リリカル・W・ボーイ   作:アドゥラ

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アクアの話です。
今回は残酷というより、ある人物の発言が気持ち悪いので気をつけてください。

実は、原作ではすでに管理局は到着しているハズの時間軸。
次元震が起きていないのでこうなるべきなのか、それとも……


ブースト・A・ワールド

 謎の悪魔が襲来してから早五日。

 アクアの体には不思議と異常は無く、結局ジュエルシードを捜す日々が続く。

 このごろは手分けして捜すことも多く、フェイトとなのはが戦うこともあり、技量の差で負けてしまいシリアル8、9と続けてフェイトにもっていかれてしまっている。

 

 そのため、今日はユーノと特訓をするつもりらしく、アクアは一人で街中を見てまわっていた。

 

「ったく、時空管理局ってのも全然くる気配が無いし……遭難者の救出に時間かかりすぎだな。このままだと一ヶ月経つぞ」

 

 ユーノが地球に遭難していることぐらい気がついていそうなものだが……いや、ユーノが説明していた時言いよどんでいたことがあった。

 考えたくはないが……

 

「管理局も知らないのか?」

 

 ユーノは管理局員に伝えたはずだが、もしもその伝えられた相手もジュエルシードを狙っていた連中の仲間なら……

 

「なんか面倒なことになってきたな……ハァ」

 

 フェイトに来る気配の無い管理局。それに悪魔。ミッシングリンクのこともあるし、敵対勢力はいくつあるのか……

 憂鬱な気分になり、アクアは思わずため息をついてしまう。

 今日はこれ以上探してもジュエルシードは見つからない気もしてきた。とりあえず、懐に入れておいた木の実を食べようと、手ごろなベンチを捜す。

 

「竹水筒もよういして……ん?」

 

 ふと、視界に気になるものが入った。金色の髪に、黒い服。隣にはオレンジ色の狼……

 明らかに自分達と敵対している少女だった。

 

「んー……あとつけるか」

 

 とりあえず、尾行することにしてジュエルシードの捜索を打ち切った。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 後ろをつけて分かったのは、どうやら今日はケーキを買いに来たということだ。

 というか、お金を持っていることに対してこっちは涙を流しそうだった。

 無一文でサバイバル生活の自分達に比べて……

 

「ヤバ、マジで泣きそう」

 

 ホントに涙が出てきた……ちょっと体育座りに適した角がないか思わず捜してしまう。

 と、そこで彼女らが店から出てきた。店の店員が高町に似ていた気がしたが気のせいだろう。

 ただ、そのときのフェイトの顔が心に残った。

 

 

「なんか、幸せそうに笑っちゃって……そういう顔が出来るのになんでこんなことをやっているのかね」

 

 

 スニーキングミッションを再開するため、ダンボールをかぶる。これはこの前木の実をとっていたときにサバイバルに詳しいダンディな方から教えてももらった方法だ。

 なんでも、敵に見つからない最高のカモフラージュアイテムなのだそうだ。

 

「じゃ、レッツゴー」

 

 ぬるぬる動き、相手の後をついていく。傍目から見ればホラーな光景のはずが、本当に誰にも気がつかれていない。

 まさか、マジだったのか……暇だったから冗談のつもりで使ったのに本当に効果があるとは思わなかった。というか、フェイトが天然なだけか?

 

「まあ、このまま敵の本拠地に殴り込みできたら最高なんだけどな」

 

 そう上手くはいかないだろうけどとも思うが。

 と、あたりの空気が変わったことに気がついた。

 

「結界……いや、ちょっとちがう?」

 

 なんというか、この前の悪魔よりも粘っこくて気持ち悪い気配だ。その気配が周囲を包み込んでいる。

 

 

「そこにいるのは分かっています」

(バレたか!?)

