ちょっと閲覧注意です。
高町なのはは困っていた。
「なのは! ほんとうに大丈夫なんでしょうね!?」
「なのはちゃん洗脳されてない? 食欲はある?」
「だ、大丈夫だから、別に怪我とかもないのっ」
友達のアリサと、すずかに詰め寄られているからである。
どうやら、先ほどのキングなお猿さん事件をテレビで見てしまったようで、ものすごく心配されている。されてらっしゃる。
「そうだ! 鮫島のツボ押しテクニックで」
「何をするつもりなのアリサちゃん!?」
「だめだよアリサちゃん!」
「そ、そうなの。すずかちゃんからも言って――」
「ファリンとお姉ちゃんに頼んで脳内スキャニングを」
「考えうる限りで最悪の状況なのぉぉぉ!?」
膨大な魔力を持ち、その気になれば海鳴を焦土に変えることの出来るだろう才能を持つ彼女も、根は優しい少女。
そして、相対するは親友達。彼女にはただ、言葉を使って二人を落ち着かせることしか出来なかった。たとえ、身の危険を感じても。
◇◇◇
「ジュエルシード、シリアル01……回収完了ッと」
ユーノは研究所跡地にて、今までのジュエルシードを確認していた。それと平行して、レイジングハートとハンドウのメンテナンスをしている。
レイジングハートは元々、ユーノの持ち物であるし、長年一緒にいたので整備はお手の物だ。ハンドウにしても、基本はストレージの技術をもとにしているので、整備が難しいわけじゃない。
「うーん、でもなんか……これってどういうことだろう?」
ハンドウと呼ばれる、地球産デバイス。どうも、パーツが足りない……というより未完成な気がするのだ。むしろ最低限度の機能に+αしただけに思える。
本来の性能はもっと高いのではないのだろうか……それに、この機構ならより効率のいい形も可能なのにあえて余剰パーツが出ているようにも思える。
後付で付け足すことも出来る気がするし……
「もしかして、本当は別の目的があるのか?」
ミッシングリンク、ベターマン、ジュエルシード、テロリスト達に、金色の少女。そして、異常な魔力濃度のこの街。
「嫌な予感がする……」
いまはただ、自分に出来ることをするだけ。
そう自分に言い聞かせ、ユーノは作業に戻った。
◇◇◇
アクアは困っていた。
「女の子がな、こないな時間に薄着するもんやないで」
「えっと、俺、男――」
「だまらっしゃい。エキゾチックな魅惑の容姿をしておいて男なわけがないやろ!」
理不尽なことを車椅子の少女に言われているのである。
関西弁(普通にしていれば、京都弁とかおしとやかそうなイメージで通りそうなのに、アグレッシブな大阪の雰囲気も同時にはなっていた)で泣きたくなるようなことを言われてアクアはホントに涙目だ。
「えっと、そろそろ帰っていいかな」
「シャラップや!」
今日の飲み水を公園に確保しに来たのが運のつきだったのかな……でも、水を確保するにはこれが一番いい方法だったんです。
理不尽な説教はまだ続きそうだった。
◇◇◇
そして、そんなことが起こっているちょうどその頃。時刻は既に遅く、日も沈み始めている。そんな時だった。
「で、降参か?」
「まだ、です」
金色の髪をなびかせた少女、フェイトが体に包帯を巻きつけた男と対峙していた。
男の名は、オーガ。
「まさかプレシア・テスタロッサにまで顔が知られているとは光栄だよ」
「母さんの名前を、気安く口にするな」
「おおコワイコワイ。で、どうするんだい?」
フェイトがこの男と戦っている理由は単純明快。
「そのジュエルシード、渡してもらいます」
「そんなことが言える立場かい?」
強制発動させようとしたシリアル14、それをこの男に止められた上に、奪われたのだ。ジュエルシードを奪い返そうとフェイトとアルフが挑むも……
「アルフ……」
「安心しな、殺しちゃいない。もっとも、しばらくは動けないだろうけど」
アルフは徒手空拳で挑むも、オーガの体が電気になったかと思った次の瞬間、吹き飛ばされてしまったのだ。
