雷閃の拳士   作:待雪ドロップ

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 明けましておめでとうございます!! 待雪ドロップです。
 今回は主人公視点となります。そしていきなりオリキャラです。わぁーーーごめんなさい!!

 もう少ししたら、(多分)TOV組にも出番がやってくるはずです……。


 出来ればお待ちいただけると嬉しいです。 感想やご意見はぜひ下さい! まだまだ未熟者ですので、ご指南いただければ幸いです。

 
 ≪バルロ≫様、≪芍薬≫様、≪ふぁもにか≫様、≪新兵@≫様、≪七四≫様、≪青のサーカス≫様、≪ソロ≫様、お気に入り登録ありがとうございます!!

 今後も頑張っていきますので、今年もよろしくお願いします。


困惑と驚愕 Side:■■■・■■■■■■

 

 

 温かい。そう思った。

 

 鋼鉄の城アインクラッドにある、迷宮区では絶対に浴びることのできない、温かい太陽の光だ。もちろんここはバーチャル世界のはずで、太陽もただのエフェクトに過ぎないはず、なのだが。

 

 その温かい光に包まれ、心地よいそれに身を預けながら、オレはしばし思案する。

 

 ここは、どこだろう?

 

 オレはあの、骨鎌の死神との熾烈なボス戦に参加した。骨鎌のボスが青色の欠片を残して爆散したのち、あいつが――――キリトが、何故か突然、血盟騎士団団長ヒースクリフに斬りかかって。

 

 そこで奴が、最悪のデスゲーム≪ソードアート・オンライン≫を生み出し、何千人ものプレイヤーの命を奪った全ての首謀者≪茅場晶彦≫であることが発覚して……奴と、キリトのサシのデュエルが行われることになって。

 

 麻痺毒を仕掛けられたオレたちは動けなかったはず、なのに、ヒースクリフの一撃がキリトに致命的一撃(クリティカルヒット)する寸前に、オレと、そしてアスナが割り込んで――――。

 

 

 そして、HPバーが消滅した。

 

 

 当たり前だ、ボス戦終了時点でHPバーは危険域に入り、それこそ初歩のソードスキルでも十分に命を削り取られる残量だったのだ。最終宿敵(ラスボス)を名乗ったヒースクリフの、それも本気の一撃となれば、死ぬに決まっている。

 

 背後を振り返ることも出来ないまま、HPバーは爆散し、そしてオレ自身も――――。

 

 ということは、ここは、ナーヴギアがオレの脳を焼き切るまでの、いわば待機時間なのであろうか。

 

 それにしては長いような気がするが――――それもあの、奴の仕組んだ時間だと考えると腹立たしくて仕方がない。

 

 キリトは無事、奴を倒せたのだろうか。

 

 アスナは――――オレと一緒にHPが削られてしまったのだろうか。キリトといるときに見せる表情が、いつも嬉しそうで、にこにこしていて――――出会った当初の殺伐とした雰囲気をすっかり和ませてしまった、幸せそうだったアスナは。

 

 生きていてほしかった、と思う。

 

 そんな二人の顔が脳裏を巡って――――エギルやクラインの笑顔が映って――――そして最後に、リアルの家族を思い出した。

 

 

 多分、今はもう中学生になる弟。オレが今年で十七歳のはずだから、五歳差であった無邪気な弟。

 

 およそ女とは思えない言葉づかいばかりだったオレを、それでも温かく育ててくれた両親。

 

 元気だろうか。

 

 オレが死んだらきっと悲しむんだろう。

 

 悲しませたくない――――そう思って、ずっと、強く生きてきたけれど。

 

 もう、駄目らしい。

 

 

 

 

「……ごめん、みんな」

 

「何がごめんだって?」

 

 オレの呟きを大真面目で問い返してきた何者かの声に、オレは思わずかっと目を見開いて飛びあがった。

 

「のわぁぁぁぁ!?」

 

 自分でも恥ずかしくなるような奇声を上げて、横たえていた身体を跳ね起こし、自然に臨戦態勢に入る。二年間もの戦いの中で培われた対応能力というのか、条件反射とでも言うべきであろうか。

