カッコいいノッブとぐだ♀マシュが書きたかった。
あとはオリ鯖も出してみたかった。
アバンタイトル
その知らせを聞いたのは、わたしがマシュと一緒にお風呂に入ろうと画策していた時の事である。
「特異点……の成り損ない?」
まだまだ痛々しい惨状の影を落とす管制室に呼ばれたわたしとマシュを待っていたのはいつものゆるふわ系ドクター、ロマン。
「そうなんだ。いつか特異点に成り得る可能性を秘めたモノ。現状だとガンを早期発見できたものと捉えてもらって構わないかな」
「そっかー特異点かー。また下らない事で呼び出されてマシュと一緒にお風呂でキャッキャうふふを邪魔する魂胆だったらアームロックかけてましたよ」
「部屋に来た時点で僕の腕を持ち始めたのってそういう理由だったの!?」
マシュに「先輩、それ以上はいけません」って言ってもらえれば完璧だったのに。ちぇっ。
「それでドクター。成り損ないとは言え特異点、勿論行くんですよね?」
「話が早くて助かるよ、マシュ。そういう訳だからレイシフトの準備を始めて欲しいんだ」
「急だなぁ……まぁいいや。特異点ならやるしかないし」
「頑張りましょうね、先輩」
「うん!! 頑張る!! 頑張ったらマシュからご褒美ね!!」
「ご、ご褒美、ですか……? えっと、えぇっと……」
くぅ~!! 一生懸命悩むなんて愛いやつめ!!
「まー別にそんな焦らなくて良いよ。わたしもそこまで本気じゃないし。……
「? 何かおっしゃいましたか?」
「何でもないさー」
「……君って本当、マイペースだよねぇ。まぁその方がやっていく分にはいいんだろうけど……」
マシュに慰めてもらえるとか最高だろ常識的に考えて。
特異点モドキの年代は西暦1600年の極東、日本。日本史ので言えば戦国時代の終わり、江戸時代の始まりが訪れる直前の年でもある。
この年の出来事となると、日本が東と西に分裂した関ヶ原の戦いが有名だ。主な構図は徳川家康率いる東軍と、豊臣の後を次ぐ石田三成率いる西軍との対決である。
記録によれば東軍の勝利に終わりいよいよ徳川幕府が日本を統治するのだが……。
今回の人類史の歪みはその一歩手前にあるらしい。
「恐らくだけど東軍が勝つには難しい状況になる原因があるんだろうね」
とはロマンの談。つまりわたしのやることは東軍に加勢して史実通りの結果を再現することにある。
「今までのやり口を考えると、西軍に聖杯を渡すなりで戦力を増強してる筈だ。だからこちらもサーヴァントを連れていって戦に勝つ必要がある。選定は君に任せるけど、いつも通り全員を連れて行ける訳じゃないからね」
「サーヴァント選定かぁ。日本だし、やっぱその辺り詳しい人連れて行きたいよねぇ。あっ、戦国時代ならノッブとか!!」
「えっ、先輩正気ですかッ!?」
マシュに頭の心配されたら死ぬしかないじゃない。
「ああああごめんなさい大丈夫ですッ、先輩の頭はまだ大丈夫な方です!! いっつもお菓子食べてるドクターよりは!! だからそんな部屋の隅に縮こまらないで下さい!!」
「ならいいいや」
「そろそろ僕の待遇改善しない? ねぇ?」
いつもの事だろうに。
さて、言われた通りサーヴァントの選定だ。
現在カルデアには召喚システムで呼び出したサーヴァントが何人も常駐している訳だけど、残念ながらわたし1人だけだと彼らを現界させる魔力量はとてもじゃないけど確保できない。その辺りはカルデアの施設のバックアップのおかげでどうにかなっているんだけど……。
残念ながら支援範囲はカルデア内だけで特異点にまで範囲は及ばないのだ。よってレイシフトした場合はサーヴァントの全魔力を私が請け負うことになる。ということは全員を連れて行ってゴリ押し解決、なんてのは期待できない訳でありまして。
マシュはデミ・サーヴァントでわたしともパスは繋がってるけど、元が人間だから現界に必要な魔力は必要ない。その分霊体化ができないけどそれはそれ。
話は戻して、わたしが賄える魔力は精々サーヴァント1人が限界になっている。よってレイシフトで特異点へ連れて行けるサーヴァントは1人だけ。つまり選定は入念かつ慎重に行わなければならない。
「……ふと思ったんだけどさ」
特異点攻略前は必ずサーヴァント全員を招集してブリーフィングを開く。それから選定に移る訳なんだけど。
