……お気に入りや感想が一気に増えてビックリしている今日この頃。
じ、自信が……
風が煩く感じられた今朝。紫は逃げきれたかな。そんなことを考える辺り、もう大分親バカなんだと思うと、溜息がでそうだ。いや、別に否定しないけどさ。
今俺は上空(いつも漂っているけど、今回は意味合いが違う)目測で五メートルくらいの所に居た。
ホントかどうかはさて置き生物って言うのは(特に人のような陸上で生きるモノ全般)、上、背後からの攻撃に弱いというのを、何時か聞いたことがあった。何でも、そういう箇所からの攻撃を基本的に想定していないからだとか。
今回は、それに倣わせてもらおうと思ってのことだ。
見下す先には、拠点代わりに使っていた洞窟。今、そこに向かって一、二……十五人の陰陽師らしき人物らがいた。
「ガイア。今回の一件、手を出すな」
『何故?』
「お前は可能な限り切り札にしておきたい」
『マスター、私は不意打ち役も出来るが』
「本望ではないだろう」
『……いや、やろう』
「……了解。無理はするな」
さて、ガイアへの最低限の釘もさし、時間を見計らい降下、姿を魔法で消して近づいて……。
ざっくりと。最後尾の陰陽師二人の頭を、手で貫いた。
――後でしっかり休もう。或いはこっそり泣いておこう。そうしなければ、後で絶対荒れる。
……同時に、もうこんな風に冷静に人を殺せた自分に、驚いた。
「――ぬぅ? 何事――ッ!?」
「敵襲! 敵襲だ!!」
「妖怪か! 成敗してくれるわ!」
実際は妖怪……なのかもしれないけど(最近思い出した事だけども、東方的に見りゃ『種族的な魔法使い』は妖怪の一種だし)どっちかと言えば魔法使いなんだよ。
そんなことを思いながら、深々と爪に突き刺さった遺体の頭を、回転して遠心力を利用して投げる。一応吸収しているとはいえ、人間の手足分の力しかない為にこうしなければ人の体なんて投げられる訳が無い。
ぶん投げた遺体の片方が二人の陰陽師へぶち当たり、怯んだが一人が霊力のレーザーのようなもので攻撃してきた。
それが当たる直前――ガパ、とでも擬音を付ければいいのだろうか。俺の体についている羽のような物が、前方部を眼以外覆った。
そして、そこから出現する烏帽子を被った陰陽師の上半身。
レーザーが陰陽師の額を貫くと、光の粒子のようになって消えてしまった。
そして、それを放った陰陽師も倒れた。同じ傷を味わっているのだろう。……いや、もう死んでるか。
怯んでいた陰陽師と、他にも居た十数名の陰陽師が札を投げつけようとしていたけど……ばーか。何もしないと思った? 残念、既に行動済みなのよこれ。
もう、全員に魔法をしかけた。たぶん、ある陰陽師には仲間の何人かがゾンビに見えて、ある陰陽師には全員が自分に向けて攻撃しようと見えている筈だし、ある一人は体感時間を引き延ばしまくって体の処理が追いついていない状態だ。
何人かの陰陽師は、認識が狂って動かない奴を俺だと認識するように仕向けた。
「ちぃ、新手か!」
「ぐあがっ!? ま、待て私は違――」
「何をしている! 攻撃を緩めるな」
「ちい! まだ死なんか! 死ね! 死ねええ!」
パニックだ。俺は姿を消して、流れ弾対策に陰陽師の一人を吸収した。魔法も能力も駆使すれば、攻守0でもいいとこまで行けるんだよ……。あ、能力無効とかは勘弁で。やってらんなくなる。
「ガイア、やれるか?」
「――了解した」
ガイアが実体化し、剣に光が集まる。その光は暗いようで明るく、白いようで黒く、逆に黒いようで白い。そのまま、光は剣に集まり続け、見る者に根源的な恐怖を抱かせる。
「――
構えて、一閃。それは何時かの依姫の斬撃よりも薄く、大きく、早い。その斬撃に触れた陰陽師の四人が……一瞬光を放ち、消えた。
ガイアが語っていた『結果を二倍にする能力』依姫と戦った時に使っていた能力だ。剣を振るえば、斬撃は一つだ。しかし、ガイアが振るえばその二倍になる。おまけに、もう一つの斬撃の発生場所をある程度操作する事も可能らしい。
さて、お忘れかも知れない(寧ろこっちが本領発揮と言えるかもしれないが、あくまでガイアは騎士道を抱えた剣士である)が、もう一つの『無へ飛ばす能力』
対象を、文字通り何もない無(ガイアの言い方を借りれば『概念すら存在しえない原初の空間』)に強制的に送る能力。
先程の攻撃に当たってしまえば、文字通りの場所に永遠に居る羽目になる。
問題は、OCGと違って『巻き込みで同時に幾つもの対象を送ることも出来る』という凶悪な一点に尽きる。
それ以前に、酸素も圧力も何もないのだから送られた直後にまず死ぬっぽい。紫でも、戻って来れるかは分からない。そんな場所でも能力が発動するかどうか。
本人曰く、『同時に使えないのが欠点』らしいけど、寧ろそれは最期の良心な気がする。絶対そうだ。
「ガイア」
『了解した』
ガイアに姿を隠すように指示する。ガイアに対する魔法を使っていなかったので、ガイアが見つかるのを恐れてのことだ。
気が付けば、陰陽師は一人まで減っていた。
……今なら、いけるか?
