キノンの没作品シリーズ   作:いつのせキノン

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冬木

 

 荒野が続く世界があった。

 

 色を失った空で■る■■と、持ち■を失った■たちが立ち並ぶ1つの世界。

 

 男は1人、■い■■を羽織り、■の上に立っていた。

 

「……貴方は……」

 

 思わず口から漏れた小さな声。

 反応した男が、こちらを振り返った。

 

「不思議な光景だ。まさか■の■■がこんな形で見れることになるとは」

 

 その男の顔はよく見えなかった。映像がぶれてしまっているようで、彼がどんな表情をしているのかもわからない。

 言葉の端々もノイズに掻き消されてよく聞き取れなかった。

 

「直接的に繋がらない■■だとしても、君は紛れもなく■の一部を■■する要因に成り得るのだろう。ならば■がこうして■がるのも不思議な事ではない。……っと、独り言が過ぎた。忘れてくれ」

 

 辛うじて、男が肩を竦める動作だけは見えた。声音から苦笑しているらしいが。

 

「憎らしい■と違って、君は大層素直そうだ。結果の行く末を眺めてみるのも、悪くない選択肢だとは思わんかね?」

 

 すぅぅっと、意識がまた遠くなってくる。

 

 世界が遠ざかってゆく。小さく小さく、■の中へ戻ってゆく。

 

「鍵は授けられた。後は使い方次第だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォウ、フォーウ!!」

「ぐへっ」

 

 お腹への衝撃に情けない声が上がった。(もや)のかかる思考で何なんだいったいと愚痴を吐き、仰向けの体の上に乗り上げた何かを触った。

 

「…………あー……リス……?」

 

 薄っすらと目を開けて視線を向けると、そこにはカルデアで見た謎の生物が1匹。相変わらず立派な毛並みだ。

 やるせない気持ちでボーッとしたまましばらく撫で続け、やっとこさ思考が正常に回り始めた頃、ようやく辺りの様子を把握した。

 

「……外?」

 

 日がすっかり落ちた屋外だ。辺りは真っ暗、と言う程でもなく、あちらこちらから赤い光が――炎が黒い地面を照らしていた。

 

 ここはカルデアではない。標高6000メートルの景色はこんなものではなく、もっと雪深く凍えるような寒さが生命の存在を拒むような所だ。仮にあの火災の中で建物が崩壊したとしてもこうはならない。

 しかし今いる場所は違う。星の見えない夜空が広がる下、倒壊した街並みが火の手を上げて眼前に満遍なく俯瞰(ふかん)できる。

 

「フォウ、フォウッ」

「……あ、あぁ……うん、大丈夫だよ……」

 

 幸いにしてこの周辺に火種は無く、焦げ付いたコンクリートの上に寝ていたらしい。

 まだ痛む頭を抑えつつ、お腹に乗っている白いリスを抱えて起き上がる。

 ここはどこか、誰かいないのか。

 

 マシュはどこに行ってしまったのか……。

 

「……ここが地獄ってところなのかなぁ……」

 

 東洋の宗教にあるソレを何となくイメージしてみる。

 思ったよりも現代的だなぁ、と危機感のない呟きは虚空に吸い込まれる。辺りに生物の気配はなく、誰も答えてはくれなかった。

 臭いも酷い、と言いたいのだがカルデアの火事で嗅覚が麻痺してしまったらしく鼻が効かない。これはこれで助かったと見て良いのだろうかと思案する。

 

 それにしても死後の世界というのはリアルだ。熱も風も臭いも、五感全てが全うに働いている。人間の身体から魂が離れたとして、しかし魂だけになっても神経機能等は正常に動くのか、と。

 

 このリスまで一緒に来てしまったのは可哀想だが、致し方ない。死んでしまった身、この後どうすれば良いのか皆目検討もつかない今、特にやらなければならないこともない。

 せめてものマシュが見つかれば……。そう思い、炎の街をゆっくりと歩き始めた。

 

