トッキュウ・オンライン、トッキュウ6号VRMMOに行く、ここか…………俺の死に場所は!   作:ライダーファイト(ただいま療養中)

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第11駅 一時の平穏そして進むべき道

キリトは俺に話している。

 

ベータ時代に受けたこのクエストについて、このクエストで森エルフと黒エルフのどちらかに味方をしても、プレイヤーは倒されていた。だがそこで味方をした方のエルフが禁断の技を使い敵のエルフを倒しプレイヤーを助けてくれると。

しかしその禁断の技を使った結果、味方したエルフも死んでしまい、自分達は2つの種族の戦争に巻き込まれて長い物語が始まると。

 

 

 

だが今の前の状況は、味方をしたエルフは普通に生きており、俺達を野営地まで案内していた。

 

「……………なるほどな」

 

キリトの話を聞いた俺は、顎に手をやり考える仕草をする。

 

「アキラはどう思う? やっぱりアキラの言うとおり、茅場晶彦がクエストの設定を変えたのかな?」

 

「…………さぁな、俺は茅場晶彦という男がどんな奴なのかも分からん………………ただ」

 

「ただ?……………」

 

疑問を投げ掛けるキリトに、俺は肩を竦めながら分からないと言うも、今分かっている事を言う俺にキリトは顔を向ける。

 

「設定が変わってるってことは、このクエストでなにか大切なものがあるんじゃないのか?」

 

アキラの言葉に、キリトは頷きながら口を開く。

 

 

「………確かに、俺達プレイヤーにメリットは存在するかもな」

 

 

 

 

 

 

古道を歩いていると、キリトの言った通りメリットは今すぐ出てきた。

ダークエルフの野営地へ向かいモンスターに遭遇するも、ダークエルフのキズメルが所持しているサーベルで斬り倒していく、なので俺達はなにもしないで普通に歩いている。たまに加勢してモンスターを倒している。

 

(しかし…………こんな深い霧の中を迷わずに進めるな。NPCだから進むべき道が分かっているんだろうな?)

 

 

 

深い霧の道を進んでいくと、目の前にボヤけながらも何かが揺れていた。霧のボヤけから抜け出すと何本もの黒い旗が掲げられていた。

 

 

「けっこうあっさり着いちゃったわね」

 

隣でアスナが言うとキリトが微妙な角度で頷き俺は無言でダークエルフの野営地を見ていると、俺達の道案内をしていたキズメルが足を止め俺達の方に振り向き口を開く。

 

「野営地全体に《森沈みのまじない》が掛けてあるゆえ、そなたらだけではこうも容易く見つけられはしなかったぞ」

 

「おまじないって魔法のこと?」

 

「ん?だがこの世界に魔法はないんじゃないのか?」

 

アスナが偉そうにタメ口質問をして、反対に俺は疑問の質問を投げ掛ける。

それでキリトが何かを言おうとしていたが、ダークエルフによって空振(からぶ)った。

 

 

「……………我らの(まじな)いは、到底魔法とは呼べぬものだ」

などとダークエルフのキズメルが長い睫毛(まつげ)を伏せて呟いた。

 

 

「言わば、古の偉大なる魔法の微かな残り香。大地から切り離された時より、我らリュースラ民は、あらゆる魔法を失ってしまった…………」

 

俺はキズメルの言葉に顔をしかめた。

 

いや、内容が内容だけに聞けば、それはまるでキリトから聞かされた浮遊城アインクラッドの話。

 

この世界が存在している理由を。

 

(………何だか分からんが、このクエストは今まで俺が受けたクエストよりも…………大変そうだな。さて、どうなることやら?)

