やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。 作:AIthe
頂いている立場で少し図に乗りました。すみません。
腹ごしらえを済ませた俺は、それはもう驚く速さで第四アリーナに向かって行った。ぜかましちゃんとかけっこしても勝てたと思う。ちなみにみぜかましちゃんはだいたい時速70kmくらい。ぜかましちゃんに提督って呼ばれると興奮します。妹と戸塚の次に愛してると言ってもいい。この気持ち、まさしく愛だ!
という訳でアリーナに着いたのはいいのだが───
「なにあのヤンキー‥‥‥‥槍とか持ってるんだけど‥‥‥‥」
水色の髪の生徒が、アリーナの入り口に仁王立ちしている。それも、槍を持って。リボンの色が違うから多分上の学年なのだろう。
ってか、水色の髪とか絶対染めてる。しかも槍とか門番かよ、もしかしてなくてもデュエルスタンバイしちゃうの?
それより、織斑先生誰もいないって言ってじゃないですか!よくもだましたアアアア!!だましてくれたなアアアアア!!(AA略)
今日は諦めよう!槍を持った物騒な人を相手にするくらいなら、自室で勉強してたほうがマシだね。下手に話しかけたら不運と踊っちまう事になりかねないし。
「ちょっとなんで帰るのよー!」
「ひいぃぃ!お金ならありませんすいません!」
「なんで私がカツアゲしてる体になってんのよー!」
こっちに気づいてたのかよ。しかも速い。ぜかましより速い俺より速いとか人間じゃない。槍を持ちながら走ってるから完全に槍投げ選手のそれである。フォーム良スギィ!
なお、現実は腰の曲がったヒョロガキを、スポーツ選手ばりの速さで走る女生徒が一方的に追い掛け回しているという、なんとも残酷な絵である。
「つーかまえた!」
「うひょぇ!?おおおおお俺は食べても美味しくないですよ!」
「食べないわよ!」
捕まった瞬間の絶望を表すと、ラスボスまで辿り着いたのはいいものの、一発で瀕死になるような魔法を連発され、「今のはメラゾーマではない‥‥‥メラだ‥‥」と宣告された時と同じくらい。
「んんっ、初めまして。比企谷八幡君。私は更識楯無。この学校の生徒会長よ!」
「はぁ、生徒会長さんが俺に用ですか?」
自称生徒会長に捕まるとかストレスマッハで死ねる。取り敢えず槍下ろしてください死んでしまいます。
「あら、酷い言い方ね。お姉さん泣いちゃう。およよよー。」
「帰ります。」
「あっ、待ってよー!」
嘘泣きは小町で間に合ってますんで。というより全てが小町で事足りる。料理もできるし可愛いしハイブリットぼっちだしうちの妹スペック高い。お兄ちゃんとはぜんぜん違う。たまげたなぁ‥‥‥
「全く、織斑先生に頼まれたから来てあげたのにー。」
「はあ、織斑先生が?」
「あー、信じてないでしょ!お姉さんぷんぷんだぞ!」
ぷんぷん(笑)。スイーツが好きそうな言葉ベスト3に常にランクインしてそうですね。
「言っとくけど、ISの操作ってケッコー難しいのよ?最初は飛ぶことさえできない人もいるのよ。」
「えっ。」
参考書にはそんなこと書いてなかったわ。簡単そうに思わせて実戦で失敗させる巧妙な罠だったのか?それともこの自称生徒会長がテキトーなことを言っているだけなのか?
「まあまあ、悪いことはしないから大人しくお姉さんに教わりなさい☆。」
「は、はあ‥‥‥‥」
語尾に星ついてる気がするんだけど。食蜂さんなの?精神掌握しちゃうの?
───2───
なんて事があって、俺はこの更識とかいう自称生徒会長にISの稽古をつけてもらう事になった。
俺が現在装備しているのは、打鉄と呼ばれる日本の第二世代型量産機である。速度は出ないが防御力は高く、近接戦闘が得意でバランスがいいらしい。ISというものを装備したのは二度目だが、本当に自分の身体のように軽く動く。アリーナ内を駆け回るが、特に問題は感じられない。
「あら。あなた、スジが良いわね。」
スジってなんだよ。メロンなの?ハイエロファントグリーンなの?緑色で光ってなんかいないんだけど。ジョジョネタを振ってきてるの?
今Google先生にこの状況を検索したら、「もしかして オラオラ」って出てきそう。去年のクリスマス前に、「クリスマスケーキ 一人用」って検索したら「もしかして クリスマスケーキ 二人用」って出てきた。俺がぼっちという事を見越したGoogle先生の精神攻撃がヤバい。ま、まあ小町いるし?そういう配慮って可能性も残ってるじゃん?