 ジャリジャリと小石を踏み、不安定な足場が続く。どうしてこんな冒険紛いの事をしてサバイバルに片足を突っ込んでしまったのか。

 思えば後悔ばかりだ。何で死んでしまったのか。まだ大人にも成りきれてなくて、やりたいことだっていっぱいあった筈だ。人並みに彼氏を作ったりだとか、人並みにお金を稼いで趣味に使ったりだとか、人並みに海外旅行をしたりだとか。

 記憶が無くなってしまっても、やっぱり生きていたかった。寿命を迎えて老衰で死ぬのが一番幸せだと思っていたのに。

 

「……はぁぁ……、」

 

 悲壮感はある。だが涙は枯れてしまったのか。空虚な溜息だけが出てきた。

 懐に抱えた白いリスだけが気を紛らわせる唯一の癒しだ。やわらかい毛並みが本当に羨ましい。

 そう言えば髪の毛の手入れをしていないなぁと思う。触ってみると火事の影響なのか毛先が傷んでいてボサボサだ。死ぬ直前の姿が反映されてるのだろうか。

 よくよく考えてみれば服装もカルデアで支給された服になっている。ブーツまでわざわざ揃えられた、それなりに値段の張りそうな物だ。残念ながら倒れていたお陰で既に煤だらけなのだが。

 

「……シャワー……ないか……」

 

 言ってみて、無いだろうなと自問自答。汗でべたつく身体を洗い流したい。そう思わずにはいられなかった。

 

 あてもなくふらふらとさ迷い幾ばくかの時間が経つ。相も変わらず景色は惨いまま。白いリスを抱え続けるのも飽きて今は肩に乗せている。そろそろ何か次のイベントが起きてもいいんじゃないだろうか、なんて考えつつ瓦礫の谷をよたよたと歩いていた。

 

「……痛っ!?」

 

 と、その視界の狭まる道を行き曲がり角。不意に視界外から歩いてきた影にぶつかり、よろよろとバランスを崩し尻餅を着いた。地味に細かい砂利が痛かった。

 

「うぅ……す、すみません、でし、――――うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 人影のようなものを見上げ、そして絶叫。悲鳴を上げながら後退り。

 直後、さっきまでいた場所に刃こぼれの酷い剣のような物が降り下ろされ地面を叩く。

 見てみればその影は骸骨。カタカタと骨を揺らす白い化け物が幾らかの布を身体に巻いて、大きな剣を持っていた。

 そして嫌なほどに感じる殺気。明らかに死んでるようにしか見えないアンデッドエネミーからひしひしと隠されることなく溢れ出て来るソレ。

 

 非常識オブ非常識とは正にこのこと。

 地面に食い込んだ剣を再び持ち上げて眼球のない顔でスケルトンがこちらを見やる。

 

「聞いてない聞いてない聞いてない聞いてないぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

 

 すぐさま立ち上がって回れ右、頭のリスを再び抱えてさっき来た道を引き返す。

 と、後ろのスケルトンが追いかけてくるではないか。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? こわっ、来んな!! こっち来んなバカヤロォォォォォォォォ!!」

 

 どこのホラーゲームに紛れ込んだと言うのか。人型には似つかわしくない、寧ろ関節可動域やら構造を無視した不安定な走りでがらがらと骨を揺らし音を上げて走ってくる。

 野郎なのか女郎なのかはともかくとして、追い付かれたら死ぬだろうなというのは充分理解できた。刃こぼれしてる剣だろうが、鈍器にするなら破格の性能だろう。地面にめり込んだ時点で人体に対し過剰威力だ。




以下ネタバレ。

ぐだ子のデザインが士郎を踏襲したものと知り、じゃあ無限の剣製いけるな? となって書いた。冬木のラストでセイバーあたりに斬られてから覚醒、みたいなストーリーを妄想してた。あとはぐだマシュの百合。
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