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追い掛けてくる。真後ろ、距離200。離れている? そんな筈はない、アーマード・コアにとってこんな距離は一瞬で詰められる。ゼロ距離とまでは行かないが、近いのは確か。
グライドブーストを駆使し建物の間を抜けて行くが如何せん距離が離せない。と言うよりも逆に詰められている。
「嘘でしょ、そんな……!! ――――キャアッ!?」
機体に揺らされながらもハイブーストで角に滑り込む。刹那、先程まで自分がいた空間にレーザーが撃ち込まれ衝撃に晒される。
(あと2発……!!)
機体を何とか立て直し再び低空を滑るように移動。先の攻撃は連発が効かない上に装弾数も少ないのは予測されていること。避けれれば充分に対処は可能である。
「高い建物さえあれば……!!」
言って、それが幻想でしかないと唇を噛む。敵機の上を取れれば楽なのだが、この敷地では足場にできる高い物はないし、この距離では上っている間に撃ち抜かれる可能性もある。このACの場合、空中となると大分隙が出来てしまう。
「……あれ?」
ある程度進んで牽制しようと真後ろにライフルを向けたところで、敵機がいないことに気付く。スキャンモードに切り替えリコンを飛ばしても見えない。辺りには突風と横から殴りつけるように降り注ぐ豪雨でロクな音さえも聞き取れない。精々聞き取れるのはACのジェネレータが稼働する音くらいだ。
「見失った……?」
ブーストジャンプで低い建物に上り辺りを見回すがどこにもいない。脅威を逃れたは良いが、こちらから見えてないのでは奇襲してくれと言っているようなものだ。早急に見付けなければならない。
――――ピピッ。
「ッ!!」
一瞬、何かを捕えた。間違うはずもない、敵機だ。
反応のあった地点へグライドブーストで急行、距離が詰まったところでもう一度リコンを展開。しかし、
「また見失った……!!」
いない。だが方向だけはあってる筈だ。
刹那、
「――――ァがっ!?」
背後を轟音と衝撃が襲う。機体の耐久値が減少、ガクンと期待に揺さぶられ体勢が崩れた。衝撃で操作レバーから手が離れ機体が暴れ横倒しになる。
「……ぁ、まず……っ」
必死にレバーを掴んではみるものの、機体は言うことを聞いてくれない。カメラの端で、敵機が接近してくるのが見えた。
「うわぁあああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
立ち上がるのは諦めた。右腕の武装をライフルからガトリングへ変更、トリガー。ガガガガガガッと鉛玉が撃ち出され――――その弾幕へ無理矢理敵機が突っ込んで来る!!
「嘘――――!?」
影が迫り、一瞬霞む。刹那、蹴り出された足が自らの機体を捉え、大きなサイレンが鳴り渡った。
『勝者、霞中学校!! 見事全国大会3連覇の偉業を達成です――――!!』
大洗女子学園。学園艦と呼ばれる巨大な空母型の船の上に作られた女子学校の1つだ。
そこの生徒会室では小山柚子が少し型の古いデスクトップパソコンに向かって調べものに勤しんでいた。
「『戦車道』と『機兵道』の連携……、」
『戦車道』とは。乙女の嗜みとして古くから行われる武道である。非力な女性であろうとも強固な戦車を用いれば力を持って堂々戦えることから多くの女性に好まれる傾向にあるのだ。
そして『機兵道』。アーマード・コアと呼ばれる高速機動兵器を用いた、『戦車道』に似た武道である。こちらは乙女の嗜み、までとは行かないものの、男女の間でそれなりの人気がある武道だ。
「スゴいな、このACとやらは」
隣で同じ画面を覗きこんでいた河嶋桃が呟いた。
画面の中では巨大な人型兵器がフィールドを飛び交い、互いが手に持った銃器を撃ち合う様子が流れていた。『機兵道』の試合の様子だ。
「最近の試合じゃ『戦車道』と『機兵道』を合わせて更なる相乗効果を、ってことでコラボさせてるみたい」
「となると、今後の試合でも導入されるという訳か……しかし、それっぽい兵器はこの学校にあるとは思えんな」
スクロールして文章を読み進め、うむむと腕を組む。
「まー別にACって必ず必要になるって訳じゃないでしょ? 取り敢えず目先は戦車の覚悟が優先かねぇ」
角谷杏がデスクでのんびり干し芋を齧りヒラヒラと手を振った。
彼女の言う通り『戦車道』は戦車が必須。数年前に廃止したため余りの戦車が敷地内に見付かっており、こちらはまだ良い。『機兵道』とのコラボということで最近はACを持っているところも多いが、残念なことにここ大洗女子学園には『機兵道』のきの字もなかったためにACの余りを期待するのは絶望的であった。
「ACは、まぁ余裕が出来てからでいいっしょ。まだいい乗り手もいないしねぇ」
ACはその独特の操作機構から乗り手を選ぶ、と巷ではよく言われている。
「よっしゃ、じゃあやっちゃおう」
「でもそれって情報操作になるんじゃ……、」
「どうとでもなる。河嶋ー」
「了解しました」