ってか、また説明会だ……orz
さあ、いきまっせ。
まず、念頭に置いてほしいことがある。魔法使いの扱う魔法の中における、いわば特別ルールだ。
例えば、幻影王の弟子たちが今現在使役している精霊――ぶっちゃけ、霊使いの魔法だが、負担をかけていることは間違いない。それを説明する為にも、少しだけでも頭の片隅に留めておいてほしいんだ。
まず、使役するための試練だが……実の所、俺の中にある記憶が全員分の試練を知っている。まだ、此処はいい。問題は――――――試練そのものは完全にクリアする必要が無いということ。これ聞くと何そのチートと思うかもしれないが、現実そんな甘く出来てない。出来ていたら今頃魔法使いの主流は霊使いになっていただろうから。
その分『代償』という形で問題が浮き彫りになる。例えば、闇に類する精霊の試練を完全にクリアしていないのであれば、例えば思い入れのあるものだったり、目的を達成するにあたって重要なものなどを支払わされる。
つまり、十中八九ダルクの片腕がない理由はそういうことになる可能性が高いが……何故体なのか分からない。この世界におけるネオスフィアは、最強の悪魔程度の認識でいい。極論で言えばサタンに近いけど違う感じ。『自ら動かないが、敵に回してはいけない』的な。しかし、やはり悪魔である以上、相応に代償――俺が思いついたのは、自我とか、とにかく自分を構成する部分に関わる知識とか――をぶんどられると考えていたんだが……ダルクが今の体に執着する理由でも、あるのかねー……記憶の方を辿っても、いまいち掴めない。
まあ、ダルクはまだ良い。というか、ぶっちゃけ霊使いの内、四人は完全に試練を突破していると見ている。ライナの使役する裁きの龍は、一応名前そのものは古くから知られている。
『その行いが使役者と誰かを救う事になるなら、手助けを厭わない』変わりものらしいからだ。あの性格的に、確実にクリアしていそうだ(それ以前に試練すら受けていない可能性もある)。
アウスのゴーレムなんだが……これ、正直よく出来たなと思う。『古代の機械巨人の錆び付いたパーツを元に戻す』……字面だけだと、結構簡単に見えるだろ? でもな、あれって全身殆ど(現実的なあれでは無く、完全にファンタジー的な意味の)オリハルコン――最も重く、物理的な外部からの干渉にとことん強く、形を変えない金属と、アダマンタイト――オリハルコンには劣るが、それでも充分すぎる硬度と、魔法の干渉を殆ど受け付けない特性を持つ通称『魔法使い殺しの鉱石』で出来てるんだぜ? そもそも超古代の代物が原型残しているだけで頭おかしいよ……。
ウィンの場合は、実は一番――ライナ以上に問題無い。何せ、『あの』ドラゴエクィテスなのだ。
ドラゴエクィテスに関しては……魔法使いの間で『ドラゴンの中で最も変わり者で、その癖化け物のように強い』と評判なのだ。……だろうねー。アイツの効果うろ覚えだけど知ってるもん。
試練の内容は『ドラゴエクィテスに一時でも忠義を誓わせるに値すると思わせる事』……幻影王の弟子の霊使いって、基本的な部分を絞って特化であれば才能の塊なのよ。風霊使いであるウィンがドラゴエクィテス――面倒だ、今後エクィテスで――と相性いいのは当然なのだ。
で、ヒータ。真っ先にガイアから称賛された霊使いだが、まず、彼女の性格を大雑把でいいから把握しておいて貰いたい。
“情に厚く、感情的で、容赦が無い”。
極めて大雑把に表現すると、こんな感じなのだ。火という、極めて扱いの難しい存在を擬人化したような彼女だが、使役するトライデントは試練の際、その人となりを見て、自らを使役するに値すると判断すれば試練を与えるらしい。
流石に、試練の内容まではわからない。もしかしたら、頭が三つあるし、存外気まぐれなのかもしれない……マジでありそうだ。
で、此処までは問題無さ気だった四名。問題ありありなのは、ダルクと……エリアだ。
「成程」
マスターが黙々と思念による一方的な事実を押し付けてくる。私は無銘の愛剣と、あの小人から譲られた大剣――『
