白いカラスの最強日記   作:棚上げ侍

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「真剣で嘘つきを騙してみろ」というのもやっております。そちらもどうぞ。

ではどうぞ。





プロローグ的な

俺は、強い。

俺は、勝ち続けた。

俺は、手に入らないはずのものを手に入れた。

だからこそ、孤独になっていた。

周りからは恐れられていた。

名前を付けてくれた人を怨んでいるわけではないが、名前の通り白いカラスはほかの漆黒色のカラスから排斥される。当然だ。不気味で、恐ろしくて、気味が悪くて、よくわからない者を自分たちから遠ざけるのは、生物にほぼ共通する無意識的な本能だ。

 

 

 

 

 

 

俺は、白神烏(しらがみ からす)

 

 

 

武が広く広まったこの世界で、俺が生きるのは、おかしいのではないかと思う。

 

これは、とある最強の人間が川神という街でさまざまな人間と出会い、互いに励み、歩んでいく物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 

 

とある場所

何やら怪しい培養液が入っている巨大風呂の中に、一人の赤ん坊が居た。寝ているので、微かな吐息が聞こえてくる。そこで、その赤ん坊を抱きかかえる白衣を着ているとても小さな女性と、その横で腕を組んだまま気難しい顔をしている老婆が、何やら話し込んでいた。

 

「……やれやれ、こんなこと言いたくはないだけどねえ」

「ついに生まれてしまいましたね。私も全くの予想外の出来事です」

「二人目……か」

 

二人は赤ん坊を見て、複雑そうな顔をしている。

 

「で、どうするんだい。この赤ん坊は」

「ここまで人間として成り立っているのならば、廃棄処分に出るのはまず無理ですね。ただでさえ問題だらけのことをしてきたですし………」

「ま、これも私たちがやってきたことの責任ってもんなのかもねえ。とりあえず義経らと育てるとするかい」

「ええ………………………?」

 

不意に、とても小さな女性は腕の中で眠っていた赤ん坊が、いつの間にか起きていることに気が付いた。そして、

 

「………………」ニコッ

「!!!!!!」////////

 

その赤ん坊の無邪気な笑顔を見たとても小さな女性は、その小さな胸のなかであることを決意したのだった。

 

「あ、あのっ!」

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

白神烏side

 

 

 

 

 

現在時刻は午後五時過ぎ。俺は呆れていましたマル。

あ~あ、つまんねーの。

 

「た、助けてくれーーーー!」

 

どいつもこいつも雑魚にごみにクズ。

 

「ここここ殺されるーーーー!」

 

数さえそろえば怖いもん無し。なーんて古い考えが絶対に頭から離れない。

 

「逃げろ!逃げろおおぉぉぉぉ!」

 

さっさと逃げろ、俺はこれから引っ越しの準備があるんだよ。そもそもカツアゲなんて馬鹿な真似するから罰が当たるんじゃねえか。

 

「おい」

「ひぃ!」

 

俺と同じ制服を着ている女子高校生は、俺が一歩踏み出した途端に恐怖の表情を顔に浮かべた。あ~やべ、アイツらの返り血が顔に着いちまってたかな。つかこの血のシミって、なかなか落ちねーんだよな。あーメンドくせー。あそうそう。

 

「これ、さっきの財布。お前のだろ」

「あああああそしょそその財布はしゃし上げますにょで、どどどどうか見逃してくだしゃいいぃぃ」

 

完全に命乞いだろそれ。俺今お前を助けたはずなんだけどな…………感謝の言葉の言葉すら出てこないとか。つかお前が「助けてーー!」って叫んでたんだろ。まあ慣れっ子だけどな、こんなの。財布を投げつけて、そのまま家に直行して、引越しの手伝いして、飯食って寝る。うん、完璧なこの後の予定だな。

 

「おらよ」

「え?え?え?え?え?え?」

 

いやそこまで動揺すんなよ。そんなにえ?って言わなくてもいいだろ。もうこっちがえ?って言いたいくらいだよ。別にお前に絡んだわけでもねえし、むしろ助けてやったんだぞ。驚く必要性も理由も実際無いんだけど………いやあるか。俺の顔。目つきが鋭くてめちゃくちゃ怖いからな。いやそりゃ怖いよなうん。じゃあもう退散するか。つか返るか。

 

「じゃあな」

「あ………え?」

 

え?まだ言うの?

