冒険者に憧れるのは間違っているだろうか   作:ユースティティア

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今回の話は自分的に書きたかったエピソード、第3位くらいの話です。まあ、クオリティは高くないと思いますが……。


突撃! 隣の【ロキ・ファミリア】!

 ベルとリリと『豊穣の女主人』でささやかな打ち上げをした翌日。俺は朝からある資料を作っていた。(ちなみに今日は仕事である)

 

 その資料とは3日前にレフィーヤが言っていた赤髪の女の資料である。別に頼まれた訳ではないが、レフィーヤの話の中で、あのヴァレンシュタインさんと互角以上に戦っていた、という信じがたい話を聞いた。

 

 さすがにそんな人物がオラリオを堂々と闊歩している訳がないが、明日は我が身とも言うし、何より知人が襲われたというのは放っておけない。

 

 そこで今日は仕事を午前まで行い、午後はその女の調査に当てようと思っている。

 

 コンコンコン。

 

 いつも通りの控えめなノック。資料から目を離し、部屋にかけられている時計を見る。午前9時、レフィーヤがいつも来る時間だった。

 

「もうこんな時間か……」

 

 筆─アスフィさんからいただいた少量の血をインク代わりにできる魔法具(マジックアイテム)─を置き、玄関に向かう。

 

 扉を開けようとし……固まった。

 

(あれ? なんか多いぞ?)

 

 1、2、3……7人?

 

 いや、多すぎだろ。え、何? 今日なんか大勢来る予定とかあったっけ? あれれ? おかしいな? なんだか嫌な予感がするぞ?

 

 恐る恐るドアを開ける。

 

 ガッ!

 

「うわっ」

「ちょっと、団長が来てるのよ。1秒以内に開けなさい」

「まあまあ、ティオネ。僕達が押し掛けたんだから無理を言っちゃ駄目だよ」

「はい、団長!」

「よー、少年! 久しぶりやな!」

「遊びに来たよー!」

「……お邪魔します」

「当然大勢で押し掛けてすまない」

 

 突如、扉を強引に開けられ、そこにいたのは【ロキ・ファミリア】の幹部(一部を除く)の面々、そしてその主神ロキ様だった。

 

 無言でノックしたレフィーヤを見る。彼女はとても困ったように笑っていた。

 

「……どう言うこと?」

「あ、あはははは……」

 

 取り敢えずこのままという訳にもいかないので応接室に通した。……あれ、椅子足りたっけ?

 

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【ロキ・ファミリア】の方々にお茶を出し(椅子もコップも足りました)、なぜ来たのか聞いてみた。その内容をまとめると。

 

 さて、今日もトキの所にいこうかな→あ、レフィーヤどこいくの? え、彼氏くんのとこ? じゃあわたしも行く! →なんやどっか行くんか? え、あの少年のとこ? んならウチも行く! アイズたんも一緒に行こう!→……うん→ん? 彼のところに行くのかい? ちょうどいい、彼とは1度ゆっくり話して見たかったんだ→団長も行くなら私もいくわ! →そうだな、彼にはレフィーヤがいつも世話になっているしな。きちんとお礼をしに行くか→結果←今ここ

 

「……頭痛くなってきた……」

「ご、ごめんね?」

 いや、レフィーヤが謝ることじゃない。

 

「しっかし少年、君いいとこ住んどんなぁ」

「ヘルメス様と旅をしている時にお金を度々稼ぐ機会がありまして。その時のお金を全部つぎ込んだ結果です」

 

 まあ、オラリオに来てからもそういった機会はあったけど。

 

 ぐぅ~。

 

 その時、俺の腹が鳴った。咄嗟に押さえる。

 

「そういえば朝食まだだった……」

「あ、じゃあ私何か作るよ」

「いや、いいよ。一応お前、客なんだし」

「私がやりたいの。いいから座ってて。台所のもの借りるね」

「ああ。いつも悪いな」

 

 いつも通りのやり取り。そんなやり取り見てを【ロキ・ファミリア】の方々がひそひそと何か言っている。

 

「何かレフィーヤ、生き生きしてない?」

「そうね、自然体というか……」

「まるで恋人同士の会話だな」

 

 俺は何も聞いてない俺は何も聞いてない。

 

 しばらくして台所からいい匂いが漂ってくる。

 

「お待たせ、あんまり材料なかったからそんなに量ないけど」

「いや、作ってくれるだけで助かるよ。でも食材は仕入れないとな」

 

 レフィーヤが持ってきた料理を口に運ぶ。うん、今日もうまい。

 

「なんや、レフィーヤ。まるで通い妻みたいやな」

「ぶっ」

「ロ、ロキ。からかわないでっ」

 

 ニヤニヤしながら茶々を入れてくるロキ様を無視しつつ少し遅めの朝食を終える。

 

「ふー、ご馳走様」

「はい。ところでトキ、どうして朝御飯食べてなかったの?」

「ん? ああ、ちょっとした資料作りに夢中になってな。あ、そうだ。フィンさん、ちょっといいですか?」

「なんだい?」

「俺が作った資料を見て欲しいんです。今持ってきますから」

 

 と言ってリビングから先程作っていた資料を一部持ってくる。

 

「これなんですが」

「これは……18階層を襲撃した女の資料か」

「はい、レフィーヤから話を聞いて今日の午後から目撃者がいないか調査しようと思っていたところです。それでこの資料に不備はありますか?」

「……いや、特にはないな。リヴェリア、アイズ、君たちはどう思う?」

「どれ? ……うん、私も特に不備はないと思う」

「……私も」

「ありがとうございます。ではこれで今日は調査を進めようと思います」

 

