裏・ディケイド   作:三澤未命

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第25話『これが世界の宝物』

○アバンオープニング

N「これまでの仮面ライダーディケイドは……」

 ポーズを決めるジャッカーの四人。

四人「我ら、ジャッカー電撃隊!!」

士「ジャッカーの……、世界か」

 カレンと話す夏海。

カレン「私だけが苦しいわけじゃないってことは、分かってるんだけど……」

夏海「……苦しくても、自分の役割を全うすることが大切なんじゃないでしょうか」

 デビルロボットと戦うディケイドとジャッカーの四人。

ディケイド「こいつら四人は、みんな自分の信じた生き方ってもんを持っている」

ソーコ「クライムの野望を打ち砕くため、これから一緒に戦いましょう。……よろしく!」

 

○住宅街の歩道

 並んで歩く士、ユウスケ、夏海。

 士はカジュアルな服装にエプロン姿。

 エプロンには『ヒット幼稚園』の文字が。

夏海「(士のエプロンを見て)幼稚園の先生ですか!?」

ユウスケ「士が先生? 全然キャラじゃないぞ」

士「うるさい! ……子供は、世界共通の宝なんだぞ」

 思わぬ士の言葉に、キョトンと顔を見合わせるユウスケと夏海。

 

○ヒット幼稚園・運動場

 園児たちが砂場やブランコで遊んでいる。

 そこへやって来た士、ユウスケ、夏海。

 士が運動場へ入ると、一斉に園児たちが振り向く。

園児たち「先生!」

 園児たちが士の周りに走り寄ってくる。

 しゃがんで園児たちと笑い合う士。

 運動場の端っこで、ユウスケと夏海がその様子を見つめる。

夏海「士君って、子供嫌いなイメージがあったんですが……」

ユウスケ「俺も。いやあ、人は見かけによらないもんだなあ」

 と、園内から女性の先生が出てくる。

 二十代前半の美しい女性・松山マキだ。

マキ「さあ、みんな! おやつの時間よ~! 」

 マキの言葉に、園児たちがそれぞれ喜びの声を発しながら走ってくる。

 士も立ち上がって、一歩二歩と園内に向かって歩き始める。

 と、そこへハンマーを持った狂気の表情の男が突如入ってきた!

男「ウワ~~~オ!!」

 ハンマーを振り回しながら運動場を走る男。

マキ「危ない!!」

 マキ、園児たちを庇うように引き寄せる。

 士も、園児たちの盾となるべく身構える。

 ブランコなどの遊戯設備を次々と破壊していく男。

ユウスケ「やめろ~!!」

 ユウスケ、見かねて男の方へと走っていく。

 男の頭部にはバンダナのようなものが巻かれ、その中心がピカピカと光っている。

 

○テンタクル基地

 高層ビルの最上階、贅沢に広い間取りの中央に大きな油絵のキャンバス、そして壁際にはいくつものモニターが。

 モニターの一つを見つめる老人・プロフェッサーK。

 モニターには、幼稚園に乱入した男のバンダナに仕込まれたカメラを通して、園児たちが泣き叫ぶ姿が映し出されている。

プロフェッサーK「うは、うはははははは!!」

  高笑いするプロフェッサーK。

 

○ヒット幼稚園・運動場

 暴れ回る男を止めようとする士とユウスケ。

 と、その上空に野球のボールのようなものがフワフワと浮いている。

 ボールには目玉が二つと小さな手足が付いている。

 小型ロボット・ボールボーイだ。

ボールボーイ「ニック大変だ! マキ先生の幼稚園が危ない!!」

 

○道路

 バイクで走行中の男・ニック。

 端正な顔立ちに、黒ぶち眼鏡をかけた若者だ。

ニック「(ボールボーイの無線通信をキャッチして)分かった。すぐ行く!」

 ニック、胸元からワープスロットルなる装置を取り出し、頭上に構える。

ニック「ドルフィーン!」

 ワープスロットルが作動し、ニックの体が異次元空間を走るスーパーマシン・ドルフィンに転送される。

 ニックの体が眩い光に包まれ、赤と黄色を基調としたヒーローに変身!

 

○ヒット幼稚園・運動場

 中空が割れてドルフィンが現れる。

夏海「あ、あれは!?」

 ドルフィンの中から現れる一人のヒーロー!!

園児たち「マシンマン!!」

 途端に笑顔になる園児たちとマキ。

ユウスケ「……え!?」

 マシンマンと呼ばれたヒーロー、暴れ回る男にキック!