「じゃあ次、飛行訓練行くわよ。」
「あぁ、まあ。はい。」
「取り敢えずやってみて。」
訓練機に搭載されたマニュアルを開く。背部のブースターが点火し、ゆっくりと機体が浮いて行く。
「おお‥‥‥‥」
今ならお兄様に飛行用デバイスを貸してもらった研究員の気持ちがわかるわ。とてつもなく自由を感じる、これハマっちゃうかもしれん。
「ほらほら、ボーッとしてると痛い目見る事になるわよ?」
「え?───うおおお!?」
途端、機体がバランスを崩し、速度を上げながらアリーナ内を右往左往する。
「ま、まず───あでっ!」
自分でも立て直そうと頑張ったのだが、結局地面に激突する羽目になってしまった。IS装備してるから特になんともないとか思ってた自分が馬鹿でした。普通に痛いです。え?痛いのはそれだけじゃない?‥‥‥心が痛いです。
「あははははっ!落ちたわね。ふふふふふふ‥‥」
わぁー、面白かったですかー。いい腹筋運動になりそうですねー(棒)。
とにかく、ふざけている場合ではない。俺には時間とかもう色々ないんだ。雪ノ下だったら、「あら、比企谷君にないのは時間だけでなく人権もなのだけれど。」とか言いそう。
由比ヶ浜は───
「っ‥‥‥」
由比ヶ浜の事は思い出したくなかった。
あいつが俺に優しかったのは負い目があったから。ただそれだけだ。何故俺は今になって由比ヶ浜を思い出した?もうあいつは関係ない筈だろ?まさか、俺はまだあの事を引きずり続けているのか?いや、そんな事はないだろう。俺は訓練されたぼっちだろ?別に、誰かとの縁が切れたくらいで───
「───君、比企谷君?」
「は、はい!?」
「大丈夫?すごい深刻な顔してたよ?」
「やだなぁ全然大丈夫ですよむしろ大丈夫じゃなかった時がないまでである。」
「ちょっとお姉さん何言ってるかわからないかな。」
あははと笑う自称生徒会長。色んな意味で怖いんで笑わないで下さい。あ、でも笑えばいいと思うよってどこぞのシンジくんが言ってた希ガス。
「ジュワワワジュワワ、ジュワジュワジュジュワワワワワ?」
「?(日本語でおkだから)」
はーい。嫌という程伝わりました。首傾げてにっこり笑うのやめてください眼力だけで死ねます。ま、まさか‥‥‥直死の魔眼?
「ふざけてないで訓練続けるわよ。」
「う、うーす‥‥‥」
こうして、俺は自称生徒会長にビシバシとシゴかれるのであった。
最後まで、槍を持っていた理由はわからなかった。
───3───
私、相川清香はハンドボール部に所属しています。練習は厳しいですが、毎日楽しくやってます。
今日は体力をつける一環として、学園内の外壁を三週するという課題が出されました。IS学園はバカみたいに広いので、三週となるとものすごい時間がかかります。走っているだけで部活の時間が終わってしまいます。ハンドボール部に入ったはずなんだけどなぁ‥‥‥
一周走るだけで私はヘトヘトになってしまい、ペースがガタ落ちです。体力には自信があったのに、本当にIS学園はレベル高い人ばっかりです‥‥‥
そこから更に半周し、学園校門の真反対のところまで走りました。すぐそこにある自販機に手が伸びそうです。
さすがに自販機で飲み物は買いませんでしたが、隣のベンチで休むことにしました。このまま走り続けていたら倒れてしまいそうです。
「疲れた〜、ふぅ‥‥‥‥」
独り言を言って、寂しさを紛らわせます。他の子は全員先に行っちゃったので、この置いてきぼり感が寂しいです。
そろそろ行こうかなと思い立ち上がると、少し離れたところから何かが落っこちたような、大きな音が鳴りました。確か、第四アリーナだった気がします。学舎から一番遠いので、放課後以外殆ど使われないと聞いています。
何があったんだろう?という野次馬根性で覗きに行くと、一つのISが空を舞っているのが見えました。中に乗っていたのは、想像もできない人物でした。
「え?ひ、比企谷くん?」
思わず声が出てしまいました。まさか、今日は風邪で休んでいるはずの比企谷くんがこんなところでISを借りて一人で練習してるとは思いもしなかったからです。そういえば、風邪と言っていた割には朝も元気でした。勉強もしていましたし。嘘だったのかな?でも織斑先生に嘘をつくなんてすごい勇気だなぁ‥‥‥‥
比企谷くんは空中で大きく機体を揺らしながら、手に持つライフルでターゲットを撃ち抜きます。今日がIS学園に来て二日目のはずなのに、とっても上手です。私はまだ空も飛ぶ事ができません。
そして、私の頭の中にある可能性が浮かびます。
もしかしたら、比企谷くんは本気でオルコットさんを倒すつもりなんじゃないかな?
でも、そんな事が出来るわけがないんです。オルコットさんは代表候補生で、私達のような一般生徒とは違いますし、織斑くんだってきっと織斑先生の弟だからあんなに善戦ができただけ‥‥‥そのはずなのです。だから、比企谷くんが勝てるわけがないんです。
でも、その動きからその真剣さが見て取れました。私は、比企谷くんが本気で勝つつもりなんだなと思い、少しだけ嬉しくなりました。
授業で練習している体で、織斑くんの事ばっかり気にしていた私とは大違いです。
こうやって頑張っている人を見ると、元気が出ます。私も頑張らなきゃ。そう思えます。
「よーし、頑張るぞ〜!」
自分自身に喝を入れて、拳を空高く突き上げます。比企谷くんが頑張るなら、私に立って頑張れるはずです!
だから、私も頑張るから、比企谷くん。頑張ってね。
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