変わったことと言えば、パンツに不自由しなくなったのと手頃な大きさの部屋に来れたということくらい。非常に気が楽で助かる。
しかし同時に困ったことにも気付いて色々と辟易した。
言ったことがあるかもしれないが、
最初は酷く……その、興奮気味だった。罪悪感と同時に背徳感。別にロリコンじゃないし。でも誰だって女の子が裸だったら危ない感情抱くでしょ……? そんなもんだ。
でも何だかんだで慣れたし自分で自分にハァハァしてる絵面を想像して萎えた。萎えるモノもないけど萎えた。気持ち悪いの一言だった。
本は文庫とかハードカバー等、ジャンルも種類も問わず。とにかく片っ端から読み進めており、部屋の片隅には読み終えた本が山積みになっていた。
クロエ・クロニクルになる前は大して好きでもなかった読書。寝る以外にやることがない以上そうやって読書を進めていると不思議に慣れたのか今は大して苦痛にはならない。チョイスが優れて内容が面白いというのもあるのかもしれない。
今日も今日とて読書に明け暮れてベッドの上でページを捲る。今読んでいるのはSFモノのハードカバー本で昨日からじっくり読み進めてる途中である。
「失礼するよ」
のんびりとした時間を過ごしていると主任が入って来た。主任というのは目が覚めた時に色々教えてくれた彼女のことだ。こうして毎日よく様子を見に来てくれている。
ベッドで寝ていた身体を起こして本にしおりを挟み「おはようございます」と挨拶。彼女も「ん、おはよう」と小さく返してくれて、これはこれでいつも通りだ。
「今日は、その分厚いやつかい?」
「はい。SFモノですね」
「ふむ、エンデュミオンか。名前だけは聞いたことがある」
「有名なのですか?」
「まぁまぁ、じゃないかね。私がまだ少女だった時代のものさ」
それ相当前なんじゃないですかね、と言おうと思ったけど口を噤んだ。何か、触れちゃいけない闇に触れそうな気がした。
「今日はどうされたのですか? 定期検診は明日と聞いてましたが」
「いやなに、我々からちょっとした贈り物があってね」
いつも通り疲労の濃い表情のまま薄く薄く微笑んだ。
はて、贈り物とはなんだろうか。いつもなら特に何かを言う訳でもなく贈られてきた本が部屋の隅に積まれていくのだけど。
「まずは私から1つ。これだ」
「…………鍵?」
「こことはまた別の部屋だ。今度から完全に観察もなくなるからね。至って健康体だから、ということでこの部屋ともおさらばな訳だよ」
今までは意識が覚醒したばかりということで注意深く経過を観察して診断も頻繁に行っていたが、それも今日が最後と言うことになる。彼女が言いたいのはそういうことだろう。
「それと、これは職員達からだ」
次に渡されたのは、紙袋。何か色々入っているらしい。開けてみろ、と言う彼女の声にテープで止まっていた口を開けて中身を取り出す。
「……これは……」
「皆が似合うからと言ってな」
出てきたのはフリフリのヒラヒラが付いたゴスロリとでも呼ばれそうな白いブラウスとスカートもセットに。黒いソックスもある。
「……いきなりこれレベル高くないですか? コスプレ? 原宿か何かですよね」
「君の口から原宿なんて言葉が出るとは……気に入らなかったか?」
「い、いえ、別にそんなことはないです。贈り物なんて初めてなので……」
ちょっと悲しそうな顔しないでほしい。嬉しさより驚きの方が大きかっただけだから。
しかしよく触ってみると良い手触り。きっと高級な素材を使ってるに違いない。
「……と言うか、よろしいのですか? こんな高価な物を……」
「ああ。君の健康を祝ってのことだ。大切にしてくれると皆が喜ぶ」
おわり