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで軽く自己紹介をしておこう。

俺の名前は白神烏(しらがみ からす)。とある県のとある市のとある町に住んでいる普通の高校二年生だ。

と言いたいところだが、俺は全く持って、普通などという単語を使うべきではない人間だということを、小学校低学年のころから自負している。それはなぜか、率直に答えよう。俺はとてつもなく強すぎるんだ。

幼稚園の時、たまたまテレビで見た川神特集。武の聖地である川神氏を特集した番組だったのだが、幼少期の俺は俺の父が見ていたその番組を偶然見かけた。その時俺が見たものとは、正拳突きを経った一発撃つだけで挑戦者吹き飛ばしてしまうハゲたじいさん。大きな台風を作り出して挑戦者たちを薙ぎ払ってしまう緑のジャージを着た中国人。手から輪っかのようなものを作り出し、それをぶっ放して挑戦者たちを一掃してしまう少しガラの悪いオッサン。そして何よりも衝撃を受けたのが、ハゲたじいさんの孫娘だといわれた少女だった。俺と年齢がそんなに変わらないのに、アクロバティックな動きや、力強い蹴りや突き、テレビごしでも伝わる迫力ある発声。そのどれもがその時の俺を魅了した。今でもその時の映像は、頭の中にくっきりと残っている、そのとき思った。『おれもぶじゅつをやりたい!』と。

俺はおふくろに頼み、すぐに近くの道場に入門して稽古を始めた。俺が最初に入門したのは空手道場で、はじめは基本の正拳突きと前蹴りを習った。初日はたったそれだけで終わったが、それでもその時の俺は武術を始めることが出来たことに、テンションがHighになっていた。月曜と木曜の週二回だったから、一度家に帰ってから次の稽古まで毎日毎日自分の部屋で正拳突きと前蹴りを、何度も何度も繰り返し反復練習をした。無我夢中になりすぎて、気付いたら夜が明けていたなんてことも少なくなかった。それぐらい楽しかった。

その結果も相まってか、俺はぐんぐん強くなった。空手の先生からは「君は10年に……いや、50年に一度の天才だ!」といわれるほどだった。そのときが小学校に入学する前の年ぐらいのことだったと思う。俺は同じ年のみんなより一足先に、小学校の人たちとの稽古に混ざって練習した。友達のみんなは、俺のことを尊敬のまなざしで見つめていた。俺は半分ふざけて、以前にテレビで悪役が言っていたセリフを言った。「おまえらとおれとでは、ちからがちがうんだよ!」と。その時周りのみんなは悪ノリし、「なんだとぅ(笑)」とか言ってたり言ってなかったりして笑い転げてた。

しかし、小学生の場でも俺の実力はおさまりきらなかったらしく、一年生になった時に中学三年生の先輩と交流組手のようなものをしたとき、その先輩を俺はかなりの余裕を残し、圧倒して倒してしまった。この道場の中で一番強かった先輩を倒してしまったのだ。そのとき見た先生の顔は、今でも覚えている。川神特集を見た時のドキドキとは違い、何かに恐怖する表情だった。そのときの俺は、直感でそんなふうなイメージでを感じた。

次の日から、道場での俺への目線は一変した。尊敬から恐怖へ。あこがれから嫉妬へと変わっていた。俺が大きな声で返事をすると、隣から「チッ」と舌打ちが聞こえ、近づこうとすると「うわーー、こーろーさーれーるー」と笑いながら逃げていく。極め付きは、俺はただ廊下でとおりすがっただけなのに、相手がいきなり「ぐわっ!」と悲鳴を上げて勝手に転びながら「化け物に殴られた~」とわめくのだ。武術をしているため、怪我をしてしまってあざが出来るのはよくあることだ。その元々あったあざを使い、あたかも俺が殴ったかのように見せかけたのだ。すぐに先生が呼ばれ、その日から俺は空手の大会に出場できなくなった。

