この小説を書いていて書きたいシーンを思い浮かべて、ここまではたどり着くぞぉ!
ってことで、投稿。
無印終わったらサブタイトルの付け方を変える予定。
あとがきの今回の用語で、オーガについて説明しているのは本編で語る機会が今後無いから。
「母さん! 母さん!!」
フェイトが必死に母を呼んでいる。
プレシアから流れ出る血はその勢いを変えず、見ているだけでその命が失われているのを感じせた。
「プレシアは私が何とかします! クロノ、オーガ・デルグランをお願いします!」
「はいっ!」
クロノと呼ばれた少年が飛び出し、魔法を放つ。
その動きは今まで見た魔道師の中でも、圧倒的に洗練されていた。
「スティンガー――」
「遅い、遅いぞ、ヒヒッ」
「なっ!?」
だけど、オーガは体を電気に変化させて一瞬でクロノの後ろに回りこんだ。
いや、速いなんてレベルを超えている。あり得ない。
俺の変身だって、魔力を用いているものの、一定の法則が存在する。
だけど、あの男の動きはまるで違う。
「オラァ!!」
「ガァアアァああぁ亜!?」
クロノは体を焼かれ、弾き飛ばされた。数人の局員が受け止めて衝撃を和らげたのと、咄嗟に防御したのか、見た目はそれほどひどい怪我じゃない。
だけど、完全に戦闘不能のようだ。手に持っていたデバイスが煙を上げている。
「ハハハハハハ! 俺にデバイスを使った戦闘で勝てると思ったのか!? お笑い種だ、ああ、アホばかりだよ!!」
その名のとおり、鬼だ。悪鬼、この男は人の目をしていなかった。
だけど、この男の言うことが本当ならデバイスを使って戦う人は勝てない可能性が高い。
「さて、お前みたいなイレギュラーもいたな……目障りだ、消えろ!!」
「アクア!」
「逃げてェ!!」
ユーノや、フェイト、高町や他の人たちも俺に逃げろといっていた。
不思議と時間の感覚が遅くなる。周りがスローになる。
オーガの手が電気へと変わり、俺の首を狙う。
思い出されるのは生まれた時の記憶。
培養液の中で始めてみたのは俺を作った人たちの顔。
忘れていた記憶が戻る。
カプセルの中の俺に文字を見せる人たち。
笑う人、歌を教えてくれた。
ベターマンの理論とかも見せてきていた。
何故忘れていたのか、それが分からなくなったが、一つ言えることがある。
ここで死んだら俺はとんだ親不孝ものだということだ。
「光に、なれェェェェェ!!!!」
「なっ!?」
まだ、完全には変身は解除されていなかったのが幸いした。
ゴルディオンハンマーは重力制御能力を発展させた力、超小型のブラックホールとでも表現すればいいのだろうか、いくら電気になっていようと、逃れることは出来ない。
「ぐぅううぅうぅう!?」
「ガハッ!?」
オーガを弾き飛ばすことは出来た、だけど負担が大きすぎる。変身も解けたし、プレトも限界だった。ハンドウも煙を上げている。
これ以上変身を使うのも、危険かもしれない……だけど、リミピッドチャンネルを使わなくても分かるんだ、コイツはここで倒さないと大変なことになる。
「何でだよ、俺はただ原作どおりに、歴史のシナリオにそうようにしようとしただけだ……それを、それを邪魔するなぁああ!!」
アイツが何を言っているのか分からない。だけど、言葉と心が違う。あいつは自分の思い通りにならないことを許せないだけだ。
子供の癇癪、いや、それ以下。
だけど俺の体は動かない。
まあ、俺一人で戦っているわけではない。
「チェーンバインド!!」
◇◇◇
アイツが現れたとき、僕は目の前が真っ暗になった気分だった。
また、失うのか。あいつのせいでまた失ってしまうのか。
多くのジュエルシードを制御していることも信じられなかった。
そこにあるのは純粋な狂気であるのにも関わらず、それなのにジュエルシードの魔力を供給することで実質、無限とも言うべき魔力量を実現している。
そして、オーガの凶刃がアクアへ迫ったとき、絶望しそうになった。
だけどもアクアは生きていた。オーガを弾き飛ばしたのだ。
そうだ、諦めちゃだめだ。逃げてしまってはだめだ。
何のために今まで戦う力をつけていたんだ。
自分に出来ること、今やりたいこと、それはなんなのだ!
