東方幻眼魔~あるモンスターになって東方に~   作:眼鏡花

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あっれえ、一回保存したはずの内容が、全部消えてるぞぉ…(泣)
まあ、そんな理由で一度俺掛けましたが、持ち直しました。
…吸血鬼、進まないなあ…。あと、急展開っぽくなっちゃんたので、最後の方は後日編集するつもりです。読者の方が「しなくていい」と言って下さるなら、そのままにします。
それでは、どうぞ。


覚悟

「…怖く…無いのか?」

 

 尋ねた。いや、尋ねざるを得なかったというのが、今は正しかったんだろうと思う。

 俺は、不幸自慢とかでは無いけど、人々に嫌われてきた。だから、怖かった。俺の姿を見られて、拒絶される事が、何よりも。

 だからこそ、疑心暗鬼になってしまったんだろう。彼女の抱き着いた右腕に感じる、微かな震えに。

 彼女が、その言葉を言うまでは。

 

「私は、答えを示したわよ。それ以上聞いて来るのは無粋じゃないかしら?」

 

 心の奥底から、熱い何かが溢れ出る。それは、グチャグチャに混ざり合った―――でも決して不快じゃない、感情の渦。

 正しい形で声を出す事も、涙を流す事も出来なくなったこの体だけど、今は、目の前の嫌わないと言ってくれた彼女の言葉に、その心に対して深く感謝した。

 

「…ありがとう」

 

 そんな震えた声が漏れ出すように、出ていた。

 

 

 

「そう言えば、まだ名乗って無かったわね。私は八意永琳。姫の従者をしているわ」

「私は蓬莱山輝夜。そうね。都で噂の絶世の美人とは私の事よ。貴方の名は?」

「…そこまで誰も尋ねて居ないが…俺の名は…」

 

 さて、気が付くとこういう名を教え合うという流れが出来上がってしまった訳だけど、俺としては一番困る話題なんだよなぁ…いや、まあ、いずれぶつかる壁だとは重々承知していたからこそ、とも言えるんだな、これが。

 

「…名は…」

「………」

 

 御姫様からのキラキラした視線が凄まじく痛い。視線って無数にあれば暴力だと思っていたけど、全然そんな事は無いらしい。いや、何か、酷く悪い事をした気にさせてしまいそうで…。

 適当にはぐらかすか…いや、でもさっきみたいに言及されて退路を断たれた状態(十割自爆であって、彼女らに罪は無い)で話すのも何だし―――言うか。

 

「―――無名だ。生憎、自らの名は持ち合わせて居ない。仮称なら存在するが…」

「ふうん。でも、変…と言うか、奇妙な話ね。名が無いのに、仮称と呼べるものが在るっていうのも」

「まあ、賞金首としての名だ。気にしなくても問題無い」

「確かに、そんな悪名が広がってほしくない輩からすれば、そりゃそう…賞金首としての、名?」

「……」

 

 俺は自分から墓穴を掘って埋まりたがるような人げ…ん? 或いは魔法使…い? じゃ無いんだけどなあ…等と心の中だけで修正を入れつつ感慨深気に軽度の現実逃避を行う。同時に、内心で疲れきった溜息を吐く。

 …また、要らない事まで語ってしまったよ、ド畜生。

 

「ま、まあ、そういう事は今関係ないじゃない。貴方も私の事を取って食おうってつもりも無いでしょう? 要は、貴方には名前が無いって事かしら? 仮称―――通り名の方は?」

「…怖がらないと言ってくれた事を、これ程実感した日は無い。自分から付けるのも癪だったからな。通り名は―――」

 

 あっるぅえ? 距離を取られるかと思いきや、受け流すようにその話はスルーですか?

 いや、嬉しい事は嬉しいんだけどさ…。現に後ろで控えている八意永琳も口を半開きにして、ぽかーんって表現がいかにも似合いそうな状態になっちゃってるし。

 でも、まあ。

 素直に嬉しいから、気にしないでおこう。

 

 何より、通り名も完全に俺からすれば姿のままだし。

 ってか、何でそんな事を聞いて来るんだろうかこの姫様は…。

 

「―――サクリファイス。この国の言葉に直せば『生贄』と言った所か」

「…不吉な通り名ね。それは、貴方がしてきた事に関係が?」

「いや、そういう訳では無い。寧ろ今まで戦闘の類は可能な限り避けた。此方としては、襲撃者にせよ自身にせよ命が果てるのは望まない最たる事象であり、見てくれから賞金首にされたに過ぎない。…尤も、避けられぬ戦闘は行ったが、その内容故の通り名だ」

