キノンの没作品シリーズ   作:いつのせキノン

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なのはViVid二次創作。
ベルカ時代から主従関係だった聖王家の付き人とアインハルトの話


魔法少女リリカルなのはViVid二次創作(タイトル未定)
タイトル未定


 

「マイクラ!!」

 

 大きな城で若い男の声が響く。慌ただしく早足で廊下を進む彼の髪は碧銀色で瞳は(ブルー)(パープル)のオッドアイ、覇王を受け継ぐ血統の証だ。

 彼は焦った表情で使用人の制止も無視して突き進み、やがて城の奥の分厚い木の扉を壊さんばかりの勢いで開けた。

 

「そんなに慌ててどうしたんだよ、我が同志」

 

 部屋の中は薄暗かった。蝋燭の灯りが手で数えられる程度の照明しかなく、不気味な雰囲気を醸し出す。部屋中には所狭しと分厚い書籍が本棚に並べられ、その本棚も部屋のスペース殆どを使ってしまう程の数だ。

 そんな空間にぽっかりと空いたスペースには簡素な机と魔導ランプが設えられており、そこに向かって車椅子に座る小さな影があった。

 見た目はまだ幼女と言えよう。疲労に蝕まれたような病的なまでに白い肌とショートヘア。前髪には左目にかかりそうな部分にだけ黒いメッシュが。瞳は吸い込まれそうな程の漆黒。頭の奥で何を考えているのか、何を飼い込んでいるのか見当もつかない程に、言ってしまえば気味の悪い色合いだった。

 そんな彼女は開いていた本から視線を上げて、もともと細かった切れ目を更に細めて振り返りじっと彼の表情を観察した。

 

「何だよ、私が何かしでかしましたと言わんばかりじゃないか」

「全くもってその通りだマイクラ!!」

「おぉっ、やっぱりそうか。流石は同志だ」

「今はそんなことを言ってる場合じゃないんだ!!」

 

 嬉しそうに顔を綻ばせてうんうんと頷く彼女に対し、彼は態度を変えることはない。

 

「取り敢えず来てくれ、マイクラ自身が、ちゃんと自分の目で確認しろ」

「同志よ、それは酷と言うものじゃないかな? 私は既に車椅子を動かす腕の力すらないんだよ?」

「魔法を使えばいくらでもできるだろう!?」

「悲しいかな、私は同志のように魔法力に恵まれていないんだ。もうそんな魔法も使える程元気じゃないんだよ」

「ッ~~~~!! わかった、じゃあ僕が押してやるからまずこの埃臭い部屋から出ろ!!」

「埃臭いとは失敬な。ちゃんと掃除だってしてるんだぞ」

「全部部下にやらせてるだろうが、全く……ほら、行くぞ!!」

 

 彼女の座る車椅子を押し、部屋を出て行く。使用人達が止めに入るがやっぱり無視。2人は速いスペースで城の外へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ベルカ時代にかつて栄えた遥か昔の大地。王達はいつしか戦乱の時代へ巻き込まれて行き、儚く消えてゆく。諸行無常の世の中で、彼らは遠い未来を思い、そして眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い部屋。広い筈のその部屋は本棚が肩を並べ、奥に開けたスペースには机と電気スタンドが。部屋の灯りはそのスタンドだけで、灯りに照らされながら背丈の小さな彼女は静かに分厚い書籍を捲っていた。

 彼女の髪は病的なまでに白い。それは肌にも言えることだ。黒いメッシュの入った髪を時折弄りながら、黒い瞳で文字を追って行く。

 不意に胸元から音がする。首からかけたネックレスの先には透き通る銀色の輝きを放つ8面体の結晶が。昨今ではデバイスと呼ばれるその端末が点滅し、彼女の前に空中ディスプレイを展開した。

 もうこんな時間か、と彼女は呟き、本にしおりを挟んでから部屋の外へ向かう。歩くのではなく、車椅子で。魔導機器により自動化された車椅子は狭くなった部屋をするするとつっかえることなく通り抜けて見せた。

 

 向かった場所はキッチン。車椅子に座る彼女でも作業がしやすいように調整された物だ。慣れた手付きでテキパキと準備を進め夕飯を作る。今日のメニューは鳥の照り焼きをメインにポテトサラダを付けて、あっさりしたオニオンスープが良いだろう。台所は彼女の独壇場と化すのであった。1人しかいないけれど。

 

 

 

 

 

 夕飯が8割方完成する頃。玄関の方から声がした。同居人の帰宅だ。

 1度作業の手を止めて玄関へ向かうと、St.ヒルデ魔法学院中等科の制服に身を包んだ少女がブーツを脱いでいるところだった。

 碧銀の長い髪をリボンで纏め、碧と紫のオッドアイを輝かせる、物静かな表情の彼女は、アインハルト・ストラトス。正式に覇王の血統を受け継ぐ、齢14の少女である。

 

「おかえり、我が同志。夕飯ならもう少しでできるから、シャワーでも浴びてきなよ」

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」

 

 持っていた鞄を預かり、再びキッチンへ。さぁ、最後の仕上げだ。

 

 

 

 

 

 食卓に並ぶ夕飯を見て「よしっ」と満足気に彼女は頷く。我ながら良いデキだ、とは毎度ながら勝手に思うことである。

 

「おっ、上がったみたいだね。疲れはとれた?」

「はい。特に問題は……、」

「……んふふ、嘘はよくないねぇ。んまっ、取り敢えず食べなよ。味は保証するさ」

 

 トレーナー姿に着替えたアインハルトに座るよう促し、自身も席に着く。いただきます、と手を合わせてから、まずはスープを一口。調味料も控えた薄味だが、これで良い。向かいのアインハルトも静かにスープを飲んで、ポテトサラダを口に運んでいた。

 

「……美味しいです」

「そりゃ良かった。いっぱい作ったから、しっかり食べて栄養取ってね。……で、進捗はどう?」

「……あまり、芳しくはないです。手掛かりが少ないので」

 

 アインハルトの手が少し止まる。彼女自身の目的の行き詰まりが、表情に苦悶を現す。

 

「そうかい。それじゃあ今度は例の人を当たってみようか」

「例の、人……?」

「そう。ノーヴェ・ナカジマ。聖王の子の、ストライク・アーツの師匠をしている人物だよ」

 

 ひとりでに彼女の横にディスプレイが映り、次々と整理された情報がピックアップされタブごとに表示されて行く。その殆どが、アインハルトが知らない情報。今目の前にいる彼女が調べ上げた、信頼できる情報だ。

 

「ナカジマ家の人は皆聖王に関わりを持つ。ノーヴェ・ナカジマはその中でも特に聖王との関わりは深いんだ。彼女に聞いてみれば良いと思うよ。それと、冥王については彼女の姉、スバル・ナカジマが良いだろう。ただ、彼女は管理局にも顔の知れている人物だ。無闇な接触は大事になりかねないからあまりオススメはしないけどね」

 

 と、言ったとしても君はそんなことはお構いなしなんだろうね。敢えて口には出さず、彼女は言葉を胸の内で消化した。

 

「情報は全て渡そう。後は君の自由だ、我が同志。やりたいように、後悔のないように、好きなことをしてくれ」




原作はスポコンなのに、それを真っ向から捻り潰すような魔法戦を軸に置いたものを書きたかった。シリアスになりそうだったのでやめた。
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