「こんなことをしないで出てきてください!」

(やっぱりダンボールじゃダメか……)

 

 フェイトの叫びに、自分の存在が気がつかれたと思い、戦闘準備をする。右手にはすぐに変身できるようにポンドゥスの実を準備して、ダンボールの中で飛び出せる体勢をつくる。

 

「さあ、速く!」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「へえ、流石に気がつくか」

「……当たり前です。さあ、はやくそのジュエルシードを」

「君だって溜め込んでいるんだろ?」

 

 アクアは混乱した。見たことのない男。いや、どこかで見たような気もする。

 というか、ここに来て別の勢力が現れるとは……

 

(本当にダンボール効果あったのか……まだ気がつかれていないとかスゲー)

 

「さて、そっちの君も出てきたらどうだい?」

(あ、やっぱだめすか?)

「アルフ」

 

 って、アルフかよ! 思わずツッコミをいれたくなった。

 アルフはいつの間にか物陰に隠れており、すぐに出てきた。

 

「あんた、やっぱり嫌なにおいがするよ……血の匂い、また誰かを封印のために使ったのか!」

「何度も言うけど、君たちがやっていることだってただの犯罪だろ」

「……それでも、貴方のような下種じゃないことだけは確かです」

「うーん、そんな目をして言われても説得力がねぇ……」

 

 粘っこく、人のことを物を見るかのような視線で見ている男。

 その顔に心当たりが無いか必死に探っていくアクア。

 そこで、前にユーノに見せてもらった顔写真を思い出した。

 

(……コイツ、次元犯罪者ってやつじゃないのか?)

 

 ユーノに見覚えが無いか一度だけ聞かれた男。

 そのときはまるで見覚えが無いから話はそこで終わったが……

 

(ユーノ! ジュエルシードを狙っている奴が他にもいた! 状況が状況だからこっちからの一方的なメッセージになるけど、第三勢力っぽい。前にお前が見せてくれた次元犯罪者の奴だ!)

 

 リミピッドチャンネルを使用して、メッセージを残す。

 そこで、男が動いた。

 

「さて、そんなケーキなんか意味無いと思うけど……」

 

 電撃を纏わせた蹴りを放つ。狙いはケーキの箱。

 フェイトもそれに気がついたのか高速で後ろに下がる。

 そのタイミングで、アルフが前に出る。

 

「フェイトに何するんだい!」

「邪魔だよ」

 

 指先から迸る電撃、それだけでアルフは弾き飛ばされた。

 

「フェイト……なんで、避けるかな」

「貴方なんかには関係ない! これは母さんに渡すものだから!」

「だから、意味なんかないよそんなことには……分からないなら力づくだ」

「狂ってる……」

「皮肉だな、君がその言葉を使うなんて……まあ、今は分からないだろうけど」

 

 男の瞳には最早生気はない。段々と、人としての色を失っていくようだった。

 

「そうだ、いっそのこと剥製にでもしたほうがいいかも知れないよねぇ」

「ヒ――ッ!?」

 

 その一言が、俺を怒らせるには十分すぎた。

 

 ◇◇◇

 

 男――オーガには何が起こったかわからなかった。突然、黒色のなにかが飛び出したかと思ったら、自分が弾き飛ばされていたのだ。

 一瞬、雷化ができなくなったような気もしたのだが……

 

「きのせい、か……で、お前誰だよ」

「ただの通りすがり……じゃ、納得しないよね」

 

 アクアは静かに怒っていた。オーガの剥製にするという発言。あれは本気だった。そして、本気で殺す気で力を放とうとしていた。

 

「な、なんで君が……」

「んー泣いている女の子を助けるのに理由は要らないんじゃないかな」

「――ッ」

「なんで睨むんだよ……」

 

 助けたのに、顔を紅くして睨まれるって理不尽。

 そんなに怒るようなことだろうか?

 

「そうか、あの邪魔な餓鬼か……ロケットパンチは見事だが、それだけじゃ俺には勝てねえ……いいぜ、見せてやるよ核の違いって――」

「あ、そういうのいいからハゲ」

「――アン?」

「だから、ハゲの前口上はいいから。この雑魚」

 

 オーガの米神がヒクヒクと動く。右足を後ろに下げ、先端が雷に変わる。

 その能力は全身を電気に変化させることの出来る力。ミッシングリンク、本来であれば通常の魔道師などには負けないであろう力だ。

 

 だが、オーガは知らなかった。アクアが何のために生み出された存在かを。

 

 

「死ねッ!」

「破アア!!」

 

