○アバンオープニング
N「これまでの仮面ライダーディケイドは……」
ポーズを決めるジャッカーの四人。
四人「我ら、ジャッカー電撃隊!!」
士「ジャッカーの……、世界か」
カレンと話す夏海。
カレン「私だけが苦しいわけじゃないってことは、分かってるんだけど……」
夏海「……苦しくても、自分の役割を全うすることが大切なんじゃないでしょうか」
デビルロボットと戦うディケイドとジャッカーの四人。
ディケイド「こいつら四人は、みんな自分の信じた生き方ってもんを持っている」
ソーコ「クライムの野望を打ち砕くため、これから一緒に戦いましょう。……よろしく!」
○住宅街の歩道
並んで歩く士、ユウスケ、夏海。
士はカジュアルな服装にエプロン姿。
エプロンには『ヒット幼稚園』の文字が。
夏海「(士のエプロンを見て)幼稚園の先生ですか!?」
ユウスケ「士が先生? 全然キャラじゃないぞ」
士「うるさい! ……子供は、世界共通の宝なんだぞ」
思わぬ士の言葉に、キョトンと顔を見合わせるユウスケと夏海。
○ヒット幼稚園・運動場
園児たちが砂場やブランコで遊んでいる。
そこへやって来た士、ユウスケ、夏海。
士が運動場へ入ると、一斉に園児たちが振り向く。
園児たち「先生!」
園児たちが士の周りに走り寄ってくる。
しゃがんで園児たちと笑い合う士。
運動場の端っこで、ユウスケと夏海がその様子を見つめる。
夏海「士君って、子供嫌いなイメージがあったんですが……」
ユウスケ「俺も。いやあ、人は見かけによらないもんだなあ」
と、園内から女性の先生が出てくる。
二十代前半の美しい女性・松山マキだ。
マキ「さあ、みんな! おやつの時間よ~! 」
マキの言葉に、園児たちがそれぞれ喜びの声を発しながら走ってくる。
士も立ち上がって、一歩二歩と園内に向かって歩き始める。
と、そこへハンマーを持った狂気の表情の男が突如入ってきた!
男「ウワ~~~オ!!」
ハンマーを振り回しながら運動場を走る男。
マキ「危ない!!」
マキ、園児たちを庇うように引き寄せる。
士も、園児たちの盾となるべく身構える。
ブランコなどの遊戯設備を次々と破壊していく男。
ユウスケ「やめろ~!!」
ユウスケ、見かねて男の方へと走っていく。
男の頭部にはバンダナのようなものが巻かれ、その中心がピカピカと光っている。
○テンタクル基地
高層ビルの最上階、贅沢に広い間取りの中央に大きな油絵のキャンバス、そして壁際にはいくつものモニターが。
モニターの一つを見つめる老人・プロフェッサーK。
モニターには、幼稚園に乱入した男のバンダナに仕込まれたカメラを通して、園児たちが泣き叫ぶ姿が映し出されている。
プロフェッサーK「うは、うはははははは!!」
高笑いするプロフェッサーK。
○ヒット幼稚園・運動場
暴れ回る男を止めようとする士とユウスケ。
と、その上空に野球のボールのようなものがフワフワと浮いている。
ボールには目玉が二つと小さな手足が付いている。
小型ロボット・ボールボーイだ。
ボールボーイ「ニック大変だ! マキ先生の幼稚園が危ない!!」
○道路
バイクで走行中の男・ニック。
端正な顔立ちに、黒ぶち眼鏡をかけた若者だ。
ニック「(ボールボーイの無線通信をキャッチして)分かった。すぐ行く!」
ニック、胸元からワープスロットルなる装置を取り出し、頭上に構える。
ニック「ドルフィーン!」
ワープスロットルが作動し、ニックの体が異次元空間を走るスーパーマシン・ドルフィンに転送される。
ニックの体が眩い光に包まれ、赤と黄色を基調としたヒーローに変身!
○ヒット幼稚園・運動場
中空が割れてドルフィンが現れる。
夏海「あ、あれは!?」
ドルフィンの中から現れる一人のヒーロー!!
園児たち「マシンマン!!」
途端に笑顔になる園児たちとマキ。
ユウスケ「……え!?」
マシンマンと呼ばれたヒーロー、暴れ回る男にキック!