 

俺は髪を掻きながら、再び戦いの覚悟を決める。

 

 

 

そんな話も終わりにして、俺達は濃霧の奥に翻る漆黒の旗に近付いていくと、嘘のように霧が晴れていき、急激に視界がクリアになった。

 

 

視界が晴れると、切り立った山肌が左右に続き、その一箇所に幅五メートル程の谷間が口を開けていって左右に細長い柱が立っていた。

 

その柱目印のようで、黒地に角笛と片刃刀染め抜かれた旗が柱の天辺で微風にたなびいていた。

 

そして、柱の前には、俺達と一緒にいるキズメルより少しだが重装備の衛兵のダークエルフがいた。細身の薙刀これ見よがしに立てるそいつらに、キズメルは歩み寄っていく。

その隣とさらに隣ではキリトとアスナが、何やら緊張した感じで、話し合っていた。俺はそんな二人を見て、緊張を解くためにハーモニカを吹く。

 

♪~♪~~~♪~ ♪~♪~~♪~ ♪~♪~~~~♪~ ♪~♪~~♪~

 

「!?…………」

 

「あ…………」

 

アスナとキリトがハーモニカを吹いている俺の方に振り向く、俺を見る2人にハーモニカを口から離し俺は言う。

 

「安心しろ…………何があってもお前たちは俺が守る。それが俺の仕事だからな」

 

そう言って俺は2人にサムズアップを向ける。

 

 

俺の言葉に2人は少し緊張が解けたのか笑みを見せ、2人は意を決したように歩を進める。

衛兵どもは俺達にジロッと胡散臭そうな視線を向けてきたが、何も言わずに俺達を通してくれた。狭い谷は少し歩くと、再びいきなり目の前は急激に広がり、直径5メートルはあろうかという円形の空間を作っていた。そこには黒紫色の天幕が大小合わせ20近くも張られ、ダークエルフの戦士らが行き交う場面は、中々に素晴らしい眺めだ。

 

「へえ…………ベータの野営地より大分デカいなあ」

 

キリトがキズメルに聞こえない声量で呟くと、隣のアスナが訝しそうにキリトを見る。

 

「前と場所が違ってるの?」

 

「ああ。でもそれは異常なことじゃなくて、こういうキャンペーン・クエスト関連のスポットは大抵一時的(インスタンス)マップだから……」

 

一時的(インスタンス)?何だそれは…………?」

 

 

この一ヶ月で俺とアスナはキリトからゲームシステムを教えられたが、俺達はこの用語に聞き覚えがない。なので谷の一番奥にある天幕に向かいながら、キリトが小声で説明する。

 

「クエストを受けてるパーティーごとに、一時的に生成される空間。って言えば良いかな?俺達はこれからダークエルフの司令官と話してクエストを進行させる。けど、そこに同じクエをやってるパーティーが来たら具合が悪い。まあ、一層の《森の秘薬》みたいに、誰かがNPCと話してる時はそのスポットが閉鎖されるだけのクエストがあるんだ」

 

「ん、んん………つまり、私達は今、三層のマップからは一時的に消滅してこの野営地に転移してる状態、なわけ?」

 

「そういうこと」

 

流石はアスナだ理解力が高い。俺は何を言ってるのか途中からチンプンカンプンだ。

キリトが頷いていると、アスナはダークエルフの衛兵と同じく胡散臭い目付きになり、すかさず言った。

 

「いつでも出られるんでしょうね?」

 

…………こいつカグラやミオと違って、相当めんどくさいな。

 

 

 

 

 

 

まあ色々な展開があったが、キリトの話しに出てきたダークエルフの先遣部隊司令官との話し合いは、平穏な雰囲気で終了。ダークエルフの司令官を見てみたがそれなりの実力者と見た。キリトやアスナだったら秒殺だが俺ならばあの司令官を倒すのは可能だ。

 

キズメルの生還と翡翠製の鍵の奪還を大いに喜ぶ司令官。俺達にかなりの額のクエスト報酬と中々良い装備アイテムをくれるらしいが、どれか1つだけ選ぶようだ。

キリトは筋力値が1上がる指輪を同じくアスナも敏捷力が1上がる指輪を選ぶ。

俺はキズメルの剣に似た意匠のサーベルに決めた。シーケンソード+3はまだまだ保つが、このデスゲームの戦闘で武器が壊れれば一貫の終わりだ。俺は体術スキルを取得しているが戦いは何が起こるか分からない、体術スキルだけでは心許(こころもと)ない、そのため武器は多い方が助かる。

