

 

 咆哮とともに放たれたなのはの砲撃は、アンノウンの足元を穿ち、破片を周囲に撒き散らしアンノウンを蹴散らしていく。

 フェイトの魔法により呼び寄せられた本物の魔法は、AMFの影響を受けずにアンノウンを屠っていく。

 はやてに至っては、AMFガン無視で氷漬けである。あまりのアンノウンの不遇さに泣きそうである。

 しかし、いくら破壊しても、壊した先からどんどん追加され減少する気配が全く見えない。それにより、三人の心はますます焦りに支配されていく。

 

―――故に気付かなかった。どこからか銃声が鳴り響き、アンノウンの一体を穿ったことに

 

 瞬間、穿たれたアンノウンは爆裂した。

 破壊されたことによる爆発ではなく、明らかにそれ以外の要因による大爆発だった。

 

「「「―――ッ!!?」」」

 

 高熱と鉄などの破片を含んだ爆風が容赦なく三人を飲み込んでいく。

 三人とも、プロテクションは間に合ったようだが、それでもある程度以上の隙を生み出さざるを得なかった。そしてその隙を機械兵器たるアンノウンが見逃すはずがなかった。再び数を増やしながらアンノウンは、周囲を包囲しつつ、未だに煙に包まれている三人に対し突撃とビームによる攻撃を仕掛けていく。

 

「「―――カートリッジロード」」

 

 そんな言葉が聞こえたと同時に、三人を包み込んでいた爆煙から桜色の破壊光線と、巨大な金色の刃が出現しアンノウンの大半を切り刻み飲み込んでいった。AMF? 何ソレおいしいの? と言わんばかりである。

 カートリッジにより発生した熱を排出しながら煙から出てくる三人の姿は、味方から見ても畏怖を感じさせるものだった。

 

「ズルいなぁ。二人だけ好きなようにぶっ放して」

「仕方ないよ。はやてちゃんは広範囲型なんだし」

「はやてがやったらレリックも巻き込んじゃうよ」

「そうは分かっとるんやけど……」

 

 なんとなく納得いかんなぁ、とはやてがため息をつく。

 といっても隙は皆無。アンノウンを爆発が第三者の手によるものであると判断し、周囲を警戒している。

 が、いくら待っても敵の増援は現れない。ならば、シグナム達の援護に向かうのみと三人が動こうとした時に、中継から連絡が入った。

 

『こちら中継。敵勢力が撤退していきます』

「撤退? 理由は?」

『不明です』

「……」

 

 不明との説明を聞き、はやては思考に入る。

 何故敵は撤退したのか。敵はザフィーラを初めに墜とすことに成功しており、かなり有利だったはずだ。

 撤退するときはどんな時か。逃亡するとき、または―――目的を果たしたとき

 

(まさか!?)

 

 ある考えが過る。

 

「中継! レリックはどうなってるん!? 無事か!?」

『しょ、少々お待ちください! 今確認します……う、嘘!? れ、レリック確認できません!』

(やっぱりか……)

 

 はやての考えは正しかった。敵勢力は目的を―レリック入手―を果たしたから撤退したのだ。しかも、おそらくは二つともである。

 

「はぁ……とんだ同窓会もあったもんやなぁ……」

 

 はやての呟きに同調するように、なのはとフェイトも深く肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

「怖かった、怖かったよ~~~!!」

「あ、あたしもッス~~~!!」

「ああ、よく頑張ったな。姉は嬉しいぞ」

 

 スカリエッティ基地・転送ポート

 そこにはボロボロと涙を流しながらチンクに泣きついているセインとウェンディの姿があった。その足元には黒い仮面と白い仮面、そして二つのフード付きのコートがある。

 

『ハアアアアアァァァァアアアア!!』

『だ~から、んな単純飛行じゃ当たんねぇって。さっき痛い目見たんじゃねぇの?』

 

