○アバン・オープニング
N「これまでの仮面ライダーディケイドは……」
ヒット幼稚園の運動場で、ハンマー男と戦うマシンマン。
園児たち「マシンマン!」
士「マシンマンの……世界か」
光写真館で話す栄次郎とキバーラ。
キバーラ「子供嫌いだって。プロフェッサーKってば、何だかスケールが小さいわねぇ」
栄次郎「いやいや。これはスケールが小さいように見えて、実に計算高い悪事だぞ~」
ヒット幼稚園で、無事に戻ったマキと園児達を見ながら話す士とニック。
ニック「……僕は、本当に大切なものを見落としていたのかもしれない」
士「子供たちの自由と未来を守る。それは、この星の無限の未来を守るってことになる。それが真実だ」
○街中
歩道を歩く士、ユウスケ、夏海の三人。
士は黒のスーツ、シャツ、そしてサングラスの装いで、これまた黒のビジネスバッグを携えている。
夏海「士君、何ですかソレ?」
ユウスケ「見るからに悪徳サラリーマンって感じだな」
士「何言ってる。見事な着こなしじゃないか。さすが俺」
と、三人の横にこれまた黒い車が一台急停車し、静かに助手席のウィンドウが開く。
車の中には、士と同じ格好の黒づくめの男が。
車中の男「オイ新入り、何グズグズしてやがる! 行くぞ!」
目を合わせるユウスケと夏海。
士「……なるほど。そういうことか」
士、素早く助手席に乗り込む。
士「じゃーな」
士を乗せて走り去る黒い車。
ユウスケ「……今回は別行動ってことみたいだね」
夏海「はあ、なるほど」
他世界の展開に慣れた感のある二人。
と、そこへ今度は赤と白に塗り分けたスポーツカーが来て急停車。
中から若い男性刑事・新田と、黄色いベレー帽に赤いジャケット、白いスラックスの男(?)が降りてきた。
新田「君たち! この辺で怪しい黒い車を見なかったか!?」
ユウスケ「え!? ……怪しい黒い車ってことは、やっぱりさっきのになるのかな?」
○高層ビルの前
士を乗せた黒い車が、とある高層ビルの地下駐車場へ入っていく。
○同・地下駐車場
黒い車が駐車スペースの一角に停車。
そこに近寄る、三十代くらいのサラリーマン風の男。
士と黒づくめの男が車から降りる。
サラリーマン風の男と黒づくめの男が、無言で名刺交換。
士、その名刺をチラリと覗くと『バドー』の社名が見える。
士に首を振って合図する黒づくめの男。
士、何となく理解し、車の後部トランクを開ける。
と、そこから一体の灰色のロボットが起き上って出てくる。
士「……!!」
二人の男の前に立ちはだかる灰色のロボット。
サラリーマン風の男「これですか……」
黒づくめの男「はい。任務は確実に遂行します」
○街中
ユウスケの前にベレー帽の男が詰め寄る。
ベレー帽の男「怪しい車を見たんですね?」
ユウスケ「は、はい! ……でも、もうあっちへ走っていっちゃいましたけど……って、アンタ、ロボット!?」
○高層ビル・地下駐車場
商談を続ける二人の男をよそに手持ちのカードの一枚を見つめる士。
士「ここは……、バドーの、世界?」
○街中
ベレー帽の男「私はロボット刑事。ロボット刑事Kだ」
ユウスケ「ロボット刑事……。ロボット刑事の、世界か」
○オープニング曲
○街中
サブタイトル『第二十六話 叫ぶサイレン! ライトは廻る!』
夏海「じゃあ、あなたも刑事さん……なんですね?」
K「いかにも。特にバドーの悪事に対する特務担当として動いています」
ユウスケ「バドー……。士が行ったのはそっちの方ってわけか」
と、後方から覆面パトカーがやってきて歩道脇に停車。
運転席の窓が開き、初老の刑事・柴崎が顔を出す。
柴崎「オイ! 何やっとる! 早く追わんか!!」
新田「はい! 行くぞ、K!」
K「了解」
K、赤白のスポーツカー(Kのジョーカー)の運転席へと乗り込む。
柴崎「オイ新田! そのロボットと行動するのはやめろと言っとるのが分からんのか!?」
新田「おやっさん、お言葉ですがKは優秀な刑事ですよ。俺の大事なパートナーです」
新田、そう言い放つとジョーカーの助手席に乗り込み、kに道順をナビゲートする。
柴崎「チッ……」
続いて柴崎の覆面パトカーも発車、ジョーカーの後を追う。
○とある商社のオフィス
ひしめく社員、ざわめく室内。
先程、バドー社員と契約を交わした男性社員が、その中で黙々とPCのキーボードを叩いている。
社員A「……部長! NNTとの取引がわが社に移りました!」
部長「そうか!」
社員B「こっちもです! ハードバンク社との取引も、ライバル社からウチへ……」
不思議そうにしながらも、歓喜にざわめく社員たち。
部長、バドーと契約した男性社員に目配せしてニヤリと微笑む。
バドーと契約した男性社員、、頷いてキーボードを叩く。
そのモニターでは、ネットバンキングを通じてバドーへ五千万円が振り込まれていた。
○市内のビル内部・コンピューター管理室
バドー社員、灰色のロボットに何やら指示を送る。
士は、ドアの傍で外の様子を窺っている。
灰色のロボット、大型コンピューターに何やら光を当てると、室内にある無数のモニター内の数値・記号が目まぐるしく変化する。
バドー社員「こいつにかかればハッキングなど造作もない。ほんのちょっとした情報操作で五千万だぜ。ヒヒヒ……」
士「……なるほど。そういうことか」
と、室内に突如非常ベルが鳴り響く!
