さてさてサブタイがWって付いているのでユーノとアクアの視点を両方盛り込んで書いています。
本格始動は次回ですし、なのはさんなんてまだ魔法少女になっていません。
時刻は丑三つ時。学校の校庭で一人の男が佇んでいた。目の前には光る宝石――ジュエルシードが浮いており、男の呟く言葉に合わせるように点滅していた。
「――フゥ、封印も楽じゃないな。まあ、保険は必要だし、あのフェレット野郎……こうなるとなのはと出会わないってのも考え物だな。見つけたらぶっ潰してやる」
傲慢に、自分のことしか考えず、ただ己の欲望を吐き出すのみ。
その顔は笑っていたが……見る者にはただただ、邪悪に見えるであろう歪んだ笑みだった。
◇◇◇
「さてと……ジュエルシードはまだ一つなんだよな…………えっと、次はどこだっけ?」
なんでこう、記憶が消えるかな……街中を回ってパトロールするしかないんかね?
どうやら今日は日曜日らしく、休日を満喫している人が多い。子供たちも外を駆けて遊んでいる。春の陽気が気持ちよく、サッカーのユニフォームを着た子供たちとすれ違ったりもした。なんか、監督の人をどっかで見たような気もするけど……気のせいだろう。
俺の見た目って、バリバリ外国人。黒に近い褐色だし、かなり見られていたけど堂々と歩いていれば案外大丈夫なんだと経験で学んだ。
「あーもうっ歩くの疲れた……腹減った。おなかすいた。なんか食べたい」
ちなみに、プレトが動いていると大騒ぎになる可能性が高いので(見た目でかいトカゲか甲虫だから)丸まってもらって手で持っています。
ものすごく……重いです。
「……あー川の方に行って飲み水を調達するか」
竹水筒は持ってきているし……
しばらく歩くと、なんか声が聞こえてきた。ボールを蹴るような音も聞こえてきて少年達が元気そうにサッカーをやっているような。っていうか、やっているよね。
そうか、さっきのサッカー少年達か。
ベンチには何処かで見たような可愛らしい三人の少女がいる……あれ、どこで見たんだっけ?
『あ、危ない!!』
俺が考え込んでいると、誰かがそんな声を出した。見ると、目の前には白と黒で彩られた球体が迫ってきていて――
「――はガッ!?」
どうみても顔面にサッカーボールです。ありがとうございました。
「あれは痛いわね……」
なんか、くぎみーな声がそんなことを言っていたけど……だめだ、意識が飛ぶ…………人間より強い肉体だったり、構造が少し違くても、脳震盪を起こすときは、起こす、んだ、よ――
◇◇◇
僕は焦っていた。数日もこの街、海鳴市にいるけど見つけることの出来たジュエルシードは二つ。その二つだって、初日に僕の魔力に引き寄せられてきたであろう、暴走状態のものだ。
《マスター、少し休憩にしましょう。あちらに川があるのを確認しました》
「だけどレイジングハート……昨日の夜みたいな反応があったらどうするんだい?」
《たしかにアレは私の落ち度でした……ですがっ》
昨日、ジュエルシードの反応を感知したのにも関わらず、レイジングハートは報告しなかった。僕の体に封印できるだけの魔力が回復していなかったことも、肉体も疲労が溜まり危険だったことも承知だ。それを心配したのもわかる。
だけど、ジュエルシードの反応がすぐに消えてしまった。
「……間違いなく、僕以外の探索者がいる。願わくば、局員であって欲しいけどね」
《すいません、マスター》
「いいよ、レイジングハートの言うとおり、あそこで休んでおかなかったら数日フェレットモードを使用しないといけない可能性もあった。いや、絶対にそうなっていたよ。そうしたら、余計に対処できなくなっていた」
冷静に考えれば、あの時点で休んでおいたことは正解だろう。ただし、ジュエルシードの被害を無視すればだが。
他に回収している人間がいて助かったのはその一点だ。被害が少なくて助かった。
「だけど……あきらかに他にもジュエルシードが発動した形跡があるのに、残されている魔力痕はそれぞれ異なっている」
《私達のほかに、ジュエルシードを回収しているものは何人いるのでしょうか?》
「分からない……回収している奴らは全員仲間なのか、それともバラバラに動いているのか…………」
一つだけでも強力なロストロギアだ、急いで回収しないと……まずはレイジングハートの提案に従い、水でも飲みに行こう。たしか、近くに川があったはずだ。
◇◇◇
なんか、鼻の辺りが痛いんだが……眠っているわけにもなぁ…………
自分でもいつから寝ていたのか分からないが、日が昇っているうちに眠るのもおかしいと思い、起き上がった。
周りを見渡すと、川と、ゲーム中のサッカーコートと、なんか女の子が三人こっちをみていた。
「あっ、おとーさん目が覚めたよー」
「お、目が覚めたみたいだね」
「……?」
「覚えていないのかい? サッカーボールがぶつかって、君、倒れたんだよ。それとも言葉が通じないのかな……」
「いえ、言葉は大丈夫です……ああ、大丈夫、思い出しました」
そうだそうだ、考え込んでいたらボールが顔にぶつかって倒れたんだっけ。なんか、当たり所が悪かったかな……あ、プレト大丈夫かな?
