やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。 作:AIthe
あの電話から丁度一週間後の土曜日。俺はららぽーとにて放課後ティータイムを、楽しんで───楽しんでなんえなかったわ。心ぴょんぴょんしないし「にゃんぱすー」とも言わない。無論SOS団の集まりでもないし、古典部でもない。二次元なんて幻想なんだよ。単に待人がいるんだけだ。
そういえば今年のおみくじは吉だった。待人は「心して待て」だそうだ。一体誰が来るんだ‥‥‥‥
「ういっす。」
「あら、珍しい動物がいるのね。」
「人をホモ・サピエンス扱いするのやめようか?」
「いえ、私は目の腐ったカエルの事を言っているのだけれど。」
「ヒキガエルくんってか。昔のあだ名を思い出させる精神攻撃なの?」
「冗談よ。久しぶりね、比企谷くん。」
おいでなすったのは雪ノ下雪乃。一体どこからどこまでが冗談なのか。
というより先週は「付き合って」とか言われて一瞬勘違いしちゃったZE☆どう考えても買い物にです本当にありがとうございました。
俺としたことが死にてえ。ららぽーとって三階建てだから落ちても大丈夫だよな?な?
「なんでツインテールなんだ?」
「人の髪型に文句をつけるなんて比企谷くんの分際で生意気ね。」
うわぁすげえ楽しそう。やっぱりその毒溜め込んでたの?毒袋とかついてるの?ゲリョスなの?
それより服が凄い。センスが良いという意味で。クリーム色のカーディガンに清楚系ワンピースかよ。二次元美少女ばりのスペックだよこの子。俺なんて時代錯誤な英語が書いてあるTシャツだぞ?
「で、なんで俺は呼び出されたんだ?」
「決まっているじゃない。誕生日よ?プレゼントを買うしかないじゃない?」
みんな死ぬしかないじゃない!的なあれですね。雪ノ下はマミさん‥‥いや胸が足りない。圧倒的敗北感っ‥‥!ってなるのかな?ならねえな。寧ろ相手を論破するまでである。
「それだったら俺が呼び出された必要なくないか?」
「いえ。自慢じゃないけれど、私は普通の女子高生とは感性が違うもの。それに───」
感性が違うことは概ね同意だわ。こんな女子高生が大量にうろちょろしてたら引きこもりになる。元々だけど。
「───誕生日プレゼント、貰ったことないもの‥‥‥」
「‥‥‥‥‥ふっ。」
プークスクス、雪ノ下さんって〜誕生日プレゼントもらったことないんだって〜
え〜?マジ?ヤバくねぇ〜?
まじウケるんですけど〜
こんな感じですかね、全然ウケません。まあ、おおおお俺は高津くんからトウモロコシ貰ったことあるけど?べっ、べべ別に親同士に関係があったからもらったとか全然そういうわけじゃないし!?
「比企谷くんに笑われるなんて一生の不覚だわ。」
よくわからんが自己完結しだしたよこの子。でも勝った気がするからいいや、この流れは放置しよう。将来履歴書に書けそう。でもそれって就活しなきゃ意味ないじゃん!あ、平塚先生は婚活して、どうぞ。
「取り敢えずだな。雪ノ下、お前の感性で判断すると何をプレゼントするんだ?」
「‥‥‥万年筆とか、あと‥‥‥工具セットとか?」
万年筆はともかく工具セットってなんだよ。由比ヶ浜が「うわぁ!このドライバーセット欲しかったんだ!あ、ガジェットも入ってる!ゆきのんありがとう!」とは言わないだろう。いや、工業系女子‥‥森ガール的なあれで流行るかもしれん。リケジョ的なあれですよ!あれあれ!
「お前のセンスを疑うわ。」
「そうね、疑われても仕方がないわ。じゃあ、比企谷くん。あなたは何をプレゼントすれば由比ヶ浜さんが喜ぶと思う?」
「そうだなぁ‥‥」
スイーツ(笑)が喜びそうなもの。小町が呼んでる偏差値低そうな本借りてくりゃよかった。「これで私も愛されガール!」みたいなやつ。C.C.のギアスかな?
「首輪とか?」
「もしもし警察ですか?」
「そういう意味じゃねえよ。犬のだよ犬の。」
「本当かしら?エロ谷くんなら考えかねないもの。」
一瞬想像してしまった。煩悩退散!煩悩退散んん!!
