【完結】桜吹雪の季節に   作:瑞穂国

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どうもです

これで、これで本当にラストです

といっても、どーしても結婚式を書きたかっただけですけど

楽しんで書いたので、頑張って読んでください♪


そして航路は続いていく

食堂は、いつもと違った賑やかさに包まれているようでした。臨時の待機室となった保管倉庫にまで、皆の声が聞こえてきてます。

 

そっちが気になって首を動かそうとしたら、やんわりと止められます。鳳翔さんです。

 

「ふふっ、皆さんお待ちかねですよ」

 

「は、はい」

 

わたしはもう一度、自分の腰掛ける椅子の正面、妖精さんがこの日のために用意してくれたという大きな鏡に向き直りました。

 

さすがは妖精さんの謎技術・・・などと思う間もなく。鏡の中の自分と、ばっちり目が合いました。

 

全身真っ白な衣装。今日は普段のように髪を後ろで束ねるだけでなく、扶桑さんのように三つ編みを編み込んでいます。それから控えめに、花の髪飾りも。唇にも薄く紅が引かれ、那珂ちゃんの手で簡単な化粧が施されていました。

 

純白のドレスに身を包んだわたしは、結婚式に臨む新婦さんそのものでした。

 

朝御飯が終わった途端、川内さんと忍者軍団(多分、神通さんと那珂ちゃん、そして三水戦の何人かです)によって拉致されたのは、こういう訳だったみたいです。ちなみに司令官も、問答無用で連れ去られて、わたしとは別の部屋に押し入れられたそうです。

 

「はい、終わりましたよ」

 

鳳翔さんが、鏡越しに笑いかけます。

 

「ありがとうございます」

 

「いいえ、どういたしまして。とっても綺麗ですよ」

 

「そうですか?」

 

鳳翔さんに言われると、俄然自信が出てきます。慣れないドレスの端々を眺め、心の中でこぶしを握って自分を鼓舞します。

 

「でも・・・こんな準備、いつの間に」

 

「結構前から、準備はしていたんです」

 

「そうだったんですか!?」

 

「はい。そうですね・・・最初の提案は、お二人が婚約された辺りだったと思います」

 

一月くらい前じゃないですか!?わたしも司令官も、全く気づいていませんでした。

 

「うふふ、何だか、可愛い娘を送り出すお母さんの気分です」

 

「鳳翔さんだったら、お姉さんじゃないですか?」

 

「あら、いいですね、お姉さん。空母の皆さんからは、いつもお母さんと呼ばれているので、新鮮です」

 

そう言って、頬を染めながら微笑みました。その慈しみに満ち溢れた笑顔は、確かにどちらかと言うと、お母さんと呼んだ方がしっくりする気がします。

 

「・・・さあ。そろそろ行きましょうか」

 

「・・・はい」

 

優しく掛けられた言葉と共に椅子を立ち、鳳翔さんに案内されながら待機室の扉を開きます。すると扉の前、さっきまでただの廊下だったところに、真っ赤な絨毯が敷かれていました。少し踵に高さのある靴を、その上へゆっくり踏み出します。

 

鳳翔さんが扉を閉じたのを見て、わたしは食堂のある方を向きました。そこには、神通さんに付き添われて、そわそわと落ち着かない様子の礼服が立っていました。

 

間違いない。司令官です。

 

ドレスの裾に気を付けて、その後ろ姿に近づいていきます。司令官も気づいたみたいで、丁寧な仕種で振り向きました。

 

バッチリ合ったその視線に、わたしの顔が発熱します。

 

「お待たせしました」

 

わたしの後ろから鳳翔さんが声をかけます。神通さんが頷いて、司令官に促しました。

 

「どうですか、提督?吹雪ちゃん、綺麗でしょう」

 

言われた司令官は、マジマジと私を見つめていました。

 

「・・・一分間意識を手放してもいいですか」

 

言うなり、ふらっと倒れ込む仕種。神通さんが慌てて支えにかかります。

 

「もう、提督!」

 

「おう・・・すまん」

 

立ち直った司令官は咳払いを一つ。それから照れの見える目で、言いました。

 

「よく似合ってる。とっても・・・綺麗だ」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

うう、こっちまで照れてしまいます。恥ずかしさで、まともに司令官の顔が見れません。それでも何とか歩を進めて、司令官の横に並びます。赤い絨毯の上に、新郎と新婦がそっと立ちました。

