キノンの没作品シリーズ   作:いつのせキノン

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マジ恋。にじふぁんがあった頃に書いてた奴を大幅にリメイクしたシリアス作品にしようとしたが1話だけ書いて満足してしまった。にじふぁん時代のタイトルも何だったか忘れた……。


真剣で私に恋しなさい! -The Devil Ghosts Protocol-
第一話


 

 

 

 

 

 

 

 御祖父ちゃんが殺された。

 

 私は匿われた。

 

 そして、弟が囮となって世界中を逃げ回る。

 

 もう七年の時が過ぎようとしていた。

 

 一体いつになったら、私は……いや、私達は。何も起きない日常を送れるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 川神市は冬真っ盛り。と言っても日本海側のように雪が降り積もることは滅多にない。今日も精々最低気温が零度になるかならないかの境界を彷徨い続けるばかりである。

 

「……今日も、寒いな」

 

 携帯を取り出して時刻を確認し終えた川神百代は空を見上げた。

 

 時間は午前五時半。朝練三○分前かつ、丁度新聞が配達される時間だ。

 

 しかし、

 

 ――――遅い、のか?

 

 今日は、来ない。

 

 いつもならばそろそろバイクのエンジン音が聞こえてもおかしくはないし、そもそも音を聞かずとも百代であれば感じなれた“気”を察知すればどうということは無いのである。が、今日はその“気”すら微塵にも感じられない。

 

 試に郵便受けを覗いてみたが特に収穫は無し。休刊でもないのに一体どうしたのか。

 ここの配達員はよく見ているが、今までの中で決して休んだり代わりの配達員が来たりしたことは一度たりともない。

 

 ――――これも、なのか……?

 

 言い様の無い不安が胸に広がる。

 と言うのも、百代は毎日朝練のギリギリに布団から出る(既に起きてはいるが寒いのでどうしても布団の中で丸くなりたがる)のがデフォルトであり、いつもならばこんな時間、まだ布団の中で夢見心地である。しかし、今日に限っては突然目が覚めてしまった。川神市の空気が一変したような、そんな感覚があったのを覚えている。

 

 ――――馬鹿らしいな。

 

 フッと自嘲気味に笑う。

 そもそも考えすぎか。配達員だって人間だ。風邪だってひくし、今日がたまたまその日なのかもしれない。

 

 まだ寝たりないのか。

 そう考えてまた少し横になろうと決めて郵便受けから視線を外した。

 

 

 

 カコンッ。

 

 

 

「――――――――ッッ!?」

 

 刹那、百代は自分の背中へ向けてタックル紛いの特攻をしていた。

 

 ――――いつの間に……ッ!?

 

 気付かなかった。

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 力の加減なんてあったもんじゃない。全力だ。

 

「なッ……!?」

 

 そして、初めて気付く。そこには誰もいないと。

 

 タックルは空振り、一瞬体制を崩すがそこは武闘家。直ぐに立て直す。

 

「……どこだ……」

 

 視界では捉えていない。ならば“気”はどうか。

 “気”の扱いならば誰にも負ける気はしない。必死で“気”を探る。

 

 が、

 

 ――――どうして引っかからない……!!

 

 百代の探知網ですら、ついに何も捉えられなかった。

 

 幽霊か、何か。オカルト主義者ではないが否が応にも考えてしまい身震いする。

 

 今後ろにいた“何か”が、言いようのない不安感を煽る。

 

 

 

「ついに来おったか」

「っ、ジジイ……ッ?」

「離れておれよ百代。まだ見るべきモノではない。この異変に気付けたのは不幸じゃったな」

 

 いつの間にか川神鉄心が真後ろで真剣な表情を作り佇んでいた。いつもの飄々とした雰囲気なぞ欠片もなく、真面目そのものだった。

 こんな殺気、初めてだ。無意識に身を固くする。鉄心を前に初めて、百代は動けなかった。

 

 その脇をするりと抜け、鉄心はポストの中から一つの封筒を取り出す。

 

「百代、今すぐ戻るが良い。命惜しくばな」

 

 封筒の中身は確認せずに懐へしまい、踵を返して中に戻ってしまう。

 

「おい、ちょっと……、」

「警告は済ましたからのぅ。あとはもう、わかるな?」

 

 表しきれない圧倒的威圧感。百代は鉄心の背後に、あの毘沙門天を見た。

 

「……っ、わかった……、……ん?」

 

 何がそこまでさせるのか。一瞬奪ってやろうかと思うがそれすらも許されない殺気に百代はぐうの音もでずに引き下がろうとした、その瞬間である。太陽がまだ顔を出さないおかげで少し薄暗いその空間に、僅かな“歪み”を見たような、

 

「何が……、」

 

 ツ、と脇腹に、痛みが走った。

 

「……は?」

 

 右手を添える。ねっとりと掌に濡れる感触。そして、今までにないほどの鉄錆た臭い。

 