男「グアッ!」
倒れ込む男。
士「……マシンマンの、世界か」
○オープニング曲
○ヒット幼稚園・運動場
サブタイトル『第二十五話 これが世界の宝物』
狂気の男からハンマーを奪い、パンチやキックを浴びせかけるマシンマン。
教室前に避難している園児たち、口々にマシンマンを応援している。
士とユウスケ、その様子を不思議な表情で見つめる。
マシンマン、レーザーサーベルで男の胸元を『M』の字に斬りつける。
男「ギャーーーーーッ!!」
気絶して倒れる男。
マシンマン、その前に立ちはだかってスッと右手をかざす。
マシンマン「カタルシス・ウェーブ!」
マシンマンの掌から光線が発射され、男の顔面を包む。
光が止むと、それまで狂気の表情だった男の顔が優しげに変わった。
目を覚まし、ゆっくりと起き上がる男。
男「(キョロキョロと回りを見渡し)……す、すいません! すぐに自首します!!」
男、そういって千鳥足で走り去る。
マシンマン、壊れた遊戯設備の方を向き、レーザーサーベルをサッと振り下ろすと、キラキラとした光とともにブランコなどが元に戻っていく。
園児たち「わーい!」
喜ぶ園児たち。
マキも手を叩いて笑っている。
立ち尽くす士とユウスケの下に夏海も歩み寄り、三人で顔を見合わせる。
園児たち「ありがとう! マシンマン!!」
園児たちが手を振る中、マシンマンはドルフィンに乗り込んでその場を去っていく。
マキ「(感謝の笑顔で)マシンマン……」
○街外れの道路
マシンマンの変身を解き、バイクに跨るニック。
そこへ現れた士。
士「おい」
ヘルメットを被ろうとしたニック、士の声に動きを止める。
ニック「君は……、マキさんとこの先生か?」
士「ん……、まあ、そうだ。マシンマンとやらの話を聞かせてほしい」
ニック、神妙な面持ちで士を睨む。
○光写真館・撮影室
ニックを中心に、士、ユウスケ、夏海が囲うように座っている。
ユウスケ「……じゃあ、君は別の星から来たというのかい?」
ニック「そう。この星の生物をサンプリングするためにね。ホントは一週間くらいで帰る予定だったんだけど……」
ボールボーイ「(ニックの胸ポケットから飛び出して)ニックは、マキさんに一目惚れしちゃったんだよね~」
夏海「えっ!?」
ニック「余計な事を言うな!」
ニック、ボールボーイを軽く小突く。
ユウスケ「……さっきの男は?」
ニック「あれはテンタクルの仕業だ。テンタクルには子供アレルギーのプロフェッサーKって奴がいて、そいつが悪い人間を操って子供をいじめる悪さばかりするんだ」
夏海「それを、あなたが守っているというわけですね?」
ニック「ん? 僕はこの星の子供がどうなろうが知ったこっちゃないよ。僕の宝物はマキさんだけ。マキさんを守るためだけに、僕はここにいるんだ」
ユウスケと夏海、呆れた表情で顔を見合わせる。
士「……まあいい。で、最後のあの技は何だ?」
ニック「ああ。あれはカタルシス・ウェーブといって、人間の悪の心を改心させる効果があるんだ。子供に悪さする奴は、基本的にテンタクルに操られているだけなんでね」
ニック、そう言いながら澄まし顔でコーヒーをすする。
と、そこへ突如キバーラが姿を現す。
キバーラ「……ふう! やっと入って来れたわ!」
ユウスケ「お、キバーラ! 何か久しぶりだね」
キバーラ「(ユウスケの周りを飛びながら)もう! 何だかこっち側の世界って、次元の壁が厚いのよ!」
ニック「何だコイツ? おいボールボーイ、お前にソックリだな」
フワフワと浮いていたボールボーイ、キバーラに近付く。
キバーラ「な、何よアンタ! 私とキャラ被ってんじゃない!」
ボールボーイ「何言ってんだい! この世界じゃ、僕の方がオリジナルだい!」
キバーラ「……筋が通っているわね」
ニック「ハハハハハッ!」
無邪気に笑うニック。
士とユウスケは、ともに溜め息一つ。
○テンタクル基地
怒り心頭のプロフェッサーK。
プロフェッサーK「うぬぬぬ……、マシンマンを、始末しろ!!」
部下たち「ハッ!!」
