久しぶりすぎてぐだぐだになってた・・・
夏イベ辛すぎて泣きそう。吹雪ちゃんの膝枕で癒されたいなー
今回もよろしくお願いします
三、
金剛さんが戻った後も、アルバムの整理は続きました。まあ、まだ半分も終わってないんですけどね。
執務室はだんだんとお昼の陽気になってきました。流石に炬燵は火を落として、今は掛け布団の中に足を入れているだけです。それでも出ようとしない司令官は・・・もう、いいです。
何か写真を見つけるたびに話が弾んでしまいます。これはあれですね、絶対に今日中には終わらないパターンですよね。明日以降も休みみたいですから、いいですけど。
「!?なんだこれは!?」
と、司令官が一枚の写真を手にとって声を上げました。び、びっくりするじゃないですか・・・。
「何かありましたか?」
「いや待て、いつこんなん撮ったっけ!?」
ぴらっ。司令官は写真を裏返してわたしに見えるようにしました。
「あ、この写真」
去年の夏、みんなで撮った写真でした。高い太陽と青い空の下、波打ち際で束の間の休暇を楽しんだときのものです。
「懐かしいですね」
「それはいいんだが、なんでみんな水着なの!?俺一度も見てないよ!?」
ずいっと迫る司令官。写真が近いです。
写真の中のわたしたちは、どれも涼しげな水着を着けています。ひらひらとフリルの可愛いものや、機能性重視のもの、それに戦艦や空母のお姉さんたちはその・・・す、少し大胆なものまで。
「えっと・・・あの、司令官。これ、MIの時のやつです・・・」
わたしとしては、申し訳ない気がしなくもありません。目の前の司令官は全てを納得した後、驚愕と絶望の入り混じった表情をしていました。
「なん、だと・・・」
ぷるぷると震えだす司令官。
「あの、司令か」
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
わたしが声をかける前に、ものの見事に司令官が決壊しました。これはこれで珍しいと言うか、いつも通りというか・・・。
「お、落ち着いてください司令官」
「これが落ち着いていられるか!!」
天板に突っ伏したままこちらを恨めしげに見上げた司令官が叫びます。
「つまりあれか、これは俺が出張中の写真か!?」
「はい、青葉さんにお任せしていたやつです・・・」
「おのれ青葉あ・・・」
司令官撃沈一。うんうん唸る司令官は、ちょっと情けないです。で、でも・・そ、そそそ、そういうところも含めて、わたしは司令官のことが、好
や、やっぱりなし!今のはなしです!!
「ええっと、司令官」
「ううっ・・・うん、みんな楽しそうで何よりだな・・・」
心底残念そうに司令官が呟きます。そんなにわたしたちの水着が見たかったんでしょうか・・・。
・・・うん、今年の夏も、着てみようかな。
「・・・っていうと、これはハワイの?」
「あ、はいそうです。取っていただいたホテルのビーチですよ」
「あー、砂綺麗だったもんなー」
ようやくダメコン復旧したらしい司令官は、うんうんと頷いて写真を貼ります。
昨年夏のMI作戦は、北方AL作戦を陽動として行われた作戦でしたが、作戦を終えた段階で司令部から「ハワイ駐在の米艦隊司令部と会合するべし」との通達があったため、わたしたちMI攻撃部隊はそのままハワイへと向かうことになりました。ちなみにその間の鎮守府は、帰還したAL部隊と残留部隊に一任されることになります。
司令官が米艦隊司令部と会合している間、司令部の計らいで取ってもらったホテルで暇を持て余したわたしたちは、青葉さんの提案でホテルのビーチへ出て遊ぶことにしました。写真には、そういう経緯があったのです。
「・・・お、これ吹雪じゃん」
「へ?」
「水色か、似合うな」
「うう・・・あ、あんまり見ないでください・・・」
やっぱり、写真でも司令官に見られるのはなんというか、恥ずかしいというか緊張してしまうというか・・・慣れそうにはありません。こんなんで、司令官の前で水着を着れるのか心配になってきました。
「一緒にいるのは、赤城と・・・神通か」
「えーっと、はい、そうです」
同じ写真には、鎮守府を初期から支え続けている二人の艦娘が、わたしの両側でピースサインをしています。確か、海から上がったわたしと神通さんを赤城さんが捕まえて、青葉さんに撮ってもらったものだったはずです。ですからわたしも神通さんも、髪が海水で濡れてへばりついています。
「普段和服だからあんまり気にしなかったけど、赤城って実はかなりスタイルいい方だよな」
「司令官、おじさんくさいですよ・・・」
「せめてお父さんと言って欲しかった」
だんだん司令官がどこを目指しているのかがわからなくなってきました・・・。お父さんってなんですか?
