さて、改めて確認しよう。
戦力はガイア、俺、ついでに膨大なマジックアイテム。幻術関係は相手のモンスターを複数倒さなければ相手を嵌めることは出来ない。相手の火力は最低ライン(あくまで弟子たちを除き、使役しているモンスターのだ)の大よその目安は2700。但し素のガイアがエクィテスを打ち倒す世界なので一概には信用できない。
以上。……ガイアがキーだな。
ダルクのネオスフィアから放たれるレーザーをガイアが魔力の斬撃で吹き飛ばしてきた。その間に俺は姿を消し、逃げ遅れたであろう死にかけの狼を吸収した。
隙を見せたガイアを待っていたと言わんばかりに、実に女の子らしくない笑みをうかべたヒータのドラゲリオンと、前に会った時よりも更に白くなったエリアのトリシューラがブレスをぶっ放してくる。それを見たガイアは素直に地を蹴って回避。
炎と氷。二つの相反するブレスが衝突しながら地面を抉って、爆発。辺り一面を水蒸気が覆った。
あ、やっべ!?
ガイアも既にウィンの的になりかねないことを把握していたようで、既にある程度場所を補足していたらしいヒータの所へ一直線に突っ込んでいく。
しかし、それを遮るように硬い物同士の衝突する音と、衝撃、爆風。水蒸気が散らされて、ガイアとエクィテスが槍と剣でせりあっているのが見えた。
すると今度は、地鳴りが起こった。ガイアが身を後方に投げれば、立っていた場所からゴーレムの拳が生えてきた。姿は見えないけどアウスが遠方から指示しているのだろうか?
俺は隠れながらクロユリを咲かせて飛ばすが、ネオスフィアが見つけ次第撃ち落として無効にし、エクィテスも吹き飛ばす。
ダルクもヒータもエリアも倒せない。
ライアが上空で裁きの龍の背に乗ったまま動かないのが気にかかるが、恐らく俺を探しているのだと思う。
アイエエエ…………きっついなあこれ。このままじゃいずれ押し切られてやられるな。絶対に。
そうなったらガイアもきっと殺されて、俺も殺されて――おいまてゴラァ。
今は他人の体を使ってまで生き延びているけど、それでも俺は生きたい。相応の理由……それこそ、俺が死ななきゃ世界が明日滅びるとか、そんなことあっても、はいそうですかって殺されて堪るか。
第一ガイアが頑張ってくれているのに俺がネガティブになってどうするんだってのお……!
思考を止めるな、模索しろ。満足しきれないほど思考を回せ!
何時かの満足デッキを満足しきるまでソリティアしていた時以上に、今は頭を使っている気がする。
方法に関しては手段を選んでいられない。何か、手はないか! それこそ、ネオスフィアさえも真正面から叩けるような、そんな馬鹿げた
……そうだよ、何で気付かなかったんだ。あの魔法がある。マジックアイテムの中にその魔法が記録された魔導書もある。あの怪物を呼び出す為の呪文も、きっちり記録されている。
でも、その前に、だ。声を出さないよう、あくまで祈るように呪文を読み上げる。
(――『外法より承りは』、『霧の体』!)
――ガイア! 悪いが体に細工した、一応程度だが打開策が見えた!
一分だ! 一分だけ堪えろ!