 

 

装備アイテムを選んだ俺達は、司令官から新たなクエストを受けて大天幕を辞した。谷あいの草地に戻ると、空の代わりの次の層底は夕暮れ色に染まっていた。メニューウィンドウを開くと、時刻はもう5時に近かった。

 

キリトとアスナは緊張が完全に解けたのか。凄まじい疲労感が溜まっている顔をしていた。

 

 

(良い疲労感の顔だな…………こういう疲れを持っている時ほど、銭湯に入ると格別な気持ちよさを感じるんだ)

 

俺は2人の疲労感を見ていると、急にあそこの銭湯に入りたくなってきた。

 

(現実世界に戻ったら、一番最初にあの銭湯に向かうか!)

 

俺が少し現実世界での楽しみを思い浮かべていると、俺達と共にいるキズメルが伸びをすると、俺達に向き直り仄かに微笑の滲む唇を動かした。

 

「人族の剣士達よ、そなたらの助力に私からも改めて礼を言おう。次の作戦もよろしく頼むぞ」

 

「い、いや、こ、こちらこそ」

 

キリトが緊張した感じで返す。

 

 

「考えてみれば、まだ名前も聞いてなかったな。なんというのだ?」

 

(ん?NPCは名前を聞くこともあるのか………?)

 

俺は疑問に思いながらも、キズメルに俺の名を言った。

 

 

 

「俺の名は、アキラ…………人知れず戦い人知れず消え、自らの死に場所を探している」

 

「おっと…………俺の名前はキリト」

 

「ふむ、人族の名は発音が難しいな。アキラ…………キリト、でいいか?」

 

 

「キリト」

 

「キリト」

 

「そう、完璧」

 

イントネーションが微妙だったのか。キリトはもう一度繰り返した。発音が良くなったのかキリトは満足そうな顔をする。

 

そしてキズメルはアスナとも同様のやり取りを繰り返した。

 

 

え?俺は良いのかって?

別にいいさ、すぐにイントネーションは良くなるだろ。

 

 

 

発音調整を終えると、キズメルは満足そうに頷き会話を再開する。

 

「アキラ、キリト、アスナ。私のことはキズメルと呼んでくれ。…………、それでは作戦に出発する時刻はそなたらに任せよう。一度人族の町まで戻りたいのなら呪いで送り届けるが、この野営地の天幕で休んでもかまわない」

 

ほおぉ、こいつらの力で主街区まで戻れるのか、そいつは便利だな。ただ主街区まで戻ったら、このダークエルフの野営地まで戻るのが大変だな。

 

(それに主街区に戻ったら、このクエストは中止になりましたは、勘弁してほしいな)

 

俺はキズメルの言葉に内心考え込むが、隣のアスナはキリトを見て、やれやれ、と言わんばかりに肩を上下させていた。

 

どうしたんだ。一体?

 

 

 

その行動が終わると、アスナはキズメルの言葉を返す。

 

 

「それじゃ、お言葉に甘えて天幕をお借りします。お気遣いありがとう」

 

「礼には及ばね、何故ならば……」

 

次のキズメルの言葉には、流石の俺でも困りそうになったが、

 

「予備がないゆえ、私の天幕で寝てもらわねばならんからな。四人では手狭だが我慢してくれ」

 

…………なにもしなければ、どうと言うことはないだろう。

 

「いえ、ありがたく使わせていただき…………四人?」

 

アスナがピタッと活動を停止、キズメルが言葉の続きを待っているのを、キリトが言った。

 

 

「ありがとう、では遠慮なく使わせてもらいます」

 

「うむ。私はこの野営地にいるので、用があればいつでも呼び止めてくれ。それでは、しばし失礼」

 

ダークエルフは一礼すると食堂の方に歩み去っていく。

アスナはフリーズしており、俺はキリトにジト目を向けて言う。

 