「後、あれだな。神通って髪降ろす?とこうなるんだな。一年近く一緒にいるけど、なんか新鮮」
「神通さん、お肌も綺麗なんですよ。白くてすべすべで、羨ましいです」
「あー、わかる気がする。なんていうか、撫で回したい肌というか」
・・・これはセーフですよね?憲兵さんの出番じゃないですよね?
それでも、なんとなく司令官の言っていることはわかる気がします。まあわたしの場合は、どちらかというとあの肌に優しく包まれたいと言いますか・・・お姉様と呼ばせて欲しいです。わたしには、姉と呼べる人はいませんので。
・・・あれ?いつの間にか司令官のがうつってませんかわたし!?
「ちなみに司令官」
「ん?」
「わたしへのコメントは?」
「吹雪には、未来があるさ」
キメ顔の司令官にニッコリと微笑んで、わたしはむこうずねにカットインをお見舞いしました。
噂をすれば、というやつでしょうか。撃沈した司令官が復旧しはじめた頃、執務室のドアが柔らかくノックされました。
「失礼します」
そのままゆっくりと開かれたドアから、同じように柔らかな物腰の軽巡洋艦娘が顔を覗かせます。穏やかな表情を凛々しく引き締める鉢巻と大きなリボンは、多くの駆逐艦娘にとって憧れと信頼の証になっています。
「神通さん」
「よう」
神通さんは、わたしたちの挨拶に微笑を湛えた会釈で答えます。
「ところで提督、吹雪ちゃん・・・あの、どうしてこたつが出ているのでしょう・・・?」
「ううっ、できれば訊かれたくなかったです・・・」
「俺が出したんだ、朝は寒かったからな」
なんでか誇らしげな司令官に、神通さんは「はあ・・・」と答えます。
「それで、何か用があるんだろう?」
「あ、はい。そうでした」
神通さんは、小さなメモサイズの紙を取り出して、司令官に差し出しました。
「駆逐艦の娘たちが、体がなまってしまうからと自主訓練をしたいそうです。ですので、演習海域の使用許可をと・・・」
「なるほど・・・」
司令官は受け取った紙に目を通して答えました。紙は、艦娘なら誰でも申請できる演習海域使用の許可書で、よく見知った駆逐艦娘の名前がいくらか並んでいました。
「やっぱり元気だな、駆逐艦は。俺も見習わないと」
「あ、そういうことならわたしがこたつ片付けますよ」
「走り込みなら長良ちゃんが付き合うと言っていましたよ」
「お前らもはや俺に対して遠慮というものがないよな。だめだ、こたつは俺が守る」
司令官はわざとらしくこたつにしがみついた後、一度咳払いをして神通さんに向き直りました。相変わらず、切り替えが早いですよね・・・。
「もうすぐ昼ご飯だし、その後のほうがいいよな?」
「はい。お腹休めもありますし、二時頃に取っていただけると」
「わかった。まあ誰も使う予定はないし、自由に使ってくれ」
「ありがとうございます」
「くれぐれも、」
「怪我には気をつけて、ですね?」
司令官の言おうとした言葉を引き継いで、神通さんが微笑みました。
「む、さすがは神通。よくわかってらっしゃる」
「口調が変になってますよ、司令官」
最近―――いえ、割と前からですけど、司令官の突っ込みどころが格段に増えてます。そしていつの間にかわたしが突っ込み担当に・・・。神通さんみたいに笑って流せるぐらいが丁度いいんでしょうか。
「しかし、そう考えると本当に長いな、神通とは」
「どうされたのですか、唐突に?」
「いや、実はアルバムの整理をしていてな」
「アルバム、ですか?」
首を傾げる神通さんに、わたしは整理の終わったアルバムを差し出します。受け取った神通さんは、懐かしむようにページを眺めていました。
「こんなものが・・・」
「ここのところ溜まり気味でな。吹雪に手伝ってもらってた」
「そうだったのですか。・・・ふふっ、それでは、お邪魔してはいけませんね」
神通さんの意味ありげな微笑みに、ほんの少し頬が熱くなった気がしました。でもその目は、全てを慈しむように澄んでいて、とても美しかったです。
「い、いえ。お邪魔だなんて」
