ただ単に腹黒っぽいような男の娘がIS学園来たら一夏の息子が危なくなるんじゃないかと言う思いつきで書いた奴。主人公は島風くんをイメージ。自分の外見が女の子っぽいのをわかった上で距離感を図りつつ接する子と一夏のSS、の予定だった。
(ツイッター解説より)
第1話
IS学園では今年の入学式が滞りなく終わった。変わったことと言えば、男子生徒が2人ほど新しく入学したことくらいだろう。ただそれだけのことではあるが、世間からすればこのことは世界が注目する大ニュースとなる。
1年1組。今日からこのクラスには2人の男子生徒が在籍することになる。織斑一夏、そして、
さて、IS学園に男子だ。“ISは女性にしか動かせない”と10年来定着し続けてきたルールを今更破って入学に至ったからこそ、2人への注目度は異様に高い。
だからこそ、織斑一夏は1人だけ女子からの視線に晒されて肩幅狭い思いを味わっていた。それでいながら視線をキョロキョロとさせてもう1人の男子生徒を探す。しかしながらそれっぽい人が見つからない。って言うか男子用の制服を着ている人が一夏以外にいない。
周りの女子生徒も一夏を見てからそう言えばもう1人がいないと視線を彷徨わせ続けている。1年1組には男子が2人いるはずなのに、もう1人が見当たらない、と。席も空席はなく全員が席についている。これは、おかしいのではないか?
「初めまして~、皆さん揃ってますね~。それじゃあホームルーム始めましょうか~」
ちょっと間延びした声で1人の女性が扉を開けて教室に入ってくる。成人しているようには見えない童顔の彼女は山田真耶、1年1組のクラス副担任である。これでも一応成人している。胸はどう見ても立派に成人しているのだが。
「山田真耶です。副担任としてまずは1年間、よろしくお願いします」
にっこりと子供のような柔らかい笑み。クラス満場一致でこの人自分と同い年か年下なんじゃないかと思った。
「まずは自己紹介、しちゃいましょうか。私も早く皆さんの顔と名前を覚えたいので」
では名簿番号順に、と言って名簿1番から自己紹介。
「はい、相川清香ですっ。趣味は球技スポーツ全般、中学校ではハンドボール部に所属してました。1年間よろしくお願いしますっ」
「初めまして、
「
「………………………………、」
「あれ、織斑くん?」
名簿番号4番織斑一夏、反応なし。何度か呼びかけてはみるものの、しばし難しい顔のままに微動だにせずに彼は考え事に
「織斑一夏くん?」
「っ、は、はいっ」
「ひゃっ!?」
真耶が耳元で呼びかけ、ようやく反応した一夏。椅子を蹴るように突然立ち上がって、思わず彼女がびっくりして後ずさる。
「あ、あの、大声出しちゃってごめんなさい。その、自己紹介、織斑くんの番でね、だからその、お願いしてもいいかなって……」
「あ、はい、やります、やりますから、ね……手は、あの……、」
何故か両手をしっかり握って上目遣いをされては一夏も断りきれず、というか元々そういう順番なので断れるはずもないのだが、気まずそうに目を逸らして苦笑いする一夏に対し、真耶は自分の置かれた状況を次第に理解して顔を真っ赤にした後、声にならない悲鳴(無音)を上げながらそそくさと教壇へ戻った。
「……あー、えーっと、織斑一夏、です。よろしくお願いします」
「「「………………………………」」」
クラス中の視線が集まる。流れ的にそこは趣味の話をするべきだろうという、もっと喋れよという無言の圧力がひしひしと一夏を締め付けていく。
さぁこの状況下で何を彼は喋るというのか。もし何も言わなければ、それは根暗で無言キャラのとっつきにくい奴というレッテルを貼られることになる。ようはボッチ道まっしぐらという訳だ。
