吸血鬼の方は、更新するのにはまだまだ時間が掛かりそうで、暫くはこちらの更新がメインになってします。申し訳ありません。
あと、アンケートを実施します。それは後書きにて…では、どうぞ。
痛い程の沈黙、という表現は正しくこのような場で使うべき言葉だと、私は思う。
私が月の研究所に所属していた時や、その研究成果を発表するときと同じくらいの、意味が無くとも無言を誘発させる奇妙な空気。
私が行ったから、言ったから、その研究は、事実は絶対だと考える月の上層部の欲に生きて欲に沈み欲に溺れ、他者を踏み台にしてされた者を嘲笑う権力者達―――
私は、上層部が行った研究の犠牲となり、数えるのが嫌になる程の研究に実験対象となり、挙句に地上へと落とされた、彼女を追いかけるように月から逃げた。
月から逃げる為もあったが、私は謝りたかった。唯々月で平穏に暮らし、ある能力を持っていたが故に私達の都合に巻き込んで、騙し、研究が完成すれば掌を反したかのように裏切り、切り捨てた彼女―――蓬莱山輝夜を。
月から逃げた私は、彼女が落とされた場所を知っていた。いや、知らなければおかしかった。
何故なら、彼女を落とす場所を決めたのに携わった一人が―――いや、この言い方では正しくない。彼女を地上のどの地点に落とすのかを決定したのは私である。
彼女に会えば、幾らでも罵声を受けるつもりだった。死ねと言われれば自殺するつもりであったし、とにかく、彼女の為なら何でもするつもりだった。
地上に降り立ち人々の生活を見て、私がすぐに思わされた。
―――地上よりも、月の方がよっぽど穢れている、と。
穢れ、というのは簡単に言えば人の意思の零れ落ちたもの―――違うが、想いや残留思念とでも言えば良いのだろう。それが、妖怪を生み出す元となる。同時に、人間に寿命を与えている要因の一つでもある―――と私は考察していた。
月にはそれが発生しないように常に機械が動き続けている。故に、妖怪が生まれる事も無く、平和に暮らせている。
けれど、私が言いたいのはそういう事では無い。人々の活気、温かさ、裏の無い善意―――そういうものを見て、率直にそう思わされた。
思わざるを、得なかった。
彼女のような地上でも問題無いような存在になったのならともかく、穢れがある地上では私は年老いていく。尤も、かつては地上に暮らし、何百年、何千年と長い時間を生きた月の民の一人である私からすれば寿命など有って無いような物であるけど、幼いころに抱いた死への恐怖という存在を忘れていた。
けど、今はその感情を殺して彼女を探す事に専念した。
三日三晩寝ずに歩き続けて、ある噂を耳にした。何でも、複数の男から求婚を申し込まれている、絶世の美女―――かぐや姫と呼ばれる少女が、今この近辺に居るらしい事を。
朦朧としかけた意識が、一気に覚めた。別人かと思ったが、よくよく考えると彼女は同性から見ても羨むほどの容姿をしていて、尚且つ名も一致している。
そして、人の出入りが激しいある一軒家をすぐに見つけ、まさかと、念の為を思って月から持ち込んだ知覚阻害装置を自身に使って、その一軒家に忍びこんだ。
夜。床に就かず月を眺める彼女の少し後ろで、私は棒立ちしたまま彼女を見ていた。
月に居た頃よりも健康的な肌の色をして、楽しそうに鼻歌を歌う彼女を見て、私はとても安堵した。それでも、私の罪が消える事は、永劫に訪れる事は無い。何故なら、彼女がどの様な生物とて持つ終わり―――『死』を、失わせてしまったのだから。
今すぐにでも謝りたかった。でも、それをすれば彼女はきっと人を呼んでしまうだろう。そう考えて、私は彼女に声を掛ける事が出来なかった。
だが―――
「それで、何時までそこに立っているつもりなのかしら? いい加減座りなさいな」
え―――と自らの口から出たとは到底思えない程、掠れきった声が出た。
疑問が先立つ前に、私は行動に出ていた。千鳥足のような足取りで彼女の背後に近づき、装置を切り、そのまま頭を下げ、目を閉じ、口を開いた。
「―――ごめ…んなさい…」
掠れ、震えた声が私の口から出てきた。彼女の表情は見る事は出来ない。
許してくれる筈も無い。頭でそう断定しながらも、私は頭を下げ続けた。
何時も体よりも先に頭が動く、私らしからぬ事だったのは今でも―――と言っても、まだ一月程前の話だけど、鮮明に覚えている。
「……」
はあ、とため息を吐く音が聞こえた。
呆れ、だろう。私が彼女に行った事は清算しきれる訳も無い上に、もうする事なんてできやしない。
衣服が畳と擦れ、音を立てる。「よいしょ」と、立ち上がる時に一緒に言ってしまう言葉も耳に届いた。
殴られ、蹴られる。生温い。命を絶て。喜んで行おう。
それでも、どうして、だろうか。
感じたのは、痛みでも、音でも無く、衣服越しに感じる、他人の―――彼女の体温と、ほんの僅かな締め付けだった。
再び、え、と声が漏れる。予想の斜め上を行く所か、見当違いも甚だしい現実に、頭が追い付かなかった。
「ん。良いわ。―――許します、八意永琳。貴女が、あなた達が私に行った事、その全て―――とまでは行かないけど、貴女は私に謝りに来てくれた。こうやって、謝ってくれた。まあ、本音を言えば姿を隠して置かないですぐに出て来て欲しかった。だけど今は二の次よ。だから、私は貴方だけは許します。それに、貴女は好きであんな事を行った訳じゃ無いでしょう?」
