ガンダム-バトルワールドフロンティア-   作:蓮00

3 / 8
Parts1-C「START」

 薄い緑色をした"ザクⅡF型"が、モビルスーツ用格納庫がひしめくように連なっているエリアの中央を駆け抜けていた。

 意外にも軽快な走りを見せるヒジリの"ザクⅡF型"は、上半身を右側に回して格納庫間に出現した"MS-05 ザクⅠ"――――通称旧ザクと呼ばれるモビルスーツの形をしたダミーターゲットを、右手で構えたザクマシンガンで蜂の巣にする。

次だ。そう考え、ヒジリはフットペダルを踏み込んだ。迫る格納庫を前にして、"ザクⅡF型"がやおらに速度を増し、加速をつける。すると機体が膝を曲げて跳躍し、背中のランドセルにも似たバックパックから噴射炎を飛び散らせた。

 勢いのままに"ザクⅡF型"は格納庫を飛び越えると、その先の通路にまた一つダミーターゲットの姿があった。

 モニタにロックオン表示が出る前に、ヒジリは操縦桿を操作する。

 ザクマシンガンの銃口がターゲットを捉え、同時に弾丸が連続で吐き出された。ダミーターゲットに幾つもの風穴が穿たれ、そして消滅する。

 だが、"ザクⅡF型"はまだ着地しない。

 ヒジリは恐ろしい程の素早さと精密さでフットペダルと操縦桿を操り、視界の端に捉えていたダミーターゲットへと"ザクⅡF型"を方向転換させる。

 無理矢理身をよじる様に向きを変えた"ザクⅡF型"は、そのまま格納庫の後ろに隠れる形になっていたダミーターゲットを撃ち抜き、その後消滅するのと同時にようやく地へと足をつけた。

 

「流石に、素の"ザク"にガンプラバトルの時みたいな挙動を取らせようとしたのは、無理があったかな」

 

 着地の体勢から機体を立ち上がらせつつ、ヒジリは一人感想を呟く。

 

「一つ一つの挙動が重いし、遅いんだよな……。まあ、初期機体としては普通のスペックなんだろうし、諦めるしかないか。チュートリアルが終わったら、改造は必須だな」

 

 微かな溜息の後、ヒジリはコンソールパネルに"ザクⅡF型"の機体ステータスを表示させる。

 パネルに映る残弾数、所持武装、そして機体のレアリティなどに目を通し、再び小さく溜息を吐いた。

 彼の視線の先にあったのは六角形のパラメータ表なのだが、何しろそのパラメータの値が全て最小値に近かったのだ。

 初期配備機なのだから、それはむしろ当然の事なのだが、しかし現実世界では四代目メイジン・カワグチとして名を馳せたヒジリにとっては、その初期ステータスの低さは、思わず溜息を吐いてしまう程のものであった。

 軽く落胆の波に呑まれかけていたヒジリの耳に、そこでモニターに何度目かの通知が表示された。

 "FINAL PHASE"と記されたそれに目を通した後、ヒジリはその内容に対して笑みを浮かべた。

 

[現れる敵機を3機撃破せよ!カウントダウン開始――――]

 

 前面メインモニターに現れ、有無をいわさず30からカウントを開始したチュートリアル表示を前にして、ヒジリは慌てず行動を開始する。

 乗機である"ザクⅡF型"に指示を入力すると、機体は手早くザクマシンガンのマガジンをリロード動作を行い、戦闘準備を整えた。

 

「さて、やっと動く敵と戦える訳だけど」

 

 ヘルメットもろくに無いままの頭髪を両手でかき上げ、オールバックへと髪型を整えると操縦桿へと両手を戻す。

 深呼吸をし、先程のまでの思考をクリアにし、瞳を閉じて5秒。瞼を開いて操縦桿を前へと押し出すと、同時にカウントダウンが1から0へと変化した。

 

「先手必勝なのはAI相手でも人間相手でも、変わらないよな」

 

 各部のスラスターが点火し、瞬時に生み出された膨大な推力が"ザクⅡF型"の機体を前方へと押し出す。

 微かにシートに体を押し付けられるような感覚が、ヒジリの体を包む。その感覚にすら心地よさを感じてつつも、さらに操作を入力した。

 機体がザクマシンガンを前方へと構えると、その直後に仮想的であるところの"RGM-79 ジム"が、ホログラムで投影されたかのようなエフェクトを伴って出現する。 

 

「もしかして、ザクを選んだから相手はジムですってことか? なるほど、そのチョイスは悪く無い!」

 

 こちらへと振り向こうと動き出していた"ジム"へと、ヒジリは覚えたての動作で手元のスイッチを入力し、武装の設定をフルオートからセミオートへと変更。躊躇なく操縦桿のトリガーを3回引く。