その次の日から空手の道場はやめ、道着が似ているところから柔道の道場に入門した。そこでも俺は無類の実力を発揮し、瞬く間にその道場で一番強くなった。だが待っていた結末はかつての道場と同じで、いつの間にか恐怖と嫉妬の目線の雨に、ハリネズミにされていた。

そこからは同じことのイタチごっこだった。弓道、剣道、薙刀、フェンシング、ボクシング、カンフー、テコンドー、少林寺拳法、ムエタイ、サンボ、中国拳法、日本拳法、エトセトラエトセトラ………。最近は川神の影響もあり、かなりの種類と数の格闘技を受けることが出来た。かなりの種類の格闘技を短期間で習得し、その道場で恐怖と嫉妬の視線に襲われ、逃げるようにやめる。まさにいたちごっこだ。

そしてどこの道場でも使われたこの言葉。

 

『化け物』

 

その言葉を使われるたびに、俺の中で錆びた歯車が回るような音が聞こえるようで、とても気持ち悪かった。

俺が完全に孤立し、最強ともいえる実力を完全に身につけたのは、中学三年生の二学期くらいだったかな。目つきも悪けりゃケンカ(個人的には武術って言って欲しかったが)も強い。挙句の果てに「調子に乗ってんじゃね」って変なうわさ聞きつけたのか、いわれのない因縁つけにきたいかにも不良な先輩らにつれだされたり。まあ一つ残さず返り討ちだけど。けどそのせいでますます俺のヤンキー説は広がり、先ほども言ったが、俺に友達といえる人間は一人もいなくなった。一応誤解の無いように今のうちに言っておくが、俺は二次元に興味は一切ない。三次元がダメだからってペラペラの二次元に逃げるほど、俺の心は脆くない。例えるなら、超特殊合金の10万倍の丈夫さを誇っている。まあ、誇ることでもないし誇る相手もいないわけだが……。

まあそんなこんなで、今俺は高校二年生だ。そんでさっきから引っ越しとか言ってるのは、俺は三日後に引っ越すことになっている。おふくろの会社の都合だ。ちなみに今は、もうすぐ6月になろうとしている日にちだ。なんか会社でいろいろあって四月に引っ越すはずがこの時期にまでずれてしまったらしい。しかもその引っ越し先があの『川神市』だ。はっきり言ってしまうと、俺は今、川神があまり好きではない。ついでに言うと九鬼も好きではない。だから少し複雑な心境だったりする。

あと、ウチの家族は関係がいろいろごっちゃになっている。全員で三人家族なんだが、俺とおふくろと妹みたいなのが一人いる。親父はいろいろあって家を出ていったらしい。俺は会ったことどころか写真でも見たことがない。まあそこら辺のことは後からおいおい話すことにするか。

………おっと、ごちゃごちゃ話してたら、いつの間にか家に着いたようだな。

じゃあまたな。

 

 

 

 

 

 

 

sideout……

 

 

 

 

 

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白神烏side

 

 

………へ?なんだよこれ、なんでsideoutしたばっかなのにまた俺のところにブーメランしてくるわけ?おかしいんじゃねえの?つかもう川神市に引っ越し完了しちゃったぞオイsideoutってのはこう使うもんじゃねえだろうが。

……まあいい、今更どうこう言っても仕方ねえしな。話すすめるぞ。

今俺は川神院に居る。子供のころテレビでちらりと見た切りだから、なんかこう気持ちがざわざわする感じがする。多分武者震いだろう、うんきっとそうだな、そう思い込むことにするか。

そんでもって今俺の目の前に居るのは川神鉄心さん。うぅわ初めて生で見るよ、迫力マジパネェなこの人。例えるなら、深く大地に根を下ろした巨大な樹木みたいな感じだな。この人の実力が目の前に立つだけで、ひしひしと伝わってくる。流石だね。

 

「お主が白神烏君かの?」

「はいそうです」

「目つきが悪いのう」

 

ほっとけよ鉄心さん。

 

「初めまして川神鉄心さん。子供の頃、この川神院のことをテレビで見て、武を志しました。お会いできて光栄です」

 

この心にウソ偽りはないけど、光栄ですって言うのは完全にオーバーな表現だな。言うつもりはないけど、手も足も出ない相手じゃねえし。

 