 

司令官は、海軍の礼服に身を包んで、いつもより男前になってます。帽子を小脇に挟んで、すらりと立つ姿がかっこいいです。

 

『えー、皆さんお待たせいたしました。本日、僭越ながら司会進行を務めさせていただきます、鎮守府最古参の重巡にして一流ジャーナリスト、青葉です!』

 

食堂の中からは、元気な司会進行の声が聞こえてきました。青葉さんの自己紹介に、会場から拍手が起こります。

 

『さて、司会の紹介はその辺にしまして。早速、本日の主役に登場していただきましょう!』

 

主役・・・言うまでもなく、わたしたちのことですよね。なんだか、緊張してしまいます・・・。

 

「吹雪」

 

その時。司令官の優しい声が、わたしの耳に入りました。振り仰ぐと、司令官が微笑みを湛えて、その左手を差し出していました。

 

「行こうか」

 

「・・・はい」

 

差し出された左手に、私の右手を重ねます。その手を、お互いにギュッと握りしめて。二人の幸せを誓い合ってから、扉に向き直って、司令官の腕に掴まります。

 

『それでは!この度、無事にケッコンカッコカリをされました、我らが司令官と吹雪ちゃんです!』

 

拍手喝采。すぐに、入場の音楽がかかり始めました。これはたぶん、妖精さんの生演奏ですね。

 

「いってらっしゃい」

 

神通さんと鳳翔さんが小声で呟いた後、食堂の扉が両側に開かれます。溢れる光と、暖かな拍手の中へ、わたしたちは歩み出ました。

 

白を基調に飾り付けられた食堂に、鎮守府に所属する全ての艦娘と妖精さんが集まっていました。鳴り響く拍手の合間に、各所から祝福の言葉が聞こえてきました。

 

・・・えっと、時々「いいぞ色男!」とか、「よっ、王子様!」といった声が混じってますけど。

 

司令官が王子様なら、わたしはお姫様でしょうか。

 

わたしたち二人が、上座に用意された席に着席したところで、拍手と音楽が止み、青葉さんが再びマイクの前に立ちました。

 

『ではでは、まずは新郎新婦の紹介からいきましょう』

 

青葉さんが、あることないこと交えてわたしたちの紹介を始めると、会場が笑いに包まれました。

 

 

 

「吹雪ちゃん」

 

食事の段となって、わたしに声がかかりました。誰かはすぐにわかります。

 

白雪ちゃん、初雪ちゃん、深雪ちゃん、叢雲ちゃん、そして磯波ちゃん。わたしの姉妹艦が、一堂に会していました。

 

新郎新婦の紹介が終わると、すぐに昼食が始まりました。あの後青葉さんは、紹介の途中で号泣しだしてしまいまして、今も古鷹さんたちとご飯を食べながら泣いてます。それにつられてか、天龍さんもどこか涙目です。

 

ちなみに司令官は、先ほど隼鷹さんに連れられて、皆のところを回っています。きっと、わたしたちが姉妹水入らずで話せるように、気を遣ってくれたんだと思います。おそらく、司令官も。

 

「みんな・・・今日は、ありがとう」

 

いざ言葉にすると、目頭の熱くなるものがあります。司令官の次くらいには、付き合いの長い姉妹で、友人です。

 

「ま、長女の結婚式だしね」

 

「わたしたちにできることは、これくらいだから」

 

叢雲ちゃんと磯波ちゃんが言います。

 

「そういえばまだ、ちゃんとお祝いしてなかったな、って」

 

白雪ちゃんが微笑みました。

 

「おめでとう、吹雪ちゃん」

 

「吹雪・・・幸せに」

 

「おめでとう、吹雪!!」

 

「おめでとう、と言っておくわ」

 

「わたしたちも、応援してるから」

 

うう、もうだめです。一人一人の言葉に、感情の堰が決壊しました。

 

「み、みんな~っ!!」

 

目の前の五人に抱き着きます。白雪ちゃんたちは驚いた様子で、わたしを受け止めました。

 

「わっ、ちょ、吹雪危ない」

 

「ありがとう!わたし・・・わたし、幸せになるから!」

 

生活サイクルは変わりません。わたしは相変わらず、十一駆の部屋で過ごしますし、いつものように出撃もこなします。でも、それはきっと、表面的なことで、それまでとは違った日々が待っているから。

 

「も、もう!暑苦しいったら」

 