我ながら無茶ぶりが過ぎると思う。でも、可能性は多いだけ良い。それは、間違いなかった。
「……――『汝、偉大にして無垢なる魔獣。願いに捧ぎし贄は己が敵』」
ウィンに補足されるのが怖いが、逆転の為には多少のリスクを犯さなければならない。それもこれも、とある脳き……魔獣を、ガイアを生贄にせずとも呼び出す為。
未来への投資だ、これは。……マジで見つかりませんように。
……マスターも無茶ぶりをしてくれる。だが、悪くない。
全身から漏れだす不気味な魔法の力は、内容まで分からずとも、この場において役立つ物だと大よそ察しが付いた。しかし、我がマスターは突拍子の無さは、私の生涯において頂に君臨し続けるに違いない。
先程もカードがどうのとか、インフェルニティ・トリシューラを三体特殊召喚だとか、満足が云々と場の緊張感にしては訳のわからないことを考えていたようだ。
酷く不気味な悪魔の体と、それに反するような天使の如き右の翼を持つ赤い髪の精霊……マスター曰く、『ダークネス・ネオスフィア』に対し、私は構え、そして突撃。
ダルクも指示を出すが、私の速さに遅れネオスフィアが独自の判断でもって、私の攻撃を迎撃しに掛かったようだ。
衝突、衝撃――拮抗。
古き牙と闇霊の爪がぎちぎちと不気味に音を響かせ合い、隙を見て我が力を使おうとしたが……これまでの戦闘においても無言を貫いてきた目の前の精霊が口を開いた。
「我と拮抗するか。面白い。……少しばかり、塵共は手を出すな」
「成程――貴様が六人の霊使いが使役する精霊の中では最強と見た」
「――――ふっざけんな!! ドラゲリオン!!」
烈火の如き怒りを味方の精霊に向け、三つ首の炎の竜の精霊から放たれる――私さえも致命傷を負いかねない、尋常ではない灼熱地獄。
「……塵は、所詮塵に過ぎないか」
だが、それは易々と防がれた。ネオスフィアが顔を向ける。その顔の前に収束された魔力が、灼熱地獄をかき消し、竜を直撃した。竜は倒れずとも、深く傷ついた様子だった。
そんな中、目の前の存在放たれる魔力の圧が尋常ならざるものへと変貌した。
しかし、それは私に対してあまり意味のある行為とは言えず。
「っぐ……アガ……ネオスフィア……てめえ」
代わりに、人の咽喉から出ているとは思えない、激痛を籠らせたダルクの呻きが耳を打った。杖を落とし、右腕があった肩を握りしめ、痛みに耐えているようだった。
……苛立ちが、胸を過ぎった。
「一つ問おう。我がマスターはお前程の精霊とダルクが、何故契約を結べたのか……いや、違うな。何故契約に彼の肉体を求めたのか疑問視していた。何故だ?」
「決まっている。『契約者にとって、最も尊いものだから』だ」
「何?」
「何、と言われても困る。そこの契約者にとって、その体というのは幻影の魔法王とやらに対する『これまでの恩』とやらが詰まった、思い出らしくてなあ。
再開する際に息災にしていると、示す為には――我が契約において足りん部分を補うには、その精神、記憶、肉体共々、正にうってつけな代物だった。それだけだ」
――――――――。
唯の契約であれば、きっと私は怒りを見せなかった。自業自得で、きっと『馬鹿な魔法使いだ』とも思ったかもしれない。
しかし、それを語る精霊は途方もなく悪意に満ち満ちた笑顔で。
私はダルク対しその覚悟を称賛し、そして知識のみで知る『幻影の魔法王』に、それだけ思われている者に謝罪し――――目の前の精霊に対し、憤慨した。
分かっている。これが、偽善であることも。結局は、一人焦れた少年の自業自得には変わりないことも。
それでも、何故。何故、目の前の巨悪を見過ごす理由になろうか。
「――――貴様には死すら生温い。開闢の使者の名を持って、魂すら残さず滅してくれる」
「ハハハハ! 面白い、ならばやってみせよ! この我を、滅して見せろ、塵!!」
それぞれの感情が魔力を帯び、世界を揺るがす。……目の前の『悪』だけは、絶対に滅ぼさなければならないと、私の奥底に眠る『
「――『敵を滅ぼし、力は我が手に。一時の縛りを我に与えよ』」
終了……ある怪物を此処に呼び出すための、そしてそれをこちらで補わなくてすむ為の呪文は唱え終えた。最大の問題は、直接その対象に触れる必要があることだけど……気が付いたら、ガイアがネオスフィアと単騎で切り結んでいるんだが。
あれ、これって完全に余計な心配だったかな…………ん?
……あっれえ……何故彼が此処に居るんだ。いや、本当なら
「――――エリアァアアアアアアアアァアアアア!!!!」
……なんか、ドラゲリオンよりも暑そう(誤字ではない)な爬虫類と人間を足したような、すげえ見覚えのある、超個人的に最後には救われていたと信じていたかったけど――――このタイミングって。
「僕――否、私は力を制御しきることに成功したっ! 君が急いでいることは理解しているっ。だが、君が死んでは、恩師トリッキーに会わせる顔が無いぞっ!!」
「ガガ……ギ……ゴ? …………なんで……」
僅かに聞き取れたエリアの声は、まるで雪山で遭難した遭難者が死ぬ直前に出すような、聞いていて悲しくなる声だった。
俺の知る限り、過去に改造を施され暴走し、力だけを求め、最後に己を取り戻すことに成功した、正義の勇士。
「なんで? 決まっている! 最愛のパートナーをっ、助ける為に他ならないっ!!!」
――ガガギゴが、この場に乱入してきた。
次で〆るといったな? すまないがもう一話か二話続きそうだ(震え声)