主人公枠の義理の姉妹が、クラスメイトの社会の闇を払拭する為の話。
多分だけど原作でシャルの奴が有耶無耶になったのが納得いかなかったのでは、なんて過去の自分を考察してみる。
タイトル未定
「ッぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
ガツンッ!! という音を立て、身の丈五倍はあろうアメジストの斧が相手のブレードを大きくかち上げ、ついでにと言わんばかりにシールドエネルギーも大きく削り切った。そこでブザーが終了を告げる。
『そこまでッ。勝者、アイヴィー・シモンズッ』
相手のエネルギーシールド残量は数値ゼロ。強制的に稼働が終了し、その場に硬直する。
対し、勝者のIS【打鉄】は大斧を地面に突き立てて着地。紫の粒子を出していた斧はその放出をやめて稼働を停止。小さな粒子となり【打鉄】の中に収納された。
「ありがとうございました」
「こちらこそ……ってあれ?」
アイヴィー・シモンズと呼ばれた少女はISを降りて一例をするとさっさとその場から立ち去る。
対戦相手の少女がおろおろとその後ろ姿を見送って我に返るのは一〇秒以上たってからであった。
「……すげぇな、あの
「確かに……だが、落ち着きがないというか、何と言おうか……兎角、鬼気迫るように見えたが」
「言えてるな、それ。声かけて聴いてみっか?」
「プライヴェートなことだったらどうする。誰にだって隠し事はあるだろうし、個人情報を詮索するのは良くない」
「うへぇ、手厳しいこって」
「君だって仮に父子家庭で知人に“何故父子家庭なんだ?”なんて聞かれちゃ気分悪いだろう?」
「んー……まぁそっか。うん、やめとこ。でも声かけるくらいは良いんじゃね? 辛くたってちょっとアドバイスっつーかさ。ちょっとぐらい支えになれねぇかな」
「……お人好しだな、君は。良いのか悪いのやら……」
アリーナの観賞席からは二人組の女子がアイヴィー・シモンズを見ながら話し合っていた。
片方、“お人好し”の彼女は
そんな万桜の傍ら。くすんだ銀髪の前髪にオレンジのメッシュが入った少女。こちらは生粋のドイツ人だ。目は細く鋭く深い蒼色。髪は腰あたりまで伸びており、先を黒いリボンで纏めていた。名をシュテファーニア・バイルシュミットという。
なんとこの二人、義理の姉妹である。
「シモンズって確か、米国出身だっけ?」
「生粋のアメリカンだ。クラスじゃいつも一人のところしか見ていないな。しかし、誰にでも声をかける君が全然知らないとは」
「それがさぁ。最初は声かけようとしたら避けるようにどっか行っちゃうもんだしさ。んで、教室で大人しくしてる時に限って自分不在だし」
「つくづく運がないな。私はどうでも良いが」
「よぉしッ。こうなりゃこれから声かけるぞ!! 目指せ親友!!」
「(適当にあしらわれる未来しか見えないんだが……、まぁいいか)」
義妹の爛漫な笑顔に若干な不安を覚えつつ、しかし止めることはせずにシュテファーニアは万桜と並んで歩き出す。なんだかんだで友好の良い彼女の事だ。どうにかなるだろう。そうささやかに思う。
「そんじゃあ早速。更衣室に行けばいるよな」
「ずかずか入り込むのというのか? デリカシーがないね」
「別に女子同士じゃんか。恥ずかしがることなんてナシ!! ジャパンでもよく言うっしょ、裸の付き合いだ!!」
「それは男子の場合じゃなかったか……?」
ぬぬぬ、と難しい顔をして顎に手をやるシュテファーニア。一方考えることをしない万桜はズンズンと進んでしまう。
ちなみに彼女らの脳内。裸の付き合い=お風呂に一緒に入るになってしまっている。
よく使われるのは
「ここだな……お、中にいるっぽい」
「まぁ待とう。着替え中に入られるのは気分悪いだろうし」
「あ、そっか」
「全く。君はいちいち男っぽいんだから自重してくれ」
一時、街中でカップルと言う風にに見られたのは忘れがたい思い出だ。まだ兄妹の方がマシである。
そんなこんなで数分後、と言っても五分も経たない内にシモンズが出てきた。
「
「ッッ!?」
突然の大声にビクッと肩を震わせたアイヴィー。バランスを崩して倒れこんでしまう。
「ッ、大馬鹿者か君は。いや、君は大馬鹿だったね全く。
「あ、いや、怪我は無いので……それに、無理に英語でなくても大丈夫」
