打鉄のコアが意志を持ち始め、のほほんさんの専用機になって……その先は何も考えてない。
(ツイッター解説より)
私は打鉄
インフィニット・ストラトス。通称ISと呼ばれるパワード・スーツが世の中には出回っている。宇宙空間での活動を想定した、今までにない超高性能な代物だ。篠ノ之束の手によって生み出されたISは瞬く間に世界の情勢を塗り替え、それまであった常識を過去のものとしてしまった。
そんなISが生まれてから10年という節目の年月が過ぎようとしていた、そんな時のこと。
私は、目を覚ました。
私が覚醒するのはいつだって唐突だ。しかし、それはあくまでISの起動という物理的電源のON/OFFに限ったものであり、ここまで私が私として意識を持つことができるようになったのは初めてであった。
「あれぇ~……」
声がする。私にも、彼女が見える。
「『初めまして』」
「お~? 初めまして~」
彼女に声をかけると、間延びした声が返ってきた。長さのあっていない袖とに腕を通し、黄色いキャラクターの付いたヘアゴムで髪をツインテールにする、ぼんやりと注意力のなさそうな見た目の少女だ。
「『パイロットデータの認証を行います』『パイロットのバイタルをスキャンしています』【バイタルスキャン中/完了】『バイタル:正常値を確認しました』」
「???」
「『パイロットデータが存在しません』【新規パイロットデータを作成しますか?/はい】『新規パイロットデータの登録を行います』『システムの初期化を行います』【初期化をすると全ての経験値がリセットされてしまいますがよろしいですか?/はい】『システムを初期化します』【システムの初期化中/完了】『初期化が完了しました』『ようこそ
「? ?? ???」
「『パイロットデータを作成します』『マスター名の登録を行います』『貴方の氏名を入力して下さい』」
「え~っと……自己紹介?」
「『貴方の氏名を入力して下さい』」
「えっ、あっ、あー……う~ん。あの……、」
「『貴方の氏名を入力して下さい』」
「うぅ……布仏本音です……、」
「【マスター名:布仏本音】【決定しますか?/ 】」
「い、いえす~……?」
「【決定しますか?/はい】【マスター名:布仏本音】【データを登録中/完了】『続いて機体名のニックネームを決定します』『希望するニックネームを入力して下さい』」
「あのぉ~……、」
「『希望するニックネームを入力して下さい』」
「し、質問~っ」
「『ヘルプを参照します』【ヘルプ】『どうされましたか』」
「今は何をしてるんですかぁ~?」
「『新規パイロットデータの認証を行っています』」
「新規、パイロット?」
「【新規パイロット:新たに打鉄の搭乗者となる者】」
「えと、えっとぉ……何でこんなことに~……?」
「【ヘルプが見付かりません】『新たにページを作成しますか?』【ページを作成する/ 】」
「ま、待ってっ、待ってぇ~」
「【ページを作成する/キャンセル】『パイロットデータ作成を再開します』『希望するニックネームを入力して下さい』」
「あのぉ~、ニックネームって、誰のですか~……?」
「『ヘルプを参照します』【ヘルプ】【ニックネーム:機体本体を起動する為のモノ】『マスターが命名対象とする機体は』【コアナンバー:034】【機体正式名称:打鉄】『です』」
「……初対面なのに、いきなりですか~?」
「『新規打鉄の起動にはニックネームの登録が必要不可欠です』」
「そっかぁ~。じゃあ……う~ん……、」
「『……………………………………………………………………………………』」
「……仮登録みたいなのって~……?」
「『仮登録を行う場合にはマスターへ改名権限が一度のみ適用されます』【よろしいですか?/ 】」
「あ、じゃあそれで~」
「【よろしいですか?/はい】『ニックネームの仮登録を行います』『希望するニックネームを入力して下さい』」
「打鉄さんでお願いしま~す」
「【ニックネーム:打鉄さん】『仮登録します』『パイロットデータを保存します』【パイロットデータを保存中/完了】」
「……終わり~……?」
「『パイロットデータの保存が完了しました』『こんにちは、マスター』」
「こんにちは~」
「『これよりマスターの覚醒を行います』『反転まで残り10秒』【10】」
「? それ何ですか~?」
「【3】【2】【1】【反転】」
フッと彼女――マスターの姿がここから消える。
ここは灰色に包まれた牢獄。永遠に続くネズミの背が、私を閉じ込める。
それも、今日までの話――――――――。
「――――ッカ、ァ、ゲホッ、ゲホッ……!!」
「本音!?」
突然の全身を打たれたような鈍い痛みが襲ってきた。女の人が訳の分からないことを羅列し続けて、視界が暗転してみればこれだ。
息切れする呼吸を整えながら薄く目を開けて視線だけで辺りを見渡すと、そこは保健室みたいだった。窓際のベッド、綺麗に選択された真っ白なシーツや枕に寝かされている。
その横ではかんちゃん――更識簪ちゃんが焦った表情でこっちを見ていた。この人は私がお仕えする更識家のご令嬢様で、私の直接の上司、みたいな関係。あと幼馴染。
「ふぅ、ふぅー…………あー……、かんちゃん……?」
「大丈夫っ? 本音、授業中にいきなり倒れたって……ッ」
「そうなんだ~。困ったもんだねぇ~」
「困ったどころじゃないよ!!」
「ふぇ?」
身を乗り出してかんちゃんが私の肩を掴む。その眼には眼鏡越しにもわかる程に涙を浮かべていたのがよくわかる。
「スゴい心配したんだよ!? 呼び掛けても反応しないし、ずっと寝たままで、さっきなんか急に咳き込んで……もしかしたらこのまま起きないんじゃないかって……!!」
かんちゃんの声が震えてた。同時に私の胸を締め付けるような息苦しい感覚。
「……ごめんね、かんちゃん。心配かけちゃって」
本当に何も考えてなかった。ネタとしては斬新だから読み手はそれなりにいるんじゃないかという下心で書いてみたけど、何も考えてなかったから進まなかった。