「ミッシングリンク、これほどとは……」
「管理局とかだとそう呼んでいるんだっけ? まあ、これで俺のジュエルシードは3つ。強制発動とかされて管理局に気がつかれるわけにはいかないし……
プレシアも俺のこと警戒しているみたいだしなぁ」
「あなた、自分が何をしているのか分かっているのですか?」
「なに? ああ……あれのことか」
オーガの言う、「アレ」は地面に転がる肉塊のことだ。
肌色の肉に、赤い血が飛び散ってその有様はひどい。
「ジュエルシードを封印するのに、そんなことを……」
「君だって強制発動させたでしょ? 一歩間違えばここら一帯の人たちは皆殺し。君にはその覚悟はないの?」
「ッ……」
「その程度で、俺に勝てると思わないことだよ……」
オーガの右手に雷が集まる。
大気を震わせ、鈍く輝いている。
「さて、なるべくなら穏便に済ませたいけど……イレギュラーも多いし、俺のタイムテーブルが狂ったらヤダだからね……しばらく眠ってろ」
「ぐっ、」
雷が自分を襲う。その動きはまるでムチのようで――
「かあ、さん?」
――わけが分からなかった。あの動きは、自分にムチ打つ母の姿ソックリだった。
いや、彼のほうが何倍も邪悪だ。まて、なんで自分は彼と母を重ねた。自分の大好きな母だぞ?
ノイズが奔る。それを否定する自分と、母を信じる自分がせめぎ合う。
反応が間に合わな――
「フェイト!」
――相棒の声が聞こえた。
眼前に迫るムチ。回避、出来ない。
なら方法は一つ。自分は苦手だが、これ以外に方法はない。
◇◇◇
辺りに爆風が吹き荒れる。爆発の術式を同時にこめることで、もともとの能力は格段に上がっている。
「やりすぎていないといいな……火傷とかシャレにならない、まあ、顔が無事ならそれでいいのか、体のほうはどうせあのババアがムチで色々やったんだろうし」
その表情は癇癪を起こした子供そのものだ。いや、それに邪悪さが加わったそれはただ醜悪なだけである。
ジュエルシードを封印するのに通行人を使う必要なんてなかった。ただ、自分の魔力を使うのが億劫だという、ただそれだけの理由なのに何故彼女はあんなに嫌悪した目で自分を見るのだろう。
「まったく、わけが分からない」
歪みすぎたその心は、酷く不安定で、いびつで、人では無かった。
◇◇◇
「フェイト、フェイト……」
「大丈夫、アルフ……ちょっと疲れただけ」
フェイトは無事だった。だが、魔力もほとんど使い果たした。今はアルフに魔力をまわしている。この状況なら、まだ体が動くアルフに力を与えたほうが拠点へ速く戻れる。
「でもロストロギアがアイツの手にあるんだよ?」
「今まで集めた分を奪われなかっただけいいよ。それより、母さんにどう報告しようか……」
「フェイトぉ、もう逃げようよ……もう、みたくない、こんな、こんな……キズだらけに」
「大丈夫、一日休めばまた動けるよ」
母は言っていた。ミッシングリンクには気をつけろと。それでも、自分のやることに変わりは無い。出来るだけ多くのジュエルシードを回収しなくてはいけないのだ。
人を傷つけようとも――嫌だ、人を傷つけたくは無い。
他人のものを盗もうとも――本当はいけないことだって分かっている。
たとえ、自分にウソをついても――母の笑顔を取り戻すためならば。
そう、あの笑顔のためならば
あの丘で自分に見せた笑顔のためならば、自分は――
今回の用語
『ロストロギア』
管理世界の中で、高度に発達した世界が滅んだ時に、次元世界に流れてしまった古代遺失物のこと。
危険度が低いものがほとんどで取引されている場合も多い。
だが、時には非常に危険なモノもある。
有名なのは「闇の書」、「聖王の遺産」など古代ベルカにまつわるものが多い。
また、御伽噺レベルだが「アルハザード」と呼ばれる伝説の世界には、現存されているロストロギアを上回る何かがあるとも言われている。
「アルハザード」の古代遺失物は今のところ見つかっていない。