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GWCと呼ばれる世界的なシェアを誇るカンパニーがある。IS関連技術は世界最先端、第2世代型IS「メディウス・ロクス」は世界シェアNo.1であり、かつこのカンパニーは世界で最も早く第3世代型ISを作り上げた有名会社でもある。主な出資を行っているのは亜細亜諸国。豊富な資源と人口、先進国から取り入れた技術でもってIS界の先頭を駆けているのだ。
本社はインドに置かれ世界各地に巨大な支社と製造工場を構え日夜大量の軍事兵器を生産。他にも日用品や家電製品の開発・製造等も執り行っている。「就職するならGWC」とはまさに今の時代をよく表していた。
とあるGWC支部のオフィスビル。全面ガラス張りの近代的デザインになされた高いビルの1階フロントロビーは今日も多くの人で賑わっていた。スーツを来た営業や顧客など様々だが、その中にふと車椅子の少女が過った。艶やかな大和撫子を彷彿とさせ、顔だちも端正でスッキリしている。見た目はまさに日本人形と言ったところか。赤いパーカーを羽織り、脚には薄手の毛布をかけていた。そしてだが、恐らくその彼女には脚がない。フットサポートに乗せているべき脚が見えないのだ。つまりはそういうことだろう。
そんな彼女の車椅子を押すのもまた日本人だった。車椅子の少女と同じく黒髪黒目だがその印象は真逆と言えよう。どこかキツイ雰囲気というものが漂ってくる。一文字に結ばれた唇と刃物のような切れ目が象徴していると言っても過言ではない。
「ねぇマドカ」
「どうした、セン」
「わたし、皆からどう見られてるのかしら?」
車椅子の少女センは自分を押してくれている少女マドカにそう問うた。マドカはその問いにすぐは答えず、しばし視線だけを辺りに彷徨わせる。2人を、特に、センを見る周りの視線とは。それは「痛ましい」という他人事の視線だ。
「可哀想な奴を見る目だ。不幸を他人に押し付け、蔑む視線だ」
「そう……皆同じね」
マドカの答えに、センは微笑むだけだった。それは喜びとも苦しみとも捉えられない、不気味なものだった。ただただ妖艶に、見た者を凍りつかせてしまうような、絶対零度の笑みであった。
「でも仕方ないわ。皆知らないだもの。真に何もかもを失う恐怖を」
「ああ、その通りだ」
2人は静かに頷き、ロビーからエレベーターホールへ。目指すは地下開発等。完成したISの兵装らが保存されている区画である。本来であれば立ち入り禁止の場所であるそこへ、2人は苦も無く堂々と入って行く。
エレベーターを降りてすぐ、真っ直ぐに無機質な白い廊下が奥まで続いていた。両サイドには強化ガラス張りの部屋が等間隔に並び、中には兵器の数々が並べられていた。同時に研究員達が精密機械に向かい合って数値を眺めていたりエンジニア達が機械と悪戦苦闘していたりとその様子は様々だ。
2人はしばし廊下を進み、白衣を着た研究員達に不審に見られながらもある一室へ入った。
中で2人を迎えたのは、1つの待機状態のISだった。塗装の施されていない無機質な鋼色1色のソレは、畳まれていながら鋭利なデザインをしている。本来のISであれば手足に相当する部分にあるのは全てが突撃剣。他の武器を掴むという概念を一切排除した、異常なモノだった。
「素晴らしいわ。完璧」
「……これを使っていた時期があったと言うのか」
「そうよマドカ。これは私が世界で一番になった時に使っていたモノ。良かったわ、まだ全然元気そうじゃない」
嬉しそうに微笑むセンに対し、マドカの表情は疑問が拭えなていないという感情が表に出ていた。
目の前のISは手足が突撃剣なのだ。すなわち手足の延長線上に刃が着いているということになる。剣術だとか刀術とも違う、未知の領域の武器なのだ。
「久しぶりね、『
センがそっとそのISに触れる。『刹』とはISの名であり、かつてセンが乗っていたISであった。
「さあ行きましょ。また一緒に空を飛ぶの」
それは何て事の無い日常の中で起こった。
平穏を切り裂くかのように鳴り響くサイレン。何事だと人々が困惑する中、突然GWC支部のビルの最上階が吹き飛んだ。ガラスと建材の破片が飛び散り下へ降り注ぐ。開けた穴から飛び出してきたのはISだった。片や蝶のような羽を背負った紫のIS。片や手足に鋭利な突撃剣を備えた鋼色のIS。そして、2機の間で装甲もボロボロにされて今にも落ちようとしているIS、ラファール・リヴァイヴだった。
蝶のようなISがひらりと1回転、同時に羽からビットが飛び出しラファールを取り囲んだ。かと思えば先端から収束されたビームが何発も撃ち出されラファールを攻撃。撃ち抜かれたラファールが大きく体勢を崩し落ちそうになる。
そこへ追撃となって鋼色のISが襲い掛かった。細身のソレは脚を閉じてその突撃剣をラファールの胴体へ容赦なく突き刺す。更にそのまま重力に加えてブースターを噴かし急降下、地上数百メートルはあろう場所から一直線にラファールを下敷きに着地した。
人通りも気にせず、コンクリートの地面へ2機が落ちた。轟音と共に地面が割れ、煙が巻き上がる。突撃剣の切っ先がラファールの腹を貫かんとし、しかし間一髪の絶対防御が働いたのか、搭乗者の脇腹を抉った。
「目標沈黙。行きましょ」
鋼色のISはバイザーしたの口元を微かに動かし、笑った。
2機のISはラファールを置き去りにしたまま再び飛び上がり、空の彼方へと消え去った。ようやく到着した鎮圧部隊もその追跡は適わず、多くの怪我人を出してこのIS盗難事件は幕を下ろすこととなるのであった。