「折角の休日ですから。たまにはゆっくり、お二人で過ごされるのもいいではないですか」
「それは、その・・・」
さすがは神通さんです。本当に初期から、鎮守府を支えてきただけあって―――いえ、そうして気の知れた仲だからこそ、わたしのことをよくわかってくれているのかもしれませんね。駆逐艦の皆が、軽巡の中でも特に彼女に親しむのは、そういう理由が少なからずある気がします。
「では提督、吹雪ちゃん。私はこれで」
「いいのか?遠慮せずに、少しお茶でも飲んでいけばいいのに」
「お昼も近いですから。お気持ちだけもらっておきます」
「そうか。わかった、演習終わったら報告だけ頼む」
「はい」
それだけ言い残して、神通さんは執務室を後にしました。最後にドアが閉まる寸前、左目を閉じてウインクしたように見えたのは気のせいでしょうか。
「うーむ、なんか気を遣わせちゃったかな・・・?」
「・・・さ、司令官。早く整理、終わらせちゃいましょう」
「そう焦らずにさ。のんびりいこうぜ」
「終わらなかったらこたつ没収ですね」
「やります、サー」
他愛もないやり取りに、ふっと笑みがこぼれます。わたしたちは、もう一度、アルバムの整理に取り掛かりました。
◇
ハワイでの束の間の休息の後、鎮守府に戻ったわたしたちは、またいつも通りに近海の防備や敵艦隊の排除といった任務に取り掛かり始めました。ただ一つ、わたしには大きな転機が訪れることになりました。
秘書艦を解任されたのです。
も、もちろん理由はありましたよ。司令官は、
「今回の作戦を通じて、艦隊の練成が行き届いていなかったのを実感したんだ。より艦隊の充実を図るためにも、特に経験値の多い秘書艦は当分固定せずに、色んな娘に任せたいんだ」
吹雪を信頼してないとか、そんなことは絶対ない。ところどころ必死さの混じる司令官の説明は、信頼に足るものでした。ですからわたしは、当面秘書艦の任を解任されることになったのです。代わりに、大体一週間ごとぐらいで、司令官は秘書艦を交代して艦隊の積極的な練成に努めていました。おかげで、二ヶ月が経ったころには、夏のころとは見違えるほど、艦隊全体の錬度は向上しました。
ですがその間、艦隊の中でも特に錬度の高い部類だったわたしにお呼びが掛かることはほとんどなく、司令官と話す時間もぐぐっと減ってしまいました。それまでがほぼ毎日のように、他愛もない会話をしていただけに、どこか寂しい気持ちがしていました。本当に、わたしのわがままでしかないんですけど。
なんだか釈然としない、悶々とした日々が続いていました。
間宮さんのところで当番の通りに食器の片づけを手伝った後、久々の演習の報告書を書き上げてから、わたしは大浴場に向かいました。ドックとは違って、完全に日頃の疲れを癒すための施設で、入渠中以外では、艦娘はみんなこっちを使います。ただ、あまりにも数が多いので使用時間が決められていました。
その日は片づけと報告書が重なったこともあって、わたしは時間外で使わざるを得ませんでした。普段は賑やかな浴場も、時間外ともなればわたし一人だけ。もう大人数でいることに慣れてしまった身としては、開放感よりも物寂しさが勝ってしまいます。
体を洗って、気分転換でもしようと露天風呂に浸かっていたわたしは、のんきに鼻歌を歌いながら星を眺めていました。真っ暗な中で見上げる星の海はそれだけで幻想的で、心が吸い込まれるような感覚と共に一時だけわたしの寂しさを紛らわせてくれました。
そうですね、あれは寂しさだったんですよね。それまで、ずっと司令官と一緒にいたのに。艦隊の錬度向上のためとわかっていても、二ヶ月の間ほとんどゆっくり話す機会がないと、寂しさを覚えてしまうんです。あのころ既に、わたしにとって司令官は、そういう存在でした。
―――いけないいけない、そんなに弱気じゃだめ。
沈む気持ちを振り払うように頬を叩いて、わたしは岩風呂を出ます。引き戸に手を掛けると、曇りガラスの向こうで湯船に浸かる人影が見えました。
―――誰か入ってるのかな?