「ほうかほうか、そりゃうれしい限りじゃわい。……まったく、モモにも白神君のことを見習ってほしいもんじゃのう………」

 

後半から小声で言ってるけど、バッチリ聞こえてるんだよ川神鉄心さん。

 

「おっとすまんな、年寄りのたわごとだと思って聞き流してくれんか」

「わかりました」

「それで、編入試験は筆記だと聞いておるが………武を志しているのならば、実技試験を受けたりはしないのかの?」

「………川神鉄心さん。俺は武を『志した』といいました。決して今『志している』わけではないんです」

「なんじゃお主、ワケアリかのう?」

「ええまあ……」

 

出来れば深く探らないでほしいんだけどな。という目で鉄心さんを見る。

 

「まあいいわい。今回学校ではなく川神院の方に来てもらったわけなんじゃが、わしの孫娘の川神百代……今では武神と呼ばれているのじゃが、これが困ったことに……」

「バトルマニアの戦闘狂、ってわけなんですよね。それでその武神さんが俺を見つけてしまったら即バトルになってしまうから、武神さんが学校に行ってるうちにテストとかを済ませてしまおう。……という魂胆なんですよね」

「察しが早くて助かるわい」

「先読みは得意なんです」

「では、筆記試験を始めるぞい。ついてきなさい」

「わかりました」

 

よし、いっちょ頑張りますか。

とか思って鉄心さんの後について行こうとしたら、

 

「………む?」

 

突然、鉄心さんが俺の方を不思議そうな顔をしながら振り返ってきた。

 

「……どしたんすか?」

「いやのう、ちゃんとついて来とるかと思っての」

「やだなあ鉄心さん。俺まだ3,4歩しか歩いてませんよ」

「むう……そうじゃの、わしの勘違いだったようじゃの」

「そうですそうです」

 

そのまま又歩き出した鉄心さんについていく。時折こちらの方を何度か振り返ったけど、それ以外は特に何もなかった。

着いた部屋は学校の教室ぐらいの広さで真ん中にイスと机が置いてある部屋に案内された。ここで試験を受けるのか。

 

「今のうちに言うておくが、このあと体力試験をあるぞい」

「え、本当ですか?」

「といっても、スポーツテストの延長みたいなものじゃ」

 

なんだ助かった。この川神学園のシステムに決闘ってのがあるから、組手とかさせられるのかと思っちまったよ。まあ仮に組手でも、全力で拒否するけどな。

 

「では、まずは国語じゃ。用意……はじめ!」

 

鉄心さんの合図でテストが始まった。

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

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川神鉄心side

 

むう、もったいないのう。白神烏君といったあ奴、かなりの実力をもっとる。しかしまったく自分をおごる気配がない。本当にモモに見習わせたいものじゃ。

しかも、わしの道案内についてきておるのに、なぜかついてきていないような感じがしたのう。いったい何がどうなってしまったのじゃ。それともわしが本当にボケてしまったのか……

そのうえ、どこか寂しげな雰囲気がある。それに、ワシを見た時のあの眼。確かにワシのことを尊敬のまなざしで見ていたが、その奥で何か黒い感情を感じたのう。何か過去にトラウマのようなものがあったか、それともあの実力ゆえにモモとは別の苦悩のがあったのか……。

いや、ここで考えても仕方がなかろう。学園生活の様子を見ながら、そのときそのときで対処するか。今はまだ何もわからん。

しかし、才能も実力もかなりのものじゃなあ奴。一度手合わせしたいものじゃ。

おっと、もうそろそろテストが終わるの。まずは学力をみさせてもらうとするかの。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ。全問正解、全教科満点じゃなじゃ」

「だ、だろ?だからあの………見逃してくれません?」

 

こやつ、全教科全問正解じゃが、そのすべてのテストに名前を書き忘れとる。つまり実質総合0点なのになってしまう。これでは流石のワシも合格にはできんわい。肝心なところで間が抜けておる生徒を編入など、他の先生方が何というかのう……。

 

「どうしたものかのう」

「あ、あの~鉄心さん?」

 

………ふむ、これは好都合かもしれんわい。

 

「白神君。君、実践試験として組手を受けてみんか?」

「………………」←絶句中

「それならば先生方も納得するであろう」

「で、でも鉄心さん。ちょっとそれはその~………」

「ならば入学とりけ……」

「わかりました!やらせていただきます!やらせてください!」

 

よし、これで実力が見れるぞい。しめしめ……

 

 

 

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

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白神烏side

 

 

 

な、なんてヘマをしてしまったんだ俺は!入試テストは全然楽だったのに、油断して名前を書き忘れるとか、いまどき小学生でもなかなかやらねーだろうが!