「吹雪ちゃん、お化粧流れちゃうよ」

 

「う、うん」

 

何とか涙を堪えて、皆から体を離します。

 

「ありがとう。わたし、皆に会えて・・・ほんとによかった」

 

吹雪型全員が、照れくさそうに笑みを浮かべました。

 

 

 

しばらくすると、司令官が戻ってきました。ついこの間も、「今世紀最大の責め苦を味わった」と言ってましたが、

 

「あっさり更新された」

 

とのことです。まあ、戦艦とか空母のお姉さん方の一部はお酒が入ってるみたいですし、いい肴にされたんでしょう。

 

と、それを見計らっていたかのように、まだ両目がウルウルと言っている青葉さんが、マイクの前に立ちました。

 

『ぐすっ・・・先ほどは、お見苦しいところをお見せしました。再びの青葉です』

 

ハンカチを目に当てながら喋る青葉さんに、優しい拍手が送られました。それにぺこりと頭を下げて、青葉さんが続けます。

 

『えっと、それでは。新郎新婦はこれより、お色直しとなります』

 

お色直しまであるんですか!?物凄く本格的ですね、妖精さんの技術ってすごい。

 

『お二人が戻られるまでは、しばらくご歓談タイムです。余興はその後に』

 

青葉さんのアナウンスの後、わたしたちは席を立ち、待機室へと向かいます。もちろん、神通さんと鳳翔さんも一緒です。

 

扉の前で一礼。それから廊下へ、出ていきます。

 

扉が閉まったところで、司令官が感慨深げな溜息を漏らしました。

 

「なんか・・・やばい、泣きそう」

 

ですよねー。司令官が、その目頭を押さえて揉みます。

 

「お二人は、ゆっくり来てください。ちょっと準備をしてきますので」

 

鳳翔さんがそう言うと、神通さんと連れ立って先に待機室へと入っていきました。

 

「・・・また、気を遣われちゃいましたね」

 

「だな」

 

二人顔を見合わせて苦笑しました。

 

「やっぱり嬉しいな。こうして、皆に祝ってもらえると、すごく嬉しい」

 

「はい。とっても・・・幸せなことです」

 

「ああ」

 

扉の向こうから聞こえる賑やかな声に、頬を綻ばせます。何があっても、わたしたちは幸せになれる。そう思わせてくれる優しさとパワーに満ち溢れた雰囲気に、もう一度込み上げてくるものがありました。

 

なんてことはありません。わたしたちの幸せは、わたしたちのすぐそばにあるのですから。

 

「司令官」

 

「おう」

 

わたしの呼びかけに帰ってきたのは、いつも通りに軽快な司令官の応えで。だからわたしも、自然に笑うことができました。

 

「幸せになりましょう」

 

二人で。皆で。

 

わたしが言外に含んだ意味を、司令官も察してくれたみたいです。大きく一回頷いて、はっきりとこう言います。

 

「ああ。幸せになろう。今よりずっと、誰にも胸を張って幸せと言えるように」

 

任せろ。司令官がそう言っているようで。誓い合った私たちは、しばし見つめ合います。

 

やがて、見えぬ糸に惹かれるように。近づく視線に、そっと目を閉じました。

 

 

 

そうしてわたしたちは、キスをします。

 

そっと、触れるだけの軽いキス。愛する人がそこにいて、わたしがここにいて。二つの想いが重なり、新たな未来に誓いを交わします。

 

「さ、行こうか、奥さん?」

 

「はい。あなた」

 

それぞれの準備室まで、手を繋いで歩きます。昼過ぎの陽気が眩しく、わたしたちを寿いでいました。

 

司令官。あなた。

 

大切な人との未来へ、わたしは手を伸ばします。あなたと繋いだこの手を、皆で繋いだ想いを、幸福という海へと―――

 

 

 

そして航路は続いていきます。




いかがだったでしょうか

てか、もっと早く投稿するつもりだったのに・・・

年末って怖い・・・

さて、現在も我が鎮守府のトップエースを独走中の吹雪ちゃん。今年もいろいろとお世話になりました

こうして、吹雪ちゃんとのケッコンエピソードは終了となりますが、わたしたちの物語自体はまだまだこれからです

文字通り、航路は続いていくのですから

願わくばこの作品が、皆様の灯台と、あるいは港となることを・・・

ここまでのお付き合い、本当にありがとうございました
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