『
黄昏の腕輪は、黄昏事件の際に究極AI『アウラ』によって託された
「ああ、うん。初心者のお前が短期間で高レベルエリアを突破しようと思ったら仕方ない事だ……うん、仕方ないことだ」
なんて自分に言い聞かせるようにつぶやいていたのは今も覚えている。まあ、自分でもちょっとあれだなって思っていたけどさ。
……いけない、思考が脱線した。二つ目は、『ゲートハッキング』。システムによってロックがかけられたエリアへの侵入機能。これのおかげで僕らは封鎖されたエリアも探索することができた。そして三つ目は全属性の耐性付与。これには敵側からのデータドレイン(八相が使ってくるそれは、PCが受けると未帰還者になってしまう)への耐性も含まれるらしく、おかげで僕らは最後まで皆欠けることなく戦い抜くことが……いや、一人…うん、一人だけ欠けてしまったけれど。
ともかく、そんな仕様外のチートアイテムがデメリット無しで使えるなんて事はやはりなかった。まず、抜きだしたウイルスデータにPCが浸食されてしまうという危険性がある。腕輪が対処してくれているのか、だんだんと浸率度は下がっていくけど、短時間にデータドレインを使いすぎるとどんどんPCが浸食されていってしまう。完全に浸食された時何が起こるかは解らないけど、ロクなことにならないだろう事は解る。下手すると未帰還者になっていたんじゃないだろうか。うん、当時はそこまで気にしてなかったけど、今思うとちょっと背筋が凍る。正直、事件の最後の方になるとウイルスバグのバーゲンセール見たいになってたし、いつ浸食されつくしてたか解ったもんじゃない。
そして、もう一つのデメリットにして、今バルムンクが言ったエリアワード。それが『クビア』だ。黄昏事件の際に協力してくれたヘルバが言うには、The world自体に仕組まれているカウンタープログラム。それがクビア。The worldに本来存在しない程の力が現れた時に、それと同等の力を持って顕現し、その力と己が身を対消滅させることで世界のバランスを保つ存在。
アウラによって生み出された『黄昏の腕輪』。データ……つまりThe worldと言う世界の根幹を書き換えるその力は、世界が脅威とみなし、クビアを生み出すのに十分過ぎるものだった。クビアは何度も僕らに、正しくは黄昏の腕輪に襲いかかってきた。それならば僕らが戦った禍々しき波……暴走したThe worldの管理プログラム『モルガナ・モード・ゴン』の化身である、八相とやり合って欲しかった所であるのだけれど、あっちはまかりなりにも世界に本来あるものだったということなのかな?
クビアを何度か退けることには成功したものの、腕輪がある限りクビアは消えない。結局、最後の戦いで黄昏の腕輪を破壊することで、僕らはクビアを倒すことに成功した。その後、腕輪無しで最後の八相と戦うことになったのだけど、今はその話はいいだろう。
で、本題。
「あのエリアって確か……」
「ああ。あの事件の後もデータが不安定なせいで、封鎖されているエリアの一つだ」
『黄昏事件』の後、僕らが八相やクビアと戦ったエリアはデータが不安定になったため、一時的に閉鎖して調査することとなった。リョースとヘルバ……あの事件で協力してくれた、システム管理者と凄腕のハッカーが協力して事に当たっており、少しずつだが解放されて行ってるとは聞いていた。
「その作業中に中~下部の階層にてウイルスバグ発生。協力されたしとのことだ」
そう言うとバルムンクは、すぐ行けるか?と聞いてくる。
「ああ、俺たちは何時でも構わないぜ。なあ、カイト」
「もちろん。準備は万端だよ。だけど、ちょっと気になるな」
「ああ、今回のエリアのことか」
今まで、八相やクビアとの戦いの場になったエリアは不安定にはなっていたものの、ウイルスバグが発生したという報告はなかった。だが、今回は違う。それが少し、気になった。
「まあ、行ってみればわかるだろ」
「それはまあ、そうだけど……うん、そうだね」
オルカに背を押され、僕らは少し不安を抱きつつもカオスゲートに向かった。
カオスゲート。各サーバーのルートタウンに設置された転移装置。この世界では、カオスゲートに3つのエリアワードを入力することによってダンジョンマップが生成、あるいは既に作成されているイベントエリアに跳ぶことができる。当然、今回入力するワードは、
「輪廻する 煉獄の 祭壇 っと」
そうして、僕らは目的のエリアに、
「……あれ?」
跳ばなかった。
「出発しないな?」
「どうなっている?」
「これは……」
オルカやバルムンクはエリア移動しないことに不思議がっていたが、僕は別のことに驚いていた。
「ゲートハッキングのメニューが開いてる」
「何?」
僕の言葉にバルムンクが怪訝な顔をする。
「一度ゲートハッキングしたエリアは、腕輪の力で自由に移動できるはずなんだけど……」
「リョースかヘルバが再プロテクトを施したのでは?」
「うーん」
疑問はあるが、とりあえずハッキングを行い僕らは輪廻する煉獄の祭壇へと向かった。そこに何が待ち受けているかも知らずに。
開の時間軸は本編クリア~ミア復帰までの間くらいのつもり。ゲーム本編スタート何時になるかは未定。