 アクアは瞬間的に高めた魔力を纏い、雷撃の蹴りを弾き返した。

 もともと動きは素人のオーガである。今までだって能力に頼った戦い方をしていたのであっけなくバランスを崩して後ろに倒れてしまう。

 

「ゴフッ!?」

「やっぱ雑魚……」

 

 対するアクアは数年の間、サバイバル生活をしていた。生きるか死ぬかの命がけの日々。その中で熊やらの猛獣と戦うこともしばしば。今では素手で熊を殴り殺せるのだ。効率重視でプレトを使うことがほとんどだが。

 

「あ……ありえない。ミッシングリンクの攻撃を、魔力だけで弾き飛ばすなんて」

「んー、まあコイツがミッシングリンクって奴なら、そういうことも出来るのかね。俺の場合、コイツじゃないけどミッシングリンクと戦うために生まれてきたようなものだし」

 

 フェイトにはその言葉が理解できなかった。まるで、自分が愛されていない生まれ方をしたような言葉だったからだ。だが、彼の表情と声色はフェイトにその考えを否定させた。

 そんなことは微塵も思っていないからだ。

 

「なんだよ、なんなんだよお前は!」

「ただの通りすがりのベターマンさ」

 

 ◇◇◇

 

「結局、逃げられたか……」

 

 オーガは雷状態で飛んで逃げていった。自分の能力が通用しないのが効いたのだろう。

 フェイトたちも気がつくと姿が見えない。だが、近くにはいるようだ。

 

「……リミピッドチャンネル全開!」

 

 ここで逃げられるのはちょっと困る。本拠地に乗り込むチャンスを目の前にみすみす逃すつもりは無い。

 まだ、近くにいることも助かり、フェイトの時空移動前に捕捉。

 すぐに転移したが、リミピッドチャンネルの力で、居場所を特定。

 

「さてと……あ、あーユーノ、聞こえるか?」

『どこに行っているんだよ! こっちはジュエルシードとか出てきて大変だし、それよりアイツが出たって本当!?』

「念話なのに、鼓膜が……とりあえず、あの男には逃げられた。ジュエルシードを捜しているみたいだし、お前らも気をつけろよ。頭の中、かなりヤバイ奴だ」

『……知ってる。だけど、アクアは大丈夫なの?』

「相性よかったからこっちはノーダメージ。次はどうなるか分からないけどな。とりあえずフェイトの本拠地が分かったから乗り込んでくる」

『……ハァ!?』

「とりあえず、決着付けられたらいいけど、無理だったらなるべき時間稼ぐ」

『本当に大丈夫なの!? って、ああなのは!?』

「どうしたんだ?」

『封印作業中!』

「まあ、大体分かった。とにかく行ってくる……いざとなったら切り札で変身するから俺のことは気にするな。それより、地球の方が危ないかもしれないから」

『…………大丈夫、決着をつけるし、無理だとしてもなのはは必ず守る』

「お、なんかあった?」

『色々とね……それより、君のほうこそなんかあったの? 単独で本拠地に行くなんて』

「ああ……色々とな」

 

 頭に浮かんだのはフェイトのあの笑顔。

 

「杞憂ですめばいいんだけど……」

 

 どうにも嫌な予感がしていた。

 だが、前に進むしかない。

 

「さてと、次元転移……音波、重力、それとも……」

 

 取り出したのはアクアの実。海を渡る姿、海……

 

「まさか、次元の海も渡れるとは思わなかった……ユーノ解析ありがとう、な!」

 

 俺はその姿を変え、次元の海へ飛び出した。

 昔、この姿で高速飛行したのは、無意識のうちに体に魔力で水を纏い、次元の海を使ってショートカットしていたからだ。

 気になって、少し前にユーノに解析してもらっておいて助かった。

 

 

 そして、俺は敵の本拠地――のちに分かることだが、時の庭園という――へ突入した。




今回の用語
『ダンボール』

本来の用途は物を入れるため。
布団代わりに使う人もいれば、子供のおもちゃにもなる。

そして、高いステルス性を誇るアイテムでもあるとはどこかの蛇さんの言葉かもしれない。

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