投稿スピードは非常に遅くなるかもですが、頑張ります! 誤字・脱字などのミスがありましたら、ぜひご指摘ください。
バルロ様とジャベリンATG様のご指摘を受けて、幾つか修正いたしました。ご指摘ありがとうございます!
現実世界へと帰還する方法はただ一つ――――ゲームをクリアすることだけである。
そう告げられた時、正直に言って、オレは意味が分からなかった。
より正確に言うならば、意味を分かろうとしなかった、というべきであろうか。自分の頭がその冷厳な事実を拒否し、今目の前に現れて馬鹿げたことを告げた赤ローブのGMは幻覚で、今メニュー画面を開けば、そこに≪ログアウト≫ボタンは必ずあるはずだ――――どこかでそんなことを信じようとする自分がいた。
だが、それは痛いほどにつらく厳しい現実だった。
何時間もかけて苦心して作り上げた、つややかな黒髪と低めの身長に整った顔立ち、という男性アバターは一瞬で姿を消し、代わりにオレのいたところにいたのは、イギリス人の母譲りのくすんだ金髪を小さく頭の後ろでまとめ、同じく母譲りのライトグリーンの瞳を細めた――――
本当に嫌で嫌で仕方のなかったその容姿のオレが、まだそこにいて。
なぜかそこにいて。
長身であるがゆえに、無骨な男物の似合う自分がそこにいて。
そしてオレはそれを見てようやく――――これはまぎれもない現実だと、理解してしまったのだ。
ベータテストどころか、今までゲームというものについぞ触れたことがなく、本来ならここにいるはずだった弟がサッカーの試合の為に留守で、今日はたまたま興味本位で流線型の機械を被ってみて、ソフトを起動しただけだったのに。
少しだけ、バーチャルリアリティという、弟が目を輝かせて語ったものを見てみたかっただけなのに。
それなのに、オレはその好奇心のせいで――――無限に続くのではないかと思えるほど遠く永い道のりの、百層クリアせねば還れない世界に、鉄の要塞に囚われてしまった。
仮想世界での死は、現実の死。
そんなことは信じられようもない。
それなのに、オレはログアウトすることが出来ない。
オレは――――
だから。
紅いローブを纏ったGMという名の冥府の神が姿を消し、≪はじまりの街≫の広場が一昼夜覚める事のない怒号と悲嘆の声に溢れかえったとき、オレはひそかに、拳を握りしめた。
現実で、オレは
誰にも負けたくない、誰かを泣かせたくない、その一心でずっと訓練してきたのだ。まさかこれが――――こんなところで身を結ぶとは、思わなかったけれど。
死の託宣をされる前に、情報屋を名乗るプレイヤー≪鼠のアルゴ≫に、リアルでのよしみで教えてもらった情報。≪ソードアート・オンラインには体術スキルが存在する≫という情報。
それさえあれば、オレはこの世界を生き抜くことができる。
そして、世界をクリアすることに、少しでも貢献出来る。
ならば。
「このふざけたゲームを……オレが、終わらせてやる……!!」
≪ソードアート・オンライン≫。
唐突に始まったこのデスゲームを閉じたのは、二振りの黒白の剣を手にした漆黒の剣士であった。
第七十五層ボス部屋で、ボス戦が終了し静まり返るその部屋にて、攻略を進める三大ギルドのうちの一つ、≪血盟騎士団≫の団長を務めていた人物、ヒースクリフこそが≪茅場晶彦≫であると見抜き、彼に打ちかかった漆黒の剣士によって、あの悲劇は幕を閉じたとされている。
しかし、実際にはもうふたり、彼に打ちかかった人物がいた。
それは漆黒の剣士を庇った、≪閃光≫の異名を持つ類まれなるレイピア使い。
そしてもう一人は――――≪蒼の跳躍者≫の異名を得た、漆黒の剣士の戦友にして親友であり、閃光の理解者であった拳士。
跳躍者とともに剣士を庇い、確かに一度ゲージを削りきられたはずの閃光は、後に妖精郷へと幽閉されるも、再び剣士に救い出され、今も確かに現実で生きている。
しかし跳躍者は、今なお現実へと帰還していない。
妖精郷に囚われたのでも、もしくはSAO最後の戦いで死亡したわけでもない――――彼女の魂はなおも昏々と、どこかへ囚われたままなのである。
≪蒼の跳躍者≫――――本名、小日向鈴。プレイヤーネーム≪ザイラ≫は――――
未だにどこかで、眠り続けている。
って、だいぶ無理やりだな、と書いておいて思ったわたしです。
次回からとりあえず話は進む……はずです。