「おいキリト…………お前まさか、これを狙ってたんじゃないだろうな?」

 

「……………………………………………………」

 

俺がジト目をしながらそう言うと、フリーズしていたアスナも気を取り戻し、俺と同じく無言のままキリトにジト目を向ける。俺達のジト目にキリトは仮想空間の中なのに、大量の汗を流しながら両手の平と首を振り回す。

 

「違う違う!違う違う!そんなわけないだろ!?俺はキチンとこのクエストをクリアしたいがためにやってんだよ!!!」

 

「…………本当にそうなの?」

 

「その慌てようは逆に怪しまれるぞ」

 

「勘弁してくれ」

 

 

俺とアスナの言葉にキリトはガクッと頭を下に垂らした。

まあ、こいつは第一層での前科があるからな。少し、怪しんでしまう。

 

 

「それよりも!」

 

「お、おう」

 

「ん?……………」

 

キリトの変態疑惑らしき話が終わると、アスナが大きな声を出す。そのため俺達はアスナの方に向くと、アスナは表情を3パターン変化させて言った。

 

 

「さっきの取り消して、主街区までお呪いで転送させてもらうのは可能?」

 

「えっと…………もう無理」

 

キリトの口から事実が出された。

 

(何なら俺だけ外で寝てもいいんだが………野宿には慣れてるからな)

 

 

 

 

キズメルの天幕に入ってみたところ、キズメル本人は『三人では手狭』と言っていたが、何てことはない六人ぐらいなら楽々横になれる面積が普通にある。

 

天幕の中はこうなっている。

床にふかふかの柔らかい毛皮が敷き詰められ、壁代(かべが)わりの分厚い織物の布で、外部の騒音をシャットアウトし、中央の柱の前には不思議な形のストーブが置かれてトッキュウ6号と同じ色の光と暖気を穏やかに放っていた。

 

 

俺達は武装を解除してドサッと倒れ込むと、アスナが冷ややかにキリトだけを見下ろしていた。何やら示すように足を出した。

 

「あなたの場所、そこね。でこのへんに国境線があると思ってください」

 

「…………国境侵犯したらどうなるんですか?」

 

「ここって《圏外》、よね?」

 

アスナの言葉にキリトは興味本意で侵犯を聞くと、アスナの目を鋭くさせ、武器のレイピアも鋭く輝き怒気をふくめて口を開く。

 

 

「分かりました。完璧に理解しました」

 

キリトはアスナの鋭い眼光とレイピアに軽く恐怖のようなものを見せながら、コクコクと頷いて寝転がる。

 

確かに国境侵犯をを侵したら、刺突させられたら文句は言えない。

 

でもな…………………

 

 

 

「そんな話を俺を間に挟んで言わないてくれるか?」

 

そう、そんな話を俺が間に挟まれながら話されていた。

 

 

「第一アスナ、国境侵犯を犯しただけで攻撃するのはどうなんだ?」

 

「攻撃しただけでも、お前はオレンジプレイヤーになるんだぞ、お前の目的に自らの首を絞めるのは止めろよ」

 

「分かってるわよそんなこと、だからあなたに間に入ってもらったのよ? なに?それともあなたが国境侵犯するの?」

 

「そんなことするわけないだろ?俺はお前を襲う気もなければ、お前に興味もない」

 

言いきると、アスナの耳がピクッと動いて右隣のキリトはまた顔が青くなっていた。アスナは軽く鬼のような顔をしており、人指し指を俺に向け聞いてきた。

 

 

 

「それじゃあ………あ・な・た・は!何に興味があるのかしら~」

 

そんなことを聞いてくるアスナ。心の中で思い普通に答える。

 

(俺の興味があるもの?そんなの簡単だ)

 

 

「俺の興味のあるようなものなんて、虹と死に場所だけだ」

 

そう答えた俺にアスナは人指し指を向けたまま固まり、キリトは髪を掻きながら息を吐いた。

 

