東方幻眼魔~あるモンスターになって東方に~   作:眼鏡花

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 遅くなって申し訳ないです。……精神的にいろいろ学校生活がつらい今日この頃。辞めるつもりは毛頭ないですけど、何となく、クラスから浮いてしまうとです……。

 おっと、失礼。ではどうぞー。


 …タイトルと内容がこれっぽっちも一致していない件について。


時間少なき準備期間

 時間は進んで朝からに昼に移ろおうとしている空を見上げて、何時でも月からの使いが来ても大丈夫なように準備を進めた。早いに越したことは無い。

 輝夜は今までお世話になった人物らに御礼を言いに、永琳はその付きそいと事情説明の為に。

……現時点でまさかの都の戦力がほぼ集まるとかいう予想の斜め上をぶち抜く結果が帰ってきた訳だけども。

 俺は姿を隠して、出来るだけ二人を隠し通すために戦闘には出来るだけ参加はしないつもりだった。そう、だったのだ。

 ……恥ずかしながら、集めていたマジックアイテムの中に姿を消せるような代物があったのをすっかり忘れていた。ほら、よく有るだろ、掃除できない、物忘れの激しい人間の典型例。……うん、無いな。

 但し、それの数は一つ。

 どの道俺に舞台は無いとも思ったのだけど、永琳が月から輝夜のお世話をしてくれた爺さんと婆さんの屋敷に来る際に、姿を隠すための装置を所持していたらしく、それも解決した。……先と後のコラボレーション?

 語感すら壊滅的な言葉が出て来た。どうでもいいか。

 ああ、それと。俺の声って、俺が取り去りたいと、或いは反映させたくない声色の類は修正したりしてから発音されるらしいことが分かって、元の声に戻ってからの謎の緊張感が喪失した。

でだ。

 今、俺は輝夜姫と話している少し歳を食ったような印象を覚える、難題を吹っ掛けられたらしい陰陽師を姫様の事を見下すような形で見ていた。

 内心は、全く、そんな心算は、無いからな?

 思い当たるのはいるけど……だとしたらこの人。

 

「いやはや、よもや月からの使いを妨げる障害に私が呼ばれようとは……人生何が起きるか分かりませんな」

「ごめんなさい、都合のいいように使ってしまって。……断りたいなら断ってくれても構わないのよ?」

「断る? 御冗談を、血が滾って仕方ありませぬ」

「そう……ありがとう」

「いえいえ、御気に為さらず。……このような場でお聞きするのも何なのですが、車持の、いや、藤原の所の末妹とは、今は……」

 

 ……藤原の末妹?

 知っている。知っている。今話題に出た人絶対知っている自信がある。間違いなく。

 

「……職人達が殴り込んで来た日から、あの子も顔を出さなくなったわ」

「左様で。……一度、あの者のもとに顔を出しに行っては―――」

「あのねえ、貴方は自分を振った相手に話しかけてくるくらい肝が据わっているかもしれないけど、藤原不比等はあの一軒の後、酒を片手に今でも癇癪起こしているらしいじゃない。自分の妻が居るのに、そっちをほったらかしで」

「それは貴女が原因でもありますなあ……」

 

 苦笑いをして、輝夜姫にも苦言を漏らす陰陽師に内心同意してしまう。

 よくよく考えると、大分悪女だよなー、と思える。

 

「しかし、従者の為に……ですか」

「やっぱり、拙いわよねえ……」

「いえ、素晴らしき事かと。これで片方が違えばさぞ面白い恋物語でも書く者が現れましょうなあ。―――いや、絶世の美女にその女従者というのもまた乙な……」

「あ、安倍様? 念のために言っておきますけど私は同性を愛する類の趣向は米一粒分とて持ち合せていませんからね?」

「冗談です。気にしないで下さいませ、輝夜姫」

 

 あ、遊んでるよ。輝夜姫相手に遊んでやがる。

 敬語になってるし。

 輝夜姫もさらっと陰陽師の正体明かした。同時に、やっぱりかあ、とも思える。

 確実に、輝夜姫に求婚して無理難題を吹っ掛けられた五人の内の一人―――安倍晴明、か。

 

「ああ、時に姫。近場の林にとある木が在るのを知っておられますか?」

「木……ああ、あの大きな木ね。丈夫過ぎて変な疑いを掛けられているって話をちらほら聞くけど、あの木がどうかしたの?」

「それが、今朝方この都で名を馳せるようになったかの常闇妖怪が林の辺りに住み着いているとの事でしてな」

 

 関係無い方向に話が逸れたと思ったら、そうでもないようだ。

 ……ん?

 常闇妖怪って言うと、ルーミアの事だよな?

 

「行って見た所、かの妖怪の気配は無かったもので、おかしいと思って少々探索してみたのです。すると、代わりに見つけた物に、正気を疑う事となりましてな」

「何を見たの?」

 

 はて、何故だろう。

 この体になって早三十年、汗をかいた覚えは全く無い。今も汗はかいていないが……冷や汗がだらだらと流れ出るような、そんな感覚に襲われる。

 

「―――何と、あの木に深々と傷が刻み込まれているではありませんか。かの大妖風見ですらも骨の折れると漏らした、あの木の幹に!」

「―――大妖怪がそう言ったのを、貴方は聞いたの?」

「……まあ、友人関係とだけ」

「そう。安心していいわ。むやみやたらに他の人に迷惑が掛かる事を言いふらすほど、性根が腐ってる訳でも無いし。……でも、だとしたらその常闇妖怪が?」

「或いは、それ以上の化生かと」

 

 あるぇー? 積みゲー入った?

