ふと、篠ノ之箒はアリーナを飛び交う白と蒼の見やりながら呟いた。
「……ぎこちないな」
呆れ返るような声音。失望、落胆、そこには負の感情が混じる。
「そう思うか、篠ノ之」
そんな箒に、同じく試合の行く末を眺めていた織斑千冬が問い掛けた。その顔に浮かぶのは微かな笑み。まるで面白いものが見えそうだと、童心に帰って喜んでいる。そんな風にも見えた。
「……全くモノにできていない。寧ろ機体に振り回されている。私はそう思います」
「然り。これで三度目の起動だ。時間にして僅かに数分、モノにできる訳がない」
それに、と千冬は続ける。
「訓練用の『打鉄』とも違う。アレは専用機たる『白式』だ。誰もが乗れるのではない、たった一人の為だけの機体だ。『白式』が一夏を認めない限り、絶対に乗りこなすことはできんさ」
「……一夏は、認められるんですかね」
「なに、心配なんぞする必要もない。一夏はやるさ。――――私の弟なら、これくらい軽く乗り越えてもらわねば困る」
◆
なげぇ。たった数秒が何分にも感じるくらいになげぇ。
俺は一体何時間飛んでる? たったの10分だと?
ウソっぱち言いやがって、
クソッタレ、奴さん全く隙が見えねぇ。武器が変わってから尚更だ。
あの黒いライフル、
当たり前だよなァ、食らったら装甲まで抜かれるハズだ。次当たったら間違いなく勝負が決まる。シールドエネルギーが残っていようがアウトだ、当たれば絶対怯む。
連射が効かなかろうが全く関係ない、アイツは当てる、
近付こうにもプレッシャーがヤバい。太刀一本背負ってるだけの俺に出来るのは寄って斬るだけ。
でもアイツは突っ込もうとした瞬間に当ててくる。
実際に撃たれた訳じゃない。ただ、俺が踏み込もうとした瞬間、
咄嗟に退いてなきゃ間違いなく今頃俺は土の上で負け犬宜しく這いつくばってた。
誰がどうかじゃなくて、俺が俺を許せねぇ。喧嘩売られて堂々買って負けるなんざクソだ。木偶の坊の極みだ。そんなモン、犬の糞の価値すら無い。
さて、どうする。どうすれば勝てる?
全く思い付かん。そもそも下手に止まればその瞬間負け確定なワケであって、そんなんじゃ落ち着いて考えることなんかできやしない。
「た、タイムっ!!」
「却下ですわ」
即答ォーッ。つらいッ!!
射撃を外すように横移動を繰り返す。
おわり