「何で東洋系のサーヴァントって少ないの?」
食堂を借りてそこら辺にあった椅子に乗りぐるっと見渡す。
その顔触れは大半が西洋に偏っている。アジア方面の顔ぶれが本当に少ない。
「元々召喚システムが西洋で作られたのもあるんじゃないですかね? そう言った意味で東洋系のサーヴァントは引っ掛かりにくいとか」
そう言うのは桜色の羽織と紅色の袴姿でお団子をもちもちと食べるおき太さんこと沖田総司。日本では誰しもが知っているであろう新撰組の一番隊隊長だ。しかしわたしは日本人ではないのでどの程度の人なのかはサッパリである。
しかしおき太さん、顔が本当に似てる。具体的に言うとアルトリアとかジャンヌとかモーさんとか。お前ら別人だろ何でだよ。
「サルでも呼べぶか。あ奴なら喜んで来るじゃろうて」
そのおき太さんの隣ではお茶をすする少女、ノッブこと織田信長が。日本史で必ず習う戦国武将筆頭の1人で、第六天魔王を自称するのじゃ系女子だ。史実じゃ男だった筈だけど。
見た目に反して戦略思考に長けた武人……なんだけど結構フレンドリーだったりする。おき太さんとセットでの目撃情報が多い。あとたまにちっちゃいのを見かけたりする。
「……何かすげぇ不安になる面子だな」
2人の対面にはすごく不満そうな式ちゃんこと両儀式。ちゃん付けすると怒ってコワいので呼び捨てにするようしてるけど慣れてないから時々地雷を踏み抜いたり。
どうやらとんでもない魔眼の持ち主らしくどんなものも“殺す”ことができるんだとか。すごいねぇって言ったら「お前本当に把握してんの?」って言われた時の顔を良く覚えてる。
「仕方ないんだよ。何もかもガチャ運が悪い。聖晶石あんだけ溶かしたのに…………溶かしたのにさぁぁぁぁぁぁぁ……、」
「あ、先輩のトラウマがッ」
くそぅ、何でウチのカルデアには金時が来ないんだ!!
「……あれ、エミヤさんはどうしたんです?」
と、不意にキョロキョロとおき太さんが周辺を見回す。確かに今はアーチャーことエミヤは不在だ。ブリーフィングのはじめに日本に関係するサーヴァントを寄せ集めた訳なんだけど。
「アイツなら、ほら、あそこ」
式ちゃんの指差す方を見てると、食堂でわいのわいのと談笑するサーヴァント達に飲み物を配給するエミヤの姿が。ウェイターの恰好もよく様になっていて良いね。
「おーいエミヤ!! 茶をもう一杯じゃ!!」
「待っていろ、すぐに行く」
「あ、私もお団子のおかわりくださーい」
「少しは食べるペースを考えろ。夕飯に響く」
ノッブとおき太さんの声に何だかんだで世話を焼く姿はすっかりカルデア名物となってしまった。生前はきっと執事でもやっていたに違いない。本人も性なのか楽しんでる節も見受けられる気がするのでそのまま放置している。これはこれで厨房がよく回るので助かるのだ。
「質問なんだけど、エミヤは今回の特異点出る気ある?」
「君は確かその時代に詳しい人を連れて行きたいと言っているのだな。残念ながら私は現代から未来へかけての英霊だ。戦国時代の内容は授業で習った程度の知識しかない」
「それ言ったらオレもなんだが」
「私も幕末からですし、消去法でノッブだけになりません?」
「おき太の出番ないとかノッブ最高に笑える」
「マスター私連れてって下さいよ私。周回より攻略向きですよ」
「さり気なくアピールとかずるいぞおき太!! わしなら神性ライダー特攻込みでお得じゃぞ!!」
「大丈夫かこれ」
「はた目から見れば大丈夫とは言い難いだろうな」
不安しかないよぉ……。
「うぅー……ちょっと待って、いったん保留。マシュと相談してくる。あ、他のサーヴァントは皆解散でいいよ。エミヤ言伝お願い」
「了解した、やっておこう」
取り敢えず困ったときは相談だ。可愛い後輩ならきっと答えに導いてくれるハズ……!! ついでにロマンとダ・ヴィンチちゃんも呼んでおこうかな。
「――――と、言う訳なんだけど」
一度食堂を抜け出して廊下の休憩スペースに集まったわたしとマシュとロマンとダ・ヴィンチちゃん。
ダ・ヴィンチちゃんとはご存知レオナルド・ダ・ヴィンチその人。見た目はモナリザだが歴とした彼の万能人である。キャスタークラスで召喚された彼女は、わたしがカルデアに来るよりも前からカルデアの一部に工房を作ってそこに住み込んでいるんだとか。特異点修復の際には物資の転送をお願いしてもらっている。