バドー社員「チィ、バレたか。まあこの辺でいいだろう。オイ新入り、行くぞ!」
士、バドー社員に素直に従い、バドーロボットとともに室外へと出ていく。
○同・廊下
非常ベルが鳴り響く中、廊下を走るバドー社員、士、そしてバドーロボット。
前方からは、ビルの警備員たちが次々と走ってくる。
それをバドーロボットがバッタバッタと蹴散らしていき、バドー社員と士は悠々とビル外へと脱出。
○ビルの外
ビルから飛び出すバドー社員、士、そしてバドーロボット。
と、そこにはK、新田、そして柴崎が待ち構えていた。
新田「バドー、ここまでだ!」
バドー社員「小癪な! 行け!!」
バドー社員の命令を受け、バドーロボットが新田たちの方へ向け両腕からバルカン砲を発射!
転がり避けるK、新田、柴崎。
K「……ゴーッ!!」
K、ジャケットを脱ぎ捨て、バドーロボットの方へと走る。
格闘となるKとバドーロボット。
そのスキに逃げんとするバドー社員。
新田「逃がすか!」
新田、バドー社員に走り寄るが、これをバドー社員はピストル迎撃。
と、そこへバイクに乗ったユウスケが登場、後部座席には夏海。
ユウスケ、バイクから降りて叫ぶ。
ユウスケ「士!」
士「ユウスケか。今はまだ……」
士、そう呟きながらディケイドライバーにカードを差し込み、ディケイドに変身!
そして、劣勢になっているバドーロボットに加担してKに攻撃!
ユウスケ「つ……、士!?」
困惑するユウスケ。
ユウスケ「士、やめないか! ……ちくしょう!!」
ユウスケ、クウガに変身してディケイドをKの間に割って入る。
クウガ「士! 戦う相手を間違ってるんじゃないのか!?」
ディケイド、クウガの言葉に耳を貸さず、逆にクウガに殴りかかる。
クウガ「うっ! ……ちょっと待てって!」
その間、攻勢を取り戻したKがバドーロボットを抱え上げて天高く放り投げる。
そして、右胸からミサイルを発射!
ミサイルがバドーロボットに命中し、爆発!