「警告。動くな」
「ッ!? ど、何処だ! 何処にいる化物め!」
……。俺からしたら、攻撃してくるそっちも化物に見えるんだけどねー……。
札が飛んできた。羽を閉じ、吸収した陰陽師を盾にする。今度は胸元に当たり、爆発した。
あっぶな! 最後の最後になんてもんを……。――ん……? ……!
――はあ……。あの馬鹿。
まあ、結果オーライか。放った陰陽師も、胸が吹っ飛んで事切れていた。
……さーて。――お話の時間だ、大馬鹿弟子。
「……」
『マスターよ。大丈夫か』
「……」
伝わってくる後悔の念。それはまるで、殺人を初めて犯した人間のようなものだ。熊を殺した時はたいしたこともない様子だった。
しかし、陰陽師たちと相対した時から、様子が一変した。何時もの内心の道化ぶり……明るさ、とでも言えば良いか。それが無くなり、抑揚のない意識は、永遠と同じような場所を歩かせていると思わせた。
そして今。何時も顔を出す以上の深い悲しみと、後悔。自虐心に埋もれている心に――怒りが混じった。
「紫。何故逃げなかった」
抑揚のない声。背筋に針でも突きいれられたような怖気。自身の身体から、若干汗が流れたことに気が付いた。
私には八雲紫――マスターの弟子が何処にいるのか皆目見当もつかない。
しかし、それでもマスターは繰り返す。今度は、若干いつもの調子に戻ったが……。
「早く出て来い。出て来ないようなら、心臓を潰した後に咽喉から腐らせるぞ」
マスター、それは勘弁してやれ。私でも折れかねない。そう言おうとした直後だ。マスターの目の前の光景に、割れ目が入った。
そこから出て来る、見知った金の髪、昨夜渡された紫のドレスを身に纏った、令嬢にもみえる妖怪の小娘、八雲紫。……本当にいたのか。逃げれば、良かった物を。
「……は、はい」
「何故逃げなかった」
「……そ、それは……その」
「言ってやろう。大方、心配の心算できてくれたのだろう。あの札が飛んできたとき、お前がスキマから飛び出そうとしたのが分かったからな」
「……!!」
一瞬、花を開いたような顔を見せた後、すぐに落ち込んだような顔を見せた八雲紫。
――彼女の気持ちもわからないでもない。命の恩人兼、自らが師事を仰いだもの……そんな対象が自らおとり役を買って出れば、心配にもなる筈だ。
私とて、当初はマスターの実力を疑っていた。酷い話、魔力タンクのような後衛支援型の魔法使いだと思っていたのだ。
しかし、今回のような一対多の戦闘や、乱闘戦では凄まじい戦果を発揮するに違いない。それだけ私の中では今回の一件は強く印象づいている。
「肯定か。それは嬉しい。だがな、今回の一件は無駄になった。じきに追手も来るだろう。そんな中、お前は能力を既に使っている。逃げられると思っているのか、戯け者」
「はい……」
その内容だけを聞けば、罵倒に聞こえただろう。
しかし、その語り方はそうではない。諭すように、理解させるような、指導者の語り方。そういう風に許容するのが、正しいのだろう。
「――紫。お前の理想の為に動くには、
「! ――――はい!!」
「分かったなら逃げろ。十秒以内にその場から居なくなれ。飛び方は前に教えた筈だ。時間は稼ぐ」
行け。そう言うとマスターは姿を消してしまった。
――全く、不器用だ。弟子……いや、『娘』から距離を置かせるために、手酷く言ったつもりなのだろうが……。最後の名呼びで台無しだぞ。あれでは、娘を心配する父親のようにしか見えない。
八雲紫は、慌てて飛んで逃げ出した。視界の端に、若干涙が浮かんでいるように見えた。
「……ガイア。一分だ。この地一帯に、クロユリを
「――了解」
さて……犠牲となる陰陽師諸君。がんばれよ。
実体化しながら、そう思わざるを得なかった。
余談。
この後陰陽師たちは森の妖精といい男と野獣先輩に4Pで美味しく頂かれました。
……外道無双回と言ったはいいけどそこまで外道が出来てない気がする今回……。
外道成分が足りない……。