 一拍ずつ、3回に分けて放たれたザクマシンガンの弾丸が、"ジム"の頭部に一発、胴体に二発命中。風穴を空けられた"ジム"は、被弾箇所から数回火花のエフェクトを上げた後、地面へと倒れ沈黙した。

 

「まず一つ……」

 

 撃墜した"ジム"の直ぐそばまで近づいたところで片足をつくと、その足を軸にして方向を転換。格納庫と格納庫の間を抜けて、滑走路へと向かう。そこに2機の反応があった。

レーダーから、前面メインモニターへと視線を戻すと、スロットルレバーを前へと押し込む。スラスターが再び点火し、機体の足がコンクリートの地面から離れる。

 すると幾許もなくして、メインモニターに胴体を先程センサーに反応のあった"ジム"の姿が確認できた。

 

「見つけた。流石に、センサーの性能は向こうの方が上だよな」

 

 メインモニター上にフレーム表示された2機の"ジム"の拡大映像が、すでにこちらに銃口を向けた状態だと言う事を教えてくる。

 だが、ロックオンを知らせるアラート音はなっていない。敵機の保持しているビーム・スプレーガンの銃口がゆらゆらと動いているところからも見て、恐らくまだ敵はこちらをロックオン出来てはいないのだろう。

 ヒジリは、敵機に捉えられないように機体を左右へと揺らしつつ距離を縮めていき、そして徐ろにトリガーを引いた。

 "ザクⅡF型"のFCSがまだ敵をロックオン出来てはいないのにも関わらず、だ。

 3発ずつ、2機の"ジム"相手に向けて放たれたザクマシンガンの弾丸は、それこそ外れるものやシールドで防がれるものはあったものの、その内の一発ずつがそれぞれの敵"ジム"のビーム・スプレーガンへと命中し、そして破壊した。

 敵AIの反応は早く、撃ち抜かれたビーム・スプレーガンを即座に投棄する事でマニピュレーターの破損は免れたが、ビーム・スプレーガンから発せられた爆炎は2機の"ジム"の視界を奪う。

 

「けれど、そんな事で"四代目"を止められる訳はないんだよなあ!」

 

自分自身が狙って作り出したその隙を見逃さず、ヒジリは"ザクⅡF型"を敵"ジム"の内の1機へと即座に吶喊させた。左マニピュレーターでヒートホークを抜き、まだ残る煙幕を突き破ってその先にいた"ジム"へと振り下ろした。

 

「2機目ッ!」

 

 ヒジリはヒートホークが敵"ジム"に命中した事をを操縦桿を通して伝わる感触だけで確かめると、見向きもせず機体に操縦を加える。

 ヒートホークを手放し、機体がその場でさながらバレエダンサーの様に片足を軸にして一回転。同時に、一瞬前まで"ザクⅡF型"がいた位置を無数の弾丸が襲った。

 

「AIってのは、"あっち"でも"こっち"でもワンパターン過ぎるんだよなァ!」

 

 現実世界のガンプラバトルでのAIと、今相対している敵機のAIの類似点を言葉にしながら、ヒジリは機体を残るもう1機の"ジム"へと跳躍させた。

 懐に飛び込まれた"ジム"は、AI独特の反応の早さででそれに対応するべくビームサーベルへと手を伸ばすとそれを掴み、ビームサーベルを振り下ろす。

 

「ところがギッチョン!」

 

 だが、AIパターンに従い単調に武器を振り下ろすだけの動作は、至近距離でコックピットに突きつけられたザクマシンガンのにより停止させられる事となった。

 サーベルの発振が止まり、完全に沈黙した"ジム"が後ろに倒れる。そのコックピットには、MSサイズの弾丸が空けた大きな風穴が存在していた。

 

「まあ、チュートリアルならこんなモンか。初心者には少し強いんじゃないかと思うところではあるけど……」

 

 チュートリアルのクリアを伝える通知が届き、ヒジリは軽く一息を吐く。"ザクⅡF型"のジェネレーターがその音を潜め、機体が静かに停止した。

 

「あれ、止まった……。次はどうなるんだ?」

 

 メインモニターに出力されていた外部映像が消え、暗い画面の中央に通知表示だけが浮かんでいた。

 それに目を通し、ヒジリの疑問はすぐに払拭される。

 

――――アカギ・ヒジリさん、GBWFの世界へようこそ!

 

 そう記された、通知文に込められたゲーム本編の開始を伝える言葉の意味を脳内で反芻させる暇もなく、三度目の光の波がヒジリの視界を覆ったのは一瞬のことだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。