 

 オレの身体の上に掛けられていた布状の物体を払いのけ、ぴょんという効果音が出そうな勢いで前方へとジャンプ。そのままくるりと身体を反転させ、いつでも逃亡にも戦闘にもシフトできるよう頭を切り替える。

 

 突然身構えたオレに驚いたのか、相手は立ちつくしたまま――――好機とみたオレはそのまま、相手の方へ滑るように移動し、黒色のハーフフィンガーグローブに包まれた右手(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)を手刀の形に――――

 

「……んぁ? ……グローブ?」

 

「ってぎゃあああああああああぁぁあああ!? な、何するんだよいきなり!! 寝惚けてんのかよっっ!?」

 

 オレの疑問の呟きをかき消すかのような怒声が響き渡り、相手がひゅんっとうずくまった。手刀を空気に押し付けるような奇妙な形で動きを止めたオレの足もとまでごろんごろんと転がり、すくっと立ち上がると、

 

「あ、あ、危ないだろアンタ! 人に助けてもらってそれはないだろテメェ!!」

 

 と怒鳴りつけるや否や、オレのショートジャケットの胸倉を掴み上げる。

 ――――そう、ショートジャケット。敏捷補正と最低限の防御力のみを備えた青色のそれと、薄手のプレート、そしてオレが(主に女に見られるのが嫌で)身に着けていたスラックスにロングブーツ……。

 

 おろしていた左手で、そっと前髪に触れ、目に見える位置まで持ってきた。

 

 その色は、現実で見慣れた、そしてSAOでも見慣れた、……くすんだ金髪。

 

 (どうしてHPバーが消えたはずなのに……死んだ、はず、なのに……?)

 

 

 突然の理解不能な状況に思考の糸が絡まり、何が何やらわからず混乱したオレを、更に当惑させたのは――――オレを掴み上げた人物の顔だった。

 

 艶のある漆黒の短髪を癖っ毛なのかあちこち跳ねさせ、明るい赤銅色の瞳を細めている。顔のつくりはなかなかに端正だが、その端々にまだ幼さを感じさせる。身につけているのは洒落たデザインの麻のシャツで、ところどころに赤色のラインが走っている。

 

 ……まず、日本人ではなさそうな西欧風の顔立ち、という第一印象を与えるが、なぜだろう、どこか日本的な雰囲気も漂っていた。すっと通った鼻筋に大きめの瞳は、多くの女性プレイヤーを魅了していそうだ。……オレは別に何とも思わないが。

 

 ダンっと足音高く茶色のブーツを鳴らし、憤怒の表情でオレを睨み付けた彼は、驚くべきだろう、まだ十四、五歳の少年だった。

 

 その少年の射るような視線をまっすぐに受け止めたオレは、とりあえず状況を把握するべく――――

 

「あの……悪ぃんだけど、その手、外してもらえないか? いきなり話しかけられたからびっくりしちまってさ。謝るから、謝るから」

 

「え? あ、ああ? ああー……ご、ごめんっ! ついかぁっとなっちゃって、おわぁマジで恥ずかしい。ごめんなさい」

 

 オレの言葉に、少年は案外あっさり身を引き、頭まで下げてきた。どうやら、頭に血が昇りやすいが自身を鑑みるくらいの冷静さは持ち合わせているらしい。

 

 少年が目を泳がせている間に、オレは素早く、今いる場所の状況を把握した。

 

 質素な木造の家で、どうやらオレが今まで眠っていた(少年の言動やオレの記憶から推察して)らしいベッドに部屋の中央に置かれた丸テーブル、天井と床は木目。ベッドのすぐ横には開け放たれた窓があり、外から吹き込む温かな風がカーテンを揺らしている。

 

 窓の外からは、一体何人いるのか分からないが賑やかな喧騒が聞こえてくる。

 

 ――――しかしそれを確認しながら、オレは一つの違和感に気付いた。

 

 景色のどこにも、HPバーも、クエスト小窓も、時刻も、そして自分のネームも――――映っていない。二年前にアインクラッドに囚われるまで、なんの疑問も持たずに見てきた、≪ごく普通の≫視界がオレの目の間に広がっている。