「チェーンバインド!!」
気がついたら体が動いていた。
だけど、これでいい。そうだ、行動しろ、立ち止まっていてはだめだ。
「なのは、フェイト達をつれて下がるんだ!」
「で、でも!」
流石に、コイツとの戦いでなのはを巻き込めない。
ジュエルシードも僕達が分断されても全部奪われないようにと僕が最初に回収したシリアル13以外は、なのはに預けてある。
本当ならなのはにこの13番も預けた方がいい、だけど時間が無い。
「急いで、流石に僕もほかの人を守りながらアイツと戦うのは無理なんだ」
「……絶対、絶対に戻ってきてよ。翠屋の、お母さんのケーキ、一緒に食べよう」
「うん、約束する」
そうして、なのははフェイトたちと、管理局員達と共に下がっていった。
数名の管理局員も残ろうとしているけど、たぶん足手まといになる。
「さあ君たちも速く逃げて!」
「リンディさん、ごめんなさい。僕は引くことが出来ません」
「俺もユーノと同じく、ミッシングリンク相手なら俺に組み込まれたプログラムが必要になると思うし」
どうやら、アクアの体に組み込まれていたものは、『不死者』以外のミッシングリンクにも効果があるらしい。
あの日の決着に巻き込むことになりそうだけど、ここはあやまるんじゃなくて……
「ありがとう、アクア」
「まあ、ここまできたら最後まで付き合うよ。綺麗に終わりそうなところをぶち壊したアイツにはムカついているし」
「き、君たち! いいからはやく戻りなさい、ここは私達が」
「それじゃあダメなんですよ、リンディさん」
アイツは、デバイス自体を使えなくしてしまう。おそらく、デバイスを使用しないリンディさん以外はオーガと戦うことすら出来ない。
デバイスが無くても、ある程度の魔法は使えるだろう。だが、デバイス無しで本気の戦闘が出来る人じゃないとだめだ。ある程度ではダメなのだ。
「船には多くの人や、けが人がいます。リンディさんは皆を守らないと……」
「それに、次元震ってのがあるみたいだし……いざって時に地球を、俺の故郷を守ってくれる人がいないと困るんで。お願いします、俺達に任せてください」
無茶を承知だってのは僕もアクアも分かっている。
だけども、僕達は戦うことを選んだのだ。
「……分かりました、なら私からは一つ。絶対に死なないでください」
「もちろん」
「子供のうちに死ぬつもりなんてありませんよ」
リンディさんはみんなを避難させたらすぐに戻ると言い残し、転移した。
オーガも、バインドを引きちぢった。ジュエルシードを巡った最後の戦い。
そして、僕達は動いた。
◇◇◇
オーガは体を電気へと変換する。だけど、対抗するための力を持ったアクアが腕に集めた魔力で弾き飛ばす。
アクアが今使える力は魔力と、悪魔に貰った力だけだ。ハンドウとプレトは使用不可の為、高町なのはに預けられている。
「ダブルギアバインド!!」
そして、弾き飛ばされたオーガをパワードギアとチェーンバインドを組み合わせたダブルギアバインドで捕獲する。
二つの歯車が回転し、チェーンを強く締め付ける。
「ガアアア!?」
「オラオラオラオラオラオラ!!」
アクアも魔力のみで強化した拳でただ殴るだけ、だが対ミッシングリンク用アンチプログラムを組み込まれているアクアはそれだけでオーガにダメージを与えている。
ユーノが捕まえ、アクアがダメージを与えていく。
本来ならば着実にダメージを与えられるはずだった。
「ムダダァアアア!!!」
だが、オーガはジュエルシードの力により膨大な魔力を用いてそのダメージを回復させていた。
二人の攻撃力より、オーガの回復力の方が上回っているのだ。
「やっぱり、変身するしかないッ……」
だが、フォルテはもう使えない。ネブラでは勝てるか分からない。アクアの実もこの場では意味がない。
ポンドゥスやラティオはストックが切れていた。
「……ああ、これがあった」
トゥルバ。まだこの力が残っていた。
「ユーノ、しばらく頼んだ!」
「うん!」
ユーノはバインドを設置し、オーガの動きを制限する。
電磁波か何かを読み取る力があるのか、オーガは不可視のバインドを感知する。
それを逆手にとって、オーガの行動を自分の思い通りに動かす。
(オーガは本能に身を任せて戦っているようなもの、純粋な狂気だけだからジュエルシードも暴走していない。そんな嫌な純粋さとか吐き気がするけど、だからこそ頭では何もかんがえてはいない!)
