キノンの没作品シリーズ   作:いつのせキノン

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「IS -engineer-」
めっちゃ頭の良い男子(楯無・刀奈と幼馴染)がIS動かしちゃって学園に入るお話。環境に戸惑いながらも楯無と支えあってISの選手よりはIS整備関連のエンジニアを目指そうという純愛的な奴にしようと思った。
(ツイッター解説より)



IS -engineer-
engineer1


 織斑一夏の存在により、世界常識に綻びが出始めたのは明らかだった。女性しか動かせないISを、男性である織斑一夏が動かしたなど前代未聞。開発者である篠ノ之束でさえも予期しなかった事態である。

 

「はぁ、IS適性試験ですか……」

「そうだ。取り敢えずここの体育館が市内の会場になるから試験の手伝いを頼む」

 

 男性はISと無関係。今までであればそうだったのだが、如何せん織斑一夏というイレギュラーが現れてからそれは一変。女性のみにしか参加資格の無かったIS適性検査に、中学校三年生男児も参加させられるようになったのだ。目的は単純にまだ動かせる男がいないかどうかというものである。望みがあるわけではなく、宝くじを引くつもりでやるような運試しと同じだ。いればラッキー、仮にいたとしたら、モルモットは確定だろう。一人目の男子、織斑一夏さえいれば、二人目がいたところで大した価値はない。何故一部の男にしか動かせないかさえ見れれば良いが故、二人目はただの被験者になる。公にしなければいくらでも隠せるから、だからである。

 

「取り敢えず、これが大まかな資料だ。当日は会場設営とかの簡単な仕事だろうから、遅れずに来てくれさえすれば良いさ」

「わかりました」

 

 手渡されたプリントを見つつ教員室を出て溜息を吐く。損な役割を受けてしまったものだと俺こと紅宮彩翔は思った。

 現在高校二年の俺、二年一組のクラス委員長であり、生徒会副会長でもある。因みに望んでやったのではなく、誰もやらないから押し付けられた。殆どは悪友による組織的意図である。本当に困ったものだ。

 

 そんな平々凡々な人間の紹介はさておき。

 俺の在学するこの高校は市内でも規模は一番大きい。英検等の試験会場にも使われる整った広い校舎が役に立つのだ。

 この度急遽行われる事になったIS適性試験もここが会場となる。プリントを見る限り実際にISが一機体だけ持ち込まれてくるとのこと。

 ごてごてしたミリタリー物は好きな方だが、ISは一般的に女性の象徴である。ISを好きになる者は男子の中ではあまりいない。あまり、ということは若干名いたりはするのだが。

 

 取り敢えず、無駄に信用されている俺は教師の都合の良い小間使いである。損な役回りではあったが、なってしまった以上はいくら文句を言っても意味は無い。

 プリントの内容を流し目で確認しつつ大体は理解し、当日に遅れないようにと心に刻んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS適性試験当日、現在の時刻は09時27分。

 俺は体育館に試験官や受験者の座る椅子と幾つかの長机を出し終えて少々暇を持て余していた。試験開始が10時なのであと30分程やることがない。試験中は誘導員の仕事も押し付けられているのだ。

 

「おっ、」

 

 その辺に出した椅子に腰をかけていると、入口から大きな物が搬入されてきた。多分あれがISだろう。上部に人が一人入れるような空間がある。

 はぁ〜、と物珍しい視線を送っていると、ISの近くにいた髪の薄い校長が手招きしてくる。へいへい、どうせ手伝ってんでしょ全く。

 怒られない内に早足で向かい台車を押すのを手伝った。俺が押し始めたらすんなり台車が動く。どんだけ力無いんだよおいアンタら、と見たら大体の人が40代後半のいかにも運動していないおじさんプラス初老の校長だった。ここにもISによる女尊男卑の影響が色濃く出ている。男尊女卑の反対、ISにより立場の逆転した女性が男性を道具として使うのだ。

 

 ISを所定の位置に運び終えたら、周りにいたおじさんズはすたこらと体育館から逃げてった。これ以上仕事を押し付けられまいという処置だろう。全くもって遺憾だ。身勝手に動かれては生徒が困る。主にここにいる俺だけだが。

 再びシンと静かに沈黙する体育館。変わった事と言えばISが運び込まれたくらいか。

 

 何となく俺はその鉛色に鈍く輝くISを見上げた。腰の位置に“打鉄”とある。だてつ? うつくろがね? よくわからん。初見で読める名前にしろよと言いたい。

 …………触って良いかな?

 周りを見てみるが以前として体育館に人はいない。

 個人的な意見だが、戦車に一回くらい触れてみたいと思った事はないだろうか。銃火器に触ってみたいと思った事はないだろうか。多分、今俺を満たしている好奇心はソレと同じだ。人間は好奇心によりより強い刺激を欲する。無論人殺しになりたいワケではない。

 目の前にあるISは、多分普通ならお目にかかれない、テレビの向こう側の代物だ。一回くらい触ってみたいのである。

 

 ――――誰もいないなら大丈夫だろ。

 

 そんな一心で俺はそのISに手を伸ばした…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS適性試験会場に到着した山田真耶は職員室に顔を出した後その学校の教頭と軽い打ち合わせをしてから体育館へと向かっていた。

 本来なら彼女はIS学園一年一組の教師として教鞭を振るう筈なのだが本日は出張である。正直な彼女の意見としては今回の男性を対象とした試験は意味が無い気がしていた。今の今まで男性が動かせなかったというのに、いきなりISを動かせる男子が現れる等夢のまた夢だと思っていた(現在は織斑一夏の在席するクラス副担任ではあるが)。また織斑一夏のような存在が出るとは考えられなかったのである。が、今回の試験は各政府からの指示なので無視は出来なかった。

 

 しばらく一階を進んでようやく体育館につく。廊下から入口近くを見ると既に会場設営は万端であった。

 

「あれ……?」

 

 ふと体育館奥のほうから明るい光が漏れているのが見えた。太陽でもない、蛍光灯でもない、しかし、人工的な強烈な光。「うぉっ、眩しっ」と男の声が聞こえたので、恐らく教頭の言っていたお手伝いの生徒会副会長だろうと推測した。

 しかし、あの光は何だろうか。気になった彼女は体育館をそろりと覗き込み、

 

「…………へ?」

 

 その光景に唖然とした。

 

 

 

 ――――何故ならば、男性である紅宮彩翔があのISを身に纏い困惑した表情を浮かべていたからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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