 

黙っている2人に俺は立ち上がり、テントを出るところで止まり、2人に顔を向け言う。

 

「あ、ちょっと訂正があったな。俺が興味があるのは後1つか2つはあったな」

 

 

「じゃあ俺は一旦外に出る。休めるときはしっかり休めよ」

 

そう言って俺は野営地から外へと出る。

 

2人は何やら驚いた顔で興味のあるような顔をしていた。

 

 

 

 

俺は外に出て周りを見回すと、ダークエルフの騎士達が木箱の荷物を持って野営地の隅っこに置いたり、武器の素振りをして自分を鍛えていたり、次の作戦について地図を広げ仲間たちと相談をしていた。

 

 

俺はダークエルフ達のそんなやり取りを見て目を離し、あの幻想的な森に入る。野営地を離れた少し先には、森が覆ってない人が座れるほどの岩がある。今そこでは岩の真上に月が昇って月明かりを照らしていた。

 

俺はゆっくりとその場所に歩を進め、岩の上に腰を掛ければジャケットの懐からハーモニカを取り出し吹く。

 

 

♪~♪~~~♪~ ♪~♪~~♪~~♪~ ♪~♪~~~~~~♪~ ♪~♪~~~♪~ ♪~

 

 

俺はハーモニカを途中で吹き止める。その理由は右側の森の奥に何者かの視線を感じたからだ。

 

「……………誰だ?」

 

俺がそう言うと森から拍手が聞こえた。

 

 

 

パチパチパチパチパチパチッ!

 

森の奥から出てきたのは、俺達をこの野営地まで案内してくれたキズメルであった。

 

「なんだ…………お前か」

 

「よいメロディーだな。聞いてるだけでも心が落ち着くものだ」

 

森から出てきたのがキズメルだと確認した俺は、もう一度ハーモニカを吹き始めようとすると、拍手を止めキズメルが俺が吹いているメロディーに感想を言ってきた。

 

 

「その楽器でそのような不思議なメロディーが聞けるとは、楽器とは不思議なものだ。そしてそのメロディーを吹けるアキラも大したものだ」

 

キズメルはハーモニカのメロディーに頷いているが、俺はキズメルにこのメロディーが何なのかを教える。

 

 

「悪いがこのメロディーはそんなんじゃない…………このメロディーは俺の鎮魂歌(レクイエム)だお前が思うほどのものじゃない」

 

鎮魂歌(レクイエム)?………………それは一体どういうことだ?」

 

「どうもこうもないさ、俺はかつて大罪(だいざい)を犯した。それは償いきれない程の罪の数だ…………だからこのメロディーを吹きながらも俺の死に場所を探している」

 

キズメルにそう言い切り、俺は悔やむ顔をしながら握り拳を作る。そんな俺を見たせいか、何故かキズメルが否定の言葉を出した。

 

「……………私はそうは思わないな」

 

「?………どういう意味だ?」

 

「アキラ………私はそなたがどれほどの罪を犯したのか分からない、いや私にはそなたが罪を犯すほどの男とは思えない」

 

そう言いながら、キズメルは続けて迷いなくハッキリ言った。

 

 

「何故ならそなたのこれまでの行動は私達をフォローに廻ってくれた。それにハーモニカの音色も美しい。あのような美しい音色を吹く者が罪人ではない………………そなたは強さと正しさと優しさを持った素晴らしき人間だ!」

 

キズメルの強い言葉に俺は数秒黙りながらも、とある疑問を聞いた。

 

「…………………それよりキズメル。何で俺の所に来たんだ?なにか用があって来たんじゃないのか………?」

 

俺の言ったことに、キズメルは今までの話し合いで忘れていたらしく、すぐに気付き面と向かって話し始めた。

 

 

「ああそうだった………美しい音色で忘れていた。いや実は湯上み用の天幕があることを知らせようと思ってな」

 

 

「湯上み?…………もしかすると、風呂のことか?」

 

俺の言葉にキズメルは頷くと、左手で風呂の場所を指差した。

 

