気まぐれ短編集   作:Boukun0214

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死神の眼:番外

悪夢が始まったのは、まだ幼い頃だった。

 

私は、望まれて産まれた子供ではなかった。

 

いつも、虐待を受けていた。

一度殴られるたびに、心のどこかが死んでいった。

一度蹴られるたびに、痛みを感じなくなっていった。

 

友達はいなかった。

 

「顔にアザがある。こわーい。」

「なんか、いつもボーッとしてるよねぇー。」

 

いつも傷だらけの私が気持ち悪かったのだろう。

そして、やがて虐められるようになっていた。

 

特に辛くはなかった。

ただ、家でされていることを、外でもされて、またか。

とだけ思った。

 

 

変化が起きたのは、5歳の頃。

 

いつものように、泥酔して眠っている母親の横で、父親から殴られていた。

 

その時だった。

 

私の目の前に、"それ"が現れた。

 

"18381"と現れたそれを、私はなんとなしに、手を伸ばして、握りつぶした。

 

今までしなかった、最初で最後の私の反抗。

 

そして、その瞬間、父親は急に倒れた。

 

母親の頭にも、同じようなものがあった。

それも、握りつぶした。

母親の酒臭い寝息が止まった。

 

 

両親は死んだ。

特になにも思わなかった。

それどころか、清々しかった。

 

命はシャボン玉のように軽く、死体は鉛のように重たく、冷たかった。

 

両親が死んだから、私は施設に引き取られた。

 

そこでも私は、最低限の関係は築かなかった。

 

そして、いじめは相変わらずで、私の心を殺し続けた。

 

私は、毎日のように生き物を見つけては、自分に起こった不思議な現象について調べた。

 

生き物を一度殺すごとに、心が凍てつくのを感じた。

 

何日か過ごし、"それ"は、生き物の残りの寿命を表すものだと、理解した。

 

 

 

 

そして、時が過ぎ、中学生になったある日。

 

私はあることに気がついた。

 

 

ある時期から、身体的な成長が、全く起きないのだ。

 

髪や爪などは伸びるが、身長も、体重も。

全く変化が起きない。

 

それどころか、食事が必要のない身体になっていた。

なにも食べなくても空腹感を感じない。

 

 

ーー怖くなった。

 

自分に何が起きたのだろう。

これからどうなるのだろう。

 

そして、こんな思考になった。

 

今の私は、これからの不安以外なにもない。

ならば、

 

ーー"これから"を、無くしてしまえばいい。

 

 

 

私は、夜中に施設を抜け出し、ロープをもって人通りの少ない、路地裏へと向かった。

 

そして、首を括った。

苦しいとか、色々聞いてたけど、特にそういうことはなく、首への圧迫感だけだった。

 

 

 

 

 

・・・どのくらいの時間がたったんだろうか?

いまだに私は、死ねなかった。

息を吸っていないのに、息苦しさもなかった。

 

 

 

「なん、で・・・?」

 

私は、絶望した。

 

死ねないことに、絶望した。

 

"人間"には、必ずある終着点。

 

そして、悟った。

【私は死ねない】

 

それは、今まで受けたどんな暴力よりも、今まで受けたどんな苛めよりも、私の心に、深く傷をつけた。

 

死ねないと言うことは、いつか、"同じ存在"と出会わない限り、永久に孤独になってしまう。

逃れるすべはない。

"同じ存在"を見つけるまでは。

 

 

 

その日、私は、物心ついてから初めて、泣いた。

運命を嘆いた。

神と言う存在を恨んだ。

普通の人間を羨んだ。

 

嗚咽と共に、たくさんの感情を吐き出した。

 

 

 

 

 

そして、時は過ぎ、私は高校生になった。

 

そのころ、私は里親にとられて、その人達に養われて暮らしていた。

 

あるとき、私は、彼らの仕事の都合で、引っ越すことになり、転校をした。

 

 

新しいクラス。ここでも、目立たないまま、変化のない日々を送るのだと思っていた。

 

でも、

 

 

 

私は、見つけた。

 

私と同じで、寿命がない少年を。

 

私と同じ、"死神"を。

 

 

私は、嬉しさと興奮の入り交じった感情を押さえつけ、自己紹介をした。

 

親から、苦痛以外に貰った、唯一のもの。

その、"私の名前"を、口にした。

 

 

 

「はじめまして。私の名前は、茜です。」

 

 

アカネの花言葉は、【傷】。

残酷なくらい、私にぴったりだ。





死神の眼


end.
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