 モニタに表示されている訓練スペース。

 そこには暴れ牛のように攻撃を仕掛けているトーレと、それから逃げ続けているレディがいた。そして、レディの頭部には赤い鬼の面、あとフード付きコート。プラス、訓練スペースの端には白い仮面と、レディが来ているモノと同じコートが転がっている。

 

 ここまでくれば馬鹿でもわかる。

 第162観測指定世界に出没した、正直言って怪しすぎる仮面集団はこいつらだったのだと……

 

 では、一応ここで今回の作戦に参加した全員の役割を説明しよう。

 

 レディ:初っ端の奇襲による誰かしらの撃破。セインがレリックを回収するまでの足止め

 トーレ:レディが相手できなかった相手の足止め

 ウェンディ:三大エースの足止め

 セイン:レリック回収

 チンク:非常時に備え転送ポートで待機

 ディエチ:遠方で待機

 クアットロ:見学、たまに指揮

 

 以上のメンバーでお送りしました。

 

「ドクターももっと参加メンバー増やしてくれればいいのに」

「そうっス。いっそみんなで行けばこんなに危険なことしなくても良かったはずッス」

「仕方ないだろう。これから接触することが多々あるであろう管理局に、私たちの能力を知られるわけにはいかないのだから」

 

 戦闘特化でもないのに、かなり危険な目に遭わされたセインとウェンディをチンクが諌める。

 今回のレリック強奪作戦。セインとウェンディは結構危険な橋を渡っていた。言うまでもなくセインのレリック回収とウェンディの三大エース足止めである。

 『ディープダイバー』にてレリックを回収しようとするセインの周辺に飛んでくる魔法や破片。それだけでも帰りたくなったというのに、その上、地面の凍結である。あの時は正直生命の危機を感じた。

 ウェンディにしても、エース三人の足止めである。主にガジェットがやってくれるとはいえ、ガジェットに向かい銃弾を撃つときは、バレやしないかと内心恐々としていた。桜色の砲撃、否、崩?が隠れていた岩のすぐ真横を通り過ぎたときは死んだかと思った。というか走馬灯を見た。ちなみに内容は、トーレとレディにボコられているところばっかりで逆に現実に戻ってきた。

 

 とまぁ、そんなことで二人は愚痴っているのだ。そんな二人を慰めながら、チンクは視線を上げモニタを見る。

 

『しかも、正々堂々とか余裕こいてやられたんだろ?』

『黙れ!』

 

 なぜ作戦が終了して間もないのにレディとトーレは戦っているのか?

 それは、足止めどころか返り討ちにされかけたトーレが、訓練だと言ってレディを引きずっていったからだ。作戦終了時ということで、油断していたレディは抵抗もできずに捕まってしまった。

 

 トーレは強い。身体スペックは戦闘に特化せれており、ISも実に戦闘向きである。それでもトーレは負けた。正確には負けたわけではないが、あのまま続けていれば間違いなく敗北していた。

 

(しかし、それも仕方ない)

 

 チンクはそう考える。

 自分も含め、ナンバーズは同等以上の魔導師と戦ったことがほとんどない。ゼスト・グランガイツと戦ったのが一番最近だが、あれは一対一とは言えないだろう。

 対してヴィータは歴戦の騎士である。実力が追いつかないのも仕方ないだろう。

―――大切なのはこれからだ

 レディを狙い、より速く、より複雑に機動してきているトーレを見てそう思う。ナンバーズはまだまだ成長途中。スカリエッティが本格的に計画を実行に移すであろう数年後までに強くなればいい。

 

(まぁ……まずは……)

 

 チンクはモニタから視線を外し、未だに震えている二人の妹を見やる。

 

(二人を慰めるとしよう)

 

 チンクは姉らしい優しい笑みを浮かべ、そう思うのだった。

 

 

 




シグナムさん弱くね? とか思うかもしれませんが、それはレディの能力が分かっていなかったからです。
 分かっていれば、ここまで一方的にはやられません。

というか、ストックなくなった。書いてる暇がないです。

それでも待っていただけたら嬉しいです。
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