「あら。正気を疑うような外見をしている割に、随分と優しい事を言うのね」

 

 永琳センセー、今まで結構空気だった筈なのにいきなり俺の精神的なライフポイントを8000から0に消し飛ばすのは勘弁してください…。何ですか、1ターン目先行で手札にシモッチとギフト三枚でも在ったんですか、それも、チェーン組んでわざとらしく遅れてダメージ与えるが如く………。

流石に、今の永琳の発言には泣いていいと思う俺だった。

 

 

 

 来訪者―――生贄という意味の名を持つ異国の賞金首、サクリファイスは顔が無いにも拘らずあからさまに分かる程落ち込んでいた。永琳も、半ば冗談(もしくは皮肉か軽口のつもり)で言ったらしく、少し焦っている様に見えた。

 

「(え、永琳、どうするのよ!? 何だか凄く落ち込んじゃっているわよ…)」

「(じょ、冗談のつもりだったのですが…)」

「(馬鹿! 永琳の馬鹿!)」

「(申し訳ありません…)」

 

 小声で相談をしながらチラッと彼(声の質からして、恐らく。寧ろあんな声の女性なんていたら妖怪であっても同情に値するわ)を見てやるが、全く無動、微動だにしない。眼球のような頭の付いた首と思しき部位を下に向けて曲げていた。

 泣いているようにも見えた。

 

「じゅ、従者が無礼な事を言ったわね。ごめんなさい」

「………いや、気にしなくて良い。数十年前からそれ以上の事実で罵倒され続けている身であり、その事実に適応しきれていない此方にも批はある」

 

 何か、悟ったような声色で声を出す彼。…凄く、悪い事をしたと思わされた。

 私は流石に、半ば無理に姿を現させた手前出来るだけ無理強いをしないつもりだったけど、これじゃあ逆に悪化してしまっている。

 

「こ、こちらから何か詫びの品を出すわ。だからその、それで従者の発言を撤回させてはもらえないかしら」

「姫!?」

「え? …あ」

 

 責任感に駆られ平常心を失った私が口走ったのは、はたして、そのような言葉だった。

 

 

 

 …どうやら、精神的ダメージを受けたのはこっちだけでは無いらしい。理由は知らないけど、輝夜姫がとんでも無い事を口走った。相手が俺とかじゃ無かったら、今の一言は下手するとさっきの俺の墓穴以上だ。

 でもなあ…今の所、欲しい物がある訳でも無いし、と言って互いに罪悪感が残る中で何かを要求するのは色々と駄目な気がする。それでも、彼女は引こうとしないだろうなあ、と推測する。

 

 …いや、待て?

 

「…輝夜姫。俺は貴女から受け取ろうと思う品が一つだけ在るのだが、構わないか?」

「え、ええ。構わないわ。何でも言いなさい」

 

 パニックになりながらも彼女はしっかりと返答してくれた。やってしまったと後悔が先立つが、これを押し切らなければ、個人的にはもう早々チャンスは無いだろうと―――同時に、彼女からなら受け取っても構わない(・・・・・・・・・・・・・・・・)と思える品を、彼女らに伝えた。

 

「…この場で渡して貰わずとも構わない。唯、必ず渡して欲しい品が一つだけ存在する」

「遠回しな言い方は正直、あまり好きでは無いわね。はっきり言いなさい。私から、何を求めるのか」

「会話と言うやり取り自体が、三十年振りでな。気を害したのなら謝罪する。そして、俺が貴女方から受け取ろうと思う品、それは―――」

 

 少し身構えた御姫様とその従者を見ながら、本当に言っても問題無いか、ここで言うべき事なのか。自問自答する。が、答えは出そうにない。まあ、そもそもいい加減に決めなきゃ何時命に関わるかわかりゃしないんだ。寧ろ、言うべきだ。

 そう、決心して―――言った。

 

 

 

 この日、この時、この瞬間をもって。

 俺の声は、ガラリと変わった。低すぎる低音も抜け、ノイズとエコーも掛からなくなった声を、発した。

 

 

 

「―――名だ。それが、俺が唯一貴女に求める品である」

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
誤字脱字等、ここはこうした方が良い、等ありましたら、是非ともよろしくお願いいたします。

…もう少しで『奴ら』の出番が…w
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