Fate/staynightとナイトウィザードのクロスもの。過去の一件によって魔術師としての力をほとんど失った代わりにウィザードとなった士郎が聖杯戦争に関係していく物語です。昔思いついたものを暇つぶしに書いてみたため、ナイトウィザードの設定が古い(1st,2nd版)です。

 駄文ですが暇つぶしにでもどうぞ。

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とりあえず出だし。


始まり

月が青く白く輝いている。

 

 夜空に浮かぶ寒月をしばし眺めた衛宮士郎は、その意識を校庭へと戻した。もっと正確に言えば校庭を舞台に、奇妙な衣装と寒気を切り裂く武器を打ち合う二人に向かってである。澄んだ金属音の連続は互いの思惑と駆け引きの元で独特なリズムを持つ旋律として奏でられていた。

 

 蒼の衣装を着る男が手に持つ長槍を突き出せば赤の衣装を纏う男は両手の双剣で受け流し、赤の男が距離を詰めて振るった双剣は、青の男の槍によって弾かれた。呼気も白く、張り詰めるような冷たい緊張とその下で隠した手札を探って加熱する手数以上のやり取りは優雅さと清廉さを感じさせた。

 踊り続ける蒼と赤の攻防から目を離した士郎は再度夜空を見上げる。白い呼気が昇る冬の夜空には先程と同じように静かに月が輝いている。

 

「……いつもの月だ」

 

 いつからか癖となった行為で月の色を確認し小さく呟くと、静かにその場を後にしようとする。しかし数歩も歩いたところで夜空に響いていた旋律が途絶え、静寂が戻ってくる。決着が着いたのかと校庭に視線をやれば、手を止めた男二人を目が合った。こちらを見返してくる視線に殺気が混じっているのを感じ、急いで走り去る。どうやら悟られてしまったようだ。最後にしくじった情けない自分にため息を残し、夜の校舎に逃げ込んだ。

 

 蒼い槍使いランサーは苛立っていた。気に食わない男の命令に従う日々の中、久方ぶりの闘争に水を差されたからだ。あの赤い男は遠距離専門のアーチャーのクラスを名乗りながら双剣を振るってこちらの槍を捌いて見せた。お互いまだ本気ではなかったがそれでも心躍るやり取りだったのだ。だがそれに熱中しすぎて部外者に見られているのに気づかなかったのは明らかに失策だった。

 

 とはいえ起きてしまった以上は仕方ない。マスターからも目撃者は消すようにと命令されている。不本意ではあってもそれに従わざるを得ない自身の境遇に憤りを感じつつも、不運な獲物を捜索する。

 だから壁を抜けて驚く相手を追い詰めた時にも多くは語らずに槍を繰り出した。気の進まないことはさっさと終わらせるに限るし、あの赤い弓兵に妨害されてもつまらない。意識せずとも槍の英霊の自分の一撃は過たず相手の心臓を一突きするはずだった。そうそのはずだったのだ。だから……。

 

 だから相手がどこからか取り出した大剣でこちらの一撃を弾き、距離を詰めてくるという事態への反応が遅れた。全身に青白い光を纏って放たれた一撃はこちらの回避よりも早く自分の左腕を断ち切る。咄嗟に腕を盾にしていなかったならば今頃は胴に深い一撃を貰っていただろう。

 さらに躊躇なくこちらの命を刈り取ろうと振るわれる追撃から距離をとって構える。相手も深入りはせずに離れた。そのままにらみ合う。

 

 先程の一撃といい、今もこちらの反撃を警戒して距離を取った対応といい素人ではない。しかし身に纏う気配や雰囲気はあくまで一般の範疇であり、決して英霊の類ではありえない。なのに神秘をもってしか傷つけられるはずが無いこの身に深手を与えているのだ。

 無論スキルや能力で気配や雰囲気を偽ることはできるだろう。現在現界していない英霊は剣の英霊(セイバー)だけのはずだから、今も隙あらば大剣を振るおうと間合いを慎重に取っている相手がそうであってもおかしくは無い。

 しかし英霊としての勘はその考えを否定する。その疑問を解消しようと警戒を持って相手に問いかけた。

 

「何モンだ、てめえ。英霊って訳じゃなさそうだが?」

 

 

 

 先程の一撃よりも鋭い問いにしばし黙考する。無論警戒は怠らない。校庭での戦闘から見くびってはならない相手だと知っている。手ごわい相手だ。先程の一撃も深手で済ませてしまった。相手の一挙一動に目を向けたまま考えを進める。

 

「何者か……」

 無意識に口からこぼれた言葉に相手が警戒を強めるのを見て、多少距離を開けつつなんと返すべきなのかと考える。

 

 3年前ならば「正義の味方」と答えていたかもしれない。今は亡き養父が語ってくれたかつての夢と彼に憧れた自身の願望から。その言葉の意味も重みも理解せぬまま己の描いた理想をただ目指していたあの頃ならば。

 

 去年までならば「世界の守護者」と答えていただろうか。3年前の夏に出会った男が切っ掛けとなって関わった異世界の侵略者との一戦。友人と共に世界を渡り、侵略者から世界を守る一員として働いていた頃のこと。描いていた理想と非力で無常な現実との差に苦しみ、それでも世界のために戦っていたあの頃ならば。

 

 だが今の自分はそうではない。「正義の味方」も「世界の守護者」としての務めも果たせずにただ地面に伏してみている事しか出来なかったあの時、いやそれ以前に世界の脅威となる少女を追い、彼女を守る男に一撃で倒された時からか。犠牲を良しとせず、同時に世界を救った彼らを知って気がついた自分の願望。かつて自分を救ってくれた養父のように誰かを助けられる人でありたいと願う今の自分が名乗るとしたならば……。

 

魔法使い(ウィザード)だ」

「何?」

 

 思いがけなくはっきりとした声で口からでた言葉に、相手が訝しげな反応を返す。その相手に、否世界に向かって宣言するかのごとく自分の在りようを告げる。

 

 それは赤き月と共に現れる侵略者を退ける者達の名。彼らと同様に常識外の理を用いて自身の日常を、ひいては世界を守って戦う者達の名。すなわち

 

「夜闇の魔法使い」

 

 -ナイトウィザードと。

 

 

 




 士郎ですが目指す目標が<正義の味方>から<日常の守り手(ウィザード)>に変わっただけで歪んだ本質はそのままです。
ネタなので続きません。

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