朝が訪れた。
不思議なことに、この日、数日間続いた黒い雲は晴れた。
そして、様々な場所で同時に起きた地震の被害は大きく、過去にないほどの死傷者を出した。
でも、それだけだった。
あれだけ人々が大騒ぎした世界滅亡説も、現実のものとなったわけではなかった。
多くの死傷者が出たが、それは全人口の5%にも満たない。
ただ、このほんの数日間で、人類が多大な損害を受けたことは確かであった。
多くの都市は破壊され、地震があった地帯ではそれはより壊滅的なことになっていた。
失ったものを嘆く者もいた。
久しぶりの青空に喜ぶものもいた。
それでも、数日ぶりの空に人類が希望を取り戻すのは早く、すぐに世界中での復興作業が始まった。
まずは、地域的にそこの人々が出来ること。
食料の問題などはあったが、動ける人達は瓦礫の撤去や、取り残された人たちの救出をした。
数週間が経つと、やがて地域同士が連携をして復興作業をするようになった。
そして、少しずつ、他の場所を助けることのできる余裕をもった地域が出てきて、支援が成されるようになった。
今までは政治的な面も含んでいたかもしれない。
ただ、今回は、民間の善意だけであった。
ーこの日、人類は、協力を知った。ー
いつの間にか忘れてしまっていたことを、この大混乱を通して、皮肉にも人類は痛感することになった。
この風潮もいつまで続くかはわからない。
でも、少なくとも今だけは、人は、人間ではなく人々に成ることが出来た。
そして、あの、二人の物語が始まった"あそこ"は、もう、なくなってしまった。
あの日、周囲の林は崩れ、丘への道は塞がれた。
街を見渡せる場所が街から見えるとは限らない。
もう、あそこには誰も人は入っていけないから。
きっと、彼らが見つかることもないだろう。
ベンチで適当に時間を潰す少年と、そんな彼に遠慮をしながらも甘えようとした少女の、そんな、二人だけの場所。
彼らは行方不明として処理がされたが、二人の世界が終わった日、そんなのは何人もいるので、別段気に留めたのはほんの一部の人々だけであった。
現実とは、そんなものだ。
お互いの名前と境遇しか知らない関係。
好みも、趣味も、この二人は、お互いにほとんどなにも知らない。
強いて言えば、好きなアイスぐらいだろうか。
キスすらしてない、友達と言うには近すぎるような、恋人というには互いを知らなすぎる、そんな、少年と少女のお話。
出会ってから一週間もまだ過ぎていないこの関係には、きっと名前はない。
彼らの七日未満の関係は、こうして、終わりを告げた。