とりあえず、今後の展開の方針を定めていました。
変なところあったらご指摘よろしくです。
「失笑。中々笑えない冗談、いや状況だな、これは。なあ、安倍晴明」
「でしょうなあ……ですが、
「……」
「霞殿?」
「此処で聞く事でも無いが、何故だ。俺から教えを乞おうとしたのは。腑に落ちない」
「……探し人がいるのです。姿を隠しているのか、本当に消えてしまったのか分からない。ですが、貴方も初見では同じような物だった。故にです。その方法さえ身に付ければ、探し人を見つけ出せるかと」
「そうか……
「如何なさった」
「死ぬなよ」
「言われずとも」
知らず、内心で笑みが漏れた。この場に
立たずとも健在なのは、私が頭を下げた霞殿のみ。
月の民らがかぐや姫の従者、八意永琳殿を連れ戻しに月からこの地に降り立つ際、謎の強い光が空を埋めた。
一瞬視界が眩んだが、眩しさも一瞬。その間に、戦況は一変していた。
私と霞殿以外、表に出て月の民と戦おうとしていた兵は皆地に伏していたのだ。
屋敷はどうなっているか定かではないが、もし駄目でもあの御二人が逃げ切れば我らの勝ちなのだ。
「穢れた地上の民よ。抵抗は無意味なり。すぐさま降伏し罪人『八意――』を出せ。さすれば、根切りは見逃そう」
将、だろうか。腰に鞘を差し、剣先を此方に向ける少女。
あれが持つ力は、月の民も持っている様な霊力だけでは無い。覚えのある神々の力が残留している。
それに、月の民の者達が持つ妙な黒塗りの箱の様な物も気になる。気に留めておこう。
「……奴は……まさか……」
「霞殿?」
「……。最悪、大掛かりな準備をして勝てるか、分からんぞ」
何かを知っておられる様子だった。しかし、貴殿が大掛かりと言いますか。どれ程の
「生憎ですが、我らはその聞き取れなかった名前に聞き覚えはありませんなあ……」
「同意。勘違いも甚だしい。輝夜姫に聞き及んでいたが、これ程までとは」
「彼女は……いや、どうでもいい。どうせ、聞く必要すら無い」
彼女……恐らく、八意殿ではありますまい。
しかし、この流れで浮上するような者など……ああ、一人、いますな。
「阿呆。『何処かの天才のお蔭で』息災だとだけ、言っておいてやろうか?」
「ッ……貴様! ……もういい。穢れたこの星から解脱する事を許そう。……逝け」
「来るぞ。安倍、攪乱する。攻撃を」
「御意」
月の民達がよく分からない箱の様な物を構えると、霞殿は言った傍からその巨大な爪の一つを下に下ろす。すると。
「――!?」
――その動作一つで、形容しがたい怪物の群れが虚空より滲み出た。
常軌を逸する程の巨大な牙を生やした鳥の群れ。
体からは蛆が漏れ出し、目は空洞であるというだけ。妖怪でも中々此処まで稀有な姿をした者は居ない。鳥肌がたった。
数を百、千、万――目測で二万を越えた辺りで、増えなくなった。
その中でも、頭と思わしき一体だけは、口から上を隠すように三筆で描ける簡単な顔の面を被っている。
「いって来い」
下げた指先を上げると、怪物共は民に向かって虚空を飛んだ。
『エサダ! エサダ!』
『ホネゴトクエクエ!』
『ケェヒイイイイヒ!!』
「ッ! 恐れるな! 撃て! 撃てぇ!」
あんな造形をした妖怪に、大群で押し寄せられれば嫌でも逃げ回る破目になるだろう。私だってそうする。相手方の将も動揺を隠しきれていない様子だ。謎の箱からは、礫が打ち出されているのを確認できた。
戦力の確認。錯乱。そう言う意味では、都の兵たちが眠らされたこの状況は中々好都合だ。あんな物を見れば都の兵も錯乱しかねない。
あれは幻影。霞殿が作り上げた嘘の形。先程霞殿が言ったように『錯乱する』事だけしか出来ない不出来な怪。
……それにしても、礫に撃ち抜かれた部分から緑色の血が噴き出しているのを見て、そこまで再現しなくとも、と思ってしまうのは、私がおかしいからだろうか。
そして、そこに霞殿はもう一手間加えていた。
「――――隠れろ」
指の一本を降ろすと、今度は月の民達が立っていた大地を、巨大な常闇色の半球が覆った。
これは……常闇妖怪の――!
