完全にスランプで吸血鬼の方が更新できそうにありません…更に相方もリアルが忙しくてなかなか手伝えないのもあいまって、繰り返すようですが更新できそうにありません。
なので、少し書いておいたものをちょこちょこ修正を入れて、投稿する次第です。もしかすると、近日中はこっちの投稿が多くなる可能性が極めて(というか確定的に)高いです。
このようなダメダメ作者ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。
では、どうぞ。
予想よりも大分早く、月が昇り日が沈む前には都に辿り着いた。
人の海で溢れ返っているかと思ったが、そんなに人は居らず、居るのは鎧を着て槍を持ったまるで門番のような人ばかり。まるで嵐の前のような静けさがあった。
…あっれ、何でこんな人居ないんだ? まだ日が沈み切って無いのに。
何となくだが、すぐに理由が分かった。
夜は妖怪が活発になる時間帯、それは陰陽師などが居る都であっても例外では無い。つまりはそんな事だろうくらいには。
尤も、魔法使い(?)である今の俺にはあんまり関係の無いことである。いや、関係無くは無いけど、今の所は関係無い。
「そもそも、何で都に来てんだか。別に年代が分かっただけでも僥倖だろうに…」
自らに愚痴った言葉は余りに小さく、その小ささ故に声に混じる雑音とエコーにぐちゃぐちゃにされ、何を言ったのかは自分以外にはとてもでは無いが分からないだろう。
それ位低く、自分で聞いてて自分にすらも悪印象を与える声だ。
「まあ、来ちまったからには見ておくか。流石に何もせずに徒労に終わったー何て、俺の考えにはそぐわないし」
自分でやり出した事(いや、言い出した事だろうか?)だし、まあ、一目見るまでは帰らずにおこう。
自分にそう言い聞かせ、再び漂う様に移動を開始した。
そうしたら、思いのほか早く見つけた。体感時間で三十分も経っていない。
縁側に腰を掛け、月を眺めている綺麗なというか可愛らしい着物を着た、長い黒髪の少女を。
無論、綺麗なのは着物だけでは無い。陳腐な表現はあまり好きでは無いから、直球的に言えば―――美しいと、絶世の美女と呼ばれるのにも納得出来るほど美しいと、心の底から思った。
名を知ってる訳でも無いけど、彼女が蓬莱山輝夜なのだろう。一方的に知ってるだけだが、それでも分かる。
…幻想郷が出来たら、彼女レベルの少女らがごまんと居るのかと考えると、湧き立つというか、そういう感情が全く湧かない自分が意外でしょうがない。
今の俺にとっては旅>幻想郷か、物欲>幻想郷のどちらかなのだろうか。
幻想郷に住み着く気は今現在ないし、住んでもすぐに死んでしまいそうな気がする。何かを装備している時でもないと。
それじゃあ都を出ようかと考え、また宛てなく浮遊の旅を開始しようとした。
すると、どうだろうか。
「…覗き見されるのは趣味じゃ無いわ。見るなら堂々と見るくらいしなさい。そうすれば人は呼ばないでおいてあげるわよ?」
…はい?
いや、うん。聞き間違いでは無い。俺の頭がおかしくなったとか、そういう事でも無い。姿は消してる筈だし、そもそもバレる要素は何処にあった?
