Machined Fantasia of TS Elf-san kawaii!   作:主(ぬし)

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ツイッターでアイディアを授けてくれた諸氏に感謝を捧げます。いつも感謝です。
人生初の巨大ロボットを題材にした小説です。なかなかに難しかったです。でもそれなりに良いものではないかなあと自賛したりしてます。凄くニッチな作品ですが、もしよければ読んで下さいませませ。


序章

これは、青年がまだエルフになる前(・・・・・・・)の物語。

 

 

 

 

 西暦(anno Domini)3000年代初期、人類は科学に継ぐ新たな基幹技術―――魔法文明(・・・・)を宇宙に芽吹かせた。

 科学技術によって生命の謎を解明し尽くした人類は、自分たちの内側(・・)に神秘のエネルギーが存在することを突き止めてみせた。それは個人差はあれど誰もが持っているものであり、遥か昔には“魔力(マナ)”、あるいは“(プラーナ)”や“霊力(スピリット)”などと称されていた生命のみが有するエネルギーであった。文明を築いて3千年を経て、ついに人類は常に付き纏う足枷だった動力資源問題を文字通り“己の力”で解決する技術を手に入れたのだ。

 すでに宇宙空間跳躍(ワープ)まで開発して開拓地(フロンティア)を掘り尽くし、種族規模の倦怠感に沈みかけていた人々は、その内なるフロンティアを多大なる歓喜と熱意を持って受け入れ、急速に発展させた。身近な家電製品から宇宙船に至るまで、魔力を動力とする 魔力加速炉 (マナ・ジェネレータ)を採用した新製品が次々に市場を出回った。また、すでに発展の極みにあった遺伝子工学は瞬く間に人類という種族を魔法技術(マナ・テクノロジー)に相応しいものへと強化させていった。次の世代はより多くの魔力を生み出せるように、さらに次の世代はもっと多くの魔力を生み出せるようにと際限なく驀進し続けた。生命倫理などどこ吹く風のダイナミックな勢いは、倦怠に立ち止まっていた時間を取り戻そうとするような白痴的なまでの生気に漲っていた。

 

 西暦4000年代に差し掛かった頃、早くも魔法技術(マナ・テクノロジー)の進歩は行き詰っていた。人工的に魔力を製造する研究も徒労に終わり、切り札に思われた魔力増幅器(マナ・ブースター)の効率化もすでに極限に達していた。

 特筆して当時の人々を落胆させたのは、人類の遺伝子操作が限界を迎えたことだ。どんなに遺伝子的な改造を施しても、人間一人が生み出せる魔力の質や体内に保持できる量が、ある世代から横ばいのまま向上しなくなったのだ。それは「猿の延長線上の動物風情が調子に乗るな」という神からの痛烈な皮肉であるように思えた。造物主からの手痛い掣肘を加えられた人類が次の段階(ステップ)に進むための技術革新を得るまでにはしばらくの停滞を要した。しかし、後の歴史を考えればその数百年の停滞こそが人類にとってもっとも豊かで安定した時期であったと言える。

 

 西暦4000年代半ば、日本共和連合国(ジャパンユニオン)の研究者が発表した分厚い論文が世界的な物議を醸した。恋人を事件で失ったことを契機に命を削る勢いで研究に没頭していた彼は、魔法技術(マナ・テクノロジー)はおろか遺伝子学、化学、医学、薬学、ロボット工学、数学、システム科学、建築学などなど多岐にわたって精通した“若き万能の天才”と讃えられていた。ある日突然、その彼が、薄汚れた白衣を振り乱し、非常に独創的かつ過激な解答とそれを実現させるための非の打ち所のない理論を世界に向けて発信したのだ。

 

 

人間(われわれ)がこれ以上先に進めないのは、我々を創った造物主そのひとが旧い考えに固執した時代遅れな頭でっかちだからだ。ならば、次は我々自身が創造神(・・・・・・)となればいい(・・・・・・)。突破口を開く優生種(・・・)を我々が創ればいい。その方法を僕が教えよう』

 

 

 それは魔法技術(マナ・テクノロジー)に適応したより優れた種族(・・・・・・・)をヒトの手で一から創造するという、造物主の皮肉に対する荒々しい挑戦状であった。

 驚くべきことに、当初の人間社会はその大胆な発想の転換を是として柔軟に受け入れた。西暦2000年代半ばにはヒューマノイド・ロボットとの共存を果たしていた人類は新たなる種族の誕生も歓迎するだけの器量と自信に満ちていた。無論、この現象にも停滞していた数百年の遅れを取り戻そうとする集団焦燥が働いたであろうことは否めない。

 

 最初に神に対して挑戦状を叩きつけた男が、数多くの謎を心に秘めたまま人知れずひっそりと天寿を全うしたちょうど同じ年、彼の用意した理論を元にして、人類の生存圏で初めて魔力に特化した種族が北ヨーロッパの地で誕生した。ヒトの数十倍に至る魔力を()内に収め、ヒトの数十倍に勝る精確さで魔力を制御するその種族は、一つとして無駄のない端整な容姿と新雪の如き白純(しらずみ)の肌、ピンと後ろに尖った耳の特徴から、ヨーロッパ・ゲルマン神話に登場する半神族―――『エルフ(・・・)』と命名された。