 

「ああ、そうだ……食堂天幕の隣にある。こちらはいつでも使える」

 

「そうか…………」

 

俺は腕を組み考える。

 

 

俺は銭湯の風呂が好きだが、普通の風呂は好きになれないし嫌いにもなれん、どうにも微妙なんだが疲れは取れるときに取っておくか。

 

 

(……………たまには銭湯にある広い風呂で体全体を伸ばしたい………)

 

贅沢は言えないから、俺は強く頷く。

 

 

「それじゃあ、その言葉に甘えて風呂を頂く」

 

「うん、心ゆく使ってくれ」

 

キズメルに背を向け、ダークエルフの野営地に戻り風呂に向かう前に、背を向けたまま顔だけキズメル向けて言い放つ。

 

 

 

「キズメル…………明日はよろしく頼むぞ」

 

俺は親指を立てて言って軽く手を振り、風呂がある天幕へと歩を進める。

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む!」

 

キズメルも強く返答した。

 

 

 

 

俺は野営地に戻り、食堂の隣にある風呂の天幕へと入ってみると先客がおり、キリトが天幕の支柱に腰を下ろしていた。

 

 

キリトは俺が入ってきたことに声を掛けてくる。

 

「あ………アキラ?」

 

「キリト、こんなところで何やってるんだ?風呂に入りたいのなら入ったらどうだ?」

 

「…………俺は別に後でも構わんぞ」

 

そう言うと、キリトは苦笑しながら親指で布製ドアの先を指して話し始めた。

 

 

「先にアスナが入るのさ、それで俺はその次に入るから、ここで座って待ってるんだ」

 

キリトの言葉に俺は納得して頷くと、俺もキリトと同じく支柱の近くに腰を下ろす。

 

「そうか……………ならキリトの次に入るために、俺もここで待つとしよう」

 

すると、布製ドアの向こうから小さな効果音が聞こえると、次に水が出ていく水音に、最後に『はあぁ~』っと満足そうな溜め息と、後から『ふんふふっふ~ん♪』と鼻歌が聞こえた。

 

 

(まあ、《衣服全解除》と《下着全解除》のボタンが続けて押された音だろうな。それとアスナの極楽そうな声もだ)

 

俺は心の中で確認して、目を瞑り腕を組んで支柱に背を預ける。

 

俺は軽く居眠りをしようとすると、隣のキリトがここでしか聞こえないほどの声量だが、唸り声を出した。

 

 

「……………………休めるか!」

 

キリトの唸り声に驚いた俺は、目を開き驚いた勢いで支柱に後頭部をぶつけた。

 

「ぐわぁっ!」

 

「す、すまん!?大丈夫か!アキラ!?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

痛みは感じないが、なんとなくで頭を抑える。

 

 

俺の案日を確認したキリトは離れ、支柱にまた座り込むと今度は腕組みをして座禅のようなポーズをして目を閉じ始めた。

 

「んんんんーふふーふふーん」

と、そこで再びアスナの微かな鼻歌が聞こえ始め、そのせいで何やらキリトが物凄く居心地が悪そうで苦しそうな顔になったため、キリトが可愛そうだと思った俺はジャケットの懐からハーモニカを取り出して吹く。

 

 

♪~♪~~♪~ ♪~♪~~~♪~ ♪~♪~~♪~~~~♪~

 

俺がハーモニカを吹き始めると、キリトは和らぐような表情になり、そのために俺は30分以上もハーモニカを吹き続けることになったため、俺の息は激しく苦しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?……………………まだ夜か?」

 

毛布にくるまり眠っていた俺達だが、何故か俺は急に目が覚めてしまい、虚ろ眼で意識が完全に覚醒していなかったが、数秒経つとすぐに意識は覚醒した。

 

「急に目覚めたせいで眠気が吹っ飛んだな」

 

 

俺は立ち上がり天幕にいるキリト達を見ると、天幕の所有者であるキズメルがいなかった。

 

