キノンの没作品シリーズ   作:いつのせキノン

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「――――という訳で、全てはブラフだった」

「うぉぉぉぉ……完全に嵌められてたのか、俺……」

 

 放課後も大分時間が過ぎ去りそろそろ5時半を回って6時も近い。

 アリーナに併設する更衣室でベンチに座った2人は今日の模擬戦での話をしていた。

 

「……私には何もないのか……、」

「わたくしと2人だけだった筈ですのに……、」

 

 一方女子2人は落胆していた。予定が狂いすぎた上に一夏は相変わらず話に夢中だ。同じ男同士というアドバンテージは大きい。

 

((……まさか、そっちの()が……!?))

 

 思いかけて首を振る。それはいくらなんでもあれだしあれだしあれがあれなので、信じたくはない。

 わなわなと2人が戦慄していると不意に更衣室の扉が開く。

 

「おいーっす、一夏お疲れーっ――――って、夜野じゃない」

「ん?」

「お、鈴か」

 

 入ってきたのは凰鈴音。手にはタオルとスポーツドリンクの入った水筒があった。

 

「流石は男子、距離が縮まるのが早いわね。はいこれ、ドリンクね。ちょっとだけ温めにしといたわよ」

「おーサンキュー。…………ふぅ、生き返る」

「ジジくさいわねぇ」

 

 くすくすと笑みを零す鈴音に「う、うっせぇ」と一夏は慌てたように顔を逸らした。まぁ確かにジジくさい気がしたのは同意する。

 

「あまり飲み過ぎると夕飯に響くかもしれんぞ。と、言う訳で俺は早めに上がらせてもらおうか」

「腹減ったのか? まぁもうこんな時間だもんな」

「学食? 一夏も一緒に行くの?」

「まぁな。食堂も丁度寮への行きがかりだし、荷物纏めて夕飯食って部屋帰るって感じだな」

「じゃあアタシもついてこーっと。外で待ってるわね」

「了解。日影は――――って制服そのまま着るのか?」

「ISスーツの上に、ということか? まぁ見ればそうだろう。どっかの動き回る誰かさんと違って俺は動かないから汗をかかないのさ」

「ちぇー羨ましい。俺は流石に着替えねぇと臭いが移りそうだからな……鈴と一緒に待っててくれ……ん?」

「どうした?」

「いや、そう言えば鈴と知り合いみたいな雰囲気だったけど」

「まぁ同じクラスで転入日も同じだったからな。お互いとも印象付くさ。取り敢えず、外で待ってるぞ」

 

 パシュゥ、と扉が開き外へ出る。そこでは何故か女子3人が睨み合いをしていた。さて、これは関わらない方が良い雰囲気だ、と言う訳で見て見ぬふりをし廊下の壁に背を預けて携帯を取り出した。

 

 

 

 

 

「よっす、待たせた。ってアレ? セシリアと箒は?」

「気付いたらいなくなってたから知らんね」

「同じく」

 

 2分程して一夏が着替え終わり鞄を持って出てくる。もう既に箒とセシリアの姿は無く、ちょっと不機嫌そうな鈴音と2人しかいなかった。

 

「先行ったのかな。まぁいいや。取り敢えず行こうぜ」

「ねぇ一夏」

「ん? どうした藪から棒に」

「一夏さ、あの篠ノ之箒とか言うのと同室なんだって?」

「ああ、そうだけど」

「何で!?」

「何でって……そりゃ俺はかなり特殊な転入だったからな。部屋が用意出来てなかったからあそこに無理矢理詰められたんだ。日影もそうだよな」

「俺に振るのはどうかと思うところだが……まぁそうだな」

「取り敢えずは幼馴染みだから助かったってもんだ。赤の他人だったら本当に落ち着いて寝れなくなるし」

「幼馴染みなら良いってことね!?」

「えっ」

「わかった、わかったわ。一夏、首を洗って待ってなさい!!」

「は、ちょっ、鈴……!? ……行っちゃった。何で俺首を狙われるハメになってるんだ……?」

「さぁね。未来の自分にでも聞いてみることだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏は後ろから刺されたか。なんて、不謹慎なことを考えつつ夕飯を終えて部屋へ戻る。

 既に同居人の束音は帰ってきているようで部屋の鍵は開いていた。当然自室なのでノックなしに遠慮なくドアを開ける。

 

「む」

「うん?」

 

 中にはバスタオル1枚の束音が髪を乾かしていた。

 

「もう入ったのか。では遠慮なく次使わせてもらおう」

「いや慌てろよ。何で何事もなかったかのようにしてんのさ」

「別に俺がお前さんに襲い掛かる訳でもないしお前さんは見られても何も思わないんだろう? 面倒事を起こさないで済むじゃないか。ここでは何も起きなかった、そういうことだ」

 

 飄々とした態度でカバンを置くのに対して束音は若干納得行かない表情。確かに羞恥心は無いのだが、異性の半裸を見て興奮しないのはどうかと思う。

 

「カミングアウトなんてないからな」

「んなもん期待したかねーっつーの!!」

 

 止めてくれ、利害の一致とは言え陣営の者が同性愛者なのはいたたまれなすぎる。

 

「アンタはナイスバディな女が迫ってきても反応しないの? ED?」

「アホか。なんなら今すぐにでも犯してやろうか」

「きゃーおかされるー」

「萎えるわ」

「おう魅力が無いっての言いたいのか? あ?」

 

 結局は無反応だ。胸だってあるしスタイルも抜群。世の中の男ならとっくにタカが外れていそうな程に束音は無防備なのだ。

 

「それは置いておくことにしてだ。時にお前さん、もうそろそろクラス対抗戦の時期だが準備は出来てるのか?」

「それなら4月中にとっくに。下地だけなら8月分まで済ませてるから問題ないよ」

「重畳。俺の出る幕は無さそうだ」

「出たかったの?」

「いや、寧ろ別の要件があるから面倒事はしたくなかった。VTシステムの件でな。お前さんが潰したのはあそこだけだが、本来の黒幕は別だ。俺はソイツの処理に出なきゃならん」

「もしかしなくても繋がってるってやつ?」

「そう言うこった。それに、可能性として前世とは違うアプローチも有り得る。準備を怠りたくはないんだ」

 

 事態は常に最悪を想定する。真剣な表情で紡ぐ彼の言葉に、束音は何も言えなかった。

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