爆煙に目を覆うクウガ。
と、変身を解いた士がバドー社員とともに車に乗り込んでいく。
クウガ「……士!!」
走り去るバドーの車。
変身を解いたユウスケはやるせない表情。
そこに夏海と新田が駆け寄る。
新田「君は一体……」
ユウスケ「……士。どういうつもりなんだ!?」
夏海「士君には、きっと何か考えがあるんだと思います」
その傍らでは、再びジャケットを着たKが無言でベレー帽を被り、柴崎が舌打ちを繰り返していた。
○光写真館・撮影室
ソファーに座っているユウスケ、夏海、新田、そしてK。
新田「君も……、ロボットなのか?」
ユウスケ「いえ。俺はロボットってわけじゃなく、何て言うか、変身出来るんです。超古代の秘密の力が埋め込まれた体って言うか……」
新田「よくは分からんが……。ところで、もう一人いたあのピンク色のは、君の知り合いなのか? バドーに加担していたように見えたが」
ユウスケ「それは……」
夏海「私は士君を信じます。士君が悪の手先になるなんて、絶対にありません!」
夏海、グッと唇を噛み締めて下を向く。
K「何か考えがあるということですね。もしかすると、バドーに対して探りを入れている……とか」
ユウスケ「Kさんは、ロボットなのにまるで人間のようですね」
新田「こいつは人間と同じだよ。俺たちと同じように考えて、バドーを倒すために力を尽くしてくれている。でも、おやっさんときたら……」
-----回想-----
柴崎「ロボットは所詮人間の道具だ。使いようによって良くも悪くもなる。だから信用するわけにはイカンのだ!」
-----回想おわり-----
新田「Kに限ってそんなことないって、何度言っても分かってくれないんだよなあ……」
無言のK。
そんなKを同情の眼差しで見つめるユウスケと夏海。
○公園
ベンチの傍、木陰で話すユウスケとK。
K「ユウスケさん。あなたは何のために変身するんですか?」
ユウスケ「う~ん。ま、一言で言えば、みんなの笑顔を守りたいから、かな」
K「笑顔……。非常に抽象的ですね。私はロボットなので、恐らく人間とは思考パターンが異なります。だから、バドーを倒すために日々戦いながら、柴崎のおやじさんの言うことも常に頭に引っ掛かります」
K、しゃがんで植え込みの花にそっと手を触れる。
K「私はこの花を綺麗だと思います。しかし、この花の香りは分かりません……。物事、一面だけで果たして善悪が判断出来るのでしょうか?」
ユウスケ「Kさん……」
深刻な表情になるユウスケ。
と、背後の木の陰に海東の姿が。
海東、鋭い目つきでKを見つめ続ける。
○バドー本部・作戦室
士、そして士と行動をともにしていたバドー社員が、上司と思しき男と向き合っている。
バドー上司「ABC商事から予定通りの額が振り込まれた。だが、Kによって破壊されたロボットの経費を差し引き、貴様の報酬を決めることとする!」
バドー社員「ハッ!」
敬礼するバドー社員。
士もそれに倣って敬礼。
背を向け、ツカツカと去っていくバドー上司。
士「厳しいんだな」
バドー社員「俺たちゃサラリーマンだからな。上の命令は絶対なのさ。だが、逆にクライアントの要望も絶対だ。依頼に応じたロボットをレンタルしてどんな事でもやり遂げる。報酬はタンマリいただくがな」
士「ふむ……」
と。そこへ先程のバドー上司がまた現れる。
バドー上司「オイ、次の依頼だ。宝飾品強奪って単純な作業なんで、そこの新入りにやらせてみるか」
バドー社員「ハッ! ……オイ」
士「……分かりました」
士、意味ありげな表情で深々と礼。
○街の大きな宝飾店
店の前に乗りつけるバドーの車。
バドー社員「派手にやるか、新入り!」
士「いや。俺はスマートにいく」
士、助手席から降りて、同じく後部座席から降りた同様の黒いスーツを着込んだロボットとともに、宝飾店に入る。
宝飾店スタッフ「いらっしゃいませ」
士とバドーロボット、スタッフたちに目もくれず、まっすぐ店の中心にあるメインウィンドゥの方へ。
周りのスタッフたち、訝しげな表情で囁き合う。
メインウィンドゥの前に立ちはだかった士、そしてバドーロボット。
そこへ、恐る恐る近付く男性店員。
男性店員「……何かお探しで?」
士「非常ベルを鳴らせ」
男性店員「は?」
士「非常ベルを鳴らせと言っている」
後ろからバドー社員が小さく声をかける。
バドー社員「オイ、打合せと違うぞ!?」
士「うるさい」
バドー社員「何だと!? 貴様……、オイやれ!」
バドー社員の指示を受けて、大きなモーションからウィンドゥをバーン!と叩き割るバドーロボット。
スタッフたち「キャーーーーーッ!!」
店内に悲鳴と非常ベルが蔓延。
と、同時に入口からユウスケ、K、新田、柴崎が駆け込んでくる。
ユウスケ「士!」
士「遅いぞユウスケ」
士、そう言いながらディケイドライバーにカードを差し込み、ディケイドに変身!
ユウスケも同時にクウガに変身!
バドー社員「うぬ! 貴様は一体……!?」
ディケイド、暴れ回るバドーロボットの手を取って動きを止める。
バドー社員「何をする!?」
ディケイド、バドーロボットを翻弄し、その体をクウガの方へ放り投げる。
クウガ、タイミングを合わせて、バドーロボットにパンチ一閃!