いや、それはともかく。要は―――既に、ばれている様ではないか。
と、とりあえず冷静に、素の話し方は拙いだろうから、出来るだけ作った話し方にしよう。
何か居る。霊力でも妖力でもない、感じた事の無い未知の力を持った何かが。
だいぶ隠蔽されているけど、知らない力であったからこそ気が付けた。
姿を現そうとしない何かに対して、冗談のつもりで護衛を呼んでやろうか? と聞いたら、慌てて出てくるかな、なんて考えたりもしたけど、相手は意外と冷静で強情であった。
「気を害したのならすまない。そして、姿を現す事が出来ない事、何よりこの声を聞かせてしまった事を謝罪する」
聞こえてきたのは、ひくく低く、反響した音のような聞こえ方をして、雑音を織り交ぜたかのような、聞いていて嫌悪感、次いで威圧感を感じさせる声。
だが、どうしてだろう。
私はその声が、不安と怯えでぐちゃぐちゃになったような声にしか、聞こえなかった。
「あら、本当に返事を返してくれるなんて。声の事は気にしないわ。でも、姿を現さないのはどうしてかしら?」
「生憎、この身は女子供に見せられる程、見ていて気分の良いものでは―――」
「そんなの、構いやしないわ。それとも何? 姿を見せないのは私を殺しに来たからとでもいうつもりなの?」
まあ、今この屋敷には匿っている従者も居るし、爺様と婆様もいらっしゃる。殺されてやる気は微塵も無いし、そもそも私は死ぬ事が出来ない。もしも相手が格上であったとしても盾くらいにはなれるし、いざと為れば能力を使えばいい。
その私の言葉に対して、姿を現そうとしない来訪者は告げた。
「無為」
「え?」
「無為と言った。殺す? 馬鹿馬鹿しい、誰が殺生を好んで犯すものか。そもそも、此処を訪れたのも旅の道中にて聞いた絶世の美女とやらの姿を一目見に来ただけだ」
「…それだけ、なの? 私に求婚しに来たとか、攫いに来たとか、食らいに来たとかじゃ無くて?」
「俺は、女に愛されることは出来ん。攫う理由も無い。食らってもそれは定義が違う」
…今の言葉で、ますます訳が分からなくなった。
今挙げたのは、今までにいた実例だ。尤も、求婚をしてきた男達には無理難題を吹っ掛けて―――どうにか実現しようとした男も居たけど、嘘がばれて諦めた。
攫われそうになったり、妖怪に襲われた時も、すぐに従者が助けてくれた。
でも、見えざる者は唯姿を見に来たと一点張り。
何より、一番おかしいと思ったのは『愛される事は出来ん』と言った事。
…そうだ。
「それじゃあ、何で姿を現そうとしないのよ。それじゃあ、唯誤解を招くだけよ」
「姿を見せただけで誤解を招くよりは幾分良い」
「だったら、私は大丈夫ね。これだけ話を聞いたのだから、寧ろ見せてくれたっていいじゃない」
「………………」
返答は無い。力はまだ感じるから逃げた訳では無いだろう。
さて、どう出るかしら?
はっはっは、畜生。喋り方が中二病チックになっちまった。
いや、それはどうでもいいか。こっちの方がスラスラ出てきたし。
確かに彼女の言う事を間に受けても良いのかもしれないけれども、それはそれで拙い気がするんだよな…。
けれども、実際問題俺は怖い。
怖がられるのが怖い。
だから、まあ、賞金首で魔法使いで人間じゃない様な姿をしていても、気兼ねなく話したり出来る相手が欲しいのも事実だし、嫌われたくないのもまた事実。
板挟みだと、自分でもそう思う。
けど―――今一番怖いのはその事じゃない。
こんな柔らか精神している俺でも十年以上賞金首をしているんだ。姿を隠しきれていなかった頃の(今回も何かしらの穴があったのだろう)、ぶつけられた殺意というものは嫌でも覚えてしまう。
そして。
彼女―――蓬莱山輝夜の背後から、昔感じたそれと同じものを僅かながらに感じる事は容易だった。
「誰だ?」
声が震えない様に、自分の理性で必死に抑え込みながら声を出す。相も変わらずの嫌悪ボイスだけど、今ばかりは何故か安心できた。
「永琳、私の話し相手よ。だから矢を向ける必要は無いわ」
「姫様、しかしそれでは…」
「私の身に何かある事なんて、本当によっぽどの事が無い限りは大丈夫よ。貴女もよく知っているでしょう?」
「…分かりました」
殺気の主は殺気を解いてくれたけど、俺の耳(無論、無い。どこから聞こえているのか…)に届いた殺気の主の名は、俺の思考を止める事に大いに貢献してしまった。
永琳―――つまりは、八意永琳。月の薬師であり、途方も無く長き時を生きる大天才。
何故、地上に彼女が居る? てっきり輝夜姫を月に連れて帰る者達の中に居る筈だと思っていたが、実際そうでも無いようだ。
…いや、今考えても仕方が無い事だ。追々考えよう。
今重要なのは、輝夜への返答だ。尤も、半ばやけくそであった事もあり、誰かが話しているように声が出た。
「話を戻すが、念の為に確認しよう。輝夜姫」
「…何かしら?」
「姿を見せようと思うが、後悔はしないな?」
「―――ええ。する筈が無いわ。私から言い出した事だもの」
「気味悪がったりはしないな?」
「それ、暗にそうしてくれって言っているようなものじゃないかしら…? ええ、もちろん」
「怖がったりしないな?」
「…へ?」
あ。
思わず、本音が零れてしまった。
どうでしたか?
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