「そうか、それは有難い。こちらもここに来るため日本語の方が詳しくてね」
アイヴィーの手を取り立ち上がらせる。制服のゴミを落とし怪我がないのをもう一度確認してホッと息をつく。
「ほら、加害者がボーッと突っ立っててどうするんだ。ちゃんと謝れ」
「ぁぅ、申し訳ありませんでした……」
「いや、その、怪我も無かったし……気にしないでもらえると……、」
パタパタと手を振り苦笑を浮かべるアイヴィー。
何と言うか、とても一人でいるような冷たい娘ではない。それに少なくとも自分や万桜よりはよっぽど女の子らしい、と思う。
「あの、えと、お二人は……、」
「ああ、自己紹介がまだだったね。私はシュテファーニア・バイルシュミット。で、こっちが、」
「万桜・バイルシュミット!! よろしく、シモンズッ」
「あ、うん。アイヴィー・シモンズ、です。よろしく……。もしかして、姉妹?」
「そうそう、姉妹なんだ。義理だけど」
「私はドイツ人だが、こっちの大馬鹿は日本人でね。親がバツイチ同士なのさ」
「ああ、なるほど。それで同じ苗字なんだ……、」
「詳しくは知らないがね。まぁ何だかんだで一〇年の付き合いかな」
一〇年……、と感嘆した息を吐くアイヴィー。言葉が出ないのか、しばらく感心したようにボーッとしていた。
そこでピリリリリと電子音が鳴る。音源はアイヴィーの左手首に着けているアメジスト色のガントレットからだ。その音と共にアイヴィーの顔が真っ青になるのをシュテファーニアは見逃さなかった。
「あの、えぇと、その……。ご、ごめんなさいっ、用があるので失礼します!!」
「マジか、ごめんな急に呼び止めちまって」
「い、いえ……っ、そ、それじゃぁ……!!」
急ぎの用か。慌てて駆けて行くアイヴィーの背中を見つつシュテファーニアは思案する。
「……悪い子ではないみたいだな。寧ろ好印象を抱ける……マスコットキャラクターみたいなものか」
「いやぁ、アイヴィーは可愛いよなっ。あれがいわゆる“萌え”ってやつか」
「その意見には同意だが……。あれはちょっと人には言えない事情持ちの態度だったな」
「え? そうなのか?」
「君よりは観察眼に圧倒的に優れていると自覚はしている。しかし、ガントレットか……」
「何か心当たりがあんのか?」
「まぁ、ね。一年に“世界で唯一ISを動かせる男”の織斑一夏という奴がいただろ? 彼は腕のガントレットが彼の専用機となってる。それが重なってな。アイヴィーもガントレットをはめてた。でもだ。アイヴィーは今までずっと【打鉄】に搭乗してるものだから、何か引っかかってな。通信手段ならケータイがある。しかし、彼女のガントレットは何か通信手段に使われるものの様に見えた」
「よくそんなとこまで観察してるな……」
「まぁ実際、彼女が離れた後にずっと聞き耳立ててたんだがね。喋り声が一人だし電話だろう。ケータイも鳴っていないのだから、大方あのガントレットが電話の役割を担っているんだろう。異様にガントレットを気にする素振りが印象的すぎたからな」
「……もう心理学者にでもなったらどうだよ? 滅多に乗れないISなんかよりよっぽど儲かるんじゃね?」
「心理学なんて当てになんないからね。TRPGでダイスの結果がわからない心理学を振るのと同じさ。当たってるか当たってないかなんてわからないんだから。そんな運にかけるならよっぽど白と黒がはっきりしてる方が良い」
「難しい話すんなよ……」
「ちっとも頭を使うような話なんてしたつもりはないけどね?」
少しは自然に理解できるようになるように、と万桜に釘を刺しシュテファーニアは更衣室前から離れる。
「あ? ステフ、どこ行くの?」
「寮に決まってるだろう。今日は課題が山ほどあるから一緒にやろうなんて誘ってきたのはどの人かな?」
「あ、そうだった……」
勉強が嫌いな万桜の場合、誰かが彼女を見張らないとすぐに遊びだすのだ。シュテファーニアはその役に適任な訳である。
「テストもあっという間だし、早く勉強して休みたいんだ」
「うへぇ、めんどくさい」
「留年しても知らないからね」
「そん時は慰めてくれよぉ」
「そうなる前に進級出来るように頑張らないとな」
シュテファーニアの後ろを追う万桜はしょんぼりと肩を落とした。
この姉妹を子供にしたい