……魔力的な反応が橋の下の草むらにある…………上手く隠れたようだ。
「本当に大丈夫かい?」
「ええ、お騒がせしました……」
さてと……探索の続きをしないと。この人たちがいるから飲み水は別の場所で確保しようか……公園とか近くにあったかな?
「君、見ない顔だけど何処の子?」
「隣町です。ちょっと用事で近くに来ていただけなので、すぐに帰ります」
「よければ送っていくけど」
「いえ、何度も行き来しているので大丈夫です」
「そこまでいうのならいいけど……」
この監督さん、なんか釈然としない顔だけど納得してもらえたようで何より。さてと……プレトを回収してから飲み水を手に入れないと……
ちなみに、ウソは言っていない。研究所跡地はギリギリ隣町だから。何度も行き来しているのも本当だし。
しばらくはあの人たち(監督と、なんか紫っぽいような髪の女の子)が見ていたようだが、すぐにサッカーの方に気を戻したのでダッシュでプレトを回収。
プレトを回収した頃、サッカーの人たちは試合が終わったのか帰り支度を始めていた。
少し待てば飲み水を用意できるな。あ、ついでに晩御飯用の水も用意するか。
◇◇◇
川の近くに人が大勢いた(どうやらスポーツの試合をしていたらしい)ので、しばらくまってから川にいどうし、水筒に水を汲み始めた。
この川の水は綺麗で助かる。少しだけしか調べていないが、この国には綺麗な水が流れている川が比較的多い方らしい。
まあ、サバイバル用のろ過魔法で不純物を取り除こうと思ったけど、する必要がないくらいだ。ある意味恐ろしい。
《マスター、若干サバイバルフリークと化しています》
「スクライアの性だよ。まあ、役に立っているからいいじゃないか」
さてと、食糧も探さないと……あれ? なんか近くに僕と似たようなことをしている人がいる……植物を切って作ったような水筒に水を入れている。
民族衣装のようなものを着ているのもなんかデジャヴ。あ、僕がそうだったのか。
ただ、あそこまで濃い色の肌は珍しい。この世界には結構多いらしいけど、この国にはあまりいないんじゃなかったっけ?
「……もう、この雑草でいいから食べようかな」
「いや、それはおかしい」
なんか思わずツッコミを入れていまった。というか流石に雑草はやめたほうがいい。なかには毒のある野草もあるんだ。
食べられる種類のものを事前に調べておくことが重要だ。
「…………しかたがない。ヘビイチゴでいいか」
「その手合いの野草はこの時期はまだ花だよ」
「マジでか」
「この、エンドウ系の豆なら食べられると思うよ」
「……あんまり美味しくないし、腹も膨れない」
「そういうものだよ」
おかしい、なんで会話が弾んでいるんだ?
ただ分かるのは……彼も同じ苦労(サバイバル生活)をしていることが何故か分かったことだけだ。
と、初対面の彼と何故かサバイバル談義していたそのとき、僕達魔力を持つもののみに感じ取れる世界の揺れを感じた。
近い……ジュエルシードが発動したようだ。それもかなり、最悪な形で。
「!? プレトは追いかけてくれ、俺は先に行く!」
隣の彼が何かを叫び、口に何かを入れるのを見た。驚くべきことだが、その瞬間、彼の体の形が変わり始めた。背中からはコウモリを思わせる翼が生え、飛び上がったかと思うと、暴走体のほうへ向かったのだ。
《マスター!》
「分かってる! たぶん彼が探索者だ!」
おそらく、複数感じた魔力のうちの一つ!
僕も転移魔法を発動して暴走体のほうへ向かう。それと同時に、結界の準備もしておく。急がないと被害が大きくなってしまう。
――これが二人の出会いであり、新たな出会いと、本当の序章への幕開けだった
今回の用語
『海鳴市』
物語の舞台。高町家やバニングス家、月村家はここにある。
アクアは隣町だが、海鳴に面した森に住んでいる。
猫又やら超能力者やら幽霊、退魔師やクローン部隊みたいな人、アイドルやら拳法家に剣士とか。吸血鬼的な人や妖怪もけっこういるし、色々とカオスな街。
最終的には悪魔てき強さの魔法少女を産出してしまう。
冗談はおいておいて、本作品ではやはりカオスになっているが、カオスなメンバーは本編に出てこない予定。
海鳴軍団(仮)が結成されれば一晩でジュエルシードを集められそうだが、忙しい人も多いので無理だった。
ちっとやそっとのアクシデントや災害ではへこたれないであろう人々が住んでいる。