男「グアッ!」

 倒れ込む男。

士「……マシンマンの、世界か」

 

○オープニング曲

 

○ヒット幼稚園・運動場

 サブタイトル『第二十五話 これが世界の宝物』

 狂気の男からハンマーを奪い、パンチやキックを浴びせかけるマシンマン。

 教室前に避難している園児たち、口々にマシンマンを応援している。

 士とユウスケ、その様子を不思議な表情で見つめる。

 マシンマン、レーザーサーベルで男の胸元を『M』の字に斬りつける。

男「ギャーーーーーッ!!」

 気絶して倒れる男。

 マシンマン、その前に立ちはだかってスッと右手をかざす。

マシンマン「カタルシス・ウェーブ!」

 マシンマンの掌から光線が発射され、男の顔面を包む。

 光が止むと、それまで狂気の表情だった男の顔が優しげに変わった。

 目を覚まし、ゆっくりと起き上がる男。

男「(キョロキョロと回りを見渡し)……す、すいません! すぐに自首します!!」

 男、そういって千鳥足で走り去る。

 マシンマン、壊れた遊戯設備の方を向き、レーザーサーベルをサッと振り下ろすと、キラキラとした光とともにブランコなどが元に戻っていく。

園児たち「わーい!」

 喜ぶ園児たち。

 マキも手を叩いて笑っている。

 立ち尽くす士とユウスケの下に夏海も歩み寄り、三人で顔を見合わせる。

園児たち「ありがとう! マシンマン!!」

 園児たちが手を振る中、マシンマンはドルフィンに乗り込んでその場を去っていく。

マキ「(感謝の笑顔で)マシンマン……」

 

○街外れの道路

 マシンマンの変身を解き、バイクに跨るニック。

 そこへ現れた士。

士「おい」

 ヘルメットを被ろうとしたニック、士の声に動きを止める。

ニック「君は……、マキさんとこの先生か?」

士「ん……、まあ、そうだ。マシンマンとやらの話を聞かせてほしい」

 ニック、神妙な面持ちで士を睨む。

 

○光写真館・撮影室

 ニックを中心に、士、ユウスケ、夏海が囲うように座っている。

ユウスケ「……じゃあ、君は別の星から来たというのかい?」

ニック「そう。この星の生物をサンプリングするためにね。ホントは一週間くらいで帰る予定だったんだけど……」

ボールボーイ「(ニックの胸ポケットから飛び出して)ニックは、マキさんに一目惚れしちゃったんだよね~」

夏海「えっ!?」

ニック「余計な事を言うな!」

 ニック、ボールボーイを軽く小突く。

ユウスケ「……さっきの男は?」

ニック「あれはテンタクルの仕業だ。テンタクルには子供アレルギーのプロフェッサーKって奴がいて、そいつが悪い人間を操って子供をいじめる悪さばかりするんだ」

夏海「それを、あなたが守っているというわけですね?」

ニック「ん? 僕はこの星の子供がどうなろうが知ったこっちゃないよ。僕の宝物はマキさんだけ。マキさんを守るためだけに、僕はここにいるんだ」

 ユウスケと夏海、呆れた表情で顔を見合わせる。

士「……まあいい。で、最後のあの技は何だ?」

ニック「ああ。あれはカタルシス・ウェーブといって、人間の悪の心を改心させる効果があるんだ。子供に悪さする奴は、基本的にテンタクルに操られているだけなんでね」

 ニック、そう言いながら澄まし顔でコーヒーをすする。

 と、そこへ突如キバーラが姿を現す。

キバーラ「……ふう! やっと入って来れたわ!」

ユウスケ「お、キバーラ! 何か久しぶりだね」

キバーラ「(ユウスケの周りを飛びながら)もう! 何だかこっち側の世界って、次元の壁が厚いのよ!」

ニック「何だコイツ? おいボールボーイ、お前にソックリだな」

 フワフワと浮いていたボールボーイ、キバーラに近付く。

キバーラ「な、何よアンタ! 私とキャラ被ってんじゃない!」

ボールボーイ「何言ってんだい! この世界じゃ、僕の方がオリジナルだい!」

キバーラ「……筋が通っているわね」

ニック「ハハハハハッ!」

 無邪気に笑うニック。

 士とユウスケは、ともに溜め息一つ。

 

○テンタクル基地

 怒り心頭のプロフェッサーK。

プロフェッサーK「うぬぬぬ……、マシンマンを、始末しろ!!」

部下たち「ハッ!!」

 敬礼する数人の部下たち、足早にその場を去る。

 