「そ、そもそもプレゼントなんて関係性によるだろ。知り合い程度だったら重くない方がいいしな。」
「あら、比企谷くんにしては役に立ちそうな事を言うのね。」
ソースは小町とか言えないし言わん。
「私と由比ヶ浜さんはと‥‥と、とも、友達よ。」
「ふーん。」
デレデレしてやがるぜ。桜trickかな?それともゆるゆりかな?
「でも、これで私は一人じゃないわ。」
やっぱりマミさんだよな?狙ってるよな?あと一人っていう自覚あったのな。
「ふっ、友達ってのは複数いるから友“達”なんだよ。」
「あなたらしい屁理屈ね。でもいないよりはマシよ。」
「ぐぬぬ。」
知らなきゃいけない事は1と0の間だから(震え声)。
「そ、それより早く買い物しなくてもいいのかよ。」
「ええ、そうね。じゃあ行きましょう。」
わぁい、たのしいでーとのはじまりだぁ(棒)。
───2───
というわけで、買い物に出かける事になった八幡!そこに、買い物を阻む敵襲が現れる!
「あっ!?比企谷くんがデートしてる!」
「比企谷くん、あの子をいくらで買ったの?」
「買ってねえよ、失礼だろ。あとデートじゃない。」
「見知らぬ人だけれど比企谷くんに脅されているなら相談に乗るわ。」
「いやいや脅し「そんな事ないですよ〜!比企谷くんは私のルームメイトですよ〜。」
うわぁ、相なんとかさんじゃん。エンカウントしたくない人物第二位とかにランクインしてるやつ。あっ、戸塚は何時でもウェルカムなんで。
「こいつは雪ノ下だ。前の学校で入ってた部活の部長だ。こっちは相川‥‥‥相「相川だよ!いい加減覚えてよ〜!あ、初めまして。相川清香です。よろしくお願いします。」
「初めまして、相川さん。雪ノ下雪乃よ。」
感嘆符多すぎだろ。感嘆符つけないと死んじゃう病気なの?あと俺が幸先よく空気なんですけど。このまま帰っていいかな?よし帰ろう。
「待ちなさい。」
ハチマンは にげだした!
しかし まわりこまれてしまった!
「いや、ほら、家で小町が「あ、お兄ちゃん!」
「あら、小町さんがどうかしたのかしら?」
「ナ、ナンデモナイデス。」
うわぁ、小町友達と遊びに行ってるんじゃないのかよ。いや、遊びに行ってるからエンカウントしたのか。先週も会えなかったし会えたのは嬉しいけどタイミングが‥‥‥音ゲーだったら不可かMISSって出るよこれ。
「お兄ちゃんが女の子を二人も!?小町的にポイント高い!」
「お兄ちゃんってことは‥‥‥妹さん?」
「はい、お兄ちゃんの妹の比企谷小町です。うちの愚兄がお世話になってます。」
「初めまして、ルームメイトの相川清香です。比企谷くんにはいつもよくしてもらってます。」
やっぱり空気になったわ。しかも雪ノ下まで。雪ノ下を空気にするとかこいつら‥‥‥‥
「こんな可愛い人がルームメイトなんて‥‥本当にうちのゴミいちゃんが迷惑かけてすみませんね。」
「いえいえ、とんでもないです!いつもこまめに掃除とかしてくれて助かってるんですよ!」
「あ、いろいろありますし連絡先交換しましょう!」
「いいですね〜。えっと、赤外線通信でいいですか?」
なんか同じ親から生まれてきたとは思えないコミュ力の高さなんですけど。出会って数分でメアド交換とかどこの部族だよ。
「おい、雪ノ下。」
「何かしら比企谷くん?」
「もう行こうぜ。そろそろ俺の対人キャパシティ許容量を超える。」
「悔しいけれど概ね同意するわ。行きましょう。」
二人をよそ目に、俺達はその場を後にした。
───3───
「酷い目に遭ったな。」
「あなたの顔ほど酷くはないわ、ふふふっ。」
「俺は今酷い目に遭ったよ。あと笑い方怖い。」
「あら、私とあなたじゃ怖いのがどっちかなんて一目瞭然じゃない。犯罪者的な意味でだけれど。」
「ああ、タイーホされるんですね。冤罪だ‥‥‥」
それにしてもこの少女、ノリノリである。その絶対零度の微笑みをやめて欲しい。一撃必殺されそう。それより買い物しなくていいのかよ。買い物!