 

 このことから推察すれば、オレはHPバーを失っていながら、何故か現実世界へと帰還したことになる。

 でも、それでは身にまとった、慣れ親しんだ装備の説明がつかない。それに、目の前の少年の顔立ちや、窓の外に僅かに覗く、明らかに日本街ではない中世的な街並みも。

 

 しかし、となると一つの疑問。

 

「……ここは、……どこだ?」

 

 その問いに、目の前の少年は不可思議そうに首を傾げ。

 

 

「は……? ここは、帝都ザーフィアス(・・・・・・・・)だぜ? アンタが下町の郊外でぶっ倒れてるのを、俺たちが助けたんじゃんか。覚えてないのか?」

 

「ていと……、ザ―フィアス?」

 

「おうよ! 世界全土を支配する≪帝国≫の首都、ザ―フィアスさ!!」

 

「……≪帝国≫?」

 

「そう! 当たり前だろ? この世界には、国なんか一個しかないんだから。いくら学のない俺たち下町のこどもだって知ってるよ。……なんでそんな当たり前のこと聞くんだ? まだ頭、ぼーっとする?」

 

 頭を傾げてそう尋ねてくる少年。

 

 オレの質問に対する、少年の受け答え。その内容。彼の出で立ち、その表情――――それらが意味するものは何だ? 明らかにNPCではない。NPCはそもそも、オレの手刀に反応出来ないはずだ。でも、プレイヤーならば自身を≪下町の子ども≫と称するだろうか? 普通に、≪俺、プレイヤーなんだけど、どうしたんだ?≫で済むはずなのに。

 

 ≪帝国≫というらしい国。SAOには、そもそも国の概念がない。

 ザ―フィアス。そんな名前の都市はなかった。

 

 痛烈に嫌な予感を感じながら、オレは少年に一気にまくしたてた。

 

「……この、世界は、なんて名前だ? ≪ソードスキル≫は? ≪血盟騎士団≫って大規模ギルドは? 回復結晶は――――転移門は?」

 

 アインクラッドって名前で、≪ソードスキル≫は勿論あって、≪血盟騎士団≫はあるし、回復結晶も転移門もあるぜ――――そんな答えを期待して、しかし一抹の疑惑と不安を抱きながら、緊張のあまり息を詰めて、大真面目に少年を見詰めたオレに――――

 

 少年は、少し困ったようにして、たっぷり三分の間を置き、応えた。

 

「テルカ・リュミレースってとこだ……けど、……そーどすきる、ってのは聞いたことない。ギルドはあるけど、≪血盟騎士団≫なんて……大規模なら有名なんだろ? でもユーリの兄貴からは聞いたことないし。……≪カイフクケッショウ≫ってのも知らないし、≪テンイモン≫も知らない」

 

「…………っ!?」

 

 半ば分かっていた答えではあったけれど、それでも少なからずの衝撃を受け、オレは数歩後退った。

 

 

 絶対零度の戦慄が背筋を雷光のごとく駆け抜け、後退っていた右足がベッドの脚に衝突した。こん、と軽い音を立てて傾いだ身体をそのままに、ベッドに座り込む。

 

 ついた両手が触れたシーツの感触が、残酷なほどSAOに酷似しているのに気付き、眉をひそめる。

 

 あまりの事態に困惑しきった頭を、身体の芯まで冷えそうな冷却水を浴びせて冷静を取り戻そうと試みながら、オレは一つの、変わりそうもない事実に辿り着いた。

 

 

 ここは、あの悪魔の砦、SAO(ソードアート・オンライン)でもなければ、今も弟と家族が待っているはずの現実(リアル)でもない。

 

 どこか他の場所に、オレは、迷い込んでしまったのだ――――!!

 

 

 




 
 次回のお話は、続けましてザイラくんです。

 多分次の次ぐらいにキリトたちが……そして、近いうちにTOV組が出ると思います。

 それから、新兵@様のご感想を受けまして注意書きを追加。
 あの赤毛の男の子くんはオリジナルキャラクターです! 決して原作キャラではありません。配慮が足りず申し訳ないです。
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