しかも!そのせいで筆記試験が取り消し同然になっちまうし!調子は乗るもんじゃねえなマジで!

まあそれらは俺の超凡ミスということにしておこう。実際名前を書き忘れた俺がすべての原因だし、鉄心さんが悪いわけでもない。俺が悪い。これはいい、無理矢理気味になっとくしよう。

問題は今この状況だ。

 

俺の格好→道着を着ている。

うんまあそうだよな。一応これから組手やんだからな。

 

俺が居る場所→めちゃくちゃ広い道場っぽいとこ。(外で、地面はグラウンドみたいな感じだ)

うんまあそうだよな。教室程度の広さのとこで組手なんかできねえもんな。

 

俺の目の前にあるもの→厳つい顔をでムキムキな体をしている、川神院の修行僧達。(推定100人)

うん、なにこれおかしいよな?俺何か悪いことしたっけ?

 

「おい鉄心さん!なんでむさくるしいオッサン連中が大量発生しちゃってんだよ!なんで俺が100人組手をしなきゃなんねんだよ!」

「いやのう、最近ここらに川神院の修行僧たちの『えんかうんと率』が上昇しているようでの。それで……」

「なんだよエンカウント率って!ポケ〇ンじゃねえんだしよう!」

「まあとにかく、こやつら全員を倒すことが出来れば、おぬしは晴れて明日から川神学園の生徒じゃ。それでは…………はじめえええぇぇぇ!!!」

「話聞けえええぇぇぇ!!!!!」

 

敬語なんて知ったこっちゃねえ。今はとにかく怒りを外に吐き出したかったんですマル。

あれこれ初めの方でやらなかったっけ?

いや!今はとにかく目の前の状況を何とかしないと!

まず目の真に居る人のどてっぱらに正拳突きを一発で一人目!そいつに追撃で同じ個所に回し蹴りをもう一発ぶち込んで、後の奴らをぶっ飛ばす!その後すぐに俺の後ろから迫ってくる奴がいたから、すかさず振り返ると同時に脇腹に手刀を決めて二人目!その手刀を決めた奴の後ろからもう二人攻撃に来ているから、今手刀で倒した奴を踏み台にして、空中二段蹴りをそれぞれの顔面に一発打ち込む。二人ともきれいにクリティカルヒットしたから、これで三、四人目。

あ、今のうちに言っておくんけど、俺の武術は色々な格闘技を取り込んで、ほとんど我流になっちまった。というか喧嘩殺法に近いかも。

そんなこんな言ってるうちに、今度は三人がかりで襲ってきた。三人とも錫杖みたいなもの持ってるけど、そんなもの持ちながら三人一列できちゃうとさあ、突くか振り下ろすかしかできなくなっちゃうからやっちゃダメなんだよなあ。集団戦法でありがちな痛恨のミスだぞ。と心の中で注意しながら突かれた錫杖をしゃがんで回避、すぐに三人の足を同時に払って、倒れたところに追撃の蹴りを一発ずつ入れて、これで五、六、七人目がお亡くなりになりました。(いや死んではいねえけど)

まあここまでで10秒足らずといったところだな。周りの人等めっちゃ驚いてるけど、俺ここで負けたら無職確定だからな、今の俺には余裕がないんだよ。悪いな。

 

「(……大胆かつ繊細な動き。様々な格闘技の基礎を、体に叩き込まんと出来ん動きじゃな。しかもそれを自分に合わせて使いこなしておる。ここまで来ると、もはや我流と名乗れるかもしれん。それに……)」

「鉄心さん」

「む、なんじゃ?」

「これ時間制限とか無いですよね?」

「いや、時間制限はな………いわけではないぞ」

「今完全に思い付きで言ったろ!」

「残り5分じゃ」

「しかも5分!」

「手を抜いたら入学取り消しじゃ」

「マジで!?」

 

