東方幻眼魔~あるモンスターになって東方に~   作:眼鏡花

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 いやはやいやはや……活動報告でさえ嘘つくとは……本当にごめんなさい。そして新年あけましておめでとうございます。

 今年もだいぶ不定期更新になってしまいそうですが、どうかよろしくお願いいたします。
 さあ、前回の続きだ


想いを力に 2

雄雄雄(オオオ)オオオオオオォォぉぉぉぉぉッ!!!」

 

 雄叫びを上げてエリア……いや、トリシューラに向けて突撃をかますのは、先ほどこの場に乱入してきたガガギゴ。

 

「トリシューラ……迎撃して……!」

「――――ヒャララアァァオオオオオオオオッッッッ!!」

 

 例えようの無い、無理に当てはめるなら北風や冷気に声を持たせたような、恐ろしい咆哮を発生させているのは、エリアが無理をして契約を交わしているトリシューラ。

 

 トリシューラの三つの頭から、ある程度の距離は空いている筈なのに冷気――それとは別に、恐怖を感じる。

 

 あれは不味いやつだ。そう確信していたそれが……ガガギゴに向けて放たれた。

 

 周囲の環境を破壊する死の冷気、それは空気を強引に凍らせて巨大な氷塊……冗談抜きで氷山の一角と呼んでも強ち間違いではなさそうなものに変貌した。

でも、俺は舐めていた。

 

「――――邪ァ魔、だッ!!」

 

 心臓に悪いとか、そういう問題じゃないくらいの大声。それに応じて全身から放出される力――魔力も混じってはいるけど、闘気と呼んだ方が正しそうな力が溢れていた。

 

 特に、左の拳に集まったそれを、馬鹿みたいに巨大になり続ける氷塊に、一喝と共に叩き付けた。

 

 ――――ギャグ漫画の世界かと言いたくなった。ガガギゴの拳は、拮抗すらしなかった。

 ……拮抗すらする事無く、粉々に氷塊を砕いてしまった。

 砕けたそれなりの大きさを誇る氷も、ガガギゴから溢れる闘気で押しのけられ、彼に降り注ぐことは無かった。

 

 何だあれ。いや、割とマジで。てか、トリシュもトリシュだけどさあ……。ガガギゴがもうマジで竜とか魔王とかを倒してお姫様を助けに来た勇者にしか見えないんだが……。

 

 ……蜥蜴勇者か、なんか新しい。

 そんなくだらないことを考えているとだ。接近したガガギゴがトリシューラの中央の頭を殴り飛ばしたのが視界に入った。

 

 ……いかん、俺もやれることをやらないと。

 でも、気付かれずにやれるかどうかだ。もう詠唱は終わった。後は、術者が対象に触れるだけ。

 

「無策。無謀。蛮勇……それもまた是としよう。ならば後は成せることを成すのみ」

 

 動くしかないよな。ガイアだって頑張ってくれてんだ。

 さあ、――――征こう。今助ける……人様の体らしいの使っておいて、何様なんだよな、俺。

 

 

 

「無茶するなドラゲリオン! 本当に消えちまうぞ!」

「……グゥル……ヴヴゥォォォ!!!」

 

 ダルクの契約した精霊の一撃を受けたドラゲリオンは、既に消滅寸前だった。

 それでも尚消えていないのは、私が契約の内容にある以上に魔力を送り続けてるからに他ならない。

 『我らに、思いの熱を感知させること』それがドラゲリオンからの試練だ。様は感情的に、真っ赤に燃え盛るような思いを抱いていろということだったらしい。

 

 その感情の熱を魔力に変換することで、事実上ノーコストで契約を維持できていた。でも、今回のようなことになってしまうと、話は別だった。

 

 ――やだ、いやだ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!

 

 もう目の前から信頼できる何かが、居なくなってしまうことには私には到底耐えられそうになかった。

 私は、確かに私たちは皆、正直に言ってしまえば師匠よりも実力は既に上だった。でもだからと言って師匠と距離を取るわけではない。寧ろ、“師匠”という呼び方こそしているが、私たちはあの人の事を“親”だと思っていた。本気で慕って、本気で愛して、本気で向き合える私たちの大切な“父さん”。それが師匠だった。

 

 特にダルクとエリアと私は師匠が居なくなった時、本当に狂ってしまったような状態になったし、実際今も狂い続けているのかもしれない。そうやって泣きながら師匠を探し続けたある日。

 

 ――――――――ライナが師匠と同じ魔力を持ってる、あの怪物を見つけた。

 

 あの怪物を見て、ダルクは一度冷静になってからまた狂乱しだし、エリアは怖い笑顔で独り言を呟き続ける日が増えた。

 ライナ、アウス、ウィンがどうにかして私たちがバラバラになる事だけは防いでくれた。けど、今も危ない橋を渡り続けてる。

 

 そして、あの日。忘れもしない。従順に従っていたかと思ったダルクの精霊、ネオスフィアが、私たちの目の前で、ダルクを……ダルクの腕を……!