敬礼する数人の部下たち、足早にその場を去る。
○ヒット幼稚園・職員室
マキとともに、ユウスケと夏海がお茶を飲みながら座っている。
窓の外では、士が園児たちと遊んでいる。
マキ「マシンマンは、さっきみたいにいつも子供たちを守ってくれるんです」
ユウスケ「いや、それは……、アイテ!」
ユウスケ、何かを言いかけたところで隣にいた夏海に足を踏まれる。
夏海「た、頼りになりますよね、ホント!」
マキ「ええ。あの方も、きっと子供が大好きな人なんだと思う
んです」
嬉しそうに話すマキに、何とも同情的な眼差しを送るユウスケと夏海。
○住宅街の歩道
並んで歩く士、ユウスケ、夏海。
ユウスケ「何だかいつもと勝手が違うなあ。微妙に悪のスケールが小さいと言うか……」
夏海「そうですね……」
士「いや。これは案外深い悪の力だぞ。子供の自由と未来を奪う。そいつは長期的に見ると物凄い規模の大犯罪だ」
ユウスケ「……今回の士は、何か変だな」
夏海「確かに変です! 熱でもあるんじゃないんですか?」
夏海、そう言いながら士の額に手を遣るがすぐに払われる。
士「よせ。……俺もよく分からんのだ。何故かこの世界に来た途端、子供が凄く大事なものに思えてきて……」
夏海「もしかして、ここが士君の世界だったりして……」
士「まさか……。しかし、この世界での俺の役割が、さっぱり分からんな」
○光写真館・リビング
ボウルでクッキー生地を泡立てている栄次郎。
その周りを、キバーラが飛び回る。
キバーラ「子供嫌いだって。プロフェッサーKってば、何だかスケール小さいわね~」
栄次郎「いや。彼はただ子供をいじめているわけじゃない。子供たちの自由と未来を奪っていってるわけだから、これはスケールが小さいように見えて実に計算高い悪事だぞ~。……プロフェッサーK、凄い男だ」
キバーラ「ふ~ん。栄ちゃん、何だかいつもと違う~」
栄次郎「う~ん。会ったことないはずなのに、何故かそのプロフェッサーKという人物には不思議なシンパシーを感じるんだよねぇ……」
栄次郎、そう言いながら泡立て器をひと振りして、トロッとしたクッキー生地をキバーラに向かって飛ばす。
キバーラ「イヤン!」
トロッとした生地まみれになるキバーラ。
○テンタクル基地
モニターを見つめるプロフェッサーK。
そこに映っているのは、園内で他の先生たちと笑い合ってるマキ。
プロフェッサーK「マシンマンの弱点はきっとこの女だ。この女を利用しろ!」
○ヒット幼稚園・出入口
マキが出てくる。
マキ「じゃ、ちょっと行ってきます!」
園外へと出ていくマキ。
○住宅街の歩道
一人歩くマキ。
と、物陰から二人の男が現れてマキに襲いかかる。
マキ「キャッ!!」
ハンカチで鼻と口を塞がれ気絶するマキ、そのまま二人の男に連れ去られる。
上空でその光景をボールボーイが見ていた。
ボールボーイ「こりゃ大変だ~」
○ニックの自室
PCでデータ分析しているニック。
と、ボールボーイから通信が入る。
ボールボーイの声「ニック、大変だ! マキさんが……!!」
ニック「何!? 分かった、すぐ行く!!」
立ち上がるニック。
○郊外の空き地
木造りの塔のようなものに後ろ手に縛られているマキ(気絶している)。
そこへ現れるマシンマン。
マシンマン「マキさん……!!」
マキに走り寄るマシンマン。
と、その行く手を体格のいい二人の男に遮られる。
一人はマシンマンの前で仁王立ちに、もう一人はマキの喉元にナイフをつきつける。
男A「武器を捨てるんだマシンマン! あの女がどうなってもいいのか~?」
男B、いやらしくナイフをマキの頬にペタペタとあてがう。
マシンマン「むう……」
マシンマン、持っていたレーザーサーベルを地面に置く。
と、後ろから士が歩み寄ってくる。
士「そんな奴らに下手に出てんじゃねーよ」
振り返るマシンマン。
マシンマン「君は……」
士「変身!」
士、ディケイドライバーにカードを差し込んで、ディケイドに変身!
そして、続けざまにファイズのカードをセット!