いやそれどうしたらいいんだよ。手を抜くのやめたら………

 

 

 

 

 

 

「こいつら大怪我するぞ?」

「なに?」

 

鉄心さんが首を傾げた瞬間に、本気モードに入る。そして傾げられた首が元の角度に戻るまでの一秒足らずの時間に、修行僧たち全員に腹に正拳突きと前蹴りをに一発ずつ決めて、すぐに自分がもといた場所に戻る。鉄心さんはかなり驚いてるようだけど、すぐにさっきまで表情に戻った。

 

「予想以上じゃの」

「それより、全員で九十九人しかいねえぞ。残り一人誰だ?」

「もう敬語を使わなくなってきたのう。まあよい、最後の一人は儂じゃ」

 

……………へ?今この人なんつった?最後の一人は自分だっつった?

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや

無理ゲーだから無理ゲーだから。

 

「では始めるかいのう」

「…………マジで?」

「マジじゃ」

「真剣で?」

「真剣じゃ」

 

………マジで?

 

「いやちょっとまってちょっとまって鉄心さん。自分が何言ってるのかわかってんのか?ていうか鉄心さんを倒さないと入学不可能って、どんだけハードル上げるんだよ!」

「大丈夫じゃ、わしに一撃でもあてることが出来れば合格じゃ」

「ああ、それならなんとかいけるか……」

 

実力差がどれだけあるかは知らねえけど、一撃入れるだけならできるはずだ。いや、なんとして成し遂げないといけない。何度も言うけど、これに失敗したら今日から無職なんだから、死ぬ気でやらねえとダメだ。

 

「(自分の実力に過信はしておらぬ。なのにこれだけ精神に余裕があるとは、やはりかなりの強者じゃの。モモの奴もこのように育ってほしかったものじゃ)」

「すんません、禁じ手とか急所突きとかもあり?」

「ふむ、ハンデということでやってもいいぞい」

「じゃ、いくぞ」

「いつでも来なさい」

 

んじゃ開始早々………目潰しを右手で心臓撃ちを左手、右足の蹴り上げで金的を同時に放つ!

 

「精度は良いが、そんなもの同時に撃ったら速さに威力、ともに半減じゃ」

 

両手とも手首を掴まれて、右足の金的攻撃は放つ前に抑え込まれた。全部受け止めるのかよ。けど、

 

「予測済みだ!」

 

手首が掴まれているということは、その場でジャンプしたら掴まれている部分を軸に蹴りだせる。そのまま唯一地面につけていた左足を浮かせて、鉄心さんの顔面右半分を狙って苦衷蹴りをぶっ放す!

驚いた鉄心さんはすぐに手首から手を放して後退、蹴りを紙一重で避ける。けど、この蹴りを紙一重で避けたらだめなんだよなあ、なんたって、目潰し用に砂を巻き込みながら蹴ってるからな。

 

「むおっ!?」

 

一瞬ひるんだ鉄心さんのどてっぱらに、ほんの少しだけ隙が出来た。そこに渾身の一撃の蹴り。

 

「ハアァ!」

 

を撃とうとしたけど、空中に居たもんだから、当たったといえば当たったが。めちゃくちゃ軽い蹴りになってしまった。これはもうあてたというよりも触れたって感じだな。

 

「うぎゃっ!?」

 

しかも着地のことを考えなかったから、首からもろに地面に衝突してしまった。めちゃくちゃいてえ………。

けど、

 

「イッテテ……………ふう、きっちり一発当てたぜ」

「無茶をする奴じゃのう。あんな空中で蹴りなど撃ったら、ああなるのは分かり切っとるじゃろ。それに、大したダメージも与えられん……というか触れた程度の蹴りをわざわざこんなにも苦労して撃って、もしこれが決闘や喧嘩の類の勝負じゃったらどうなっていたことか、百害あって一利なしじゃぞ」

「アンタが『倒せ』じゃなく、『一撃当てろ』って言ったからあんな空中蹴りを撃ったんだよ。例え百害………いや、千害あったとしても、あんたに一撃さえ当たればそれでいいんだ。撃つべき時は今、だろうが」