そして、右手に準備していた魔法を発動する。
「クラッシュ!!」
バリア系魔法を自爆させる術式や、爆破魔法を組み合わせたオリジナルスペル。
圧縮した爆弾を自分に突撃してきたオーガにぶつける。
「ガアアア!?」
「ぐうあ!?」
自分にもダメージは来た。だけど時間は稼げた。
ユーノは後ろを見て、アクアの変身が完了していたのに気がついた。
トゥルバ、嵐の力を持つその姿は空気や気圧を操ることが出来る。
『ユーノ、一気に決着をつけるから下がってろ!』
「うん、お願い!!」
『喰らえ! サイコカーム!!』
サイコカーム。真空波と圧縮酸素弾を交互に打ち込むことで、対象を破壊する必殺技。
オーガに向かって叩きつけられたそれは絶大な威力を発揮した。
「やったの……?」
『いや、まだだ!?』
だけど、一つ考えてみても欲しい。
本来であればただじゃすまなかっただろう。だけども二つの要因が彼らの勝利をもたらさなかった。
「ご、あああああああああああああああああああああああ――ハッハ、はは、そうだ、俺は負けない。俺が、俺が負けるはずなんか無いんだ!!」
一つはオーガが雷へとその体を変質させることで攻撃を無力化できること。本来なら、その時間は短いためそれだけでは意味がない。
だが、二つ目の要因が絶望的だった。
「ははははは! ジュエルシード、完全に制御したぞ!!」
オーガの手中にあるジュエルシード、正確な数は数えていないから分からないが8個か9個ぐらい……それだけの数を制御したのだ。
その力で魔力を自由に扱えるだけでなく、彼の体に変化が生じた。
無制限に体を電気へ変化させる力、見た目も肌が人の色ではなく漆黒へと変わる。電気の色もそれに合わせ、此の世のものとは思えない黒。光を通さない黒へと変わる。
「イレギュラーにユーノ・スクライア、やっぱりオマエタチは目障りなんだよ」
その一閃が、彼らを――
◇◇◇
「いや、いやぁああああああああああ!?」
通信がユーノたちに繋がったのはまさにその瞬間だった。
絶望的な状況、アクアはトゥルバの姿でユーノを庇ったが、外殻が消し飛び、地面に倒れている。ユーノも、アクアが庇ったおかげで体の一部が消し飛んでいたりはしないがボロボロだった。
血だまりが出来、なのはは泣き叫ぶ。
フェイトも顔を真っ青にして画面を見ていた。
リンディが、管理局員たち、クロノ、その場にいた全員が拳を握っていた。自分の無力さに、この次元船、アースラのオペレーターのエイミィが調べたのだ。いままでのオーガの事件を。
その有様は悲惨だった。デバイスが通用しないことも裏付けた。
だからこそ、デバイスに頼らない、いや、使わないことを前提とした彼ら以外にオーガと戦えるものがいないのだ。
「……お願い、私はまだ君にありがとうって言っていないんだ。だから」
その中でも、フェイトは祈っていた。自分と母を繋いでくれた彼にまだ、ありがとうって言っていないのだ。だから、自分は祈るのだ。
「ユーノ君、約束したよね、一緒にケーキ食べようって……お願い」
なのはも祈りを始めた。自分は今まで家族にいい子でいるように振る舞っていた。だけど、魔法と出会い、自分の意見を通せるようになっていく自分を感じた。こんどは家族にもちゃんと言えるようになっているから、だから。
二人の少女をみて、周りの彼らも祈りを始める。ジュエルシードを取り込んだオーガはそこにいるだけで次元震を引き起こしている。自分達があそこへいくにはリンディが次元震をくい止めるしかない。だが、アイツと戦えるのもまた彼女だけ。
今は周りに被害を出さないことが精一杯。
自分達にはこれしか出来なかった。それでも奇跡を信じた。
バッドエンドは、奇跡を信じる者達がいる限り打ち砕くことが出来る。
◇◇◇
「ああ、聞こえた……ちゃんと聞こえた」
「不思議だね、僕にも聞こえたよ、みんなの声」
リミピッドチャンネルを使えないユーノにも聞こえた、自分達を信じている人たちの声が。だけど、戦う力は無い。
情けない。自分達はここで終わるのか、もう、おしまいなのか。
ふと、あの悪魔の言葉を思い出した。
いずれは死ぬといわれた自分達。
その会話のなかでヒントはあった。そうだ、さっきまでは自分達、片方ずつの力では効果は無かった。
相手に攻撃を当てる際はどうしても片方のみの出力になる。お互い、足りないところを補い合って戦うことは出来ていたが、火力が足りない。
体力も足りない。
知恵も、能力も、足りていない。
「ユーノ、そういや持っているんだっけか……」
「ああ、僕が最初に封印したやつがね」
「そっか……願いを叶える心は」
「純粋に、奇跡を願えばいいと思う。いや、僕達の願いは!」
「一つだ!!」
ジュエルシード・シリアル13が二人の間で輝いた。
奇跡は信じるものたちに与えられる。
今回の用語
『オーガ・デルグラン』
ミッシングリンクと呼ばれている12人の転生者のうちの一人。
序列9位。
その性格はきわめて自己中心的。
最初はユーノがいたら登場人物が幸せになれないという自分勝手な思い込みで彼を殺そうとする。
だが、その際に転生者のスクライアの女性を殺害したことにより広域指名手配になる。
その後は、ユーノに人生を狂わされたと逆恨み。
各地で犯罪を重ねる。
地球にやってきた後は、幼少期のなのはに近づこうとするが高町家に撃退されたりしている。
フェイトをつけねらうものの、彼女に嫌悪の感情を向けられた辺りから本格的に狂い始める。
そして、ジュエルシードの封印に一般市民を使い、殺人を重ねる。
持っている能力は体の電気変換。
前の世界では暴風に巻き込まれたことにより死亡したことから圧倒的速さを求めた。転生時の願いもそれだが、死んだ際の思いと重複した結果、自然の驚異を自身のものとする、つまり電気変換を得た。