「おい、由比ヶ浜の誕生日プレゼントはどうすんだ?」
「どうするもなにも‥‥ノープランよ。」
ここまで清々しいノープラン野郎は初めて見た。プランB?んなもんねえよ!みたいな。プランCは屠られるのでちょっと‥‥‥
「あ、あれ?ゆきのん?それにヒッキー?」
「あら、由比ヶ浜さん。こんにちは。」
「‥‥‥うっす。」
一番エンカウントしてはいけない相手にエンカウントしてしまった。これは拙い。どう接していいかわからんしな。
「ヒッキーとゆきのん‥‥なんで‥‥‥あっ、そうだよね‥‥休日に二人で‥‥そうだよ‥‥ね‥‥‥」
愛しのゆきのんを借りててなんかすいません!いや俺はここに居たくて居る訳じゃないからな。今すぐ由比ヶ浜に譲ってやりたい。
「いやいや、特に意味なんて「べ、別にいいの。なんでもないから‥‥‥私って空気読むのだけが取り柄なのに‥‥‥‥」
あーこれ勘違いされてますわ。こんな釣り合わん相手と勘違いするなんてこいつもあれだな。アホの子だな。
ここで弁解するのは、逆に肯定しているようなものだ。
「二人って付き合ってるの?」「そんな事ないわ。ね?」「え?そ、そうだな。」
ほら、大体俺のせい。
「由比ヶ浜さん。私たちの事だけれど、あなたにはしっかり伝えておきたいと思っているわ。」
「はは‥‥‥今更っていうか‥‥‥かなわないっていうか‥‥ははは‥‥‥‥」
やんわりとした声色だが、明確な拒絶があった。由比ヶ浜にしては珍しい、“拒絶”という行為に、俺も雪ノ下もたじろぐ。
「その‥‥明日。部室で待っているわ。」
「‥‥‥‥ん。」
曖昧な返事をし、由比ヶ浜は去っていった。そのたった数歩の距離の間に、明確な線が引いてある気がして。そこは超えてはいけない境界のように見えて。
「───くん、比企谷くん!」
「ど、どうした?」
「大丈夫?顔色が悪いわよ?」
「んなこたぁねえよ、ほら、さっさと行くぞ。」
顔色が悪い?冗談だろ。そんな訳がないし、そもそもなる理由がない。俺はいつも通り。ノープロブレムだ。
雪ノ下の心配を振り切り、俺は大股で歩き出した。
由比ヶ浜の引いた、あの境界。いつか、超えなければならない境界。そんな気がして、俺の心をざわつかせた。
───4───
何を思いついたのか、雪ノ下はズカズカと歩いてランジェリーショップの前で立ち止まる。と思ったが、立ち止まったのは俺だけで、雪ノ下はその横にあるキッチン用品の店へと入ってゆく。
ランジェリーショップの下着ってあんまりエロさを感じない。あれは最早布切れだね!
そんな個人的な話はどうでもいいとして、由比ヶ浜とキッチン用品とはこれまた何を考えているのか。また俺を殺す気なのか?ムドオンカレーならぬマハムドオンクッキーを精製してしまうのか!?まあ、クッキーに関してはまともになっているかもしれんが、あれ以上複雑なものは作れんだろう。むしろ作らないでほしい。
「比企谷くん。」
「ん?」
「これ、どうかしら?」
「まあ、よく似合ってるんじゃねえの?」
買い物は由比ヶ浜のじゃなく自分だったらしいです。黒色の生地のエプロンは雪ノ下が着るとどこか涼しげに見える。胸元に小さく猫の足跡があしらわれている。動きやすさを確かめる為か、円舞曲でも踊るかのように一回転して見せる。どこぞのファッションショーかよ。
「そう、ありがとう‥‥でも私じゃないわ。由比ヶ浜さんにどうかしら?という意味よ。」
「それはナンセンスだな。そういう清楚系アイテムより頭の悪そうなぽわーっとしたものがいいんじゃないか?」
「悔しい程に的確ね‥‥‥‥」
ブツブツと言いながら、エプロンを脱いで綺麗に畳む。几帳面だなこいつ。
どうでもいい話なのだが、こういうキッチン用品は見ているだけで楽しい。フライパンの取っ手が取れて別の商品との互換性があるとか‥‥‥こっからここまで、全部ください!
「これはどうかしら?」
「あー、うん。そっちのほうがいいと思うぞ。」
ピンク色の普通に多機能そうなエプロンだ。真ん中の大きなポケットが可愛らしい。由比ヶ浜とか好きそう。
「これにするわ。」
カゴに入っているのは、ピンクと黒のエプロン二つ。まじちゃっかりさんだよ‥‥‥‥
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