「ほっほっほ、面白い奴じゃのう。では、試験合格じゃ。お主は晴れて、川神学園の生徒になったぞい」

「あざっす」

 

あ~、だり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、学園から書類とかが送られてきた。その中に、鉄心さんから俺宛の手紙が入ってた。

 

『ぜひ孫娘の川神百代と戦って欲しい』

 

とだけ書かれていた。

俺はその手紙の内容を読むと、すぐにびりびりに細かく破いた。やってられっかっての。

 

「……カラス、それ破っちゃっていいの?書類とかじゃなかったの?」

「これはハゲたジジイのつまらねえわがままが書かれてた紙だからいいんだよ。つーかスズこそ、高校に入学しなくてよかったのかよ」

「私はカラスと違ってアイドルなんだから。そっちに専念するからいいもん」

「……ああそう、そうだったな………」

 

今俺のことを呼び捨てにした俺の一つ年下のガキは小鳥遊雀(たかなしすずめ)という。髪の毛はまっくろくろすけ色で短いストレート。ノーメイクノーテェンジのすっぴんなのに(本人に言うつもりは一切ないが)かなりかわいい。

で、こいつが前に話に出た「妹みたいな奴」だ。俺が小6の時にいろいろあって(というか俺が拾ってきて)ウチの居候的な感じで着地したが、さっき話した通り俺の「妹」でもなければ「義妹」というわけでもない。もちろん「姪」とか「いとこ」でもない。ここらへんも複雑だからまた今度で。

で、なんかスズ(これは呼び名)は学校には行かずに、社会に一歩速く出ていくようだ。いや別にいいんだけどよ。中学の1年の夏休みにスカウトされたとおもう。そこら辺の事は忘れた。んで高校に入らずにアイドルに専念することだから、これから一気に忙しくなるそうだ。なんか京都の方の、納豆小町となんやかんやするらしい。

大丈夫なのかと、直接今聞いてみたところ、

 

「めちゃくちゃ頑張る」

 

と、かなり頼もしいのに0,0000001ミクロンほども安心できない言葉が返ってきた。自信に満ち満ちているのに、その自信を裏付ける要素が全くないので、ある意味では「分かんない」と言われるより不安になってしまう。

 

「おふくろ。よく学校行かなくてもいい、なんて言ったなあ」

「そりゃあ、ウチは基本的に子供の思うがままに生きさせるからね」

「思うの部分に「わ」が代わりに入ってそうだな」

「わ、わがままにって言いたいの!?」

 

今俺がおふくろと呼んだ人は今キッチンで、足りない高さを埋めるために台に乗りながら朝飯の用意をしている。何度見てもシュールというかあぶなかっしいというか。それなのに手伝おうとすると、よくわかんねえけど怒られる。から俺もスズも手を出さない。

身長138センチ 体重29キログラム お肌つやつや 顔は超童顔の43歳。いまだにパチンコ屋どころか、カラオケやボーリングにさえも、一人だけでは入ることが出来ないでいる。実際ランドセルを背負っても、まったく違和感とかがない。恐ろしや。

ちなみに九鬼家従者部隊の……………何番だっけ?まいいや、に所属しているらしい。見た目からはあり得ないほどの職場だ。

 

「はい、朝ごはん」

「ウィース」

「いただきます」

 

引っ越してきたばっかりだからほとんど材料はないみたいだから、トーストが一人1~2枚と牛乳だけだ。

 

「ごっそさん」

「ごちそうさま」

「自分で洗いなさいよ~」

 

のどかな日常だった。

俺はコップに入っている残り僅かの牛乳をすすりながら、資料の中のうちの壱枚を無造作に取り出し、目を通してみた。そこに書いてあったのは、

 

『東西交流戦の見学について』

 

補足

東西交流戦とは、天神館と川神学園とが戦う、模擬合戦である。学年ごとに参加者を200名として………………

 

ちょうど目の前に居た食器を片づけてきたスズが、白い液体まみれになった。

当然起こられた。

 

 

 




といわけで1話目終わりです。
次回に乞うご期待しないでください!

感想ください!



追記
次からこの書き方は変えます。つまらないと思った方は、ぜひ投稿された次話をもう一度だけ読んでみてください。
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