ジリジリと音を立てショートするバドーロボット、その場に崩れ落ちる。
バドー社員「貴様! どういうつもりだ!?」
ディケイド「片方の事情だけで判断するのは良くないからな。俺は今回、バドーのやり方を間近で見ていた」
クウガ「それって……」
ディケイド「ユウスケ、こいつらも立派に仕事してるぞ?」
クウガ「何を言ってるんだ!? 悪事の手助けじゃないか!」
ディケイド「そうだな。それでも業務を全うしていることには変わりない。……オイ、お前はどうなんだ?」
そう言ってKを見遣るディケイド。
K「私は……、私はロボット刑事! 市民を守るために働く、刑事だ!!」
バドー社員「何がロボット刑事だ! ロボットは人間様の言う通りに動いていれば良いのだ!」
ディケイド「違うな。こいつはロボットだが自分の意思を持っている。そしてその意思に基づいて、自分の信じる道を進んでいるんだ。問題はそれがこの世界にとって正しいかどうかだが?」
クウガ「……市民を守る刑事の役割、それは絶対正しいとも!! それが真実だ!」
バドー社員「ぬ~、生意気なあ。だが、こんな事もあろうかと! 出でよ兵士たち!!」
バドー社員の掛け声とともに、入口の方から数体のバドーロボットが現れた!
ディケイド「用意のいいこった。……外に出るぞ、ユウスケ!」
クウガ「よし!」
バドーロボットたちの間をすり抜け、宝飾店の外へと走り出るディケイドとクウガ。
つられて外に出るバドーロボットたち。
そして、Kもそれを追う。
○宝飾店の外・広い道路
数体のバドーロボットと格闘状態となるディケイド、クウガ、K。
人数に分があるバドーロボット勢が若干優勢な中、ディエンドが割って入る!
ディケイド「……海東!」
ディエンド「士。ここのお宝は素晴らしい。まずはしっかりと守らなくっちゃな」
ディエンド、そう言ってKを庇いつつ、バドーロボットに対してディエンドライバーで銃撃!
クウガはドラゴンフォームに超変身し、ドラゴンロッドで数体のバドーロボットを一網打尽!
Kも負けじと、右胸から連射弾を発射して数体のバドーロボットを粉砕!
ディケイド「止めだ」
そう言いながら、ディケイドはブレイドのカードをディケイドライバーにセットする。
「カメンライド! ブ・ブ・ブ・ブレイド!!」
ブレイドに変化したディケイド、ブレイラウザーで残りのバドーロボットを一撃粉砕!
バドー社員「クソッ! 覚えていろ!!」
裏道から逃げ去っていくバドー社員。
一方、爆煙の中、ディケイド、クウガ、ディエンド、Kの四人が歩み寄る。
○街の沿道
柴崎の覆面パトカー、Kのジョーカーが止まる横で、Kと新田、そして柴崎が向かい合う。
柴崎「俺はロボットは認めん」
柴崎の言葉に表情が曇る新田。
柴崎「……だが、刑事としてのお前は認めてやる、Kよ」
新田「おやっさん!」
にこやかに笑う新田、Kの肩をポンと叩く。
柴崎「俺と組むからにゃ、お前をロボットとしては扱わんぞ?」
K「承知しました。……ただ、晩酌はご一緒出来ませんが」
柴崎「ハッ! こいつめ」
笑い合う三人。
そして、その光景をカメラに収める士。
その後ろでは、ユウスケと海東も笑みを浮かべている。
ユウスケ「じゃあ、俺たち行きます」
新田「おう、ありがとうよ!」
手を挙げる新田。
そして、士たちは背を向けて去っていく。
柴崎「何モンだったんだ? アイツら」
K「通りすがりの仮面ライダー、だそうです。……覚えておきます」
K、ベレーのつばをキュッとつまんで姿勢を正す……。
○光写真館・撮影室
ソファーに座る士、ユウスケ、海東、夏海の四人。
士の持つKのカードとブレイドのカードの絵柄がスゥーッと消えていく。
士「信じる道を進み、高みを目指して働いていくKとカズマか。……これでブレイドの世界も救われた」
栄次郎「さあさあ、今日は苺大福だよ~」
栄次郎、そう言ってテーブルに苺大福の乗った皿を次々と置いていく。
夏海「わあ、おいしそう!」
早速、苺大福を頬張る夏海とユウスケ。
士「海東、お宝はいいのか?」
海東「(爪楊枝に刺した苺大福を見つめながら)この世界のお宝はデカすぎる。あのKってロボットはもっと調べてみたいが、その前に……」
と、リビングへと歩いていった栄次郎に目を移す海東。
士も呼応して栄次郎を見遣る。
夏海「よし! じゃあ次行きましょう!」
夏海、立ち上がって背景ロールを引く。
するとそこには、またしてもロボットのシルエットが。
しかし、それは二体あり、それぞれ赤と青の輝きに包まれていた……。
○第二十六話 完