タイトル未定
「やらかしましたぁー!! アリサさぁん、ヘルプミー!!」
「何事ですk――――なんですかその真後ろの大群は!?」
「わかんないですでも何か来ちゃいましたぁ!!」
「ちょっ、待って下さいこっち来ちゃダメですってば!?」
フェンリル極東支部独立支援部隊クレイドルは今日も今日とて騒がしい出来事にて1日の始まりを迎えた。
クレイドルはサテライト拠点の支援、更なる増設を目的を持った部隊であり、そのチームにはベテランとして前線で活躍するゴッドイーター達が集結している。
何せ部隊員のほぼ全員がかつてのアーク計画を阻止した者として関わっており、その功績は計り知れないものがある。……少なくとも、評価を見た限りは。
現在とある地にて背後に多数アラガミを率いて全力疾走する2人の女性の人影がある。片方、プラチナブロンドに赤い帽子と少々露出の高いクレイドル制服に身を包んだアリサ=イリーニチナ=アミエーラ。もう1人はワインレッドの髪をツインサイドアップテールにして前髪を紫陽花色の×字の髪留めで止めており、クレイドルの制服に身を包んだ少し背の低い娘だった。名前をロキノ=キノーシス。極東支部第一部隊隊長を務めた事もある、エリート中のエリートだ。
2人はかつての元第一部隊所属員。言ったようにその実力派折り紙付きである。
……で、あるのだが。
「アリサさん神機あるなら倒して下さいよぅ!!」
「無茶なこと言わないで隊長が倒せば良い話じゃないですか!? っていうか隊長神機はどこに置いてきたんです!?」
「それが基地に忘れたまま探索出ちゃってたみたいで……てへぺろ(はぁと)」
「ボケかましてる場合じゃないですよ!!」
「あべっ!?」
すぱーん、と聴き心地の良い音がロキノの頭から鳴る。ゴッドイーターが神機を忘れるとはどういった了見なのかと少々青筋をこめかみに現すアリサが頭を叩いたのだった。
「だ、だってわたしが見付けたところ早く探索終わらせようって言ったのアリサさんじゃないですかぁ!! わたし頑張って早起きして朝ご飯だって早く食べたんですよぉ!!」
「それでも隊長いつも通り30分以上かかってたじゃないですか!? あんなにのんびりしてて準備もできない方が驚きですよ!!」
アラガミに追われて命の危機だと言うのに両者の間で交わされるのは危機感の無い責任の押し付け合いだ。反撃もせずに逃げ回る姿から、これが元第一部隊の隊員達だと誰が想像できようか。いやできない(反語)
「おーおー、今日も派手にやってるじゃねぇか」
「よっしゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ王子様キタコレ!!」
「あぁっ!? ズルいですよ隊長!!」
ふと前方に黄金色の神機と左腕に同じ黄金の籠手を着けた男が愉快そうにこちらを見ていた。黒髪に白のコートを羽織る彼は雨宮リンドウ。こちらはロキノがゴッドイーターになる前から第一部隊隊長を勤めていた経験のあるベテランだ。
そのリンドウを見つけるやいなやロキノはペースを上げて猛ダッシュ。アリサをいっきに突き放して彼の背中に隠れた。
「さぁリンドウさんやっちゃって下さい!!」
「嫌だ」
「「えぇっ!?」」
まさかの返答に固まる2人。ロキノはともかく、アリサも驚いたのはこの面倒な処理を押し付けようとして失敗したからである。ロキノは色々な事情があってリンドウと仲が良く、ロキノが頼み事をすれば大体のことは「仕方ねぇな」と娘のように処理するのだが、今回ばかりは予想外だったらしい。
「ちったぁ動けよエース。神機ならほれ、そこにある」
彼が指差す先には地面に突き刺さったスピアが1つあった。それこそがロキノの愛用する神機。長年使い続けてきた相棒だ。
「俺ァ手伝わねぇからな。さっさと帰って資料を纏める続きがある。って訳でアリサ、エースの世話は任せたぞ」
リンドウはそそくさと、しかし持ち前の運動能力であっさりと駆け出して消えた。あの様子だと仕事が面倒になって散歩にでも出たのだろう。ついでにロキノの神機をわざわざ届けに来たというのは彼ならではの優しさか。
「た、隊長!! 急いで加勢頼みますってば!!」
気付けばアリサは既にアラガミ達の攻撃を鮮やかにさばき続けて善戦していた。声をかける余裕はあるし、彼女もまだまだ本気ではない。元々の原因がロキノにあるだけに、アリサは中々全力でやる気にはなれていなかった。
ロキノは素早くスピアに駆け寄り勢いよく地面から抜き取る。白と紫の刃先、濃いピンク色のショットガン、盾には蒼色のバックラーがある。神機はアラガミの素材から作られるが、彼女の持つスピアに用いられている素材はそれこそ一級品。生半可な実力では到底取ることのできない素材をふんだんに惜しみなく使った物だった。
「行きますよー……!!」
「――――いや、その技はマズいですって……!?」
ロキノが力を込めた瞬間、槍が微かに紅に発光し始めたかと思えば刃先にオラクルが凝縮されていく様子が見て取れる。
「さぁさぁさぁさぁ……!!」
1歩でロキノがアラガミ郡へ突撃。入れ替わりにアリサが慌てて離脱していく。アラガミから逃げる、というよりはロキノの行動範囲から避難しているような対応だが、実際のところそれで正解だったりする。
「せりゃあああああっっ!!」
ズンンッ、とスピアがアラガミの1体を捕えた。体重と勢いを乗せた一撃が深々と貫く。刹那、内側から紅い光が膨れ上がりアラガミを破裂させ、連続的な発光がアラガミ達の群れをズタズタに吹き飛ばした。
「あ、危ないじゃないですかぁ!? 加減間違えたら私まで吹っ飛んでるところでしたよ!?」
「えー、別にアリサさんに当たらなかったからいいじゃないですかぁ」
「結果論だけ言ったって隊長は反省しないでしょ、このっ」
「うなああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 痛いッ、痛いですアリサさん!! こめかみグリグリは痛いんですってばぁ!!」
「痛くしてるんだから当然です!!」
アラガミの次は仲間割れか。何とも言い難い光景である。
が、これは日常的なことであって一時的なことではない。2人の間でも大体は単なるじゃれあいであり、固い絆があるからこその行為だった。アリサだって本気で攻めている訳じゃないし、ロキノだってアリサが離脱するまできっちり待ったのだ。
「今日は隊長の分のお昼なしにしますからね!!」
「やだああぁぁぁぁアリサさんのボルシチ食べたいいいぃぃぃぃぃ!!」
泣きながらも欲望に忠実だがこれでも元隊長である。一応言っておくと当時はもっとキリッとしてたのだ。多分。
結局お昼はボルシチを食べた。ロキノご満悦である。アリサも何だかんだで食べさせてあげていた。泣き落としは卑怯だと彼女は後に静かに語る。それも素でやることなので対応のしようがないのだが。
「アリサしゃぁん……、」
「お昼寝なら自分のスペースがありますからそこで…………ナチュラルに私の膝を枕にするの止めてもらえません? これ何度目のやり取りだと思ってるんですか」
「えーっとね、5回辺りから数えてないや」
何がしたかったのかはよくわからん。取り敢えず主人公とアリサが可愛いってことを前面に押し出すのが目的だった模様。