「……い、以上ですっ」
ガタタッ、と音がして何人かが椅子から滑り落ちかけた。期待していただけに突き落とされたと言ったところか。一夏も一夏で苦し紛れの一言に自分で苦笑いを浮かべ、直後に響いたスパァンッと言う音と共に頭頂部の痛みから顔を顰めた。そして、恐る恐る後ろを振り返れば、
「げぇっ、関羽!?」
「誰が三国志の英雄か」
ジャーンジャーンジャーン、とどこからか銅鑼の幻聴が聞こえてきそうだ。
出席簿を振り抜いて一夏の頭にたんこぶを作るのは、織斑千冬。織斑一夏の姉であり、第1回モンド・グロッソにて優勝経験を持つ、初代ブリュンヒルデである。
「私の弟ならもっとらしく自己紹介くらいできんのか。自分をアピールできないようだと、就職で行き詰まるぞ」
「うっ、何て現実的なお言葉……」
日本人の謙虚さによる弱点である。
「まぁいい、取り敢えず惚けてないで席につけ。さて、知っているとは思うがこのクラスの担任の織斑千冬だ。1年間みっちり扱いていくから覚悟しておけ。返事は“はい”か“イエス”のみだ」
「「「「「イエス、マム!!」」」」」
クラス女子が一斉に敬礼。織斑千冬のカリスマがなせるワザである。それほどに彼女の名前は全世界に知れ渡るほど有名なのだ。
「で、鳴海。貴様はまた悪ふざけか? 女子の制服等着たら誰も見分けられるはずがないだろう」
と、千冬の一言と呆れ顔に後ろの席に座っていた一人が立ち上がった。
「いやぁ、バレました?」
てへっ、と舌を出して小悪魔な笑みを浮かべた彼女……いや、女子用制服に身を包んだ彼は、全く悪びれた様子を見せずに満足気な顔をしていた。彼こそが鳴海玲その人。中性的……否、女性的な顔立ちとソプラノなハスキーボイス、違和感のない女装はもう男子という感じを全く思わせない。そこにはまごう事なき女子な男子がいた。
「あ、どうも、鳴海玲でっす!! 皆、よろしくね!!」
イェイッ、とブイサインで満面笑顔。その辺の男ならコロッと落とせてしまいそうな、反則的な可愛さがそこにはあった。現にクラス内何人かが瞳をキラッキラに輝かせている。獲物を狙う目のそれだ。
鳴海玲。身長143cm、体重秘密。スラッとした体型と童顔が拍車をかけて彼を錯覚させる。色の濃い金髪はサラサラのロングヘア、女子も羨む手入れの行き届いたその髪は美しく可憐であった。活発的な雰囲気を纏わせながら小悪魔的な雰囲気も醸し出す紅の瞳はジトッとした流し目がよく似合う。頭には大きな水色のリボンをうさぎのように跳ねさせており、歩くたびに揺れるソレは可愛らしさを助長させていた。
「男子用の制服は今朝渡されなかったのか?」
「係の人が寮の部屋まで来たんですけど、私を見たらどっかに行っちゃったんですよね~。で、私の制服無かったからその辺の人に『制服持ってきて?』って頼んだらこれ渡されました」
「まさか部屋で女装してた訳じゃあるまいな?」
「まさかぁ。ワイシャツしか着てませんでしたよ」
『裸ワイシャツ……!!』
『なんて反則級な組み合わせなの……!?』
クラスのあちこちで鼻血に沈む女子が多発。妄想の加速度の高い人達だ。
さて、少し妄想してみよう。朝日に照らされる白い肌、健康的で細い体の線は否応なしに艶かしい。神々しさ5割増しである。一夏も若干たぎっていた。何がとは言わないが。
「…………取り敢えず総務には伝えておくから今度はきちんと制服を貰っておけ。山田先生、鼻血は拭いておくように」
朝っぱらから騒がしいのだが、一体どうなることやら。千冬は深く1つ溜息を吐いたのであった。