「なん…で…何で。私達は貴女を実験に使って、終わればまたいつも通りの生活に戻れると言って嘘を吐いて…」
ぽろぽろと、涙が零れ彼女の肩に掛かり、着ている着物に染みが出来た。
何故、彼女は私を怒らないのか、何もしてこないのか―――殺されても、何も言えないだけの事を、彼女には何度も何度も何度も何度もしたのに。
わからない。わからなイ。わからナイ、わかラナイ、わカラナイ―――――ワカラナイ。
思考がエラーを起こす。考えている事がぐちゃぐちゃに混ざり合って、ありとあらゆる事象に対する解を出すに足りる頭脳が、動かなくなる。
「まあ、あの時は何日も泣いて居たわね。でも、私は知っているのよ? 私を落とす場所を決めたのも、落とす際に少しの不備が無いように入念に準備をしたのも、落とす場所の近辺に町が在るように計算したのも、ぜーんぶ、貴女でしょう?」
「―――どうして、それを…」
「綿月姉妹の二人がね、こっそり牢に忍び込んで教えてくれたのよ。謝りたがっているけど、立場から謝る事の出来ない貴女が、とても苦しんでいるって。それに、二人とも言っていたわよ? 師を恨まないでやって欲しい。恨むなら、此処まで干渉してきて何もできない私達を恨んでくれ…って。そこまで言われなくても、実際大して恨んでいる訳でも無いの」
「それこそ―――」
「だって―――」
どうして、と言おうとして、彼女は私の言葉に言葉を被せ、離れ、両手を一杯に広げ、嬉しそうに微笑んだ。
「私は知る事が出来た。地上が穢れているって教えられて育ってきたけど、それは嘘だって、本当はとてもとても、温かい場所だって、知る事が出来たのだから。だから、私からも言わせてちょうだい。
―――ありがとう。私を、
その日、私は彼女の胸を借りて、声を押し殺す事無く泣いて。
次の日、彼女の従者として生きる事を誓った。
「そう言えば、どうして私が居るのが分かったんですか?」
「ああ、その事ね。―――足元を見れば分かるわよ?」
…誰のか知れない履物が在る事に気が付かれるのを恐れて、土足のまま畳に立っていたのは、よくよく考えれば大失敗だった。
姿を現そうとしない声の主は、先程の発言―――『怖がらないな?』と確認を取った以降、そこに居るだけ黙りこくったままだ。
輝夜には大丈夫と言われたが、私は未だ疑わしく思っている。輝夜に手を出した有象無象はこれまで何度か葬った。今回は、こんな空気が生まれているとはいえ、心配に越したことは無いだろう、と考えた直後の事だ。
「良いだろう。―――後悔しても、知らんぞ」
雑音の入り混じり、響いたように錯覚する聞こえ方をし、男であったとしても低すぎる声を出す主は、そう言って姿を徐々に徐々に、見えない霞を払うように、現した。
もうね、折れたよ。こっちから折れた。
流石にああまで言われたら、見せた方が賢明…と言うよりは、何が、とは言わないけど少し可愛そうになって来た。
別に魔法見せてそれで勘弁してもらうって方法も…いや、たぶんしつこく言ってくるのがオチだよな、等と考えに考えた結果だ。頭脳戦も、向こうには大天才が居るのだ。叶う筈も無い。
なら、折れた方が賢明かなー、何て考えたのが、俺の答えであった。
地面スレスレの所まで高度を下げ、自分に掛けている魔法を解く。
さーって、彼女らの反応は…?―――
「―――ッ」
「…………」
―――ああ、うん。そんな所だと思ったよ。少しでも怖がらずに居てくれるかな? と期待した俺が馬鹿馬鹿しかった。
片や僅かに目を細めてから顔を伏せ、片や目を見開き…いや、まだここに殺意の籠った目と嫌悪の目が無いからマシか。
なんて事は無い。三十年も怖がられるような、化け物を見るような目で見られ続けてきた。その経験から言って、まだマシなのだ。
―――等と、長考に没頭していたが故に、気が付けなかったのだろう。
「―――大丈夫よ。最後の質問の答えは、これで構わないかしら?」
蓬莱山輝夜が、俺の右腕を両手で抱え、まるで慰めるように抱いた事に気が付いたのは、彼女のその言葉を聞いてからだった。
どうだったでしょうか?
前話を投稿して、感想を二件貰って、個人としてとてもうれしくなりました。
さて、話が脱線し始める前にアンケートを実施します。
…ぶっちゃけ、主人公を将来的に(結構近い内に)擬人化してもかまわないかどうか、です。
また、OKな方はオリジナルで構わないか、遊戯王に登場しているキャラクターの外見を使うべきか(後者を選ばれた方はできればそのキャラクターの指名もよろしくお願いします)の回答も、ご協力お願いいたします。
…作者の力量不足故に、読者の方にも手間を掛けるような事をさせてしまってるんだなあ…と、深々と思わさせられます。
では、誤字脱字等、ここはこうした方が良い、等がありましたら、ご報告のほど、よろしくお願いいたします。
感想をみて、書き忘れがあったのを思い出しました。
あくまで、偽造です。東方の妖怪たちみたいに実態を持って人の姿をしているわけではありません。ポケモンで言うと、ゾロアークでしょうか…?
ご指摘等あれば、よろしくお願いします。