とするならば、真っ先に落とすべきなのはアウスか、或いはウィンなのだろう。幾ら相手方の攻めが苛烈であっても、だからと言ってその攻撃を仕掛けてくる側を素直に狙っていてはジリ貧だ。
尚且つ、新しく手に入った剣を試したい。それは、私という存在にとって否定しようもない事実。オリハルコンとアダマンタイトのゴーレムを相手に、何処までこの剣の刃が通るのか。私の剣技が、何処まで硬き体を斬り裂くことが出来るのか。
――エリアは、ぶっちゃけた所どんな試練を受けたのか、判らない。それは、トリシューラというドラゴンの規格外っぷりを表していると同時に、エリアが今、それこそダルクよりも面倒な目に遭っている可能性が否定できない……ってか、会うたびに顔が青白くなってるし、代償を食らってるのは確定的だ。基礎が人間の彼女じゃ、いずれ耐え切れずに死ぬ。
代償の内容は……例えば、精神が少しずつ凍らされて削られていく、とか、体温を奪われ続けている、とか――とのマスターの言葉に、私は何時ぞやの心臓を握りつぶされそうになった直前の悪寒を思い出した。
……此処は真っ先にトリシューラを狙うべきか。あれに類する感覚は、味わっていいものではない。少なくとも、生きている内に味わってはいけない類だ。
剣から視線を逸らし、今宵限りの拠点として使っている洞窟の奥へ視線を向ける――私が今座っているのは、洞窟の入り口辺りだ。
そこでマスターは、剣のような爪を器用に使い、炭と化した木片を手に、黄ばみが目立つ紙へ何かを書いていた。
何を書いているのか疑問だったが――私の頭の中に直接響かないということはさして重要なことでもないのだろう。いや、そう思わないようにしているだけかもしれない。
気にはなったが、大丈夫だろうと思い至り、再び剣の手入れを始めた。
そう言えば。愛剣に映った自らの顔……いや、兜を見て、ふと思い出した。
綿月依姫は元気にしているだろうか。安倍晴明の話ではあの美しくも可愛らしさを両立させた顔に――それをしたのは晴明だが――傷を残してしまったようだった。確か、何時かマスターから逆流してきた知識によれば、そういう場合の
仮にも、兵とはいえ女子の頭をかち割ったのだ。戦士である以上に、『騎士道』という不純物を捨てきれない我が身としては、やはり何かしらを返すべきなのだろうか。
……それは、また会う機会があれば尋ねよう。
「以上。基本的な戦力はガイア一人になってしまうが、問題はあるか」
「異存も異議も無い。悉く斬り伏せよう」
――ホント、何でガイアって俺に従ってくれるんだ……?
雰囲気を破壊すような、何処か抜けているマスターらしい内心を筒抜けに、次の戦いへ私は思いをはせた。
――何処か、次の機会が目前に迫って来ているような、そんな気がしつつ。
夜が更け、たぶん魔が蔓延る逢魔時くらいの時間帯。
俺は、何か途轍もない、それでいて何処か慣れた圧力を一身に受け、頭上に視線をやった。ガイアは既に大剣を構え、俺の前に立っている。
……確かに、こんな時間帯からの奇襲は初めてでは無かったが……今回はいつも以上に必死な気配がする。――違う。もっと根本的に――仕留めにかかっているような、そんな気がする圧力。
理解するのと、洞窟の天井が崩れ、――――――六属性が入り乱れた圧倒的な蹂躙が、視界を覆い尽くす。
それを打ち払うかのようなガイアの力尽くで、暴力的で、しかし完全に掌握された力による絶技と、視界が晴れた先に居た六人と六体の姿を視界にとらえた。
「――無為。既に解す言葉も無く」
「師匠を……師匠を、返せぇええええええええ!!!」
「マスター、来るぞ!」
怒号のような、だけども儚く悲しくなるような悲鳴にも聞こえる霊使いの少年――――ダルクの咆哮の直後、戦闘は開始された。
次回で、取りあえず霊使いとの戦いを〆たいなー……
そう言えば、スタイリッシュ回ならずにごめんなさい。
次回の投稿はたぶん早目にできます。たぶん。