「え……血……? ぁっ、づ……!?」

 

 刹那に、ようやく脇腹が激痛を訴え出す。

 

「なん、で……!!」

 

 深々と腹にナイフが刺さっていた。果物ナイフではない、正真正銘、人を傷付けるナイフだ。

 

「が、ぁぁぁあッ!!」

 

 柄を握り、引き抜く。ずるりと抜け落ちたナイフがカランと地面に転がり、血溜りに濡れる。

 回復を。気力を全力で脇腹に集中。みるみる内に傷が癒える。時間にして僅か一秒。しかし、痛みまでもを回復するわけではない。

 抉られた感触がズキズキと生傷のような痛みを脳に訴える。思わず、膝を着きたくなるほどに。

 

「モモッ、さっさと逃げんかバカタレィッ!!」

「っ、朝からうっさ、ぃ……え?」

 

 痛む脇腹を手で押さえ、今までこちらに見向きもしなかった鉄心を見やり、唖然。

 

 あの川神鉄心の腕に、二本のナイフが深々と刺さっているではないか。

 

「思った以上に早いのぅ……」

 

 ギンと睨みをきかせる先は、虚空。しかし、そこには僅かな歪み。

 

「儂やモモをここまでやらせるとは……栄玖め……」

 

 刹那、歪みが動く。銀の閃きが、武神に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当に迂闊だった。七年をかけてようやく荷物を送り届けた直後、襲撃されるなんて。

 

「ぅ、ぐぅ、ゥぅぅぅ……」

 

 背中が痛くて熱かった。でも、体にくい込むのは冷たく硬い感触。

 きっと見たらナイフが深々と刺さってるに違いない。幸い心臓や大動脈には至らなかったが、出血を抑える手段が無い以上、もう助かる見込みはない。出血多量でのショック死か。

 ガクガクと足が震える。手先から感覚が無くなる。寒い。とても、寒い。これでは遭難して死にかけているようではないか。そんな風に思い、自嘲気味に笑った。

 

 ついに、力が抜ける。路地裏の真ん中で、地面に体を横たえた。

 

「…………何故だ」

「?」

 

 声がした。男の声だ。聞いたことは、ない、のだろうか……?

 

「全ては栄玖家と天音家だけの問題。なのに何故、お前たちは義理を通す」

 

 何故? そんなこと、決まってる。

 

「……だって、忌子の私を、受け入れてくれたんです。もう、生きれないと、思ってたのに……。だから、恩返し、しなくちゃ、なんですよ。……えへへ、一応、目標も達成したし……お爺様とお姉様、よろこんで、くれるでしょうか……?」

「……わからない。悲しみは、するだろう。君は、愛されすぎた」

「……そっか、私、愛されてたんだぁ……嬉しい、な……」

 

 視界がどんどんと狭くなる。眠くなってきた。痛みも、寒さも、感じなくなってきた。今なら、とても良い夢が見れそうな気がする。

 

「……眠れよ、愛されし子。もう、君は休んで良い」

「……えへへ、ありがとう、ございます……。貴方は、若様です、よね?」

「…………若様、か。そう、だな。以前は、そうだった。今は、当主だ……、」

「……当主、様……私、当主様に、お見送り、頂けるんですね……これ以上の喜びは、ないです……」

 

 ふわふわと、宙に浮いていく。気持ちの良い暖かさを感じる。

 

「……お先に、失礼、します。お爺様と、待ってます、ね……、椎珂様……」

「……おやすみ、柊」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀の閃光、完全に鉄心を捉えていた。逃げきれない。百代から見ても、“詰み”だった。

 

 

 

 だからこそ、次の瞬間に起きていたことが、尚更納得できなかった。

 

 ナイフの間合い。“歪み”が鉄心に肉迫した時にが起こった。

 百代達が視界に、一瞬の黒い人影を見た刹那、“歪み”が鈍い音と同時に吹き飛び地面を転がる。と、その“歪み”がようやく視認できる人に変化した。

 更に、謎の衝撃がその人を襲う。コンマ一秒も満たない瞬間に一〇回以上、人が人の形を成さないほどに捻じれ、折れ、ひん曲がり、どしゃりと地面に落ちた。

 

「……まさか、ここまで派手にやるとはこちらも思わなかった」

 

 すぅ、と。まるで最初からそこにいたように。ぼやけていて見えなかった物に焦点が集まるように。そこには、全身黒づくめの、ネックウォーマーに顔を深く埋めた男が立っていた。

 

「……お主、」

「お初にお目にかかる。川神鉄心。そして、川神百代」

 

 黒い男は、抑揚のない低い声で、そう言った。

 

「天音家現当主、天音椎珂だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2010年頃くらいに、これの前身作品を書いてた時期があって、あの頃は一番物書きを無心で楽しんでたよ……文法もセリフも何もかもが酷かったけど。
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