 

「……サッサト、マリョクヲトメロ……シヌゾ、ムスメ」

「嫌だよ! ()は、もう大事で、大切な何かがもう居なくなるなんて耐えられない! だったら!死んでも(・・・・)離すもんか! もう嫌なんだよ! “大切”が、大切なものが一欠けらでもなくなるのが!」

 

 僕にとって世界っていうのは案外ちっぽけなもんで、師匠と、師匠の下で一緒に修業した霊使い、あとは契約を交わしたきつね火と、トライデント・ドラゲリオン。

 これだけが近くにいれば満足で、逆に、それが欠けてしまえば一番脆いのは僕なのだ。

 

「ホンマツテントウ、ダロウ。……ダガ、ソノネツ、タシカニウケトッタ。……モウ、マリョクヲワタスナ。ホントウニシヌゾ」

「――――ぁ、れ……」

 

 本当に急だった。ただの立ち眩みのように頭がぐらりとしたと思った時には、既に五体を地面に投げていた。

 力が入らない。思考がまとまらない。口の中が乾き、舌が乾ききり張り付いてしまっている。

 でも、構うもんか。魔力を作り続け、ドラゲリオンに送り続ける。

 

「おい、ヒータ。早く魔力を止めろ。死ぬぞ。師匠とやらに顔を合わす前に死ぬほどの阿呆だったか貴様は」

 

 無謀なことを、混乱と恐怖とが混じり合った感情のまま自殺行為をした僕を止めたのは――――

 

「ナンノヨウダ、バケモノメ」

「決着を交渉しに来た。本来なら、不意打ちと共に贄に捧げようと思ったのだがな。気が変わった……否、そうではない。けじめだ、けじめ」

「……ホウ」

 

 一つ目の、巨大な爪と盾のような翼、脈動する口のような器官を兼ね備えた青い怪物――『サクリファイス』という賞金首の名で通ってるアイツ。

 真面な会話としての言葉を、この怪物から初めて聞いたかもしれない。

 

 

 

「ドラゲリオン、そう呼ばせてもらう」

「マエオキハイラヌ。ヨウケンヲカタレ」

 

 威圧的に(というか実際威圧しながら)こちらに話しかけてくる三首のドラゴンは、まるで「虚偽があれば即座に殺す」と言わんばかりにこちらを睨みながら続きを促した。

 こえーよ。だからその目はやめてくれ、俺に効く。

 

「結論は語るに及ばず。既に俺に挑もうが、あの悪魔に挑もうが結論は見えているだろう」

「……」

「だが、手段はある。俺はその手段を持っている。あの悪魔を滅せる。この体の持ち主らしい者と再開させられるかはさておき、どうにかしてあの少年を助けられる」

「っ!! 本当……う……」

「ムリニコエヲダソウトスルナバカガ……ソノコトバガ、サキホドノ『ニエ』トイウコトバニカカワルノダナ」

「っ!?」

 

 やっぱり気付きよねー。魔法使い族だから悪魔染みた「言質取ったぞ煽り」ができない(する気もない。やったら自爆する)が、やっぱ贄――つまりは生贄、そういう分類の魔法を使う気だった。

 さっきの魔法も俺の敵対者の命を一つ生贄に、俺の知識にある怪物、或いは俺の所有する魔道具に封印されている怪物、悪魔を呼び出す為の準備に過ぎなかった。

 本題はあくまでこれからなんだ。つまり、ドラゲリオンの察している通りだ。

 ……外道過ぎて吐きそう。口がなくてよかった。あとでヒータから恨み辛みはいっぱい受けよう。

 

「是正。その通りだ。その贄にお前になってもらおうかと考えた……本来なら、不意打ちでお前かライナの精霊を贄にしようとしたのだがな」

「おい、どういう、事だ……!」

「ムスメヨ、コレイジョウハ――――」

 

 ドラゲリオンは、そこで言葉を絶った。失ったとも取れるだろう。俺も目を奪われた。

 泣いていた。これ以上ない悲哀を湛えた瞳は大粒の涙をぼろぼろと零し、いろいろな感情が入り混じった激情を俺に向けた。

 

「やだよ! いやいやいやいや!!! なんで僕たちから大切な人を奪おうとするの!? なんで僕のパートナーが犠牲にならなきゃいけないの!? いや、やだよ……僕をこれ以上、一人にしようとしないでよぉぉ…………」