(随分と早起きなんだな)

 

俺はキリトとアスナを起こさないよう、微かな音も立てずに天幕から出ていく。天幕から出て体を伸ばして周りを見渡す。どこにもキズメルの姿はない、パーティーメンバーにはキズメルの名前はちゃんとあるし、HPバーも満単だ。

 

もしかしたらキズメルは、この野営地のどこかにいるのかもしれない。

 

 

 

俺はキズメルの心配をせず、こんな朝早くに起きたのだから。

 

「朝風呂というのも中々良いものだからな!」

 

俺は喜びと楽しみの笑顔で、すぐさま風呂がある天幕へと直行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~。いい湯だったなーやはり朝風呂も中々良いものだ!!」

 

朝風呂を堪能した俺は、生き生きとした表情で風呂から上がり、司令部の周りを散策していると司令部の天幕の裏手からキリトとキズメルの微かな声が聞こえ、俺は裏手へと入ってみる。

 

 

裏手へ行ってみると、そこは墓標だった。

左端の墓の前には金属防具だけを解除したキズメルと同じく防具だけを解除したキリトが話し合っていた。

 

俺は2人の元まで歩を進めながら、キズメルの話を聞くことにする。

 

「ティルネル………さん?」

 

「双子の妹だ。先月、この層に降りてきて最初の戦で命を落とした」

 

「ティルネルさんも……騎士だったのか?」

 

「いや、妹は薬師だった?戦場では怪我人を癒すのが仕事だ。だが、妹がいた後方の部隊に、森エルフの鷹使いどもが奇襲をかけた………」

 

キズメルの台詞に俺は歩を止め、木の影に隠れて腰を落とし、悪いことだがキズメルの話を盗み聞きしてしまった。

 

キズメルが妹を失っていることに、俺はどういう反応をしていいのか分からなかった。何故なら俺は人間ではなくシャドーだ。

 

戦場にシャドーがいても、その戦場にいるのは自分自身、ただ一人…………

 

なのだが、ライト達の自分達の町を救いたいという思い、シュバルツが闇の女帝グリッタの為に動いた思い、そして俺と共にシャドーラインを裏切った“アイツ”。

 

そんな中で俺は色んな奴らの思いを知った。

 

 

(だが、今の俺の胸に宿る思いは何なんだ?キズメルの言葉に声を掛けたいが、今まで感じたことのない思いが胸に刺さる。まるで複雑という言葉が表せそうな思いを感じる…………)

 

(…………何なんだ………? この胸の、苦しみは?)

 

俺は胸を力強く、握り締めるように触った。

 

 

 

キズメルは隣へ座ったらどうだと顔を和らげながら言って、キリトは少し戸惑いながらも腰を下ろした。

 

するとキズメルが、傍らに置いてあった革袋を取り上げ栓を抜き一口飲むと、そのままキリトに差し出した、キリトも革袋の飲み物を一口飲みキズメルに返した。

 

するとキズメルは右手を伸ばして、革袋に残っている飲み物を妹のティルネルの墓標に注ぎかけた。

 

 

「妹が大好きだった月涙草のワインだ。驚かせてやろうと、城から内緒で持ってきたのだがな、一口も飲ませてかれなかったよ………」

 

(あの飲み物、ワインだったのか)

 

そんなことより、キズメルは革袋を草の上に落とし、ノロノロと手を戻すと、両膝をを揃え立て抱え込んだ。

 

 

 

いきなりキズメルはキリトに話し出した。

 

 

「……昨日、秘鍵奪還の任務に志願した私は死を覚悟していた。いや、それを望んでさえいたのかもしれん。事実あの森エルフとはやくて相討ち、(ある)いはわざと敗れようとしただろう…………だが、運命はそなたらを我が死地に導いた。この世界に最早如何なる神も存在しないはずなのだがな………」

 

そう言うと、キズメルはキリトを見る。

キズメルの言葉にキリトは苦しそうな顔をしていた。この距離では分からないが、そんな感じがしたが、キリトは何かを覚悟したかのように言うところで、俺も立ち上がり2人の元まで行く。