でもわたしの後に、誰かいたでしょうか・・・?少し怪しみながら引き戸を開くと・・・。
「・・・あ?」
「・・・え?司令、官・・・?」
お湯に浸かって気持ち良さそうに体を伸ばしていたのは、紛れもない司令官でした。
「―――って、うええええっ!?し、しししし、司令官!?」
「うおおおおおおおおおおおおっ!?吹雪!?どうして!?」
「えっと、あの・・・・あっ、こ、こっち見ないでください!!」
「うわああおおうっ、すまん!!今出るから・・・」
お互いに一頻り動転して、司令官が慌てて湯船から出ようとします。でもそれが、わたしにはどうしようもなく切なくて。寂しくて。きっと、甘えたくて。
「ま、待ってください」
だからとっさに、司令官を呼び止めてしまいました。
「あ、あの、わたしは大丈夫ですから・・・。い、一緒に入りませんか・・・?」
「・・・え?」
カポーン。
なんて、間の抜けた効果音が聞こえてきそうです。立ち上る湯気の中、お互いに正面の脱衣所からの入口を見つめて、わたしと司令官は湯船に身を沈めていました。
・・・勢いで引き留めてしまったけど、ものすごく恥ずかしい!!何がどう回ってこんな状況に・・・と思ったのですが、引き留めたのわたし自身じゃないですか。
「そ、そういえば司令官は、どうしてここに?」
何とか話題を見つけたわたしは、左の司令官に話しかけます。
「ん?あー、実は部屋の風呂が壊れてな。明石が明日には直してくれるって言ってたんだけど。そんで、多分皆もう出てるからって、艦娘用の風呂に連れてこられたんだが・・・」
「そういうことでしたか・・・」
「すまん、吹雪が入ってるとは知らなかった」
「い、いえ。わたしも司令官が入ってくるのに気づきませんでしたし・・・」
露天風呂でのんきに鼻歌を口ずさんでいたばかりに・・・。
それっきり、また会話が途切れてしまいます。わたしは意味もなくお湯を掬い上げて、その中に映る真っ赤な自分の顔に気づきました。ふと、思い出すように、言葉が口を付いて出ました。
「そういえば、久しぶりですね。こうして、司令官と二人でゆっくり話すのは・・・」
「・・・そういえば、そうだな。MIの前辺りからバタバタして」
「ちょっと、嬉しいです。最初のころは、よくこうしてましたから」
「それもそうだな。はは、風呂は一緒に入ってなかったけどな」
「と、当然です!」
あの頃。まだ半年しか経っていなかったけど、艦隊はどんどん大きくなって。それに反比例するように、艦娘一人ひとりと司令官が接する時間も短くなって。ごくごく平凡な駆逐艦娘でしかないわたしは、それでもどこかで、自分は特別だと思っていました。初期艦として長く司令官のそばにいたから。
今思うと、恥ずかしいぐらいに身勝手な考えです。司令官は、わたしたち全員が大切で、でも全員と十分な時間を持てるわけでもなくて。どこか疲れた表情の司令官は、きっと仕事のせいだけではなかったはずです。最近はかなり砕けてきたとはいえ、変なところで真面目な彼は、きっとあの時も、わたしたちとの距離を必死に探していました。
「どうだ、最近は」
「そうですね・・・。秘書艦の仕事がないと、結構暇なんですよね。ですから、本とか、読むようにしてます」
「・・・そっか」
それは、色々な想いが込められた『そっか』で。
「すまんな。理由が理由とはいえ、何の相談もなしに秘書艦を解任して。おまけに、他の娘の演習に付きっ切りで」
「い、いえ。司令官が気にすることじゃありませんよ!秘書艦やってたときも楽しかったですけど、今は今で別の楽しみがありますし。それに、こうやって話したりしてるじゃないですか」
「・・・はあ。せめて、俺が後二人いたらな・・・。仕事して、練成して、皆とだべったりして、って同時にできるんだけどな」
どこか遠い目の司令官。私が睨んだとおり、まだ彼は悩んでいます。一応、これでも元秘書艦ですからね。なんとなく、わかってしまうようになるものです。
「司令官は頑張ってると思いますよ?皆も、不満を言ってる様子はありませんし」
なんだか、これは違う気がします。なだめ方として。どうやらいつの間にかに染み付いたくせで、事務的な回答をするようになってしまっているようです、わたし。
「だと、いいんだが。せめて、もっと一人ひとりと話せたらな、と」