「謝罪。……事情の説明は後で頼む」
「……御意。全てはいて貰いますぞ?」
まあ、あの闇には攻撃性は無い。だから、やはりこれも錯乱の一つ。
それを埋める為の私だ。
「……さて、やりますかな」
札を三枚抛る。したくは無かったが……――出し惜しみは、しない方が良いだろう。だが、まだその時ではない。
三枚から、霊力が光の筋となって闇を貫いた。地面と接触し、半球を覆い尽くす爆炎が周囲に拡散される。
どっしりとした衝撃を体全体が受け止め、霞殿が出した半球が消えていた。
やったとは、思わなかった。しかし、将を除いて月の民が体の一部を失い、地に伏していたのは好都合だった。
「……」
能面。その言葉が最も相応しいような無表情が俺の視界に入る。口元は怖気を覚えるくらい浅く上に向いて弧を描いて、彼女――綿月依姫が刀を構えた。
「――愛宕様」
嫌がらせかと思えるくらい、その言葉が耳を突く。
炎に、刀を持つ右腕の肩から先が包まれる。距離を取っているが、肌を蒸発させようとすると錯覚するほどの高温で、分かる。
あれは一つの太陽そのものだ。国生みの母すら焼き殺す紅蓮の炎を持って生まれた、火之迦倶槌神の炎そのものだ。本能的に、理解してしまう。
その炎の巻き添えを受けて、倒れていた月の民達が灰となった。
――……冗談じゃないぞ。
「投降せよ。これ以上の交戦は無意味だ。選択肢を二つやる。首を置いて行くか、情報を寄こすか――十秒で決めろ」
不味い。極めて不味い。彼女の能力を知っている個人の身として、彼女の能力が持つ莫大な戦力は理解しているつもりだ。
だからこそ、分かる。あれは手に負える代物では無く、俺に出来る選択肢は二つ。
一つは、俺が吸収したルーミアを使って、俺の能力を総動員して彼女に傷を負わせる事。だけども、そんなことやれば俺の精神的によくない。そもそも勘弁願いたい。怖いものは怖いんだ。
二つ目は――
「安倍、逃げろ。
「――つまり、勝算があると?」
「希望だが、な」
けど、今はそれを繋ぐ事が出来るかもしれない。
奇跡的にも、あれを使う上でも
ならば、第三者は? この場に居ない者であるならば、どうなるか。
「成程――では、お供しましょう。行動を見せれば、あれは斬りかかってくる筈。無防備であれば、一撃すら届く前に亡くなられるでしょうて」
「……ありがとう。――三十秒だ」
「御意」
……さてさて。こんな悪魔みたいななりしてますけど。魔法使いらしい所、少しは見せてやりましょうかね。
あんな啖呵を切って見せたとはいえ、いやはや……この肌を焼く神の力の気質。知る限り、火之迦倶槌神しかおりますまい。
全く。どんな猛者と会いまみえる事が出来るかと思えば、こんな別次元の怪物が出て来るとは。
その啖呵を切らせた霞殿は――――祈るように手を合わせた。その直後だ。虚空より、霞殿の目の前に二本の剣が
そして――その次の刹那、ほんの僅かな一瞬。不意に心臓を握りつぶされたような、表現しようのない怖気に身を晒される事になる。体から血の気が引くのが分かった。
それは、月の民も同じ事であるらしい。怖気に比例するように、剣には熱を感じさせない、しかし明るい矛盾したような炎が灯っていく。
「『――――』」
言葉――だろうか。耳に残らない、まるで誰かに語りかけているような言葉だが、意味まで理解するには及ばない。
何となく、これが希望なのだと、察した。
「これ程の魔力……くっ!」
振るわれる刀。三日月のような弧を描いた炎の斬撃が恐ろしい速度で飛来する。
当たれば即死だろう。灰すら残らない。
当たれば、だが。
私の前方に斜に張った結界を滑るように、斬撃は上に逸れた。
「その為に、私は今此処に居る……!」
「な……!?」
確かに、真っ向から受け止めればただでは済まない。だが、流すのであれば如何にかできる。しかし、私自身も今の状態では余裕が無い。
しかし、唯の
それを隠す為に使っていた霊力と、妖力を封じる為の封印札を裏に貼り付けていた烏帽子を脱げば、例え神の力であっても、かなりしのげる。
「貴様……『半妖』か」
「如何にも。今尚愛する母と誇れる父の間に生を受けたのが、この私」
烏帽子の下に隠していた狐の耳と、これまでの人生の中で増え続けた狐の尻尾
「古き名を、安倍童子丸。今の名を、安倍晴明という者で……少しばかり、時間を稼がせていただきましょう」
「――小癪な!」
晴明がチート? キャラになってしまいましたが、自分の中ではこれくらいしなきゃ玉藻の前を相手にするのは厳しいんじゃあないかと思いまして……。
実際の所、見破っただけみたいですけどね。
では、お休みなさい。