「時代を考えてみると良い」
説明し終えたわたしにそう言ったのはダ・ヴィンチちゃんだ。
「日本の戦国時代もいよいよ幕を閉じようとしているのは確かだけど、それでも武将たちの雌雄を決する場だ。必ず“戦”が起こる」
戦。つまり戦争だ。
戦争と言うと現代っ子なわたしは銃器だとか戦車だとか戦艦だとか、そう言った現代戦を思い浮かべるけど、戦は違う。軍と軍のぶつかり合い、1人1人が武器を抱えて戦場を駆け回る。
「必然的に相手にする人数も多くなる、ということですね?」
「そう。サーヴァントもいるけど、何より厄介なのは“数”だ。サーヴァントの“質”ならいくらでも突破可能、と思っていても相手にだってサーヴァントはいるからね」
マシュとダ・ヴィンチちゃんの話を聞いてなるほどとわたしは納得した。
戦は多対多の物量戦。よって1対多に対応可能な方が良い、ということだ。
「ぴんぽーん。正解だ。という訳で織田信長を連れて行くのが最善策だろう。いやなに、人類史の為なら彼女もしっかり働いてくれるさ」
ダ・ヴィンチちゃんのお墨付きなら信用して良いかな、とも思う。取り敢えず、ノッブの場を引っ掻き回すクセさえどうにかしてしまえば…………あれ?
「対処できるビジョンが思いつかない……」
「あはは、そこはアドリブで頑張ってもらう他ないねぇ」
「後方支援だからって気を抜きやがってこのゆるふわぁッ!!」
「ちょ、ま、アームロックはかんbがあああああああああああああああああっ!?」
「それ以上いけない」
やんわりとダ・ヴィンチちゃんに解かれロマンは事なきを得やがりましたとさ。チッ。
「僕さ、最近思うんだけどさ、本当に嫌われてる気がするんだよ……」
「……大丈夫、だと思いますよ……?」
「ロマニはたまに無自覚な地雷踏み抜くからねぇ。まぁ彼女もじゃれ合いの一環なんだろうし、大目に見てやりなよ。大人は我慢だ」
「とほほ……」
「そんな訳でノッブ行くよー」
「出番ktkr!! 第一節、完!!」
「まだ終わりませんよ?」
という訳で人選終了。レイシフトメンバーはわたしとマシュにノッブの3人だ。
各人準備を終えて管制室に集合。いよいよレイシフトの運びとなる。
「妥当っちゃ妥当なんだろうけど……不安になる」
と語るのはお見送りに来た式ちゃん。フリーダムなノッブには疑惑目線だけどノッブは全く気にしてない。
「まー大丈夫だよ。最終手段がない訳でもないし。……ところでおき太さんとかは?」
「エミヤに団子の食い過ぎで説教食らってる。ほっとけ」
大方ノッブに出番をとられて不貞腐れてるってところかな。今度埋め合わせを用意しないと。
「レイシフト準備完了だ。皆、コフィンに入ってくれ」
「はーい。じゃ、行って来るねー」
「では、式さん。カルデアをお願いします」
「オレに任されてもね……まぁ、いいか」
行って来い、と言ってくれた式ちゃんと軽く拳を突き合わせ、コフィンへ。この中に入るといつも緊張するのだ。コックピット風味なのがそうさせるのか、いよいよ出るんだなぁって。
『じゃあレイシフト開始だ。いつも通り頼むよ。健闘を祈る』
ロマンのいつもと同じ穏やかな声を聞いてわたしは目を閉じた。
『往くぞ、マスター。緊張せずとも日の本はわしの土俵、案ずるより産むが易しじゃ』
ふと念話でノッブの声が聴こえてくる。いつもカルデアで見る時とは違う、凛とした芯の通った激励だ。
「……ありがと。頼りにしてるね」
『ククッ、っははははははははッ!! 良い、良いぞマスター!! 是非もなし!!』
一度は日本の天下を取りかけた人物。やっぱり精神の根っこが一般人なわたしとは全然違う。元気な笑い声と言い、戦場でこれ程頼もしい人はいないんじゃないかな。
【アンサモンプログラム:スタート】
【霊子変換を開始します】
【レイシフト開始まであと3】
【2】
【1】
【全行程、
【グランドオーダー:実証を開始します】
視界に光が飛び込んで来る。白い明りが輪となって、わたしを運んで往く――――――――
特異点EX “毘沙門天の化身”
AD.1600 終末戦国時代 関ヶ原