「・・・」
すぐには返す言葉が出てきませんでした。
「俺がもっと、早く仕事できればな」
「・・・無理しないでくださいね」
「・・・そう見えるか?」
状況がシュールすぎて台無しですが、真剣な問い掛けでした。わたしはちらっとだけ司令官に顔を向けて、少し考えます。
「・・・見えません。でも、気づいちゃいます。わたし、これでも鎮守府最古参ですよ」
「・・・そっか。・・・そっか」
「あの、少しわがままを言っても?」
司令官が小さく頷きました。
「言っただろ?何かの時は頼ってほしいし、甘えてほしい」
「・・・司令官」
少しだけ、わがままを―――私の私情を。
「司令官は、頑張らないでください」
それはきっと、司令官の覚悟を裏切る言葉。わたしの気持ち百パーセントの、身勝手極まりない言葉。
「わたしは、嫌です。司令官が頑張ってるのがわかるから。だって、司令官は、いつだって・・・自分のことは二の次で・・・私たちのことばかりで・・・。嬉しいです、すっごくすっごく嬉しいです。でも、喜んじゃってる自分が、時々嫌になるんです。司令官に頼ってばかりで、自分から、なにも・・・」
ええ、そうです。寂しいです。十一駆の皆といるのとは違う安らぎが、司令官との間にはあります。でもそれは、甘えです。わたしは司令官に甘えっぱなしで。もっと、わたしたちに自然に接して欲しい、そう言ったのはわたしなのに。わたしは司令官に何もしてあげてない。
「そんなことない。俺は吹雪たちに色んなものをもらってる。だからこそ、吹雪たちにはきちんとした形で返したいんだ」
「返さないでください!」
「っ!!」
「わたしは寂しがり屋です。白雪ちゃんたちといるだけじゃ、ダメなんです。皆もきっと同じです。わたしたちは、わたしたちだけじゃダメなんです。司令官がいないと・・・ダメなんです。そんな人の頑張りに気づかないほど、わたしたちは鈍くありません。疲れてるのがわからないほど、図々しくはありません」
自分でも、何を言っているのかだんだんわからなくなってきました。
「もう、嫌なんです。わたしは司令官が笑ってるところが好きです。悩んでるところが好きです。その、セクハラだって、好きです」
我ながらとんでもない台詞です。
「疲れてるところなんて・・・見たくない・・・。わたしが慰めてあげられないところで頑張ってるのが、嫌です・・・」
長い沈黙が流れます。浴槽は次第にぬるさが目立ってきました。恥ずかしくて、整理のつかない頭を湯水に漬け込みたい衝動を抑えて、湯船に浸かり続けます。
「・・・風呂は、いいな。気持ちいい」
突然の司令官の言葉。心底気持ち良さそうに、両腕で大きく伸びをします。
「なんかすっきりした。吹雪のおかげかな」
「・・・すみません、勝手を言って」
「いや、言ってくれて嬉しかった。でも、ごめんな、吹雪。もうしばらくは、頑張らせてくれ」
そうして司令官は、優しく微笑みました。
「それが終わったら、もう頑張らない。その時は、またよろしくな、秘書艦殿」
「・・・はい、司令官」
わたしも力なく笑いかけます。司令官との間に、静かな時間が、
ガラガラッ。
唐突に、浴場のドアが開きました。
「ん・・・?誰かいるの・・・?」
入ってきたのは、初雪ちゃん。見回りをしていたらしい彼女は、電気のついていたお風呂場を不審に思って覗いたのでしょうか。
当然の如く、わたしと司令官と目が合いました。
「・・・ん、お邪魔しました」
短く言って、ドアが閉められます。
「・・・」
「・・・」
司令官との間に妙な沈黙が流れます。
「・・・でるか」
「・・・そうですね」
司令官はおもむろに立ち上がって浴場の入口に向かいました。
「着替え終わったら、ドアをノックするから」
「は、はい」
それじゃ、また。そう言い残して、司令官はドアの向こうへと行ってしまいました。
後日、青葉さんが号外を出したことは言うまでもありません。そして、
「失礼します!」
「おう、来たか。また頼むぞ、吹雪」
それから二週間後、わたしは秘書艦に任命されて、朝一番に執務室へ出頭しました。
読んでいただいた方、本当にありがとうございます
これ、終わるのいつになるんでしょうか・・・
一応、あと二話で完結を予定しております。どうか最後まで、駄文にお付き合い願いますよう・・・