 

「神の導きじゃないさ。俺とアスナとアキラは自分自身の意志であの場所にいたんだ。だから、最後まで付き合うよ。キズメルが家に帰れるときまで時まで」

 

キズメルは小さく微笑んで、頷いた。

 

「ならば、私もそなた達を守ろう。進む道が別れる時まで」

 

「そうだ!」

 

「「!?」」

 

俺が声を掛けた事に2人は驚き、俺の方を振り向いた。

 

 

「アキラ!?いつから居たんだ!」

 

「悪いな、お前の話を盗み聞きした」

 

俺はそう言いながら、量キズメルに頭を下げる。

 

「ッ!? 聞いたのか…………」

 

「悪い、だがお前の死に場所はこの世界には、どこにもありはしない」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「……………言葉の通りだ。お前の死に場所は、この世界のどこにもありはしない。お前は故郷の為にも自分自身の為にも、そして妹の為未来の為にも生き続けなくてはならない!」

 

「お前は絶対に死ぬべき存在ではない!」

 

俺は間を開けると、キズメルは何を言おうとするのか俺を見て、キリトは分かっているのか頭を抱えていた。

 

「寧ろ、この全てのフィールドが俺の死に場所だ!!お前達を生き残らせ、俺は静かに消えていくだけだ」

 

「あのなぁ、アキラ………お前いい加減に」

 

キリトが言い切る前に、キズメルの言葉で遮られた。

 

「私に……………そなたの言葉を実行できるかどうかは分からないが、だがそなたの言葉に私は感動した!共に行こうアキラ!」

 

「ああ、任せろ!!」

 

俺達は手を握りあうと、キズメルの隣にいるキリトは「なんだこれ?」と言って、体をガクッと下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ夜が明けてない中、俺達は森の中にいる。

俺、キリト、キズメル、そしてアスナだ。

 

まあ天幕に戻ると準備万端のアスナが俺とキリトを見て、薄着のキズメルを見ると、何故か冷ややかな視線を送ってきたため、俺は分からず首を傾げ肩を竦め両手を真横に向けて、訳が分からん。というポーズをやった。

 

俺達全員の準備は終わっているため、すぐに野営地から《迷い霧の森》へと進んだ。この森に着くまでアスナがずっと俺達2人を懐疑的な目で見ていたが、森に着けば既に止めていた。

 

 

 

 

森の周りを見れば、夜の《迷い霧の森》は苔むした巨大な樹や低く流れる霧の帯は月明かりに青く照らされており、そんな様子は昼間より別段と幻想的だった。

 

 

キリトとアスナは夜の森の幻想差に見惚れているが、俺はすぐに森から目を離し、アイテムの確認と装備の確認を始める。

 

「回復ポーションよーいよし、解毒ポーションよーいよし、武器の調子良し」

 

 

ポーチを見れば回復ポーションは4つ、解毒ポーションは5つあり、ストレージにはフルにあることを確認し、最後には装備の確認を始める。

 

最初はブーツから確認し次にベルト、次は上半身の服などの確認をする。

 

 

「よしっ、全装備確認完了だ」

 

俺は全装備を確認し終えると、キリトとアスナが我に返り、振り向くとキズメルは口を開く。

 

 

「あの子も、夜の森が好きだった。…………さあ、出発しよう」

 

キズメルの言葉に俺は頷き、手に装備している。指貫き手袋を填め直して宣言する。

 

 

 

「…………さあ行くぞ。物語を進めにな!」

 

宣言をして、ジャケットの懐からハーモニカを取り出して、ハーモニカを吹きながら夜の森へと入っていく。




…………………………ようやく、更新できた…………死ぬかと思った~。
もう生活も苦しいし、やること多すぎて更新をする隙が中々取れなかった。
まあ、そんな感じですけど、読者の皆様!感想お願いします!

一万文字以上も書いて………………ごめんなさい!??
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