「カメンライド! ファ・ファ・ファ・ファイズアクセル!!」
ファイズ・アクセルモードにチェンジしたディケイド、高速の動きでマキのところまで走ると、男Bのナイフを手刀ではたき落して、マキの縄を解く。
そして、マキを抱っこして再び高速の動きでマシンマンの傍らに戻る。
男B「うわっ!」
ナイフを落とし、はたかれた腕を押さえる男B。
男A「な、何ィ~!?」
男A、一瞬で人質を奪われたことが理解できず戸惑う。
ファイズディケイド、マキを傍らに降ろしてディケイドの姿に戻る。
ディケイド「あとはお前だ」
マシンマン「……む、よし!」
マシンマン、レーザーサーベルを拾い二人の男に走り寄る。
マシンマン「マシン・サーベル!」
マシンマン、素早い動きで男A、男Bの順に『M』の字に斬りつける!
男A「グアッ!!」
男B「ウエッ!!」
倒れ込む二人の男。
サーベルを仕舞い、マキの下へと歩み寄るマシンマン。
ディケイド「いつものようにやらないのか?」
マシンマン「(マキを気遣いながら)こいつらは、テンタクルに金を貰って悪事を働いたようだ。こういう場合は、警察で正当に裁いてもらう」
ディケイド「ほう……」
マキを抱き上げるマシンマン。
マシンマン「……ありがとう。君のおかげで助かった」
ディケイド「礼には及ばん。その女がいなくなると、子供たちが悲しむだろう。それだけだ」
ディケイド、そう言ってマシンマンに背を向けて立ち去る。
マシンマン、ディケイドからマキへとゆっくり目を移す。
マシンマン「マキさん……」
○ヒット幼稚園・教室
マキ「ただいま!」
ドアを開けて、勢い良く教室へ入ってくるマキ。
教室にいた同僚女性や園児たちが、こぞって皆でマキに走り寄る。
園児たち「先生~!!」
同僚女性「マキ! 良かった、無事だったのね!!」
マキ、しゃがんで園児たちを抱きしめる。
マキ「ごめんね、心配かけて……」
教室の入口では、士とニックがにこやかに立っている。
マキ「先生ね~、またマシンマンとニックのお兄ちゃんに助けてもらっちゃった!」
マキの言葉を受け、数人の園児たちがニックに駆け寄る。
園児「お兄ちゃん、ありがとう!」
ニック「お、おう……!!」
ニック、戸惑いながらも笑顔で園児の頭をなでる。
再びマキの下へと戻る園児たち。
士「子供の笑顔ってのはいいもんだ」
ニック「そうだね。僕は、今までマキさんしか見ていなかった。マキさんさえ無事なら後はどうでもいいって思ってたけど、きっとあの子たちの笑顔がマキさんを元気付けるんだろうな。……僕は、本当に大切なものを見落としていたのかもしれないな」
士「お前は、ただ自分の大切なもののために戦ってきただけだ。だが、その結果としてこの星の子供たちを守っていた。子供たちの自由と未来を守る、それはこの星の無限の未来を守るということになる。それが真実だ」
ニック「……そうか、そうだな。これからは、僕の時間が許す限り、この星の子供たちを守っていかなくっちゃな。……君は、一体……」
士「フッ。通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
士、そう言ってニックの背中をポンと叩く。
ニック、士に促されてマキや子供たちの輪に交じる。
士、皆の様子をカメラに収める。
○光写真館・撮影室
士の撮った写真を見るユウスケと夏海。
そこには、笑い合うニックとマキの姿、そして園児たちの上にマシンマンの笑顔がオーバーラップしていた。
ユウスケ「みんな、いい笑顔だ」
夏海「ホントですね」
士が手持ちのカードを確認、ファイズとマシンマンのカードが消滅していく。
士「この世界と対応していたのはファイズの世界か。大切なものを守るために戦うタクミとニック。純粋な心が、必ず未来を救うってことだな」
と、海東が部屋に入ってくる。
海東「士……」
振り向く士。
士「海東か。ここには、お前の欲しがるお宝はないぞ」
海東「分かってるよ。『子供たち』というこの世界のお宝は、君に免じてそっとしておくことにするよ」
微笑する士。
海東「(士に近寄り)ところで士」
士「ん?」
海東「(士の耳元で)じいさんに気を付けた方がいいぞ」
士「どういうことだ?」
海東「最近、どうも様子が変だ。そもそも、僕たちと同じように平然と世界を越えているのは普通じゃない」
士、リビングの栄次郎に目を遣る。
栄次郎は、鼻歌を歌いながらクッキーを作っている。
少し硬い表情になる士。
ユウスケ「士! 次行くぞ、次!」
士「……ん、ああ」
ユウスケ、背景ロールの紐を引っ張る。
と、そこには黄色いベレー帽と赤いジャケットを纏った男の影が……。
○第二十五話・完