○ヒット幼稚園・職員室

 マキとともに、ユウスケと夏海がお茶を飲みながら座っている。

 窓の外では、士が園児たちと遊んでいる。

マキ「マシンマンは、さっきみたいにいつも子供たちを守ってくれるんです」

ユウスケ「いや、それは……、アイテ!」

 ユウスケ、何かを言いかけたところで隣にいた夏海に足を踏まれる。

夏海「た、頼りになりますよね、ホント!」

マキ「ええ。あの方も、きっと子供が大好きな人なんだと思う

んです」

 嬉しそうに話すマキに、何とも同情的な眼差しを送るユウスケと夏海。

 

○住宅街の歩道

 並んで歩く士、ユウスケ、夏海。

ユウスケ「何だかいつもと勝手が違うなあ。微妙に悪のスケールが小さいと言うか……」

夏海「そうですね……」

士「いや。これは案外深い悪の力だぞ。子供の自由と未来を奪う。そいつは長期的に見ると物凄い規模の大犯罪だ」

ユウスケ「……今回の士は、何か変だな」

夏海「確かに変です! 熱でもあるんじゃないんですか?」

 夏海、そう言いながら士の額に手を遣るがすぐに払われる。

士「よせ。……俺もよく分からんのだ。何故かこの世界に来た途端、子供が凄く大事なものに思えてきて……」

夏海「もしかして、ここが士君の世界だったりして……」

士「まさか……。しかし、この世界での俺の役割が、さっぱり分からんな」

 

○光写真館・リビング

 ボウルでクッキー生地を泡立てている栄次郎。

 その周りを、キバーラが飛び回る。

キバーラ「子供嫌いだって。プロフェッサーKってば、何だかスケール小さいわね~」

栄次郎「いや。彼はただ子供をいじめているわけじゃない。子供たちの自由と未来を奪っていってるわけだから、これはスケールが小さいように見えて実に計算高い悪事だぞ~。……プロフェッサーK、凄い男だ」

キバーラ「ふ~ん。栄ちゃん、何だかいつもと違う~」

栄次郎「う~ん。会ったことないはずなのに、何故かそのプロフェッサーKという人物には不思議なシンパシーを感じるんだよねぇ……」

 栄次郎、そう言いながら泡立て器をひと振りして、トロッとしたクッキー生地をキバーラに向かって飛ばす。

キバーラ「イヤン!」

 トロッとした生地まみれになるキバーラ。

 

○テンタクル基地

 モニターを見つめるプロフェッサーK。

 そこに映っているのは、園内で他の先生たちと笑い合ってるマキ。

プロフェッサーK「マシンマンの弱点はきっとこの女だ。この女を利用しろ!」

 

○ヒット幼稚園・出入口

 マキが出てくる。

マキ「じゃ、ちょっと行ってきます!」

 園外へと出ていくマキ。

 

○住宅街の歩道

 一人歩くマキ。

 と、物陰から二人の男が現れてマキに襲いかかる。

マキ「キャッ!!」

 ハンカチで鼻と口を塞がれ気絶するマキ、そのまま二人の男に連れ去られる。

 上空でその光景をボールボーイが見ていた。

ボールボーイ「こりゃ大変だ~」

 

○ニックの自室

 PCでデータ分析しているニック。

 と、ボールボーイから通信が入る。

ボールボーイの声「ニック、大変だ! マキさんが……!!」

ニック「何!? 分かった、すぐ行く!!」

 立ち上がるニック。

 

○郊外の空き地

 木造りの塔のようなものに後ろ手に縛られているマキ(気絶している)。

 そこへ現れるマシンマン。

マシンマン「マキさん……!!」

 マキに走り寄るマシンマン。

 と、その行く手を体格のいい二人の男に遮られる。

 一人はマシンマンの前で仁王立ちに、もう一人はマキの喉元にナイフをつきつける。

男A「武器を捨てるんだマシンマン! あの女がどうなってもいいのか~?」

 男B、いやらしくナイフをマキの頬にペタペタとあてがう。

マシンマン「むう……」

 マシンマン、持っていたレーザーサーベルを地面に置く。

 と、後ろから士が歩み寄ってくる。

士「そんな奴らに下手に出てんじゃねーよ」

 振り返るマシンマン。

マシンマン「君は……」

士「変身!」

 士、ディケイドライバーにカードを差し込んで、ディケイドに変身!

 そして、続けざまにファイズのカードをセット!