 やっぱり当事者がいると、資料の信頼度がグッと上がる。

 

「しかし、いいのかい? 君は【ロキ・ファミリア】でも、ましてあの現場にいたわけでもないだろう?」

「いえ、どんな縁があってうちの【ファミリア】に影響があるかわかりませんから」

「……そういえば」

「どうしたんですか? ヴァレンシュタインさん」

「アイズでいい」

「わかりました、でどうしたんですか?」

「18階層でその女が狙っていた荷物を【ヘルメス・ファミリア】の人が持ってた」

「名前は確か……ルルネさん、だったかな?」

 

 ルルネ・ルーイ。【ヘルメス・ファミリア】所属のLv.3の第二級冒険者。主に盗賊(シーフ)の役割をすることが多い。お金に目がない。

 

「……すいません、一気に当事者になりました」

「はははははは! 大変やなぁ少年!」

 

 コンコンコン。

 

 その時、ドアををノックする音が聞こえた。

 

「はーい」

 

 立ち上がり、玄関のドアを開ける。

 

「やあ、今いいかな?」

 

 そこにいたのは【ヘファイストス・ファミリア】の売店で働いている売り子の人だった。

 

「あ、いつもの用件ですか?」

「そうなんだ。しかもけっこう量があってね。頼めるかい?」

「はい、大丈夫ですよ。では庭の方へ移動しましょう」

 

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 レフィーヤside

 

「ねぇ、レフィーヤ」

「なんですか?」

「あれ、何やってるの?」

 

 私達の視線の先にはトキが剣を振っていた。その近くではさっき来た人が真剣そうに彼を見ている。

 

「あれは武器の良し悪しを見ているんです」

「武器の良し悪し?」

 

 ちょうどトキが剣を振り終わったようだ。

 

「どうだい?」

「そうですね。剣の長さが若干短いですね。重さも若干軽いですし、小人族(パルゥム)や歳が若いヒューマンとかがいいと思います」

「なるほど……。次はこの槍をお願いできるかな?」

「わかりました」

 

 そう言って剣を渡し、今度は槍を受けとり再び振る。

 

「ああやって武器の特徴を掴んでどんな相手にお薦めしたらいいか調べているんです」

「へー」

「まあ、あんまり上手くはないようだね」

「少しかじった程度だそうです。彼の得物はナイフとハルペーですから」

「ハルペーって……また使いにくいものを……」

 

 その後、その作業は小一時間続いた。

 

 sideout

 

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 作業が終わり、お客さんが帰った後、再び【ロキ・ファミリア】の面々と話をする。……正直、かなり緊張する。

 

「……ねぇ、ちょっといいかな?」

「はい、なんですか?」

「5階層でミノタウロスに追いかけられたの、君?」

「ええ、そうですよ。その節はどうもありがとうございました」

「ううん、もともとを言えば私達の責任だから」

「……いや、第一級冒険者が束になってかかったらさすがのミノタウロスも逃げ出しますよ」

「……それに逃げられちゃったし」

「……は?」

 

 言っている意味がわからなかった。ミノタウロス以外にも何かに逃げられたのか?

 

「君とパーティ組んでいる子に逃げられちゃったし……」

「……あ」

 

 そういえば、ベルのやつ文字通り脱兎の如く走り去っていったな。

 

「なんですかその人は! アイズさんに助けてもらって逃げ出すなんて!」

「あの時の私、怖かった?」

「……くっ」

 

 そういうことか。て言うかアイズさん気にしてたんだ。

 

「?」

「ああ、いえ。なんでもありません。結論から言いますとあいつはアイズさんが怖くて走っていった訳じゃありません」

「じゃあどうして?」

「自分がモンスターに追いかけ回されて、もうだめだーって時に颯爽とそのモンスターを倒してくれて、しかもそれが超美人で強いと有名な【剣姫】だったんです。そのあまりの美しさと強さに思わず逃げ出したくなっちゃったんですよ」

「えーなにそれー」

「うん、わかる」

「わかるの!?」

 

 とまあこんなやり取りをしていた時のことだった。

 

 コンコンコン。

 

「おーい、トキよ。いるかー」

 

 たまに来る知人……というか知神の声がした。

 

「ん? 今の声……」

「はーい、今開けまーす」

 

 ドアを開け、そこに立っていたのはやはり想像した通りの神様だった。

 

「おー、メルクリウスやないか! 久しぶりやな!」

 

 俺の後ろからロキ様がひょっこりと顔を出す。

 

「うん? ロキじゃないか! なんでいるんだ?」

「いやー、この少年がうちの子の彼氏言うから、どんな子か確かめよー思おてな。そういう自分は何しに来たんや?」

「ああ、それはな……」

 

 メルクリウス様は持っていた手荷物を取り出す。それはポーションのようだった。

 

「新製品の相談だ」

 




書きたいことが多過ぎて長くなりそうなのでここで一旦切ります。すいませんでした。

そしてオリ神様登場。メルクリウスはローマ神話の商業を司る神でギリシャ神話のヘルメスと同一視されるとか。まあ具体的なエピソードは知らないんですけどね。

また今回出てきた【ヘファイストス・ファミリア】の売り子は今後の登場予定はありません。いわゆるモブです。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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