 そもそも、大妖風見って風見幽香しか心当たりが無い。

 おまけに、確か風見って植物ラブで、そのお目に掛かった木に傷を付けた俺って、見つかった瞬間殺されるのは確定的に明らかだ。

 いや、ポジティブに考えろ、ポジティブに。

 逆にこう考えるんだ。『友好関係を広げられる可能性が増えた』と。

 ……いや、逆じゃねえか。

 つみゲーじゃない、死にゲーに入ったのか……。

 ……これからはどこぞの全く隠れない忍者の中でもヤバいクラスの幻術でも真似てみようか。擬似的な『月読』なら使えるけど、アレを習得する必要が出て来た。てか、そうしないと生きていける気がしない。

 

「物騒な話ね。これから月の民が来るというのに」

「その原因もまた、貴女というのは随分な話ですなあ……」

「言わないで頂戴」

「これは失敬。では、私はこれで。貴女様に会えなくなるのは悲しい物ですが、その際には貴女の友人―――『霞』と言いましたかな? とやらが手紙を運んで下さるのでしょう?」

「寧ろ、霞はこの場に居るのだけどね……」

「何と! 私でさえ見つけられぬとは、何とも面妖な……その秘儀、ご教授させて頂きたい」

「ちょ、止めなさいよ!?」

「姫様の頼みとあっても、こればかりは譲れませぬ!」

 

 そう言って最強の陰陽師は、正座し、頭を下げ、両手を顔の下に付けた……見事な土下座である。

 ……ねえねえ、あのさあ……俺ってそんなに強くないからね? 確かに木の一件は俺が主犯だけど、アレはルーミアの肉体が高性能であったからの話で俺自身はありとあらゆる所から太陽光に晒された吸血鬼程度の実力しかないからね!?

 とはいえ、晴明は全く退くつもりは無いらしい。それどころか、霊力をこの部屋に放って俺の居場所を知ろうとしているらしいけど、無駄だろう。

 何せこの体はイリュージョン。傍から無い物と同義の状態である俺を知ろうとしても、正しく雲を掴むような話だ。

 輝夜姫が俺に考えた名前には、そう言う意味が有るらしい。姓はその内考えてみよう。

 

「ぬう……姫様、先程の言葉、本当に虚言では無いのですな?」

「気持ちは分からないでもないわ。正直、私だって彼の言っていた、この部屋で私の護衛をしている、って言葉を少し疑っている位だもの」

 

 泣いていいよね? 俺……。

 

「傷心。輝夜姫、流石にその言い分は無い心にも傷が入るぞ」

「っ!」

「……吃驚した、冗談よ、冗談。て言うか、居たなら偶には声掛けてくれたって良いじゃない」

「愚策。手の内を見も知らぬ相手に晒せと?」

「私に手の内を晒した寂しがり屋は何処の誰だったかしら?」

 

 ぐは。

 剥き出しの豆腐精神に一枚天井を浴びせられた気分だ。

 何の天井かって? ……男は黙って金閣寺。後は悟れ。

 兎も角、流石にこうして会話を成り立たせた以上は晴明にも言葉を掛けて置いた方が良いか。この手の人は執着心からとんでもない事の一つや二つ、楽にやらかすかもしれないから。

 

「晴明殿」

「無視は酷くないかしら?」

「少し黙れ」

「……むぅ」

 

 そんな可愛らしいふくれ面見せてくれたって、俺のやるべき事は変わらない。

 今は、この言葉を送らなければならない。

 

「……そなたが、霞殿で相違は?」

「無い。それと、先程貴殿が言った事。生憎俺の使う術は異国の物故、同じ事は出来ないが、心構え程度でも構わないか?」

「何と……滅相もありません。金目の物であれば全て差し―――」

「要らん。此処から先は一方的に言うだけだ。どう解釈するも貴殿の自由。―――己が身体は空であり、また土である。自らの心は日輪であり、また月天でもある」

 

 だいぶ中二臭い事を言ったけど、要は『自分自身を当たり前の物に溶け込ませる』というのが、俺の言いたかったことの訳で。

 例えば。上を眺めれば空が在る事に、生きる者は余程の変わり者でも無い限り疑問に思わないだろう。

 例えば。何時でも歩くような場所に散らばっていた砂粒の配置なんて、誰も変わった事に気が付けないだろう。

 例えば。月が沈めば太陽が昇ってくるのは当たり前で、太陽が沈めば月が昇ってくるのもまた、当たり前だ。

 この心構えは、この世界に来て十年程で考えた、自己暗示みたいなものだ。

 姿を消す魔法にはこの言葉が一番現れている自身が在る。

 

「……今はまだ、私の理解の及ぶ物では無いようですが。ですが、約束いたしましょう。必ずや、その状態の霞殿を見つけて見せましょう」

「……先の短い生で為せるかは知らないが、励めよ。安倍晴明」

「はっはっは、それはどうでしょうな? では、私はこれにて」

 

 何とも機嫌の良さそうな笑顔でそう言って、晴明は部屋を後にした。

 ……さて。

 

「輝夜姫。一応言っておく事が在る」

「何よ……」

 

 見た所、完全にすねていた。……その内、何か上げよう。物で釣るのは良くないけど、せめてこれ位は勘弁してほしい。俺も、少しは生存率を上げたいし。

 

「先程話に出て来た巨木だが、傷を刻んだのは俺だ」

「……はあ。説明を求めても?」

 

 思いっ切り疲れたような顔をされた。……そんな要因、今あったかな?

 

 

 




 間違いとかあったら、出来るだけ細かくお願いします。今回、大分無茶があったと考えている部分が多々あったので。
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