「カメンライド! ファ・ファ・ファ・ファイズアクセル!!」

 ファイズ・アクセルモードにチェンジしたディケイド、高速の動きでマキのところまで走ると、男Bのナイフを手刀ではたき落して、マキの縄を解く。

 そして、マキを抱っこして再び高速の動きでマシンマンの傍らに戻る。

男B「うわっ!」

 ナイフを落とし、はたかれた腕を押さえる男B。

男A「な、何ィ~!?」

 男A、一瞬で人質を奪われたことが理解できず戸惑う。

 ファイズディケイド、マキを傍らに降ろしてディケイドの姿に戻る。

ディケイド「あとはお前だ」

マシンマン「……む、よし!」

 マシンマン、レーザーサーベルを拾い二人の男に走り寄る。

マシンマン「マシン・サーベル!」

 マシンマン、素早い動きで男A、男Bの順に『M』の字に斬りつける!

男A「グアッ!!」

男B「ウエッ!!」

 倒れ込む二人の男。

 サーベルを仕舞い、マキの下へと歩み寄るマシンマン。

ディケイド「いつものようにやらないのか?」

マシンマン「(マキを気遣いながら)こいつらは、テンタクルに金を貰って悪事を働いたようだ。こういう場合は、警察で正当に裁いてもらう」

ディケイド「ほう……」

 マキを抱き上げるマシンマン。

マシンマン「……ありがとう。君のおかげで助かった」

ディケイド「礼には及ばん。その女がいなくなると、子供たちが悲しむだろう。それだけだ」

 ディケイド、そう言ってマシンマンに背を向けて立ち去る。

 マシンマン、ディケイドからマキへとゆっくり目を移す。

マシンマン「マキさん……」

 

○ヒット幼稚園・教室

マキ「ただいま!」

 ドアを開けて、勢い良く教室へ入ってくるマキ。

 教室にいた同僚女性や園児たちが、こぞって皆でマキに走り寄る。

園児たち「先生~!!」

同僚女性「マキ! 良かった、無事だったのね!!」

 マキ、しゃがんで園児たちを抱きしめる。

マキ「ごめんね、心配かけて……」

 教室の入口では、士とニックがにこやかに立っている。

マキ「先生ね~、またマシンマンとニックのお兄ちゃんに助けてもらっちゃった!」

 マキの言葉を受け、数人の園児たちがニックに駆け寄る。

園児「お兄ちゃん、ありがとう!」

ニック「お、おう……!!」

 ニック、戸惑いながらも笑顔で園児の頭をなでる。

 再びマキの下へと戻る園児たち。

士「子供の笑顔ってのはいいもんだ」

ニック「そうだね。僕は、今までマキさんしか見ていなかった。マキさんさえ無事なら後はどうでもいいって思ってたけど、きっとあの子たちの笑顔がマキさんを元気付けるんだろうな。……僕は、本当に大切なものを見落としていたのかもしれないな」

士「お前は、ただ自分の大切なもののために戦ってきただけだ。だが、その結果としてこの星の子供たちを守っていた。子供たちの自由と未来を守る、それはこの星の無限の未来を守るということになる。それが真実だ」

ニック「……そうか、そうだな。これからは、僕の時間が許す限り、この星の子供たちを守っていかなくっちゃな。……君は、一体……」

士「フッ。通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

 士、そう言ってニックの背中をポンと叩く。

 ニック、士に促されてマキや子供たちの輪に交じる。

 士、皆の様子をカメラに収める。

 

○光写真館・撮影室

 士の撮った写真を見るユウスケと夏海。

 そこには、笑い合うニックとマキの姿、そして園児たちの上にマシンマンの笑顔がオーバーラップしていた。

ユウスケ「みんな、いい笑顔だ」

夏海「ホントですね」

 士が手持ちのカードを確認、ファイズとマシンマンのカードが消滅していく。

士「この世界と対応していたのはファイズの世界か。大切なものを守るために戦うタクミとニック。純粋な心が、必ず未来を救うってことだな」

 と、海東が部屋に入ってくる。

海東「士……」

 振り向く士。

士「海東か。ここには、お前の欲しがるお宝はないぞ」

海東「分かってるよ。『子供たち』というこの世界のお宝は、君に免じてそっとしておくことにするよ」

 微笑する士。

海東「(士に近寄り)ところで士」

士「ん?」

海東「(士の耳元で)じいさんに気を付けた方がいいぞ」

士「どういうことだ?」

海東「最近、どうも様子が変だ。そもそも、僕たちと同じように平然と世界を越えているのは普通じゃない」

 士、リビングの栄次郎に目を遣る。

 栄次郎は、鼻歌を歌いながらクッキーを作っている。

 少し硬い表情になる士。

ユウスケ「士! 次行くぞ、次!」

士「……ん、ああ」

 ユウスケ、背景ロールの紐を引っ張る。

 と、そこには黄色いベレー帽と赤いジャケットを纏った男の影が……。

 

○第二十五話・完

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