ドイツの謎の多い黒ウサギ隊専属技師と大人達の話。英語は2人目の技術者的な意味だった筈。日夜裏でマイペースに暗躍するオリ主と束さん、それに振り回されるちょっと苦労人なちーちゃんやツッコミ役にされたラウラが何かする話だと思う
(ツイッター解説より)
0.プロローグ
ドイツ軍IS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ、通称“黒ウサギ隊”にて。
「大尉」
「なんだい少佐」
「その……形容し難い装備は何だ?」
「よくぞ聞いてくれました。これは対中隊規模軍制圧用のパルスクラスターガトリングです」
「凶悪にも程があるだろ!? と言うか、絶対に人に扱える代物ではないだろこれは!!」
「何を言いますか少佐!! 念には念をと言われ私は常に最悪を想定しているのです。予算と時間があるのならば大隊相手専用装備すら制作してご覧に入れましょう!!」
「少佐権限で却下だバカ!!」
「因みにこれ2門をシュヴァルツェアシリーズに積めば対大隊規模軍を30秒で制圧可能ですよ?」
「誰が積むか!!」
ここでは日常茶飯事的に行われる会話が今日もあった。二人の男女によるボケとツッコミのようなものだ。
腰まで伸びた鮮烈な銀髪、鮮やかな紅の右目と、逆に左目は黒い眼帯で覆われている。身長は、平均的に見ればかなり低いと言えよう。事実、齢15の彼女は150cmに届いていなかった。身に付ける服は黒を基調としたドイツ軍服。軍属ならば当たり前か。因みに彼女がツッコミ役である。
対し、常日頃から真面目に不真面目を生きがいとする男がいた。短く乱雑に切られた赤い髪、180cmを超える長身にギラギラと心中に眠らせる欲を輝かせるグレーの瞳。筋肉質の割には少々細いと感じられる体格。大尉という階級からか、少佐である小さな彼女に
「そんなことよりだっ。私のレールカノンの整備はどうなっているんだ、リヒャルト=マティーアス=シェーケル大尉」
「ご心配無く、ラウラ=ボーディッヒ少佐。回路不具合や排熱機構等全ての改装は順調です」
ニコニコと心の内を見せない笑み。しかしラウラと呼ばれた少女にとってそれはいつもの事であり、彼女は彼を信頼していた。この男、リヒャルトだけは絶対に自分を裏切らないという、絶対的な信頼を。
「速射による弾丸生成の間隔は以前より0.32秒上昇。これによりフルオートでの3点バーストが可能になりました」
「そこまでやれとは言ってない」
「ご安心を。全ては少佐の使い方次第。使わなければ使わないで良いのです。技術者としては使い潰してくれるのが本望ですが」
しかしこのリヒャルトという技術者、ラウラが他に類を見ない程の変態である。無論、技術的な意味で。
この男がいなければラウラ自身のISは性能的に低かったと言えるし、ドイツ軍に技術的革新を持ち込んだのも全てはこの男だった。
「それと、砲身は全て折り畳みが可能になりました」
「何故だ?」
「浪漫だからです」
ドゴォ、と男の腹筋に拳が突き刺さる。
「男の浪漫で私のレールカノンを改造したのか!?」
「落ち着いて下さい少佐。私は至って真面目です」
「落ち着いてなどいられるか大バカ者!!」
重々しい音がしたというのに、リヒャルト大尉はケロッとした表情を崩さない。
「だから、これから説明します。確かに浪漫もありますが、それよりも後の有用性を私はそこに付加したのですよ。方針を中折れ式にして二つに分離して両肩部に接続することでアンマウント時の視界交差を防ぎます。更に排熱処理もこれにより加速します。後は砲身自体予備パーツとしての容量がかなり小さいのでもう一つ空きスロットに積むことによって砲身寿命を気にせず長期戦闘にも対処が可能に。どうでしょう」
「う、むぅ、そう言われてしまえばそれまでだ……、」
でしょう? としたり顔の男。ウラウは妙な説得力に押し負けて黙り込んでしまう。
「私は少佐を決して裏切りません。貴方が目指すものへ、全力で背中を押してみせましょう。……ああ、もうこんな時間に。では少佐、私はこれで」
そう言ってリヒャルトが去っていく。
「……全く、どこぞのハリケーンだ、アイツは……、」
呆れた様に肩を竦めたラウラは、しかし、晴れやかな表情で微かに笑みを浮かべていたのであった。