 

 ……あー、うん。コレ完全に俺悪役ですねわかります。

 どう説得したものか、一応生贄が済んだ後に呼び出した奴と契約を破棄して、蘇生系魔道具(を使った俺の魔力量に言わせた力技)を使えば蘇生できるが。

 そう考えていると、太々しく鼻息で笑う竜が一声。

 

「――――ヒータ」

「……えぐ……ぇ?」

「アンシンシロ、ヒータ。ワレラチカラアルリュウニ『シ』トハ『オワリ』デハナイ。……ドノミチ、ソノモノガドウニカスルツモリデアッタヨウダガナ」

「……ほんと? いなくならないの……?」

「……肯定。だが、僅かながらに不確実だ。それでも構わんのか、ドラゲリオンよ」

「コレイジョウノコトバハイラヌ。アノアクマニホエズラカカセラレルナラ、コノミヒトツ、ヤスイモノダ……キガカワルマエニ、ハヤクシロ」

「感謝。敬意。これ以上共に言葉が見つからない。一時の別れの言葉を済ませてやってくれ」

 

 ……あーもう、駄目だ駄目だ。こっちの決心が鈍ってるじゃないか。

 空を見る。正直、カイアには分が悪いかなと思っていたが……まーじか、アイツ。

 

 全然食い下がってやがる……何かを叫んでいるようだが、ただ、うっすらと伝わってくる感情が、どうしようもなく怒っていたということは、何かしらあのクソ悪魔が逆鱗に触れたという事なんだろう。

 ……さて、見れば、ヒータとドラゲリオンは言葉を交わし終えたようだ。心なしか、やはりヒータから恨みのこもった視線が飛んでくるが、この場では無視する……胃(無いけど)が……。

 

 ……問題は呼んだ後だなあ

 

「おい……約束しろ。ぜってー、あの悪魔をぶちのめしてくれ……」

「愚問。言われるまでもない」

 

 

 

 

 

「尋ねるまでもないが、あえて問おう。決心はついたか」

「グモン。イワレルマデモナシ」

「そうか、では、始めるぞ――――」

 

 その言葉と共に溢れ出た甚大な魔力――まるで、星の命を奪っているのではないかというほど、言葉を失わせるそれが、場に満ちた。

 ……師匠でも、これだけの魔法を使うことはしなかった、いや、違う。

 人間であれ、魔族の者であれ、魔法使いという存在でも、これだけの魔力を行使すれば死ぬ。絶対に死ぬ。

 ――――なら、目の前にいるあの怪物は、『何』だ?

 

「『かの者、名は無く。魔道書は綴る。曰く、偉大なる魔獣であり、悪魔であると』」

 

 その言葉と共に、ドラゲリオンが光の渦に包まれる――言葉は交わさない。

 約束したから。絶対に帰ってくると、帰してくれると、約束したから。

 

「『偉大なる魔獣よ、お前に名を付けよう。故に服従せよ。贄は先の呪文と共に、力ある竜を』」

 

 ……ドラゲリオンの魔力がその場から失せ、代わりにただ圧倒的な『力』を感じさせる魔力が、世界を包み、揺らした。……さっきの魔力の比じゃない!?

 

「『今一度生誕せよ。名もなき魔獣。絶対なる力の象徴。我が敵対者に暴虐と絶滅を。』」

 

 そして、奔流が止まる。私は思わずへたり込んでしまった。

 だけど、油断してはいけない。奔流が止まっただけで、世界に影響を与えるような魔力は、形を変えて、残っている。

 そして――

 

「『出でよ。絶対最強の力。“ガーゼット”』」

 

 それは、腕を組みながら現れた。悪魔の骨を鎧のように纏った、筋骨隆々の怪物だった。目は煌々と煌めき、圧倒的な存在感を撒き散らし、静かにドラゲリオンが居た場所から現れた。

 

『……問オウ、汝ガ、我ニ名ヲ与エテクレタ、契約者カ?』

「肯定する。俺の名は霞。しばらく、よろしく頼む、ガーゼット」

「――アア。名ヲ呼バレルトハ、コレ程歓喜デキルモノナノダナ……! ヨカロウ、コノ『力』ノ手綱、任セタゾ、霞ヨ」

 

 此処に、最強は降誕した。

 




 こんだけ待たせておいてまだ続くんですわ……すまない。改めて小説というものの難しさを知った気分です……。
 次回も仕事の定修とかが絡まなければ早く行けるかもしれません。明日から仕事で残業になりそうとかは内緒な!?
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