 エルフは若い女性体のみが創造された。交配を防いでエルフの数をコントロールし、かつ人類に不要な敵愾心を持たれないためであった。立ち籠める濃霧を蹴散らしてくれる美貌の妖精の出現に人々は熱狂した。

 

 だが、それも最初の数年間だけだった。エルフは人間を必要以上(・・・・)に凌駕してしまっていたのだ。

 

 エルフが人類社会に参入していくに連れて、魔法文明は飛躍的な向上を見せた。清廉潔白な性質を与えられたエルフは造物主たちに懸命に奉仕し、政治・医療・司法・環境・軍事などあらゆる分野で貢献を行った。一部の特権階級はエルフの保有数をステータス・シンボルとして誇示するなど非人道的な扱いを強いたが、造物主を敬愛する彼女たちは直向きに受け入れた。

 文明がステップを着々と上がる一方で、その(きざはし)を登れない人々は確実に社会の隅へ淘汰されていった。魔法技術(マナ・テクノロジー)が根底に敷かれた文明において、最初からそれに適合してデザインされた種族と、20万年以上も回り道をしていた種族とでは差が生じてしまうのは自明の理だ。それすらもわからないほどに人類は理性を失っていたのだ。すでに理性を失っていた人々がエルフを迫害するようになるまで、さほど時間はかからなかった。各地で身勝手なデモが起こり、危険な暴動に発展し、少数のエルフやエルフを創造する施設、それらに関わる人間が暴力の捌け口とされた。

 自然、エルフはじわじわと人間に対して負の感情を萌し始める。自分たちの都合で生み出しておきながら、都合が悪くなると力で排除しようとする野蛮な人々を、彼女らは疎ましく思い出した。

 その負の感情が『適者生存、優勝劣敗』のイデオロギーを掲げる社会的ダーウィニズムと化学反応を起こした西暦5000年代初頭、人類史上最悪の没落が始まった。『優生種の反乱(エルフ・ウォー)』である。「なぜ人類より優れた私たちが人類の奴隷とならねばならないのか」、という疑問は当然のものであった。

 勿論のこと、これを予測していなかった人類ではない。エルフにはゲノムレベルの安全装置(ロック)によって造物主への反抗禁止と寿命制限が植え付けられていたはずだった。しかし、奇妙なことにそれらは反乱を率いる原初の(オリジナル)エルフが早々に解除してみせた。これにはエルフの境遇を憂いた人間の協力者がいた可能性や、彼女を設計した日本人研究者の故意だったという説もあるが、それらは噂の域を出なかったし、噂話に耽る余裕も無かった。

 すでに全人口の何割かを占めていたエルフの猛攻を前に、人類の軍隊は多大なる犠牲を伴って対抗した。特に、当時開発されたばかりの人型巨大兵器『アルミュール』―――フランス語で『鎧』を意味する―――を駆るエルフの脅威は凄まじく、通常戦車は卵の殻でも踏み付けるように粉砕された。種の存続を掛けた両者一歩も引かぬ戦いは地球規模に発展し、その苛烈さは想像を絶するものだった。全宇宙でも数少ないであろう単一種族の文明は、積み重ねてきた数十万もの年数とはあまりにかけ離れた短い期間で衰退の坂を転がり落ちていった。

 

 100年後、国一つと引き替えの果てに原初(オリジナル)にして最後のエルフを彼女のアルミュールと共に反物質爆弾にて根絶するに至り、荒廃した地球を見回した人類はようやく悟った。造物主となるには自分たちは未熟に過ぎたのだ、と。

 

 そうした惨状から、人々が母なる星から目を逸らすことを選択するのは必然であるように思えた。戦争によって資源が使い果たされたこと以上に、虚しく忌まわしい記憶に満ちた星で平気な顔で住み続けられるような胆力を辛うじて生き残った彼らは持ち得なかったのだ。

地球に残ることを選んだほんの僅かな人々に見送られ、彼らは後ろ髪を引かれる思いに胸を締め付けられながら外宇宙の植民惑星へと旅立っ(ワープし)ていった。二度と帰ることのないであろう灰色の星を後にして。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、さらに1000年以上の歳月が流れた。

 

 

 西暦6000年代―――。

 今となってはキリスト紀元(anno Domini)という由来すら誰も知らぬ遥か未来でも、人類はその不屈の習性(こころ)で万物の霊長の地位を辛うじて保っていた。しかし、そこにかつて外宇宙へと足を伸ばした偉大なる種族の面影は無い。過ぎ去りし栄光のわずかな残り火を不鮮明な形で継承しながら、人類は新たな歴史を歩んでいた。

 西暦6322年。統一王国歴(・・・・・)298年。この年、歴史の大海は激動の時代に向けて再び大きくうねり出そうとしていた。

 だが、それにはまず一人の若き騎士の命の終焉を経なければならない。

 

 

 

 

 

 




この物語は短編です。序章と前編中編後編で構成される 予 定 です。予定ですので変わるかもしれまへん。完結に向けて頑張るぞー。えいえいおー。
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